エーデルワイスとの出会いから十年が過ぎ、翔人は十七歳になっていた。
そんな四月の諸侯、翔人はルームメイトに起こされているところだった。
「ひろくん、朝だよ。起きて!」
ルームメイトは何回もさすったり、叩いたりするが、翔人は起きない。
そんな翔人にしびれを切らしたのか、ルームメイトの少女は翔人に告げる。
「起きないなら、朝ごはんなしだからね」
少女がそう告げると、翔人はガバッと起き上がる。
「お、おはよう、刀華」
翔人は笑顔であいさつをする。
そんな翔人にため息をつき、刀華と呼ばれた少女は告げる。
「はぁ〜、毎日毎日…一回で起きてよね。もう三年生だよ?」
「朝はダメなんだよ…どうしても布団の気持ち良さには勝てなくて」
翔人がそう告げるも、刀華は耳を貸さない。
「もう聞き飽きたよ。それより今日は入学式なんだから早く準備してよ?ひろくん副会長なんだから」
「そういや、そうだったな。ったくなんで俺が副会長なんか…」
「文句言わないの。新しい理事長の神宮寺黒乃先生、直々のお願いなんだから。」
翔人は文句を言うが、刀華に諭される。
しかし、それでも納得のいかない翔人は刀華に告げる。
「まったく…あの
「またそういうこと言う。新理事長はひろくんの実力を知ってるからこそ、ひろくんに頼んだんだよ?」
「それはわかってるんだけど…俺って生徒会ってがらじゃないだろ?それに副会長なんて…」
「私は似合ってると思うけどなぁ。私は、私よりひろくんの方が生徒会長に向いてるって思ってるくらいだし。…あっ、そうだ!生徒会長変わる?」
翔人の文句に刀華は人の悪い笑顔を浮かべ、翔人に尋ねる。
「勘弁してくれ…」
そんな会話をしながら朝食を食べていると、インターホンが鳴った。
「うたくんかな?」
「まぁそろそろ時間だし、迎えに来たんだろ」
「そうだね〜って何をそんなにゆっくりしてるの!?早く行くよ!」
「へいへい」
そう言いながら、翔人たちは学園へと向かった。
入学式も終わり、翔人は生徒会室で休憩、もといサボっていた。
「翔人〜ゲームしようよ」
ソファーで横になっていると泡沫が話しかけてくる。
「お前あんまりゲームばっかりしてると、刀華にまた怒られるぞ〜」
「そんなことないよ。刀華なら大丈夫」
何が大丈夫なんだか…なんて考えていると、にやにやしながら泡沫が再び話しかけてくる。
「翔人は僕に勝つ自信がないの?まぁそれなら仕方ないよね。誰だって負けるのは嫌だし」
そんな泡沫の言葉にイラっとする翔人。
「あぁ?負けねーし。勝つ自信ならあるし」
「じゃあやろうよ。僕が翔人の力を確かめてあげるよ」
「おう、やってやるよ!」
そう威勢良くテレビ画面の前に座る翔人だったが、端末に連絡が入り、中断されることになる。
誰だよ、こんなときに!なんて思う翔人だったが、仕方がないので相手も見ずに電話に出ることにする。
「…もしもし」
「あぁ、斉藤か?ちょっとお前にお願いしたいことがあってな」
相手はなんと理事長だった。
理事長が出たことで、あからさまに嫌そうな顔をする翔人。
そして泡沫はそんな翔人を見て笑っていた…
「一体なんです?俺今忙しいんですけど」
「まぁ、そういうな。ちょっとした頼みごとだ。新入生のステラ・ヴァーミリオンと黒鉄珠雫がケンカを始めたらしくてな。その仲裁に行ってもらいたんだよ」
なんで、たかがケンカなんかに俺が?と思う翔人だったが、続けて告げる黒乃の言葉でわかることになる。
「それがお互い一触即発ですぐにでもデバイスを使いそうなんだと。もし使われたら新入生総代と次席のあいつらを止められるやつは中々いないだろうからな」
その言葉にため息が出そうになるが、なんとか留める翔人。
初日から面倒ごとを起こしやがって…、と。
「そういうことでしたら、仕方ないですね。行きますよ」
「そうか行ってくれるか!いやぁ私もちょうど今手が離せなくてな」
どうせたばこ吸ってるだけだろ、と思う翔人だがもちろん口には出さない。
「…で場所はどこです?」
「あぁ、場所は−−−−−−−−−−−」
場所を告げられた翔人は、泡沫に事情を説明し、言われた教室へと急いだ。
翔人が到着すると、教室では二人の生徒が言い争っていた。
そこで翔人は近くにいた生徒に話を聞いた。
・
・
・
どうやらまだデバイスを使った戦闘までは至っていないようだ。
しかし、今の状態を見るにいつ戦闘が始まってもおかしくはない。
そこで翔人は改めて教室内を見渡してみる。
教室内にいる生徒は三人。
一人はステラ・ヴァーミリオン。
ヴァーミリオン皇国の第二皇女で今年の総代だ。
十年に一人の逸材と言われるAランク騎士であり、新入生平均の三十倍の魔力量を有する規格外の天才。
つまりは化け物。
次は黒鉄珠雫。
Bランク騎士で新入生次席だが、魔法制御に関してはステラをもしのぐらしい。
ステラがいなければ間違いなく総代で入っただろう。
最後は黒鉄一輝。
このケンカの原因を作った男だ。
こっちはステラとは逆で十年に一人の劣等生らしい。
まぁ翔人はそんなこと微塵も思っていないらしいが…。
とまぁ、翔人がそんなことを考えている間にどうやら状況が変わったようだ。
「宵時雨」
珠雫が自身のデバイスを展開する。
「傅きなさい!
