落第騎士の英雄譚 ~守り人のために~   作:ローニエ

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戦闘始まるまではつまらないかもしれません…


試合後

「一輝……あの人って何者なの?」

 

試合が終わり、翔人が退場した後座りながらステラは一輝にたずねる。

 

「ステラと同じAランク騎士……のはずだけど」

 

ステラの言葉にボソボソと告げる一輝。

その言葉には明らかな動揺が見られた。

一輝は彼のことを知っていただけに、予想以上の力を見せられて驚いていた。

そんな言葉を受けたステラは周りを見渡す。

 

「誰も……帰らないのね」

 

「帰らないんじゃなくて、帰れないんだよ。僕もステラも同じだろうけど、腰を抜かしてるんだから」

 

「そうね………」

 

一輝の言うように、会場に試合を見に来ていた観客が誰一人試合が終わったというのに動かなかった。

正確には動けなかった、だが…

 

「あんな人が日本にいるなんてね……こんなすごい人が他の学園にもいるのかしら」

 

「おそらくいない…と思う。翔人さんが全然本気じゃないからはっきりとした強さは分からないけど…」

 

「……なんで今まであれだけの実力を隠していたのかしら?」

 

純粋に疑問に思ったのか、ステラは一輝に尋ねる。

 

「わからない…。…だけど翔人さんは戦うことが嫌い…というか興味がないみたいだね」

 

「あんなに強いのに!?」

 

「強さは関係ないよ、ステラ。でも……」

 

「でも?」

 

「いつか手合わせ願いたいな」

 

一輝はステラに笑顔で告げる。

 

「まったく……一輝はやっぱり一輝ね」

 

「うん、どうやらそうみたいだ」

 

そんな二人を隣で見ていた珠雫とアリスは、二人にため息をついていた。

 

 

 

 

 

 

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「副会長!副会長ってあんなに強かったんですね!」

 

翔人が生徒会室に戻ると、翔人以外の全メンバーがすでに集まっていた。

そして恋々が翔人に飛びつきながらそう話す。

そんな恋々を翔人は引き剥がし、答える。

 

「強い?俺戦ってないんだけど………」

 

「あれだけすごい殺気を出す人が弱いはずないよ…昔と全然違うじゃないか」

 

今度答えたのは泡沫だ。

顔にはいまだ少し恐怖が浮かんでいる。

 

「そんなに怖かったか?ちょっと威圧するだけのつもりだったんだけど……」

 

そんな翔人の言葉に生徒会室は凍る。

刀華だけを除いて…

 

「相変わらずだね、ひろくんは。…戦うのが楽しみだよ」

 

沈黙が続く中、刀華が翔人に話しかける。

 

「まだ戦えるってわかったわけじゃないぞ」

 

「わかってるよ。でも楽しみだよ」

 

「……お前こそ相変わらずだよ」

 

ため息まじりに翔人がそう告げると、刀華はくすくすと笑った。

そんな刀華につられて生徒会室内も徐々に笑いに包まれていった。

 

 

 

 

 

 

「それにしても、翔人君があれほどの力を見せてしまったら、次からの対戦相手は棄権するのではありませんか?」

 

生徒会室が明るい雰囲気に包まれ始めると、カナタが疑問を口にする。

 

「そうだよね。あんなの見せられたら戦う気なんて失うよ。…刀華を除いて」

 

「もうっ、うたくん。………でも実際そうだよね。普通の人なら戦うのはやめそうだよね」

 

「まぁそれならそれでいいよ。実際戦うの面倒だし……」

 

カナタのセリフに泡沫と刀華は同意するが、翔人はさほど気にしていない。

むしろラッキーだと思っていた。

 

「確かにその方が翔人にとっては楽だよね。嫌々出たんだし」

 

「まったくだ」

 

泡沫の言葉に翔人がそう告げると、生徒会の面々はため息をついた。

 

 

 

 

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数日後

 

翔人は一人でショッピングモールに来ていた。

理由は特にない。

強いて言うなら暇つぶしだ。

そしてその翔人は、現在一階のフードコートで遅めのランチを取っていた。

 

「いや~しかし久しぶりだなショッピングモールなんて…小さいころ家族で来て以来…か」

 

自分で言いながら落ち込んでいく翔人。

いくら時間が経ったとはいえ、家族に関係することを思い出すと気持ちがブルーになる。

そう一人で落ち込んでいると横から声がかけられる。

 

「あれ?翔人さん?」

 

声をかけられた相手は一輝だった。

 

「黒鉄…?奇遇だなこんなところで会うなんて」

 

「そうですね。僕も驚きました。翔人さんは今日ここへは買い物に?」

 

「まぁ暇つぶしがてらそんな感じだな。黒鉄は?」

 

「僕は友人たちと映画を見に来ました。でも上映までまだ時間があるので時間をつぶしていたところです」

 

