SAO ~無双の矛~   作:鴉鷺

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SAOアニメ二期を見て再燃
なおいつまで続くかは( ^ω^)・・・
前回の投稿より丸1年、いや〜月日が経つのは早いですね(白目


e.p011 犯罪者ギルドの討伐

 シキが《偃月刀》のスキルを手に入れてからひと月ほど経った頃。彼のギルドにひとつの依頼が舞い込んだ。

「犯罪ギルドの討伐?」

 場所は最前線宿屋の一室。色気もなにもなく巨漢の男と日本人としては少しだけ背の高い男が話をしていた。

「そうだ。ディアベルからの依頼なんだが、最近犯罪ギルドなるオレンジカーソルの集まりのギルドがあるらしい」

 シキの質問に答えたのは禿頭の筋肉ムキムキマッチョマンのエギルである。

「犯罪ギルドねぇ」

 シキは存在自体は噂として聞いていたので復唱するように声に出した。噂に聞きていたのは《笑う棺桶》というオレンジギルドのことだ。

「何でもそのギルドは《Friday the 13th》。13日の金曜と名乗っていて、リーダーの名前がジャックというらしい」

「まんまジャック・ザ・リッパーの真似事か?」

 シキはそのストレートなネーミングに片眉を上げた。

「そうみたいだな。F13はラフコフと並ぶと言われている残虐性の高いギルドだそうで、主に中層のギルドの不和に漬け込んでいくつものギルドを消してきたらしい」

「なるほどね」

 リア友だけで構成されたギルドならまだ不和や軋轢など些細なことですむことが多い。しかしこのデス・ゲームという状況の中だと話は別になる。いわゆるギルドに入れさせてアイテムやコルを盗むという詐欺がよく行われているとシキも聞き及んでいた。そのもつれの際に出てきたのが《Friday the 13th》などの犯罪ギルドだ。詐欺られた人は騙された恨みから犯罪ギルドに、そのギルドを潰してくれという依頼をする。自分の手を汚したくはないが殺してやりたいと思うほどにデス・ゲーム内での詐欺は重いのだ。

 もしくは犯罪ギルドの構成員が適当なギルドに潜り込み殺しを依頼させるように仕向けるなど手法は様々だ。

「で、こういう風紀の乱れは今後に影響してくるとディアベルは判断したらしい」

「それで俺たちに依頼をだしたのか。だけど俺たち少数でそのF13とやらは潰せるのか?」

「戦力に関してはディアベル側からも提供してくれるとのことだ」

「……わかった。ディアベルも呼んで作戦を煮詰めよう」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 エギルから話を聞いた次の日。

 シキ、エギル、リュウ、ディアベル、他6名で作戦会議が実行された。

「ようディアベル」

「やあ、シキ」

 シキとディアベルは互いに軽い挨拶を交わす。

「今日は最近勢力を拡大しつつあるオレンジギルドの一つ《Friday the 13th》討伐についてだ」

 ディアベルはそう切り出した。宿屋を貸し切っての討伐会議である。

「先日彼らのアジトがある場所を見つけた。場所は第25層の攻略とは関係のない洞窟だ」

 シキはなるほどと納得した。確かに洞窟にはモンスターが湧いてこない区画が設けられている。そして攻略に関係のない場所ならひと目にもつかない。オレンジギルドに所属するオレンジプレイヤーがどこに潜んでいたのかという謎は解消された。

「構成人数は20名ほどだそうだ」

 ディアベルはここで一区切り置いて周りを見渡す。

「レベルはどのくらいかわかるか?」

 シキは疑問に思ったことを口にした。

「そうだね、攻略組よりも10ほど低いと見積もっている」

「それはなんでだ?」

「調査に行った人が攻撃を受けたんだがそのときのダメージを考慮した結果かな」

 そういってディアベルは連れてきたメンバーの一人を見た。

「あんたが?」

 エギルがその人物に問うた。

「ああ、25層でドロップするって言われた《刀》の強化に必要なアイテムを探してたらばったら偶然見つけちまってな」

 腰に差した刀を叩きながら青年――ジーノはそう言った。

「なるほど、それでどうやって攻め込むんだ」

 シキは頷くとディアベルに向き直ってそう聞いた。

「レベルがオレたちよりも10ほど低いといっても油断はできない。相手はプレイヤーをキルしてきた奴らだ」

「まぁこっちも殺す気で行かなきゃいけないな」

 シキはさも当然のように言ってのけた。

 この場にいたメンバーの顔は暗い。いかにゲームだといってもこれがデス・ゲームなのだ。相手のHPを全損することはリアルでも人を殺したということになってしまう。それは相手がその行為をしていたとしても憚られるべき行動だと感じているのだ。

