『あ、おいあれ見ろよ』
『生徒会長に副会長か…なんかあの2人が一緒にいると雰囲気があるよなぁ』
『そりゃあ去年七星剣舞祭ベスト4の〈雷切〉と今回の予選最恐のダークホース〈流星の剣帝〉だし…』
『とりあえず今年の代表はあの2人と誰かだな。他には
『いやいや、お前
翔人は刀華と昼食を食べていると、周りから視線を感じていた。
代表選抜もすでに10試合近くを終え、有力選手はだいぶ絞られてくる。
その中でも無敗を続ける選手が注目されるのは当然の成り行きだった。
そして、中でも多くの注目を集めているのは一輝と翔人だった。
どう評価してもFランクにしかなれない劣等生を前に、快進撃を続ける一輝。
10試合以上行われている試合の中で一度以外全て不戦勝の翔人。
そんな彼らの行く末を見たいと思うのは当然と言える。
しかし、多くの学生から注目される方としては迷惑な話であり、
「はぁ~またこの話かよ…他に話す話題がないのか?もっとあるだろ話すことなんて。昨日のテレビの話とか面白いゲームの話とか」
本日何度目か分からない溜息をつきながらも、翔人は昼食の箸を動かす。
「しょうがないよ。毎年のことだし。去年もそうだったでしょ?」
「去年までは聴覚をきってたんだよ。うるさいのは嫌いだし、面倒臭いしな。それに去年までは、俺に直接関係なかったから良かったんだよ」
「へぇ~。だから去年私が話しかけても無視してたんだ…」
翔人の言葉を受け、動かしていた手を止め翔人をジト目でにらむ刀華。
そんな彼女を翔人は一瞥し、
「しょうがないだろ…そうでもしなきゃ学校に来なかったかもしれないんだから。俺がそういう人間ってこと刀華なら知ってるだろ?」
と告げる。
そんな翔人に睨むのをやめ、呆れたように溜息をつく刀華。
そんな時、2人に話しかける者が現れる。
「あれ?翔人くんに東堂さん…?」
「おぉ、絢瀬じゃん。久しぶりだな」
綾辻絢瀬。
翔人たちと同じ三年生で翔人とは中学からの付き合いだ。
「うん、翔人くんも元気にしてるみたいだね。…でも驚いたよ。まさか翔人くんが予選に出てるなんて。去年までまったく興味なかったのに」
「それを言うなら絢瀬だって同じだろ?今年は出てるんだから」
七星剣舞祭に興味のなかった翔人は一昨年、去年と同じく七星剣舞祭に興味がなかったらしい絢瀬と共にこの時期を過ごしていたのだ。
翔人としてはカナタや刀華など仲の良い友人たちはそろって七星剣舞祭の話で持ちきりだったため、この時期に最も話していた友人の1人である。
「まぁね。…今年が最後のチャンスだから」
ボソッとつぶやいたことを翔人は聞き逃さなかった。
何のことだ?と翔人は思うも、表情を見るにあまり聞いていいことだとは思わなかったため話題を変えることにする。
「それより最近黒鉄のところで指導を受けているらしいじゃないか」
翔人がそう告げると顔が真っ赤になる絢瀬。
そして動揺したまま翔人へ告げる。
「ち、違うよ!?い、いやそうなんだけど!?え、えっと…」
「…まぁ落ち着けよ。別にそういう意味で言ったわけじゃないんだ。ただ以前のお前みたいに悩んでる雰囲気が軽くなった感じがしてな。いい師に会えたんじゃないかと思って」
「な、なんだそう言うことか…確かに僕は黒鉄君のところで修業を受けてるよ。彼はすごいんだよ!僕が二年間悩み続けたことをすぐに解決してくれたんだ!」
おもちゃをもらった子供のようにはしゃぎながら告げる絢瀬に翔人は微笑む。
「へぇ~それはすごいな。まるで剣術博士じゃないか?」
「僕もそう思ったんだ!やっぱり黒鉄君にはこの称号が似合うよね…って、あ!そろそろ指導してもらう時間だから僕は行くね」
そう言い、手を振りながら絢瀬は翔人の元を去っていった。
そんな絢瀬に手を振り返していると、隣から声がかかる。
「…ずいぶんと綾辻さんと仲がいいみたいだね」
「まぁ中学のころからの付き合いだしな」
「(…私の方が付き合い長いのに!)」
「なんか言ったか?」
「な、何でもないよ!もうっ!ひろくんのバカッ!!」
刀華はそう告げると、一人先に食堂を出て行ってしまった。
「な、なんだよ刀華のやつ…って、あっ!あいつ伝票残してきやがった!しかも今日に限って無駄に高いもん頼んでるし……」
伝票を見ながらそう嘆く翔人。
…鈍感も行き過ぎると救いようがないのである。。
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「ってことがあったんだよ。酷いと思わないか?」
