「キクー?朝だよー?」
「ん・・んむぅ・・・」
目が覚めると、俺のことを起こしていたであろう輪花が、俺の顔を覗き込むようにいた。
「あ、やっと起きた」
「キク、おはよう」
「キク・・・おはよ」
「キクさん、おはようございます」
やっとのことで体を起こすと、アキ、ウェルリー、るずがいた。どうやらこの4人は早起きだそうだ。
「キクにとっての初任務の日でしょ?今日は。そんな日から寝坊してどうすんのよ」
「いやあ、面目ない。つい安心しちゃってさ?」
今日は俺にとっての初任務。そんな難しいものではないと
大佐から言われていた。
そういいつつ、俺は窓に視線を向ける。
これが、"空想世界<バーチャルランド>"の朝日。そして日差し。何気なく見ていたはずの"現実世界"の
朝日とは雰囲気が違った。この4人にとってはなに一つ変わりない、いつも通りの朝なのだが、
つい最近までこの世界とは違う世界に居た俺にとってはなにか特別なものを感じた。
「キク?なに考えてるの?」
「え、あぁ、いや。なんでも無い」
そんなことを話していたとき。俺にとっての初任務はいきなりやってきた。そう。予想外の形で。
「全実行組に告ぐ!全実行組に告ぐ!」
俺たちの視線が一瞬でスピーカーに集まった。
「只今午前9:40分頃に敵クローンの侵入を確認!大群だと思われる!直ちに排除せよ!繰り返す 直ちに
排除せよ!」
そう言われた途端。俺たちは武器をもって戦場へ駆けて行った・・・
これは、昨日の話。あの話はまだ続いていた。
「君は、現実世界でなにか習い事をしていたか?」
「はい、剣道を4歳の頃からやっていました。」
俺の唯一と言ってもいいくらいの特技。剣道だ。一応3段はあり、この歳で取ったために剣道界では
"将来有望の青年"として知られていた。
「ほう。なにか武器というか、剣はあるのか?」
「はい。これがそれです。」
俺は、背中に掛けていた剣 '仁殿-斬-' をトカドゥ大佐にみせた。
この"空想世界<バーチャルランド>"に飛ばされる前。偶然にもその剣を持って寝ていたのだ。
その何気ない行動のお陰で、俺はこの世界を守ることができる。
そう。この剣 '仁殿-斬-' が、俺の相棒なのだ。
話は戻って初任務。皆が戦場に集まっていた。
戦うのは、<戦闘能力班>だけでなく、<精鋭班>と<特殊分析班>、総勢約75人で敵クローンを迎え討つのだ。
「皆の者!配置につけ!」
トカドゥ大佐が大声で呼びかける。
そして、その声を聞いた団員達が一斉に動く。俺はもちろん、あの4人と同じだ。
「輪花は後方支援を!」
「おっけー。」
「ウェルリーは私と中距離ね」
「了解」
「るずは空中支援をよろしく」
「分かりました」
「キクは近距離ね」
「任せろ」
前日に戦闘範囲の打ち合わせをしていたため、すぐに行けた。
俺たちが立ち位置に着いた途端。戦闘ははじまった・・!
「うおおおおおおおおーーーーー!!!」
「おりゃああああああーーーーー!!!」
両軍が勇ましい声をあげて突撃する。大河ドラマの戦闘を思い浮かべるような光景だった。
「ていッ!」
「やあッ!」
アキはクナイ二刀流、ウェルリーは魔法で敵を薙ぎ倒していく。目は真剣そのもの。
「・・・俺も負けてらんねえな」
こういい、剣を抜いた。
「秘刀片手剣'仁殿-斬-' いざ、参るッッ!!」
言った途端。隙ありと思ったのだろう、敵クローンが押し寄せてきた。
グサッ! キィン!キィン! ザクッッ!!