「……そういうことになる」

 沈痛な面持ちでディアベルは肯定した。

「なら善は急げだ。こうしている間にも被害者が出ているかもしれない。被害は小さいほうがいい」

「そうだね、では作戦を言う」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 第25層。

 その洞窟は森の中に合った。その森は木の背が高く密度も濃いこともあり、昼間だというのに薄暗い不気味な影を落としていた。

「ここが?」

 リュウがディアベルに確認を取った。

「そのようだ」

 ディアベルも発見者である青年の顔を観ると青年は頷いた。

洞窟に突入し数分。慎重に進んでいることもあり行進速度はかなり遅い。洞窟に響くのは防具の擦れる金属音と、天井から滴る水滴の音のみとなっていた。

 しばらく進むとディアベルは片手を挙げる。停止のサインだ。聞き耳を澄ますと下卑た笑い声が聞こえてくる。ディアベルが後ろを向いて小さな声ではっきりと声を出す。

「どうやらここがアジトのようだ。作戦通り、オレとリュウ、エギルとゼラードは先行する。その後に後の5人で波状攻撃を仕掛ける」

 ディアベルの指示に個々人は了承の意を口にした。

「行くぞ!!」

 ディアベルの掛け声とともに4人が突撃する。壁沿いからその先を伺い見る形をとりつつも、シキは耳を澄ます。犯罪ギルドメンバーの悲鳴は聞こえてこず、逆に待ってましたとばかりに雄叫びをあげている。

 それを聞いた瞬間シキは罠だと悟った。

 そしてそれは遅かった。

 シキが振り向いた瞬間。道案内をしたジーノという男がシキを小ぶりのナイフで切りつけた。咄嗟に急所を切られないように腕で防御する。

「よく防いだな」

 ジーノはニタリという表現が似合う笑いをしてナイフをしまった。

「やはり罠か」

 シキはそう言って背負っていた偃月刀に手をかける。他の3人を確認すると地面にうずくまっており、身動きが取れないでいた。

 麻痺毒か

 他の3人を見てシキはそう判断し、片膝を付いた。あたかも自分自身も麻痺毒で身動きがとれなくなっているように。

「くそっ」

「麻痺が効いてくるぞ」

 ジーノはシキが片膝を着いたのを見て、余裕綽々といった装いで刀を腰から引き抜いて構えた。

「一方的に殺される気分はどうだ?」

「……」

 シキは俯いたまま何も答えない。

「なんだ、恐怖で声も出せないのか? 最強のプレイヤーと言っても所詮はその程度かよ」

 ジーノはシキの姿を嘲笑してみせる。

「安心しろ、お前を殺したあとは彼女さんも殺してやるよ」

 そう言ってジーノは麻痺が溶けるのが早い後ろの3人の方を向いた。3人の顔は恐怖で歪んでいる。だが、言葉だけは去勢だとしても吐き捨てる。

「ジーノ!! てめぇ!!」

 ジーノは刀を両手で持って地面に突き刺すように構える。

 本当にこんなところで殺されるのか?