放課後ファミレスで翔人は昼間の刀華との出来事をカナタと泡沫に告げていた。
「それは翔人が悪い」
「私もそう思いますわ」
翔人は同意を求めたのだが、帰ってきたのは反対のものだった。
「何でだよ~。俺なんかあいつを不機嫌にさせるようなこと言ったか?」
翔人がそう告げるも2人は苦笑いだ。
そんな二人の反応に翔人は顔をしかめる。
とその時、ガシャーンと何かが割れる音がした。
急なことに驚いた3人が音のした方を向くと、そこには、
「イッキッッッ!!!」
「黒鉄君ッ!!」
後頭部を殴られて血を流す一輝と、それを心配しているステラと絢瀬がいた。
「アハハ、やるぅ」
「さすがクラウド。相変わらずブチギレた野郎だぜ」
「そこにしびれるあこがれるぅ!」
髑髏の男を中心とした取り巻きが歓声を上げ、周囲の客が悲鳴を上げ店を去っていく。
その光景を見た翔人は無言で立ち上がり、彼らの元へと行こうとするが、
「どこに行くつもり?」
泡沫に腕を掴まれ止められる。
「どこって決まってるだろ。あいつを殺りに行くんだよ」
「せっかく後輩くんたちが我慢してるのに、先輩である君が暴れるっていうの?」
「ッ!!」
「とりあえずは見守ろうよ。彼らが帰ってくれれば後輩君のけがは僕が直せるんだし」
「………」
「それに、翔人君を止めるのは私たちじゃ無理なんですから暴れられては困ります」
翔人が黙っているとカナタが申し訳なさそうに話しかけた。
「……分かったよ」
そんな泡沫とカナタの説得に渋々翔人は頷いた。
しかし翔人にとってやはりと言うべきか、今回の件は看過することはできなかった。
一輝たちに絡んでいたグループが店を出ると同時に翔人も店の外へと向かった。
そんな翔人に泡沫とカナタは溜息をつく。
「あーあー。やっぱりこうなっちゃったか」
「ええ。でも店の中で暴れなかったことだけは喜ぶべきですね」
「確かにね…それじゃあ僕たちは後輩君たちのところへ行こうか」
「そうですね」
そう告げると2人は一輝の元へと向かった。
「アハハ☆いやぁ災難だったね厄難だったね。目に付いた人間、誰彼構わず噛みつくあの狂犬で有名な貪狼学園のエース、
「クスクス……まったくその通りです。もしあなたたちまで暴れ始めたら、この場でわたくしが全員取り押さえなくてはならなくなっていたところです」
「カナタ、出来もしないこと言うなよ。翔人がいる時点でそんなのは夢物語だろ?」
「あらあら、泡沫君は嫌なところをついてきますね」
「だってその通りだろ?」
そう告げケラケラと笑い始めた泡沫と、クスクス笑っているカナタを見ながらステラは低い声で一輝に尋ねる。
「イッキ、こいつら誰?…何者なの?」
「翔人さんと同じ破軍学園生徒会の人たちだよ。書記長の御禊泡沫さんと、会計の貴徳原カナタさんだ」
「ッ!!」
一輝がそう告げるとステラの方はビクッと震えた。
貴徳原カナタと言えば、
「どうやら名乗る必要はないみたいだね。…それより傷を見せてくれるかい?手当てしてあげるよ」
「いや、これくらい自分で」
「いいから、いいから♪」
言うと、泡沫は優しく一輝の傷に触れすべての傷を一瞬で直した。
「なっ…」
「よし、後輩君の怪我も治したことだし、翔人を迎えに行こうか、カナタ。あんまり暴れられても面倒だし」
「そうですね泡沫君」
一輝が治癒に驚くが、そんなことを気にせず泡沫とカナタはその場を後にしようとする。
しかし、その瞬間一輝はあることに気が付いた。
そこで治癒のことは一旦頭の外に追いやり泡沫へと質問する。
「す、すみません。先ほど翔人さんがどうこうと言ってましたけど、翔人さんもこの場にいたんですか?」
そんな一輝のセリフに苦笑いしながらも泡沫は答えた。
「うん、そうだよ。君が殴られた瞬間すぐに
「話はそれくらいにしてそろそろ行きませんか?死体が出る前に行かないと後々問題になりますよ?」
「そうだね。じゃあ君たちも夜遊びは程々にね」
そう告げると、今度こそ泡沫とカナタはその場を後にした。
2人が去ったあと、窓から差し込む黄昏を見て、一輝は疲れを吐き出すような溜息をついた。
(なんか今の一瞬で大物ばかりに出会った気がするよ………でも翔人さんが戦うところは見に行きたかったな)
と、さらに一輝はこの場で顔を合わせることのなかった翔人のことを思いながらもう一度溜息をついた。
ちょっと時系列いじってます