相手がデバイスを展開してのを見て、ステラもデバイスを展開する。
そして相手に向かって、お互い一直線に走り出す。
そんな状況をみた翔人は仕方なく自身のデバイスを展開させ、動き始める。
”加速がない加速”を使って…
そうして翔人は二人の間に割って入り、二人のデバイスを止める。
「「!?」」
急に間に割り込まれ驚いた二人は、声を出すことができない。
そんな二人に翔人は自分のデバイスをしまい、声をかける。
「お前ら、やりすぎだ…」
そんな言葉に、声を出すことができなかった二人が揃って声を出す。
「ちょ、ちょっとアンタだれよ?これはわたしたちの戦いなのよ、邪魔しないで」
「そうです。そこの雌豚と同じ意見なのは不快ですが、私も同じ意見です」
雌豚と言われ怒るステラと、さらに煽る珠雫。
そんな二人に、そろそろキレそうな翔人だったが、一輝が話に入ることで話は終わりを迎えることになる。
「二人とも今すぐ翔人さんに謝るんだ。この人は三年三組の斎藤翔人さん。破軍学園生徒会の副会長だよ」
その言葉にハッとするステラと珠雫。
「お前らなぁ…もう一回言うが、さすがにやりすぎだ。教室を壊すつもりだったのか?」
翔人のその言葉に二人は俯く。
しかし、翔人はそんな二人を見つつも話を続ける。
「校内でデバイスを展開することは禁止事項だ。下手したら退学だぞ、退学。入学初日で退学なんて話、恥ずかしすぎないか?俺なら恥ずかしいね」
なおも続ける翔人。
「でもまぁ、まだ戦いたいなら俺が相手になるぞ?どうせだし、もし俺を倒すことができたら、お咎めなしにしてやる」
翔人は最後まで自分の話をすると、笑みを浮かべる。
そして、翔人がそこまで告げると二人の少女は顔を見合わせ、うなづく。
そして二人が翔人に戦闘を承認しようとしたが、一輝が二人の前に手をかざし静止させる。
「ステラ、珠雫、ここは素直に罰を受けよう。君たちの行いは確かにルールに反している」
一輝がそう告げるが、ステラは納得いかないようで一輝に告げる。
「な、何言ってるのよ一輝!私が勝てばこの人は見逃してくれるのよ!?なんで断る理由があるの!」
「勝てない戦いをする必要があるのかい?」
一輝は特別怒気を込めたり、威嚇したりしたわけではないが、ステラはその言葉に背中が冷たくなるのを感じた。
一輝はさらに続ける。
「ステラ、君の実力がどれだけすごいかは僕もよくわかっているよ。でも翔人さんとは戦ってはダメだ。今のステラでは…いやどれだけ修行しても翔人さんにはかなわないかもしれない」
その言葉にステラだけでなく珠雫も言葉を失う。
「なぁ黒鉄、さすがにそれは言い過ぎじゃないか?確かに今なら俺が勝つと思うが、修行されたら俺だって勝てる保証はどこにもないんだぜ?仮にもそこの皇女様はAランクなんだし」
一輝の告げた言葉に反論する翔人。
それはステラや珠雫も思ったことだ。
今はダメでも将来なら勝てるかも、と。
しかしそんな翔人の言葉に一輝は苦笑いしながら答える。
「ご謙遜はやめてくださいよ。…同じAランク騎士で’流星の剣帝’と呼ばれるあなたが何を言うんです?」
絶句。
今まで何度も驚きを顔に出したステラと珠雫であったが、一輝の放ったこの言葉はさすがに理解できなかった。
「よく知ってるな。そう呼ばれたのは何年振りだったかな」
「まぁあなたは七星剣武祭はおろか、名のある大会には全然出てませんから、知らない人が多いのは無理もありません。リトルが最後でしたよね?兄さんとの試合で」
「あぁ」
翔人がそう告げると教室に静寂が流れる。
ステラ、珠雫は絶句し何も言葉を出せない、一輝は緊張してこれ以上言葉を出そうとは思えなかった。
ゆえに翔人がこの場をどうにかする必要がある。
「はぁ…まぁしょうがない。このことは理事長に話しておく。なるべく罰が軽くなるように口添えしといてやるから、あとは自分たちでなんとかしろよ」
ため息をつきながら、翔人は告げる。
「ありがとうございます」
言葉を発することのできない二人に変わって、一輝が答える。
それを聞いた翔人はまたな、と三人に手を振り、生徒会室へと戻った。
人物紹介
斎藤翔人(さいとうひろと)
伐刀ランク:A
伐刀絶技:???
二つ名:流星の剣帝
人物概要:破軍学園副生徒会長
パラメーター
攻撃力;S
防御力;B
魔法力;A
魔法制御;A
身体能力;S
運;F
本作の主人公
エーデルワイスの弟子として、数年間彼女の教えを受ける。
小さい頃はエーデルワイスに言われ、色々な大会で名を挙げたが、彼女の元を離れてからは、人を守るために力を使いたい、と本人が強く思い、人前で力を見せないようになる。
生徒会長の東堂刀華や御祓泡沫、貴徳原カナタとは小学校からの幼馴染。
面倒臭がり屋でよく刀華に注意される。
感情豊かで優しい人物ではあるが、師匠であるエーデルワイスのことを悪く言われたり、知り合いを傷つけられると周りを気にせずキレる。
夢がなく進路について悩んでいる。