 そんな3人はジーノを見上げつつ考えた。だが、ジーノの後ろに現れた人影を見て、安堵の表情に変わった。

「あん……?」

「ジーノくんよぉ」

 表情の変化を不思議に思ったジーノは手を止める。その直後、彼の後ろから声がした。紛れもない今麻痺毒にした男の声が。

 ジーノは素早く振り向く。だが振り向きざまに彼は殴り飛ばされ、壁に激突した。

「かはっ!?」

「残念だったな、俺に状態異常は効かないんだ」

 そう言ってシキはジーノの右腕を肩口から切り飛ばす。ジーノはその斬撃に全く反応できなかった。そして斬られたとわかった瞬間、次は右足を大腿部より切り捨てられていた。

「一方的に殺される覚悟は出来たか?」

 シキの顔は笑っている。だがその声音は完全にキレている。助けられたはずの3人ですらビビっているほどだ。

「サイカを殺すだァ? よくそんなことが言えたな。捕縛だけで済ませてやろうと思ったが、お前のギルドは全滅だ」

 シキは親指で首を掻ききるポーズを交えてそう宣告した。

「それで麻痺毒治して、そいつを縛っとけ」

 シキは言うとディアベルが向かったモンスター非湧出区画へと姿を消した。

 シキが姿を消して1分も経たないうちに先まで聞こえていた怒声が悲鳴に変わり、そして霧散し静寂が洞窟内を包んだ。

「おい、ジーノ」

 シキは後ろにディアベルたちを引き連れて帰って来た。その中には唯一殺されなかったF13のメンバーが一人だけ残っていた。

 シキに頼まれていた3人は彼に言われたとおりジーノを捕縛していた。ジーノは未だ先の衝撃から立ち直れないでいた。

「は、はい」

「本当のアジトはどこだ。正直に言ったら生かしてやるよ」

 ゆっくりだがはっきりとした声音でシキはジーノに質問した。

「さ、30層のダンジョン内だ」

「ほんとか?」

「ほ、ホントだ!! 嘘じゃない!」

 ジーノは必死に答える。ほんとでなければ確実に殺されると直感したのだ。

「だ、そうだ。合ってるか?」

 先の戦闘の唯一の生き残りである青年は首を縦に振った。

「わかった」

 次の瞬間シキはその青年を切り捨てHPを全損させた。

「おい、そこまでする必要はあったのか!?」

 ディアベルがシキの行動を注意した。

「そうだ、牢獄にぶち込んどきゃよかったじゃねぇか!」

 エギルもディアベルに続いてそう口にした。

「ダメだ。こいつらはサイカに手を出そうとした。だからダメだ」

 シキの目は本気だ。仲の良い二人ですらこんなシキを見るのは初めてだった。

「まぁまぁまぁ。シキも落ち着けって」

 3人の中にリュウが割って入った。リュウはこのようなシキを見るのは初めてではない。そのため落ち着いた対処ができたのだ。

「……悪かった。だが、《Friday the 13th》全滅させる」

 シキは素直に謝罪した。

「い、いや別に」

「……わかった」

 ディアベルはシキの目を見てこれは折れないと感じて渋々承諾した。彼は彼女に危害を加えようとしない限り、ここまで過激ではないとわかったからだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ジーノに連れられてきた場所は30層の主街区の目と鼻の先にあるダンジョンだった。

「30層のダンジョンね」

 リュウはボソリと呟く。

「よくもまぁこんな近くに」

 エギルも街との近さに驚いた。そんな感想を抱く面々の中シキはジーノを睨みつけた。

「こ、ここだ、間違いない」

 シキはそれを聞くと縄を解き、ジーノにダンジョンの案内をさせた。

 ダンジョンを歩いて何回かのモンスター戦の後ようやく目的の場所に着いた。

「久しぶりだな、ジーノ。後ろの人は客かな?」

 シルクハットを目深かにかぶった男がジーノに挨拶をした。

「やぁラウル久しぶり、そう依頼人だ」

 ラウルと呼ばれた人物は緑カーソルである。オレンジギルドでも緑カーソルのプレイヤーはいるようだ。ジーノもその一人だ。

「……ちょっと待てあんた何処かで」

 ラウルと呼ばれた男はエギルを注視した。攻略組で一番顔の売れているのは実はエギルなのだ。理由は知ってのとおり攻略本の影響であるが。

「見間違いか?」

「なにがだ?」

 エギルは内心冷や汗ものだ。まさかあのおふざけがこんなとこに来て足を引っ張るとは思いもしなかったのだ。

「面倒な問答はいいだろ」

 そう二人のやり取りを制したのはシキだ。

「まぁそれもそうか。通りな」

 ラウルは全員が通り過ぎたあとフッと笑った。

「どうやら本当にアジトのようだね」

 ディアベルはジーノとラウルのやり取りを見て把握した。

 さらにダンジョン内を進むと一際開けた場所に出た。

 そこでは拷問まがいのPKが行われていた。

 ジーノに聞いた構成員の人数は彼を合わせ19人。先の洞窟で殺したのが14人。そしてここにいるのはジーノとラウルを除外すると3人になるはずだ。だが実際にはこの場に6人のオレンジカーソルがある。新入りだろうか、それともジーノが嘘をついていたのか。

