SAO ~無双の矛~ 作:鴉鷺
第一層ボス攻略会議が行われた後、シキとサイカは適当な宿屋にて部屋を借りていた。攻略が進み階層が開かれるにしたがい、自身の家を持つことも可能だが、それには多額のコルが必要となる。第一層現在の時点でそのような大金を持っているものなど、全プレイヤー探したとしてもいない。よって、皆が皆旅の疲れを癒すためには宿屋を借りるしかない。別に借りずに野宿をしても良いのだが、まだデス・ゲームが始まってひと月しかたっておらず、野宿という少々気を張る必要がある行為をする者は、一部の例外を除いて皆無だ。その一部の例外ではないシキたちはトールバーナの宿屋とは書かれてはいない、民家の借りた一室へと着ていた。
リュウからは既に、今日は先にあった仲間と飲み交わすとのメッセージが届いているので、一室しかないのだが、食事がついてくるこの民家に泊まることにしたのだ。といっても食事はサイカが《料理》スキルを上げているので、それに世話になることのほうが多い。リアルでもよくサイカに料理を振舞って貰っていたシキとしては、アインクラッドの簡素な料理は、イマイチ何かが足りないと感じている。
「やっぱり、あそこまでストレートに言うことはなかったんじゃない?」
そう声を発したのはサイカだ。明日にはボス攻略が始まるということもあり、昨日気になったことを聞いたのだ。部屋の中シキとサイカは互いのベッドに腰掛けている。彼女が何を指してそう言いたいのか分かっているシキは、無駄な質問をせずに答えた。
「別に俺がβテスターだからじゃない。あいつらはこれからこのデス・ゲームを一緒にクリアしていくであろう奴らだ。キバオウって男もその一人になる。俺たちにはデス・ゲームをクリアするという最大の目的がある。なのに、ビギナーがどうだテスターがどうだと、無益以外になりえないものに現を抜かすのは、それこそ専用ギルドなり何なり作って、勝手にやっていてくれと言いたいんだ。それに、ああいうことを堂々というやつは直接言葉を言わないとわからない」
我が強いやつには強く出る。シキは相手によって基本臨機応変に言葉を変えることにより、話のイニシアチブを握る意味もこもっている。
昨日ついで今日このトールバーナに集まったプレイヤーは、確実にこれからの階層ボス攻略時に参戦してくる。このスタートダッシュを切れるということはそれだけ、このSAOに慣れたということだ。
まだまだ八千人強ものプレイヤーが残っている。これから最前線で戦うプレイヤーはまだ増えるだろう。そんな時にβテスターが悪だと断ずることは不利益でしかない。ベータテスターが大きな戦力になることは当たり前なのだから。
キバオウが言う、ビギナーの被害を減らすためには、一刻も早くこの死の浮遊城を踏破しなければならないのだ。はじまりの街でずっと燻っていることができるものなど、全員が出来はしない。人とは何か日常に刺激を求めるものだ。その行動が一歩間違えば、死につながる。それがこのデス・ゲームであるSAOだ。
この無意味な被害をなくすためにも、最前線で戦うトッププレイヤーたちの足並みが乱れてはこれからのボスの攻略など、夢のまた夢なのだ。
「まぁ確かに、あんまり皮肉とか通じそうにないかもね」
シキの説明に納得したのかサイカも、昨日のキバオウの態度を思い出した。
「なんにせよ、明日は初めての決戦だ。ゆっくり休んでおけよ」
シキはそう笑いながら言って、ベッドに横になった。その後消灯をして二人は眠りについた。目を覚ませば決戦になるのだから。
◇◆◇◆◇◆◇◆
第一層のボス部屋の前に現在四十七人のプレイヤーが集結している。皆が皆、持てるだけの回復アイテムを持ってきている。普段はあまりモノを持ち歩かないシキも今日ばかりは、一応普段より多めにPOTを持ってきた。
