落第騎士の英雄譚 ~守り人のために~   作:ローニエ

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クリスマス…?


怒り

「ふぅ。どうやら行ったようね」

 

敵が遠くへ去ったことを確認すると、アリスはふぅっと息を吐く。

 

「ありがとう。助かったよ」

 

一輝はそう告げると、自分たちの置かれた状況の整理を試みる。

 

「…何者なんだ。彼らは」

 

解放軍(リベリオン)

 

「!?」

 

アリスの迷いのない言葉に、一輝は目を見開く。

 

解放軍(リベリオン)。それはこの世で最も知られた犯罪組織の名称だ。

彼らは伐刀者(ブレイザー)を『選ばれた新人類』とし、それ以外の人間を『下等人類』と位置づけ、社会構造の破壊をもくろんでいる。

 

「まさかこんなところで世界各国で話題のテロリストと出くわすなんてね。でもどうして彼らが解放軍(リベリオン)だとわかるんだい?」

 

「昔住んでたところで、今日みたいに事件に巻き込まれたの。その時の装備と一緒だったから。…それより珠雫たちが心配ね」

 

「うん。でも翔人さんがいるから安心していいと思うよ。だけどそれよりも先にやらないといけないことがある」

 

一輝は電子生徒手帳を取り出し、理事長である新宮寺黒乃へと連絡をとった。

 

『事態は把握している』

 

黒乃の第一声で、すべての説明の必要は省かれた。

 

「話が早くて助かります。では『黒鉄一輝』『ステラヴァーミリオン』『黒鉄珠雫』『有栖院凪』『斎藤翔人先輩』の5名に敷地外での能力使用を許可してください」

 

『何…?お前たちだけでなく、斎藤もいるのか!?』

 

「はい?先ほどまで一緒に行動してましたけど…」

 

黒乃の驚いた声に反応する一輝だったが、理由が分からないため疑問形になってしまう。

 

『黒鉄…奴らを早急に抑えてくれ。斎藤に暴れられては困る。私でもあいつを止めるのは難しい』

 

黒乃はやや緊張した声で告げた。

それほど翔人は恐ろしいということだろう。

翔人は黒乃の言葉を受け、顔を引き締めた。

 

「もちろんすぐに彼らを抑えるつもりですが…もしものときはお願いします」

 

『もちろんだ。と言ってもできることなんて何もないけどな。斎藤が暴れないことを祈るだけだよ』

 

黒乃はそう言い残すと電話を切る。

 

「アリス、今の会話は聞いてただろう?急ごう!」

 

「お任せあれ」

 

一輝はアリスに手を差し出し、アリスはそれを握りかえす。

瞬間、彼らの影が黒い水となり、二人の身体がどぷんと地面に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらっ!お前たちぐずぐずしないで歩きやがれっ!」

 

翔人、ステラ、珠雫の3人を含めた人質たちはフードコートに集められていた。

人質の数は30人といったところだろう。

逃げ遅れた子連れの親子や小さな子が多い。

また、人質たちはいつ自分が殺されるか恐怖している人もおり、中には泣いている子供も何人か見られた。

そんな彼らを見た翔人は小声でステラ、珠雫の二人に話しかける。

 

『なぁ、二人は人質たちを守ることに集中してくれ。奴らは俺が殺る』

『ちょ、ちょっと待ってよ。相手の数も分からないのに特攻は良くないわ』

『ステラさんの言う通りです。今は彼らが全員集まるのを待ちましょう。人質の数が多いんですから』

 

2人のその言葉に翔人は、仕方なく賛同しようとする。

が、その瞬間誰も予想しなかった思わぬ方向に事態は進行する。

 

「お母さんをいじめるなぁーっ!」

 

「「「ッ!!」」」

 

突如、人質の小学生くらいの少年が解放軍(リベリオン)の1人に襲い掛かったのだ。

まずいっ!と思うも少年を助けるには遠い位置にいる。

少年は雄たけびを上げながら、持っていたアイスクリームを兵士に投げつけた。

兵士のズボンに白い斑が描かれる。

しかし、そんなものに攻撃力などあるはずもない。

ただし、相手を激昂させる効果は十二分にありすぎた。

 

「こんのガキがぁぁぁぁ!!」

 

兵士は激怒し、自分の腰ほどにも身長のない少年の顔に容赦なく蹴りを見舞う。

しかし、兵士の蹴りは空を切った。

 

「へっ?」

 

兵士はなぜ目の前にいた少年がいなくなったのか分からず、変な声が出た。

それは人質たち…ステラや珠雫も同様だ。

そんな彼らなど知ってか知らずか、兵士の後ろから声が聞こえた。

 

 

「よくやった、坊主。お前はお母さんを守るために勇気を出したんだよな。えらかったぞ。…でもあんな危ないこと、もうしちゃダメだ。もしお前が怪我をしたら悲しむのはお前のお母さんなんだから…」

 

 

翔人は少年の頭をくしゃくしゃと撫でながら、優しく告げる。

 

「うん!ありがとうお兄ちゃん!」

 

そんな光景を唖然とした顔で眺める兵士や人質たち。

そんな中、翔人が少年の母親に声をかける。

 

「お母さんしっかりと子供は見てないとだめですよ。いくらお腹に赤ちゃんがいるからと言ってもね」

 

「は、はい。この子を救っていただいて本当にありがとうございます」

 

少年の母親はそう告げると、涙を目尻に溜めながら翔人に何度も頭を下げる。

しかし、そんな様子を見ていた兵士が黙っているはずもない。

 

「オイてめぇ何しやがるっ!このクソガキは俺の服にアイスぶつけやがったんだ!ぶっ殺さないと気が済まねぇ!!」

 