「人数が多い」

 ディアベルが周りを見渡してそう言った。

「ん? やぁ君たちは依頼ですかな?」

 椅子に座っている4人のうち仮面で顔を覆ったプレイヤーが声を掛けてきた。

「ボス……」

 ジーノは極少量の言葉を発した。シキはそれを聴きとった。

「あんたがボスか」

 近づいてきた仮面の男にシキが問いかけた。その横にはズタ袋を被ったオレンジプレイヤーとフードを被ったオレンジプレイヤー2人が追従した。

「いかにも私が《Friday the13th》ボスのジャック」

「なら頼みがある」

 なんの気負いもない。

「なんですかな?」

「死んでくれ」

 シキはエモノを振り切ってからそう宣った。ただ簡潔に。シキのエモノが首を捉えたと思った瞬間。横合いから伸びた大型のナイフに阻まれた。そのナイフは光を纏っており、その腕には笑った棺桶の刺青が掘られていた。

「素晴らしい抜き打ちですね。私は見逃してしまいましたよ。お礼を言いますよ。《PoH》」

「気を抜くな。こいつらは攻略組だぞ」

 《PoH》と呼ばれた男がジャックに注意する。

「戦闘開始だ」

 続いてシキが言葉を発した。

「ルーファス、ドレッド!!」

 ジャックは瞬時に間合いを取ると、未だ拷問まがいのことをして遊んでいた部下を呼んだ。その2人はすぐさま反応しジャックの横に並んだ。

「この3人は俺が殺る」

 シキはそう声を発する。

「待て待て、シキ。俺もやるぜ!!」

 そう言ってリュウが鎌を構えたプレイヤーに突貫していく。

「わかった!」

 シキも即座にリュウの案に乗ってナックルダスターを装着したジャックと捻れた長剣を持った小柄な男に向かって踏み込んだ。

「2対1なんてあんたバカなのか?」

 小柄な男がシキを嘲笑した。

「油断してはいけませんよ、ドレッド」

 一方のジャックは右半身を引いた体勢でシキを迎え撃つ。

 初撃はシキの右からの逆袈裟斬りだった。使っている武器の関係上アドバンテージはシキにある。偃月刀のリーチを活かして、ギリギリの位置から攻撃を繰り出した。

 ジャックは不意うちではないためか余裕を持って交わしてみせた。そして振り終わりの隙に合わせてドレッドが偃月刀の懐の内へと突撃する。

 その速度は見事なものだった。ドレッドは相手の腹部に自分の捻じれ長剣が突き刺さるものだと確信した。だが、シキは振り上げた偃月刀の柄で上へと受け流し、さらけ出されたドレッドの腹部に膝蹴りを叩き込こみ、少し浮いた体を回し蹴りで蹴り飛ばした。

 地面を転がったドレッドはすぐさま立ち上がる。

「クソが!!」

 頭に血を上させて激昂した。

「どうした、かかってこいよ」

 シキはドレッドが御しやすい相手だと分かり、逆に挑発してみせる。

「ドレッド!!」

 すぐさま飛びかかろうとしたドレッドにジャックは一喝いれて気を落ち着かせた。

「ドレッド、1人だけではこの相手には勝てません。協力をしましょう」

「了解」

 ジャックはドレッドの怒りを沈めてみせる。どうやらカリスマ性やリーダーシップはあるようだ。

 次の動きはドレッドからだった。即座に距離を詰める。しかしシキもむざむざそんなことをさせはしない。突貫してきたドレッドに対してシキは偃月刀を真横に振った。高さは腰のあたりだ。構えを見せてから振られた右からの横薙ぎはドレッドがその下をスレスレで潜り込むことによって回避された。