そもそもシキはβテスト時にフロアボスと戦った経験がある。その時に既にボスの攻撃は見切っているので、楽観視している節がある。そういう面はあるが、デス・ゲームという環境状、他のプレイヤーよりは楽観視しているといった程度であるが。勿論β時とは違った装備や挙動になっていると言う可能性も大いにある。
そう思い直し、シキは自身の緩んだ心の中を叱咤した。
「キリト、アスナにはパーティプレイの仕方をしっかり教えたか?」
シキは同じ班であるアスナのソロプレイを知っており、昨日の帰り際の一幕を見た故の質問だ。
「あ、ああ。基本的なことは教えておいたよ」
キリトは若干どもりながらもしっかりと教えた旨を返答した。
「そいつは僥倖」
そう答えたのはシキではなく、リュウの代わりに入った軽装のソードマンであるゼラードだ。見た目は高校生くらいだろうか。目に掛かるくらいの黒髪と背には片手直剣を持っている。片手直剣なので、普通は盾を装備などするのだが、彼の場合見栄えで盾を装備していないとのことだ。しかし、どうやらキリトはそこまで人付き合いが得意ではないようで、会話はそこで途切れた。
シキがリーダーを務めるH班には片手剣使いが三人。細剣使いが一人。長柄使いが一人といった具合で、完全にアタッカーよりの構成となっている。このこともあり、素早さ重視の遊撃隊となっている。
各々が再度武器の点検をする。シキも自身の武器である《ナギナタ+8》の点検をする。+8はかなりの強化具合なのだが、実のところそこまですごくはない。なぜなら、はじまりの街で買える武器をそのまま8まで強化したに過ぎないからだ。さらに、初期武器の強化はかなり簡単な素材で行うことができる。そして成功率も高い。このことによって、出費も苦労もほぼ皆無といっていい。なぜこうしたかというと、シキは新しい街に着いたとしても武器を買わないのだ。
それが彼のRPGのやり方ということもある。街で買った武具がその次のダンジョンでドロップする、なんてことはRPGではザラにあることであり、それを嫌ってのことだ。よってモンスタードロップのみに頼った武器選びになる。
薙刀はそもそも絶対数が少なくモンスターからのドロップも希である。故にはじまりの街で買えた《ナギナタ》よりも一ランク上の薙刀がドロップすることには既に《ナギナタ+5》になっており、変えても逆に能力値が下がると言う残念な状態となっていたのだ。βテスト時のシキは、そもそも武器を強化すらしていなかった。
因みに強化配分は丈夫さ4、鋭さ4である。次強化するのならば丈夫さを優先して上げることになる。薙刀のような長柄武器の真骨頂である叩き下ろしや、振り回しに重要なのが丈夫さであるからだ。結局のところ初期装備ではあるのだが、瞬間的な火力は丈夫さなども相まって、このトッププレイヤー内で一二を争う程に高いことになる。これが通常のRPGならば、初期武器で叶うはずないのだが、SAOはリアル志向であるからの結果だ。
各々が武器の点検を終了すると、扉の前でディアベルが声を上げた。
「みんな、ありがとう。今日この場に全員四十七人が集まった」
彼の声はその場にいた全員にはっきりと聞こえた。そして全員が手を鳴らし、歓声を上げる。
「オレから言うことはひとつ……勝とうぜ!!」
腰の剣を抜き放ち、天高く突き上げてそう叫んだ。それにつられるようにして、その場に集った者共が声と武器を高らかに上げた。
集まったプレイヤーが固唾を呑んで見守る中、重い鉄門扉をディアベルが開く。中は仄暗い巨大な部屋となっている。ディアベルを先頭として、プレイヤーが部屋に入り終わったとほぼ同時に、壁面に掲げられた松明に、順番に明かりが灯っていく。最奥の明かりが灯るとき、そこには三メートルは超える影が浮かび上がった。その影は重鈍そうな巨体に似合わず、軽々と十数メートル跳躍してプレイヤーの眼前へと現れ、咆哮をした。名は《イルファング・ザ・コボルドロード》HPバーが四本展開され、その巨体が映し出され、さらに取り巻きが出現する。
