SAO ~無双の矛~   作:鴉鷺

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勢いだけでかいています。原作に沿って行きますが、ところどころ主人公の介入によって変わる箇所があると思うので注意してください。
更新頻度は気分次第。
評価の際、低評価の方はどこが悪かったかを、一言入れてくださるとうれしいです。


e.p001 プロローグ

「夏輝、ソードアート・オンラインのβテストを手伝ってほしい」

 携帯端末越しに茅場晶彦は甥である夏輝にそう切り出した。

「突然だな、伯父さん。俺としてはやりたいからいいけど、どうして素人の俺に?」

 夏輝は端末越しに了承の意と、少々の疑念を答えた。

「夏輝は仮想現実への適性が高いからだ。だからβテスト時のプレイヤーとして世界を見てもらいたいというわけだ」

「まぁそうかもな。わかった、やらせてもらうよ」

 夏輝はそう言って快く茅場晶彦の頼みを聞いたのだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「これが伯父さんの夢見た世界か……」

 夏輝は感嘆の声をポツリと呟いた。

 夏輝はβテスト期間当日に、彼の伯父が作り上げた《アインクラッド》へと、ナーヴギアでダイブした。

 《アインクラッド》。全百層からなる巨大な浮遊城である。プレイヤーたちは第百層を目指しひたすら上へ上へと登る。魔法を廃止し、徹底的にこだわった剣技アクションを売りとしたゲーム、ソードアート・オンラインの舞台となる場所だ。

 まずナツというキャラクターとなった夏輝の目に飛び込んだのは、石畳がほぼ均一に敷き詰められた巨大な広場である。その広場からは何本もの道が伸びている。所々を注視するとそれは途端に鮮明に映し出される。すでに現実と見間違うのではないか、というほどの圧倒的なディテールで再現された街並み。

 夏輝はしばし、その景色に圧倒され心奪われていた。しかし伯父の依頼を完遂すべく《アインクラッド》での第一歩を踏み出した。

 まずはエモノを決めなければならない。SAOには魔法がない代わりに多種多様な刀剣類が揃えられている。周りを見渡すとやはりというべきか、一番人気なのは片手剣である。次点で片手曲剣だ。

 プレイヤーネームをナツとした夏輝は少々悩んだ挙句、ポールウエポンである薙刀に決めた。メリットはやはりそのリーチと破壊力だ。しかし懐にはいられた時のリスクは大きい。

 エモノを決めたナツは続いて防具を買って、第一層《はじまりの街》から草原へと繰り出した。周りにはチラホラと人がいる。テスターたちはみな美男美女ぞろいで、個々に狩りを行っているようだ。男と女の割合もほぼ同じくらいだろう。実際は圧倒的に男が多いのだが。

 流石に初日でコミュニティーを作れるほどネットゲーマーは社交的ではないらしく、固まって狩るといった人は希だ。

 ナツは草原にポップした《フレイジーボア》を見据えて走り出す。ナツは小手調べといった調子で、背中に背負っていた薙刀を背で跳ね上げるように抜刀し、その流れのままにモンスターの急所であろう頭に叩き落とす。するとナツの予想通りクリティカル判定がでて、一撃で《フレイジーボア》はポリゴンとなって四散した。

「部位によって威力が変わるのかね」

 ナツはポツリと呟き、再度ポップした《フレイジーボア》を今度は真横に一閃した。今度も刀身は正確に頭を捉え、クリティカルにもなったが一撃では四散しなかった。

  重力も関係するのか?