 小柄な体躯を活かした戦法によりシキの攻撃をかいくぐってみせたのだ。その潜り込んだ勢いのまま再び突きを繰り出す。防御では間に合わないほどの間合いの内だ。

 だがそれでもシキに傷をつけることはできない。ドレッドの突きは防御ではなく体を半身にすることで躱されたのだ。そして突きを放った状態のドレッドはまたしても蹴り飛ばされた。

 蹴り飛ばしたのも一瞬、すぐ目の前にはジャックが迫っていた。ナックルダスターをエモノとするジャックはリーチの短さや威力こそ低いものの手数が圧倒的に多い。懐に潜り込まれてしまった現状、偃月刀を操るシキに反撃は厳しい。

 左右の拳の殴打を躱したり偃月刀の柄で受け止め受け流す。間合いのせいかシキは後退気味になっていく。そしてジャックがシキの目の前から姿を消した。そう錯覚させるほどに素早い動きでしゃがみ足払いを入れる。足を刈られたシキの体が右に傾く。さらに待っていたとばかりにドレッドがその光を纏った剣の剣先を突き刺さんと駆ける。

 シキは舌打ちとともに右手だけで側転をし、着地と同時に180°をなぎ払って牽制をした。

 側転からの一連の動作に虚を突かれジャックとドレッドは牽制だったはずのなぎ払いを防御はしたものの吹き飛ばされた。

「しぶといですね」

「なんてやつだ」

 苦言を口にしたジャックとドレッドには少しの焦りが生じていた。一方のシキはそろそろ決めるかという至極余裕を持った面持ちだった。

 コンビプレーはそこそこの練度ではあるものの対人戦の経験が圧倒的に足りていないと見て取れたからだ。そもそもシキよりも対人戦闘経験が多いものなどこのアインクラッドないにいないのだが。

 彼我の間合いは最初と同じ。

 ジャックとドレッドが同時に動いた。左右にバラけるようにして迫る。方向が違う波状攻撃だ。だが、今回はシキも動いた散開したのを見るや彼はドレッドめがけて突進した。

 今までは待ちに徹していたシキの突然の攻勢にドレッドはまたしても虚を突かれる。

 そしてその一瞬の隙は彼の命取りとなった。

 偃月刀になって初めに覚えることのできる《ソードスキル》である《断刀》。

 シキの偃月刀が光を纏う。

 瞬きも許さぬほどの足払い、ドレッドの膝下が切り飛ばされた。だがまだこの《ソードスキル》は終わりではない。高速の足払いをしたとわかった直後、頭上に掲げられた偃月刀を見たドレッドは死を悟った。

 その悟りは違わず、偃月刀が叩き下ろされ、地面を粉砕する。ドレッドのHPが全損しポリゴン片となり消えていく。

 《断刀》は人型のモンスターに効果的な《ソードスキル》だ。初撃で足を刈り取り、状態異常《転倒》へと強制的に移行。その直後防御のできないほど強烈な唐竹割りを叩き込む。並みの軽装剣士ならばこれだけでHPが全損するほどの威力を誇る。

「ドレッド!!」

 一連の動作が速すぎてジャックには理解できなかった。理解が追いついていなかった。ドレッドが足を刈り取られた次の瞬間には、ドレッドの6割以上残っていたのにそのHPが一瞬で溶けたのだ。

 シキは《ソードスキル》の使用後硬直から回復した後、今の出来事を理解できていないジャックに急速接近。

 ジャックはシキの接近でようやく正気を取り戻し、光をまとったなぎ払いを後ろに跳躍してよけた。そう思った直後ジャックは胸を深く切り裂かれていた。

 またもジャックは混乱の坩堝に叩き落とされた。HPは全損こそしていないものの今の一撃で7割は持って行かれている。偃月刀の火力とシキとジャックのレベル差などの要因もありそれだけのダメージを受けたのだ。

 ジャックがノックバックから解けるのとシキが技後硬直から解けるのは同時だった。

 シキは再度攻撃に移るジャックの攻撃が絶対に届かない位置からの流れるような乱舞。そして時には偃月刀の刃ではなく石突で殴る。一回転して大ぶりの横薙ぎをかろうじてジャックは防御した。