「突撃いいいぃ!!」
取り巻きが出終わる瞬間、ディアベルがそう声を張り上げた。その声に呼応するようにタンク隊とアターカー隊が大ボスへと駆ける。それと同時に取り巻きを倒す役目の遊撃隊も突撃を開始する。最初の剣戟は、キバオウとシキがほぼ同時に取り巻きの《ルインコボルド・センチネル》へと斬りかかったものだった。シキのステータス配分は若干AGIよりである。キバオウもAGIよりのステータス振りなのだろう。
「いいか、三人一組で防御と攻めを同時にやれ!!」
シキはそう言ってH隊に指示を飛ばす。H隊は五人よって三人組はシキとサイカ以外と言う具合だ。これは普段から息をあわせている二人という理由だ。小さな頃から同じ時を過ごしてきたということもあり、まさに以心伝心といった調子で、取り巻きの殲滅を行う。二人は初めの取り巻きを、数度の攻防でHPを削り切る。シキはキリトたちもあと少しで終わる見て、ロードへダメージを与えに駆ける。その横にはサイカもついてきている。能力値的にはシキよりサイカのAGIが高い。その代わりSTRは低い。
「サイカ、ダメージを回避することが第一だからな」
「はいはい。何度も言われなくたって分かってるから」
走りながらも二人は軽口を言い合う。タンク隊が攻撃を持ちこたえ、その攻撃の隙に乗じてダメージを蓄積させていく。シキたちが合流したときHPバーは残り半分といったところだった。各隊に指示を出しているディアベルの下へ行き、シキは加勢を知らせた。
「ディアベル、取り巻きの処理は終わったから一本減るまで参加する」
「わかった。アタッカーをやってくれ」
「了解」
素早く会話をして、戦線に加わった。
「俺がデカイの入れるから、もしもの時その隙をカバーしてくれ」
長柄武器の今使える最大火力の重単発技を、シキは使うと言っているのだ。その技後硬直は通常の直剣などの《ソードスキル》よりも長めだ。しかしそれを差し引いても、なお余りある破壊力も併せ持っている。サイカはそれを聞いて、無言で頷いた。
「離れろ!!」
シキはコボルドロードが《ソードスキル》の技後硬直した瞬間にそう叫んだ。攻撃をしようとしていたプレイヤーたちは、その声に不思議なほど素直に従った。そうさせるだけの声だった。
シキのエモノである薙刀が光を帯びる。ソードスキル特有の光。腰だめに構えた薙刀を右から左に閃光を伴って刹那に切り裂く。狙いは短い足であり、その狙い違わず大刀系重単発技である《レイヴブレイク》が《イルファング・ザ・コボルドロード》の足を刈り取るようにすくいあげた。地を揺るがさんばかりの斬撃音と共に、コボルドロードは強力な足への攻撃で、なすすべもなく転倒した。人型モンスター特有の状態異常《転倒》である。
「今だ! 畳み掛けろ!! 攻撃してこない!!」
シキの真意を読み取ったのか、ディアベルが皆にそう指示を出して、自身もソードスキルを発動させた。シキ以外がほぼ同時に倒れたコボルドロードにソードスキルを打ち込んで袋叩きにしていく。その結果、一瞬で一本目のHPバーは蒸発した。そのことを見とめたシキは、再度本来の仕事である取り巻き潰しへ戻る。取り巻きはバーが一本減るごとに三体追加されていき、計十二体が湧出するとうことだ。しかしこれはβテスト時のことであり、製品版ではどうなっているかもわからない。
その後これらの行動を三本目が減り切るまで続けた。
HPバーが最終段になるとコボルドロードは自らの盾と剣を放り投げた。そして後ろん腰にマウントしてあった湾刀を引き抜いた。シキはそれを見てβ時と違う武器であると即座に看破した。曲刀カテゴリーのタルワールではなく巨大な刀、すなわち野太刀となっていたのだ。見た目はそこそこ似ているが、全然違うといっていい。
「キリト、お前あれが野太刀ってわかるか?」
シキはキリトに対してそう言った。