翔人と話すことに少々緊張しつつも一輝は話した。

 

「そうだったのか。それよりお前どうしたんだ?トイレ?」

 

「あっ、そうだった。ちょっと売店の人にタオルを借りようと思って」

 

「タオル?飲み物でもこぼしたのか?」

 

「い、いえ…そのなんていうか…」

 

「?」

 

一輝の様子に首をかしげる翔人。

 

「見たらわかりますよ…そうだ!僕たちと一緒に話しませんか?翔人さんに聞きたい事とかいろいろあるんです!もちろん翔人さんがよかったらですけど」

 

 

一輝にそう告げられると翔人は時計を確認する。

 

(まぁ暇だし…いいかな。たまには後輩たちと話すのも悪くない)

 

そう考えた翔人は、

 

「いいぜ、席どこだ?」

 

と告げ、ステラたちもとへと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな知ってると思うけど、こちら斎藤翔人さんだ」

 

「よろしくな」

 

一輝と共に席へと移動した翔人は自己紹介をしていた。

 

「よろしく、ヒロト先輩。私のことは知ってると思うけど、ステラ・ヴァーミリオンよ」

 

「そりゃあ知ってるさ。皇女様だもんな。敬語で話した方がいいか?」

 

翔人の言葉に首を振りながら、ステラは答える。

 

「やめて。普通に先輩後輩でいいわ」

 

「そうか。まぁそのほうが俺も助かる」

 

次に翔人は珠雫へと視線を向けた。

 

「黒鉄珠雫です。この前はお世話になりました」

 

この前とはステラとの件だろう。

翔人が理事長に口添えしたおかげで罰が軽くなったことを珠雫は知っていた。

 

「まぁ気にすんな。でもあんまりああいうことするなよ?駆けつけるの面倒だから」

 

「もちろんです。これからはしっかりと考えて行動します」

 

苦笑いで告げる翔人に淡々と答える珠雫。

そして最後に視線をアリスへと向ける。

 

「はじめまして、有栖院凪よ。名前で呼ばれるのは嫌いだから、アリスって呼んでくれると嬉しいわ♪」

 

「そうか、よろしくなアリス」

 

アリスの自己紹介に平然とした顔で答える翔人。

そんな翔人の様子に驚いたステラは翔人へと声をかける。

 

「ヒロト先輩はアリスを見ても驚かないのね…」

 

「驚く?あぁそういうことか。俺は別に性別なんて気にしないからな」

 

「珠雫と似たような感性を持っているのね、副会長さんは」

 

そんな二人の会話にアリスが加わる。

 

「そうなのか?でも副会長はやめてくれ…先輩でも翔人さんでも何でもいいが、副会長だけは…」

 

「何?副会長って呼ばれるの嫌なの?」

 

疑問に思ったステラが翔人に質問する。

 

「あぁ。俺はこんな仕事したくなかったんだ…。でも理事長や刀華が無理やり…」

 

そう告げる翔人の顔は泣きそうだ。

そんな翔人に四人は顔を見合わせ頷く。

 

「そ、そうだったのね。私は今まで通りヒロト先輩って呼ばせてもらうわ」

 

「私は斎藤先輩で」

 

「じゃあ私は先輩って呼ぶわ」

 

「僕も今までどおり翔人さんって呼びます」

 

そんな四人の言葉に翔人は目に涙を浮かべながら、

 

「お、お前ら……ありがとな」

 

と、声を震わせながらつぶやいた。

そんな翔人を見てステラは一輝に小声で話しかける。

 

「一輝、なんか思ってた人と違うわね。あれだけ実力をもっている人なんだし、少し怖い感じの人かなって思ってたんだけど」

 

「そうだね。でも話しやすい人でよかったじゃないか」

 

「確かにそうね」

 

 

 

 

 

「それより黒鉄、時間はいいのか?」

 

翔人の言葉を受け、一輝は時計を確認する。

 

「あっ!本当だ。そろそろ行こうか…っとその前にトイレ済ましてくるから、僕の分のチケットは買っておいて」

 

「あら、それならあたしもお伴しようかしら」

 

一輝の離脱にアリスも続く。

 

「じゃあ私たちがチケットを買っておきますね」

 

「もうあんまり時間ないんだから始まる前には戻ってきなさいよね」

 

「うん。なるべく早く戻るよ」

 

こうして一輝とアリスはトイレへと向かった。

 

「じゃあヒロト先輩、私たちは映画に行くわね。今日は楽しかったわ」

 

「私もです。面白い話ばかりでしたし」

 

「そう言ってもらえると嬉しいよ。じゃあ俺はこの辺で…」

 

 

翔人がステラたちから離れようとした瞬間、

 

「――――――――――――ッッ!?」

 

翔人の耳を貫いたのは、何かが爆発するような音と、ガラスの破砕音。

そして―――――銃声と悲鳴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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