 全損まであとわずか、そうジャックが思った瞬間シキは大きく上に跳躍した。  ジャックはシキを目線で追った。が、胸のあたりに衝撃が走った。自身の胸を見るとそこには光を帯びた刀が刺さっていたのだ。

 そしてそれはジーノの攻撃によるものだった。だがほぼ全損仕掛けたジャックにはその一撃で十分だった。ジャックのHPバーは底を尽きそしてポリゴンの欠片となって消えていった。

「ボ、ボスッ!?」

「ジー……ノ」

 ジーノは決してジャックを刺そうとしたのではない。死にそうだったジャックを助けるためにシキに斬りかかったのだ。しかしシキが大ぶりを放った際にソードスキルの煌きを目の端に捉えていたためにシキはその攻撃を躱してみせたのだ。

 結果ジーノは自身のボスを殺すことになったのだが。

「ジーノ、やるじゃねぇか」

 シキはそう言った。

「野郎! ぶっ殺してやる!!」

 ジーノは怒りの声とともにソードスキルを発動させてシキに突っ込む。

「ジーノ、言っておくことがある――」

 シキは冷静にその刀の側面を強烈に殴打した。刀の耐久値は吹き飛び、ジーノの手から武器がなくなった。

「お前を生かしてやると言ったな? あれは嘘だ」

 そう言うとシキは光を纏った偃月刀を振り抜きジーノの首を刈り取った。

「あんなこと言わなけりゃあな」

 シキは小さく呟いた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 シキとジャック&ドレッドが戦いを繰り広げているさなか、リュウもルーファスと戦っていた。

「お前、四肢は切られたことあるかい?」

「は? ある訳無いだろ!!」

 リュウはルーファスの鎌を盾で受け止めてからそう返答した。

「ならそれを味あわせてあげるよ、感謝してよね!!」

 ヒヒヒという下卑た笑いをしたルーファスはそう吠えた。

「やなこった!! そんなの美人な女の子の願いだとしても無理だぜ!!」

 リュウも負けじとそう答えを返す。

 しかしリュウは盾を使っているのに苦戦を強いられていた。ルーファスの武器である鎌は湾曲している。その関係上ルーファスショテルのような使い方をしているのだ。何度も盾をすり抜けられそうになっている。そしてヒット&アウェイをされるとどうしても鈍重なタンクでは追撃ができない。

 どうにかして突破口を見つけねぇと

「ほらほら反撃してきなよ」

「好き勝手しやがって」

 ルーファスは高笑いをして攻撃の手を緩めない。リュウは亀のようにガードを固めて反撃の時を待つ。

 何度目かの攻撃の瞬間。

 盾ではなく鎧で鎌の一撃を受けた。盾を手放し突き刺さった鎌を右手で握り締める。

「捕まえたぞ!!」

 リュウは驚いたままのルーファス目掛けて刺突の《ソードスキル》を発動。ルーファスの胸を狙った突きはルーファスが体をひねる事で回避、その代わりに右腕を肩口から切り飛ばした。もう一発と思ったのも束の間ルーファスはリュウの顔を蹴り飛ばして鎌を取り戻していた。

「腕を飛ばされたことはあるか?」

 リュウはしてやったりという顔でルーファスに言い返してやった。

「ぶっころ」

 ルーファスはコケにされたことに怒り、左手だけであるにも関わらず、リュウめがけて鎌を振り上げた。しかし鎌は両手武器であり、ルーファスの聞き腕は右。ルーファスの鎌は先までの勢いはまるでなく、リュウはなんなくパリィして左腕も切り飛ばした。

「安心しろ、俺はシキ見たいに殺しゃしねぇからよ」

 リュウはそう言ってルーファスを捕縛した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 シキとリュウと違い7対3であり、数的優位に立っていたディアベルたちは苦戦していた。