「な、野太刀!?」
キリトはハッとなったようにコボルドロードを見た。そしてこの焦った反応からキリトがベータテスターであるということを、シキは把握した。勿論これまでの対応を見て総合的に判断した結果だ。そしてキリトという名前には覚えがあった。βテスト時にラストアタック狙いをしまくっていたプレイヤーだ。シキは別にそのことに関してはどうとも思っていない。シキ自身LAへのこだわりもないといっていい。
「そうだ。ベータテストと違う」
シキがそう言うとキリトはますます驚きの表情をする。シキはなぜここで驚くのか理解できなかったが、再度始まった戦闘に目を向けた。
「どうして俺に?」
キリトはそう疑問を口にした。
「お前がβテスターだからだ」
これには先ほどの驚愕よりも、さらに大きな驚愕の表情をキリトは見せた。シキは質問に答えはしたが、取り巻きのポップにより話を一時的に中断した。
またもシキとサイカがキリトたちよりも早く倒すと、今までとは違いキリトたちの戦っているセンチネルの残りHPを重単発技で一気に沈める。
もう一度ディアベルたち本隊を見る。あと一本分削るだけで相手は霧散する。そう皆が思ったのか、全員でコボルドロードを囲むように展開した。今まで彼らがとってこなかった戦法だ。指揮官の焦りが垣間見えるほどに、攻撃が拙速になっている。
「マズい!! おい!! そいつを囲むな!!」
シキとキリトは同時に声を張り上げた。しかし時すでに遅く、カタナ系重範囲技《旋車》の赤く迸った閃光が、取り囲んだプレイヤーを四方に吹き飛ばす。これにより今まで維持してきた戦線が完全に崩れ去る。範囲攻撃であるにもかかわらず、ダメージを受けたプレイヤーは、みな一様にHPゲージを黄色に染めている。さらにスタン効果も付属されている。つまり、この攻撃を受けたならば技後硬直時に攻撃できないということだ。
「来いキリト!!」
シキは叫びながら薙刀を背負い、一直線にボスの元へと駆けた。キリトもシキの叫びの意図がわかり、一瞬遅れながらも駆け出す。
「離れろ!!」
シキの叫びが全てのプレイヤーを衝撃とスタンから同時に覚醒させた。それと同時にコボルドロードはソードスキルの技後硬直から回復する。再び動き始めた獣人の王は低い唸り声を上げる。
その直前、シキはコボルドロードとの距離が十メートルを切った地点で、さらに加速した。システム的に速度が上げられたのだ。シキの背負う薙刀の刃は上方を向いており、淡い光を放っている。大刀系突進技《スティールライナー》の補助を受け、シキは吠える獣人の王との距離を一瞬で詰める。最後の一歩は少しだけ斜め上へ跳躍するように踏み出す。シキはソードスキル本来の行動と、システム外のブーストを合わせた大上段からの唐竹割りを放った。その破壊力は折り紙付きだ。
コボルドロードもそれを受けようと野太刀を構えるが、間に合わない。シキが着地した瞬間その背にはすでに薙刀の姿は消えていた。そこにはシキがコボルドロードに、薙刀を振り下ろしたであろう体勢になっていたのだ。それほどに斬撃は速かった。キリトがそれを見てとった刹那のあと、凄まじい破砕音がボス部屋を蹂躙した。
コボルドロードは人中を正確になぞられ切られている。そのHPバーを見ると大きく削れている。
コボルドロードが大きくノックバックする。しかしシキよりも硬直からの回復は早かった。ヘイト値の上がったシキ目掛け、コボルドロードは命を刈り取る斬撃を放つ。
「ナイス!!」
しかし、シキの命を刈り取ることはできず、キリトのソードスキルによってパリィされる。シキは硬直が溶けると一旦距離を取る。キリトも同様に硬直のあとに距離を取る。そして遅ればせながらもサイカとアスナがシキとキリトの横に並び、ソードマンもその後方についた。コボルドロードのHPは四段目のあと三分の二ほどだ。
「タンク隊!!」