「ぐわあああ」 「ぎぇええええ」 「じゃあああ」
敵クローンが奇声をあげて倒れていく。
俺は戦いながら実感した。
「ここは、俺が守らなくては・・!」
もはや緊張なんてなかった。自分がこの無数にいる敵を倒すことでこの世界が守られる。
しかし、さすが戦場。そんなことを考えている暇なんてなかった。
「きぇえええええ!!」
「ッ!?」
さっきまでの敵とはちがう、戦い慣れていそうなクローンが襲ってきた。
剣を構えようとしても、もはや間に合わない。
「キクさんッッ!!」
その声を聞いた途端。空を見上げると、るずの姿があった。そしてその時。目の前が星型の弾で覆われた!
そして、気がつくとあんなに威勢の良かったクローンが1ミリたりとも動かなくなっていた。
「キクさん、大丈夫ですか?」
「ああ。るず、助けてくれてありがとう。正直ピンチだったからさ」
「言ったでしょう?」
るずが空に飛び上がり、リングと呼ばれるシューターを構えて言った。
「空中支援は任せてくださいって、ね?」
そうして、るずはさらに前線へと駆けて行った。
「ふう、ここらの敵は粗方倒したかな」
見える敵はいなくなったが、さらに敵がやってきた。
かれこれ30分近く戦っているが、終わる気がしない。俺の体力も無くなってきていた。
またもや俺を襲うピンチ。しかし、ある2人が来てくれたお陰でその窮地は消えた。
「キク、ここは任せといて!」
「初任務を・・失敗には終わらせない」
アキとウェルリーが両サイドから挟み討ち。敵クローンはあまりに予想外だったため、
あっという間にいなくなった。
「す、すげえ」
思わず心の声が口に出ていた。その声がアキ・ウェルリーにも聞こえたのだろう。
得意げな顔をして、すぐさま戦闘を再開した。
「そういや、輪花は大丈夫なのかな・・ここは前の2人に任せて、俺は輪花のところへ行こう」
正直、この判断はして良かったと到着した瞬間に思った。
輪花の周りが敵だらけなのだ。
輪花も敵を銃で倒しているが、終わる気配がしない。
そんな中でも、輪花は周辺の支援を怠っていなかった。
「ここは・・・やるか」
俺はポケットから、必殺奥義を取り出した。
「!! あれは、キク・・・!?」
俺は空中に舞い、唱えた!
「秘・奥義!! "光 陰 消 滅" ッッ!!!」
符に真っ白な光が集中する。そして次の瞬間、大きな召喚陣が現れ、そこから無数のレーザーが
飛び出た!
「ぐぬうわあああああああああああ!!!」
ざっと50体以上いた敵が跡形なく消え去った。
俺が地に降り立ったとき。螺貝の音がその場に響いた・・・
「よくやった!大勝利だ!」
トカドゥ大佐が大きく握りこぶしを挙げる。
「やった・・・勝った・・!」
俺にとてつもない達成感が押し寄せてきた。この世界の住人を守り通したのだ。
「みんな、お疲れ様!」
「お疲れ」
「お疲れ様です!」
「お疲れ様。キク、本当にありがとう!」
「いいってことよ」
すると、後ろから大佐がやってきた。
「キク、俺はお前みたいな人材に会えて嬉しく思うぞ。」
「あ、ありがとうございます」
「少なくとも、最後のお前の奥義で一気に敵が消え去ったからな。俺からも感謝しなくては。」
「キクの奥義って凄いね。あんな高威力の奥義見たことないよ」
「ああ、俺でもびっくりしてる。こんなカードのようなものからあんな力が出てくるからな」
つくづく、アルケリア様の力はすごいなと思った。
「さあ、帰ろう。今回の大群相手では疲れただろうから、明日は臨時休日だ」
その言葉で皆の表情が変わった。
「やったーーー!!」
西の山から、太陽がオレンジ色に輝いている。まるで太陽も笑っているかのようだった。
<つづく>
見ていただきありがとうございました。
今回はキクの初任務でした。この戦いを機に、キクはさらに成長していきます。
お楽しみに!
この小説は不定期更新です。ご了承下さい。