翔人と少年を交互に見ながら兵士は大声で告げる。

母親は恐怖していたが、翔人に言われたこともあり今度は少年を守るように抱きしめていた。

そんな兵士のセリフに翔人は顔から表情を消して話し始めた。

 

「そうか…じゃあ俺がアイスの痕をなくしてやるよ。…お前の血でな。来い銀翼の双剣(シルバースレイブ)

 

「えっ?」

 

翔人が小さくつぶやいた瞬間、兵士は目の前に信じられないものを見た。

それは血しぶきをまき散らしながら飛ぶ、自分の両腕。

 

「ぎゃぁぁ!!うで、俺の腕がぁぁ!!テメェよくも―――――――」

 

「だまれ」

 

「ッッ…」

 

兵士の雄たけびは翔人の形相を見た瞬間喉の奥へと引っ込んだ。

 

「まだ足りないか?」

 

翔人がそう告げた瞬間、今度は兵士の両足が切り落とされた。

 

「ぐぎゃあぁぁぁ!!」

 

「な、何事だ!?」

 

翔人が切った兵士の悲鳴につられ、大勢の兵士がやってくる。

 

「…ちっ。面倒だな」

 

翔人はそうつぶやくと同時に行動を開始する。

 

「えっ?」

 

その場に現れた兵士20人の両腕を先ほどと同じように切り落とす。

もちろん一瞬で。

そんな翔人を見て、最初は悲鳴を上げていた人質たちだったのだが、今はもう言葉も出ないようだ。

ボーっと翔人を眺めることしかできない。

 

 

「ぐぎゃあぁぁぁ!!」

 

翔人が20人ほどの兵士たちの腕を切り落として数秒、やっと切られたことに気が付いたのか奇声を上げ始める。

 

「…フンッ。クズ共め」

 

翔人がそう嘆くと、ステラと珠雫が翔人の元へと近づき恐る恐る話しかける。

 

「ひ、ヒロト先輩…さすがにちょっとやりすぎじゃないかしら?」

 

「そうか?命があるだけでもありがたいと思ってもらいたいけどな。IPS再生槽(カプセル)を使えばどうせ治るんだし」

 

「それにしても私には何をしたか、まったくわかりませんでした」

 

「私も全く見えなかったわ…なんなのよあれ」

 

翔人の剣技を見たステラと珠雫は、翔人へ尋ねるが、

 

「そんなことより先にやることがあるだろ。ここにいるやつらがすべてじゃないんだ。さっさと全員つぶすぞ」

 

「そ、そうね!見たところここにいる兵士たちは非伐刀者みたいだし、伐刀者の親玉がいるはずよ」

 

「そ、そうですね。なら早めにお兄様やアリスと合流したいところですね」

 

翔人の言葉に少なくない恐怖を覚えた2人はそう告げる。

翔人はただいま激怒中なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「なんだかすごいことになってるね…少し遅かったみたいだ」

 

「みたいね。でも人質に怪我人はいないし、向こうに死人もいないんだからまだましな方じゃない?」

 

そこへ一輝とアリスがやってくる。

 

「おう、2人とも無事だったみたいだな」

 

「はい。それよりも先に残りの賊を――――――」

 

 

「な、なんじゃこりゃあぁぁ!?」

 

一輝が翔人に話しかけている最中に、割り込む声があった。

翔人たちが声の聞こえた方へと視線を向けると、そこには10人ほどの武装した集団が歩いているところだった。

中央にいるリーダー格の男らしき人物が半狂乱のまま翔人たちに話しかける。

 

「お前らか!?こいつらをこんなにしたやつは!」

 

「だったらなんだ?もしかしてお前がこいつらのリーダーか?」

 

「そうだ!私の名はビショウ―――」

 

ビショウと名乗る男が自分の言葉を言い終わる前に、翔人は無表情で彼とその周りの兵士の両腕を切り落とした。

 

「ぐぎゃあぁぁぁ!!」

 

(な、何なんだ今の攻撃スピードは!?全く剣筋が見えなかった…。それに僕は翔人さんが隣からいなくなったことにすら気が付いていなかったし…)

 

ビショウが悲鳴を上げる中、一輝は翔人の動きを見て思考を巡らせていた。

 

(これで能力を使ってないなんてチートもいいところだ…)

 

そんな一輝のことなど知らず、翔人は

 

「お前らはそのセリフ以外言えないのか?」

 

と、呆れた声でビショウへと告げる。

しかし、その問いに答えられるものはいなかった。

ビショウを含め、全員気絶していたためである。

そんな中、答えを期待していなかった翔人が一輝たちに声をかけた。

 

 

「なぁ、誰か治癒って使えるか?」

 

「あっ、はい。それなら珠雫が使えたはずです」

 

一輝はそう告げると珠雫の方を向いた。

 

「は、はい。もちろんできますけど、どうかしたんですか?斎藤先輩が先ほどの戦闘で傷を受けたとは思えませんけど…」

 

やや緊張しながら珠雫は告げる。

そんな珠雫に翔人は首を横に振った。

 

「いや、俺じゃなくてやつら」

 

翔人は解放軍(リベリオン)を指さす。

伐ってから出血が酷いことに気が付き、流石に放置しておくわけにはいかないとでも思ったのだろう。

 

「止血だけでいいぞ。まぁ嫌ならやんなくてもいいけどさ。別にあんなやつら死んでも構わないし」

 

「…わかりました。死なれたら面倒ですし」

 

 

「動くなぁぁぁ!!!」

 

「「「「ッッッッ!!」」」」

 

 

珠雫が彼らの元へと向かおうと踏み出すと、フードコート内に怒声が響いた。

 






翔人の剣は二刀流です!
各剣の名前はもう少し先で出ます!
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