Muv-Luv GROUND High speed 作:健全太郎
間違いなどありましたら温かい目で見守ってください、最近寒いですし。
2話です、バトルします。
書きながら考えてましたがファントムが一型とはいえ不知火に勝つってありえないですよね、どれくらいありえなかってAE86がランエボに勝つぐらいありえないことなんでしょうね()
隼介はコネクトシートに座り、ヘッドギアを付けた。網膜に投影される機体のデータには不調のところは見当たらない、いつものファントムそのものであった。
(俺は何をしているのだろう...)
なし崩し的に受けてしまった戦術機でのレースバトル、霧島の言われるとおりに機体をスタート位置まで運ぶ。霧島からコースの説明を受ける。
「おい坊主、ルートはこうだ。あのこの岩倉山と雌岳の間にある盛り上がったところを左に回ったら加速する、それまでは互いの距離を調整する」
いまいる山は岩倉山、岩手県釜石市にある標高1000mほどの山だ。
「加速してから桜山の左をパスし甲子川に入れ、川を下り釜石湾にでたらゴールだ」
いつも隼介が使っているルートだ。隼介が山頂に運ぶものは船によって運ばれてくる。山頂と港を数え切れないほど往復しているのだ。
東日本大震災から川の使い方は大きく変わった。東京湾のような津波の入りにくい地形、津波対策の取られたところとは違い津波の影響を受けやすい平野や川、そしてここリアス式海岸では人口を密集させないようになった。新しい町は山につくられそれに伴い人の足となる交通手段は空を介するものに変わった。戦術機が利用されているのも飛行できる、不足に事態にも対処ができるという点からである。もちろん航空機には空路という道があるように低空を飛ぶ戦術機にも道がある。そのうちのひとつが川だ。
両者のジェットエンジンが温まってきた。車のエンジンとは違いジェットエンジンは必要な出力を出すのに時間がかかる。勝負の勝敗にエンジンの性能は大きく関わってくる。出力が大きいエンジンはもちろん速い。しかしただ速いだけでは勝てないのが戦術機同士でのレースである。機体の重量、空気抵抗、高速巡行時に曲がる回転半径、風、視界不良では各種センサーの性能、そしてパイロット自身の腕だ。
霧島はファントムがどんな戦術機か知っていた。第一世代の傑作機体、アフターバーナーを使用してようやく追い抜かせる程度のエンジン、負ける気がしなかった。だがこのファントムが過去に第二世代機を負かしているのも知っている。武雄の息子がどれくらいやれるか、若干の期待を胸に留めた。
対し霧島のイーグルは隼介にとって未知数そのもの。わかるのは自分が動かすファントムよりわずかに大きい、それだけである。隼介は不安だった、父が操り輝かしい功績を残してきたこのファントムに泥を塗るんじゃないか。隼介はすでに重圧に負けていた。
2機の戦術機がゆっくり地から離れる。霧島がルールを説明した。
「先行が後追いをぶっちぎれば勝ち、後追いは先行を抜かせば勝ちだ。結果がどちらでもなかったらもう一度上からやり直す、勝敗が付くまで終わらない」
サドンデスデスマッチと言われる試合方法だ。勝負がもつれれば体力勝負にもなる過酷な方法。しかしひいき目に見ても持久戦にはならないだろう、ファントムとイーグルでは性能の差は歴然であるからだ。
岩倉山の山頂を離れ、雌岳に向かう。間にある盛り上がった場所に到達した途端、霧島のイーグルが加速を始めた。隼介のファントムもタイミングは遅れることなく加速した。だがすでにエンジンの差が出た。巡行速度までに到達する加速力の差が機体同士の距離を開ける。巡行速度は対して変わらない。山の斜面の角度を感覚的につかんでいる分隼介には追い付くだけの余裕があった。ただすぐに桜山の左を通過し川に入る。甲子川の上流は小刻みに左右に振られている、そのため亜高速巡行を余儀なくされる。ファントムのターボジェットエンジンは亜高速状態では非常に効率の悪い、さらに前を行くイーグルが視界を邪魔し集中力を削ぐ。この時間が隼介にはじれったかった。
(けつを振りやがって...邪魔だっつーの)
ただそのせいかいつもの弱気な態度を裏に隠し、本来持ち合わせている闘争心をあらわにした。
霧島はしっかりファントムがついてきていることをレーダーで確認した。レーダー中心にあるイーグルを示す光点のすぐ後ろにファントムを示す光点が光っていた。機体の過度な接近を警告するアラートもなっている。
(勝負を決めるのは中盤にある直線、アフターバーナーを使って一気に引き離す。この一戦で決めるぜっ)
上流と中流の間に大きな逆S字カーブがある。そのあとすぐに上流よりも大きく左右に振られるコースが続き、その後直線が来る。霧島はそこで勝負を決めるというのだ。
上流と中流の間、逆S字カーブに差し掛かった。霧島は後部カメラを使い、ファントムの動きを見る。オペレーション・バイ・ライトシステムによって制御されるイーグルはファントムのオペレーション・バイ・ワイヤより反応速度がいい。その差は微々たるものだがが今回のようなカーブが連続する場合はその操作によって招じるタイムラグは大きいものになる。
「さぁ坊主!見してもらうぜ!そのファントムに恥じない動きを見してくれ!」
最初に左に90°の直角に近いカーブ、そして右に90°振られる。
イーグルはOUT・IN・OUTの原則を守り速度をなるべく落とさないように抜ける。しかしファントムは違った。
「っ...!!」
霧島は驚く。ファントムが抜けた軌道はOUT・IN・INだった。左カーブをINで抜けること右カーブではOUTのコースをとれる。左カーブをOUTで抜けたイーグルは空いていたINからファントムが出てくることで右カーブでOUT側を取れなくなった。
(抜かれたっ...)
右カーブを抜けた時にはファントムが前を飛んでいた。前を飛ばれてはファントムより優れる加速力が生かせない。
(なんて鮮やかな曲がり方だ、腰の稼働域ぎりぎりまで上半身をカーブを抜けた進行方向に向け復元力を利用したのか)
霧島はファントムの動きに心を奪われた。これが直井武雄の息子かと、心が踊る、期待道理だった。
中流序盤の左右に振られるコースはファントムの鮮やかな機体裁きに目を奪われていた。
「っしゃあ!抜いてやったぜ!」
隼介は喜んだ、そして安心した。このままいけば一本で勝負がつく。父の名前も汚さずに済む。しかしそんな時間もあっという間だった。
勝負は後半へ、直線区間に入る。下流に向かうにつれ川幅は広がる、機体が横に余裕で並ぶことができる幅だ。
霧島はアフターバーナーを点火させた、一気に加速する。水しぶきも大きく上がった。
(なっ...!速い!)
すかさず隼介もアフターバーナーを点火させる、だが横に並ばれ、難なく抜かされていった。
今回作中に出てくる地名は実在します。舞台岩手県釜石市、下調べが大変でした。
バトルの相手はどうしようか悩んでます、妄想がはかどりますね
ちなみに好きな戦術機は不知火タリサカラーとSuシリーズです、Suシリーズの頭部はいくらでもおかずにできますね