シキは声を張り上げた。その意図にいち早く気づいたのはタンク隊となっていたリュウだった。すぐさま周りのプレイヤーに声をかけて、タンカーとしての役割をこなすために動く。ほぼ同時にリュウとは別のタンク隊のリーダーである、黒人の巨漢が自身の隊を鼓舞する。
「そいつを囲うな! またさっきのソードスキルが来る!!」
なんとか総崩れした戦線を立て直したシキは、ディアベルに声をかけた。
「ディアベル。焦るなよ」
それだけ言うと自身もダメージディーラーとして戦線に加わった。
「……!?」
この一言でディアベルはシキがβテスターだったと確信した。勿論アバターの顔も、確信をさせる大きな要因となっている。それと同時に自身に焦りが出ていることを自覚した。
戦線を立て直したプレイヤーたちはシキの指揮のもと、総力を挙げてコボルドロードとの攻防を繰り広げた。
あとニ三発のソードスキルでこの獣人の王をポリゴンにできるところまで、地道ながらシキとキリトを主軸として削ったとき、ディアベルが声を上
げた。
「みんな離れろ。あとはオレが決める」
リーダーであるディアベルに何か策があるのか、と思ったプレイヤーたちは、一斉にコボルドロードから離れる。
「待てディアベル!! クソッ! 焦るなといっただろうが」
シキはディアベルを呼び止めるが、彼は止まらない。すでにソードスキルを発動させている。シキもディアベルの後に続くように駆け出す。
それを見てとったコボルドロードもその刀身に光を這わせた。ディアベルがそれを弾こうと剣を振るう。しかしディアベルの剣戟が軌跡を残す前に、コボルドロードの《浮舟》が彼を切り上げた。ソードスキルを使ったにもかかわらず、コボルドロードの動きは停滞しない。《浮舟》はコンボ始動スキルなのだ。打ち上げられたディアベルに、コボルドロードの獰猛な笑とともに追撃が迫る。
これまでの攻撃力から見れば、コンボをまともに喰らえば確実に、HPが全損ないし危険域にまで達する。そう考えたディアベルはソードスキルで迎撃しようと試みた。しかし体勢が悪い状態でソードスキルは発動せず、虚しくも剣を構えた状態で浮遊する。
絶体絶命の死地に救いの手が差し伸べられる。ディアベルに向かって放たれようとした追撃の三連擊ソードスキル《緋扇》は、その後ろを追ってきたシキがソードスキルにより、コボルド王の足元をすくうようにして放たれた、真一文字の斬撃によって阻止された。
体勢が崩れたコボルド王の持った野太刀の刀身からエフェクトが消え去る。しかしその崩れた状態ながらも、通常攻撃をディアベルに与えた。ディアベルが十メートルほど吹き飛ぶ。しかしそのHPは黄色であり、危険域にも達していない。そしてコボルド王のHPはあとほんの少しとなっていた。
シキのソードスキルは重単発技ではなく、先とは違った突進技だったため、完全に転倒はしなかったようで、コボルド王はノックバックのみから回復し、これまで以上の咆哮を上げた。大気が震える錯覚を皆が覚えるほどの咆哮。
ヘイト値が凄まじく上がったシキに向けて、コボルド王はその刀身を発光させて、斬りかかった。コボルド王が放ったスキルは《幻月》、上下ランダムに出される非常に厄介なソードスキルだ。しかしシキはソードスキルで迎撃はしなかった。上下どちらから来るか見た瞬間、それに合わせ薙刀を防御体制で構え、体を中空に浮かす。薙刀と野太刀が激突し、激しい燐光を放ち、シキが後方へ大きく弾き飛ばされる。
同時に入れ替わるようにして、ひとつの影が前へと踏み込んだ。踏み込んだ影――キリトは今の自身最高攻撃力である片手剣二連擊の《バーチカル・アーク》を発動させ、技後硬直を起こしているコボルドロードの右肩から袈裟斬りにし、続けて左肩に抜けるように急激な方向転換の逆袈裟斬りを咆哮ともに放った。
《イルファング・ザ・コボルドロード》はHP全損の後に激しい光に包まれ、一瞬あとに爆散した。
感想待ってます。