 ナツはそう思いつつも、返し刀で《フレイジーボア》をポリゴンにした。その後何匹か試し切りしたあとに、このゲームの目玉である《ソードスキル》を試す。大刀系基本技《スラスト》の規定された動きが検出され、刀身を発光させ素早い真一文字の斬撃をナツは繰り出した。先ほど一撃で沈まなかった《フレイジーボア》はこのひと振りの元に霧散した。《ソードスキル》は通常の攻撃よりも威力が高く設定されているようだ。

 その後はナツが現在できうることすべてを試した。ナツはその時に奪われた心がもう取り戻せないと思った。それほどまでに精巧に作られたゲームだった。彼は、流石は伯父だと心の中で賞賛を送った。

 程なくして夕食の時間だと気づき彼は渋々ログアウトをした。

 夕食の後夏輝は伯父へとメールを送信した。

「――以上に異常はなかったっと」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 βテスト期間中夏輝は大学の講義がない時には、必ずと言っていいほどSAOにログインをした。効率的な狩りの仕方を覚え、武器の扱いを覚えていく。自身のキャラクターやプレイヤースキルの成長が目に見えて向上する様は、さらに夏輝をSAOの世界に没入させた。ログインしていないとき大体が、幼馴染の要求に仕方なく答えると言う場合で占められている。

 βテストも最後の週を迎えるころ。最近は無くなった茅場からの依頼が届いた。

「デュエルをできるだけ多くしてくれ。あまり行われていないようだからな。具体的には100ほどだ」

 βテスターは各層のクリアに従事し、ダンジョンへと潜ってモンスターと戦うことが多い。対人戦は変わり者が少しやる程度だったのだ。

「100……って多くね」

 夏輝返信はせずにそう反射的につぶやいてしまった。

 だが、彼は戦闘が嫌いなわけではない。むしろ好きであり、大好きである。

 ダンジョンに潜れば阿修羅のごとくモンスターをその薙刀で薙ぎ払い、《ソードスキル》や自身の体術を使って連撃を繋げていく。

 彼に被弾させることのできるモンスターは、ヒットストップのあまりかからないボス位だろう。だが、結局のところ《ソードスキル》をあまり使わないナツは攻撃をパリィするか、避けるので被弾はしないのだ。

 夏輝は《ナーヴギア》をかぶりナツへと変わる。その外見は初期とあまり変わらない。ちょっとだけいい革の防具を装備し、少しランクの上がった薙刀を装備している。

 現在の最前線は第九層であり、このナツの装備は第六層から使っているものだった。

 ナツは最前線の街のゲート広場へと来た。その広場で暇そうにしているが、最前線のダンジョンに潜っているだろうプレイヤーに声をかけた。

「おい、デュエルしろよ」

 かなり強気な態度でナツは切り出した。

「……は?」

 少々の困惑を見せる。誰だっていきなり知らない奴にデュエルしろ、と言われれば驚くだろう。ナツはそんなことは知らないとばかりにデュエル申請をした。

 申請を受けたプレイヤーは困惑から立ち直って、目の前のデュエル受諾ボタンを押した。

【クルーゼが1vs1完全決着デュエルを受諾しました】

「そうこなくっちゃ」

 ナツは口角を釣り上げて不敵に笑ってみせた。

「おいおい、そんな6層位の装備で俺に勝てると思ってんのか?」

 対戦相手のクルーゼも、先ほどの突如としてデュエルの申し込みをされたときとは違い、余裕を持って片手剣を中段やや上に構える。一方のナツは右足を半歩引いて、薙刀の刀身を相手がうかがい知れない脇構えをとる。相手は中段の片手直剣であり、突きやら唐竹割、袈裟と万能な構えだ。脇構えは相手に得物の長さを見せにくいという利点があるが、初撃の択が限られる。

 5mほど開けて構えを両者がした後、5秒。二人の眼前に【DUEL】の文字が弾けた。瞬間、クルーゼは片手直剣突進技《レイジスパイク》を発動し、その刀身を光らせ勢いよく突撃する。突進スキルの恩恵によって瞬く間にナツに接近した。翻ってナツはというとデュエル開始を同時にスキル発動をしなかった。

 この《アインクラッド》において圧倒的な性能を誇る《ソードスキル》には弱点がある。それがスキル直後の硬直であり、決まった動きしか行えないことだ。それがわかっているナツは猛突撃してきた相手の剣の刀身の腹目掛けて、薙刀で右から左に思い切り両の手で振り切った。