 オレンジプレイヤーである3人の連携は完璧であり7人で囲んでいるにもかかわらず、その陣形を崩せないでいた。

「くそ、なんて奴らだ隙が全くない」

「こっちは7人だってのに」

 ディアベルとエギルはそう口にする。

「ドレッド!!」

 陣形を崩せないでいたディアベルたちにジャックの焦った声が聞こえた。

「これはヤバイようだ、今回は逃げさせてもらう」

 そういうやダンジョン入口に向かってオレンジプレイヤー3人は駆け出す。だが通り道にいたプレイヤーが阻止しようと前に出る。

「やめろ! 見逃せ!!」

 ディアベルは悪寒を感じて彼らに指示を出した。

「勘がいいな」

 そう言い残し、《笑う棺桶》の三人組はダンジョンから消えていった。

 

 その数秒後。

「他の3人は?」

 2人を殺したシキがディアベルに歩み寄りながら質問した。

「逃げられたよ。すまない」

「いや、あいつらは《Friday the 13th》じゃないからいいさ。それより誰も欠けずに生き残れたことを喜ぼう」

「コイツはどうする」

 そう言ってリュウは先ほど倒したルーファスを前に突き出した。

「殺してもいいが……牢獄にぶち込んどけ」

 シキはそう言った。シキ自身F13のリーダーとジーノを殺したのだからもういいかと冷めたのだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 場所は最前線の宿屋《ミュレイ》

 そこには十数人ものプレイヤーが集っていた。

「結局今回の依頼の報酬はなんだ?」

 そういえばといった感じでシキはディアベルに話を向けた。

「そうだね、犯罪ギルドの貯蓄でどうだい? これ美味しいね」

 ディアベルは逡巡した後そう答えた。

「なんかそれって横領みたいじゃないか? だろ?」

 若干納得できないのかシキは食い下がる。

「けど彼らに関わった金品の所有者はこの世界から消えているんじゃないかな。このお肉もなかなか」

「確かにな、まぁギルドの費用として溜め込んでおくわ。 それ俺の好物なんだよ、残しといてくれよ」

 ディアベルの説明に納得してシキは報酬を受け取った。

「はいはい、落ち着いて食べてよ。材料なんかはいっぱい余ってるんだから」

 サイカがシキを嗜める。

「そうですよ。私たちが腕によりをかけて作りますから」

 アスナも料理を振る舞えて、美味しいと言ってもらえるため上機嫌だ。

「作るって言ったって、システムの手順に沿って動作をするだけ……いってぇ」

 キリトがその話を聴いて横から茶々を入れたが、アスナに頭を叩かれた。

「キリト、一言多いぞ」

「そうだぜ、そんなだと好きな子にも振られちまうぜ!!」

 リュウもアルコールが入ってでもいるかのようにテンションが上がっている。

「お前も無駄なこと喋んなきゃモテるだろ」

 シキはリュウの発言に文句を言った。

「いいなぁわたしも料理スキル上げてみようかな」

「鍛冶屋のくせに家事ができないんだもんな」

 プッそう言ってキリトは吹き出した。

「うっさい!!」

 笑いをこらえるキリトに向かってリズベットはメイスを叩きつけた。

「ごっは」

 攻撃のノックバックを受けてキリトは持っていたコップに顔から突っ込んでコップを破壊した。ダメージはないが衝撃はある。

「何すんだよ!」

「今のはキリトが悪い」

「キリトくんが悪いよ」

「あぁキリトが悪い」

 その他大勢もその流れに追従する。

「わ、わかったよ。悪かったってリズ」

 キリトは皆の圧力に屈してリズベットを拝み倒した。

 犯罪ギルド討伐を達成した夜。祝勝会のようなものがとり行われていた。当初は討伐隊だけで行う予定だったが、街中でキリトを発見、強制連行。料理をしてもらうためにサイカを呼ぶとアスナとリズベットも一緒だったため追加。そのため10人を越える人数になったのだ。

 この日はシキたちにとってデス・ゲームという過酷な環境と、その世界に生きる仲間との確かにある楽しいひと時を再確認した日だった。

 




筋肉ムキムキマッチョマンの変態「お前は最後に殺すといったな、あれは嘘だ」
サリー「うわあああああ!!」

場面に合うと思ってついパロッてしまった。今は反省はしているが後悔はしていない。
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