 クルーゼは《ソードスキル》に合わせて振られた斬撃にどうすることもできず、ナツの手前で突進方向を少しずらされ、そのままナツを通り越して止まった。

 スキル後の少しの硬直。それが最大の隙であり、ナツはクルーゼを後ろから数度流れるように斬りつけた。硬直した状態のクルーゼになすすべもない。止めとばかりに最終段を《ソードスキル》でクルーゼを斬り飛ばした。

 格ゲーのようにコンボ補正もかからないゆえ、クルーゼは一度のコンボで8割持って行かれた形になった。

「どうなってんだよ!!」

 クルーゼは焦りの表情を顔に貼り付けた。

「やっぱ対人戦は楽しいなぁ!」

 ナツは斬り飛ばした後、再度脇構えをして口角をさらに釣り上げた。一方のクルーゼはまだ焦りの色を隠せない。絶対の信頼を置いている《ソードスキル》を弾かれたのだ。クルーゼにはにわかに信じ難かった。

 クルーゼはまぐれだと信じて、もう一度刀身を光らせた。それを見たナツは眉間にしわを寄せた。また懲りずに同じ攻撃を仕掛けてこようというのだ。初段のモーションで既にそのことが割れている。

 リーチ差があり、HPも少ないクルーゼを倒すには同じことをやる必要はなかったが、結局先の焼きまわしとなってクルーゼはポリゴンとなって四散した。彼はこの街のどこかにリスポーンするはずである。

 ナツ新たな獲物を求めて辺りを見渡したのだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 ナツが百人斬りを終えたのは、βテスト終了日のことだった。その時既に彼はβテスターの中で超有名人となっていた。それもそのはず、百人斬りでダメージを受けたのも数える程で、片手の指で収まってしまう程の腕だったからだ。さらにその得物がピーキーな薙刀であるということも、一躍噂の的となった。SAOには様々な武器が存在するが、やはり一番優遇されているのは剣の類である。槍などといった竿状の武器は総じて《ソードスキル》が少なめなのだ。

 何十人かのデュエルでは既に観戦客も増えていた。百人斬りに近づくに連れて、ナツは《ソードスキル》をあまり使わなくなった。彼はじわじわと、いたぶって倒す方が好みだったというだけだ。といっても、いたぶりだしたのは90を超えてからである。結局無敗で百人とのデュエルを終えたナツは、伯父である茅場晶彦へと連絡を入れたのだった。

 

2022/11/6.Sun 10:04

「おい、彩夏。インストールできたぞ」

 夏輝は自身の《ナーヴギア》には既に、インストール済みなので幼馴染の彩夏の《ナーヴギア》にSAOをインストールさせた。キャリヴレーションはすでに済んでいる。

 初回ロッドがありえないほど販売が絞られていて、入手するのが困難を極める。それなのに何故得ることができたかというと、ひとえに夏輝が伯父である茅場晶彦に頼んだからだ。茅場はβテストを手伝ってくれたお礼として、これを承諾したわけだ。といっても何故かあまり推奨しないといった言葉も付属していたので、夏輝は少々疑念で首をかしげることとなったが、伯父の考えなどわかるはずもなく早々に考えるのをやめたのだ。このことについて夏輝は、大学の友人には労せずして手に入れたことの恨み言を少々言われたが、βテストの時と同様に逆に自慢をしている。

「やっとあんたのオススメゲームができるってことか~」

「なんでそんな感慨深げなんだよ」

 夏輝は半眼で彩夏を見る。

「だって、これのせいで私の相手してくれなかったじゃない」

 彩夏は《ナーヴギア》を小突きながら、そうすねたように言い返した。

「確かにその件は悪かったな。まぁこれから一緒にSAOをプレイしようぜ」

 夏輝はそう言って幼馴染である彩夏の機嫌をとった。彼女はこの言葉とは裏腹に期待に胸をふくらませていた。夏輝だって正式サービス前で興奮していたのだ。

 またあの仮想現実へと行ける。あの戦いの城へと行ける、と。

 

13:00

 夏輝と彩夏二人は互いの家の自室にて同時に呟いた。

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