落第騎士の英雄譚 ~守り人のために~   作:ローニエ

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あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします^^


対戦相手

「た、ただいま…」

 

翔人はボロボロになった体を引きずりながら寮へと帰ってきた。

カフェテリアでの会話の後、廃墟へと移動した翔人とエーデルワイスは話していた通り、戦った。

それはもう何度も倒れそうになりながらになりながら…

しかしボロボロになったのは翔人だけではない。

エーデルワイスもまた翔人と同じくらいには倒れそうであった。

 

(初めてだな。エーデルにあれほど傷をつけたのは…やっぱり強くなったんだな俺)

 

一方的に傷をつけられることは数え切れないほどあったが、エーデルワイスに今回ほど深い傷を与えたことは今まで一度もなかった、と翔人は心の中で一人思う。

だからこそ今日の戦いは翔人にとって快挙といえることだ。

それを感じたとき翔人は、心がうれしさでいっぱいになった。

それこそ叫びたくなるくらいに。

だから戦いの場であった廃墟を中心に、半径50キロに何も残っていない…戦場跡地のようになってしまった事実に対して、翔人は何も感じていなかった……

というか気づいていなかった。

彼らの戦いは常人では考えられないほどの戦いだ。

故に周りに与える影響も計り知れない。

互いにそれを知っているため人のいない廃墟を選んだのだが、剣を交えることに没頭する2人に廃墟は狭すぎた。

幸い、半径50キロには人が誰もいなかったため大事にはならなかったが、もし誰か人がいれば大惨事になっていたことは間違いないだろう。

 

 

そんなことを知る由もなく、翔人はと言えばリビングへと向かっていた。

エーデルワイスとの戦いで消費したカロリーを補給したいと考えたためだ。

何か食う物ないかな~なんて小さくつぶやきながらリビングのドアを開ける。

するとそこには仁王立ちしている刀華の姿があった。

 

「と、刀華さん?良い子はもう寝てる時間ですよ?」

 

現在時刻深夜1時。

流石に刀華はもう寝てると思っていた翔人は、目の前のことに驚きながらも刀華へ告げる。

対して刀華は明らかに怒っていた。

どれくらいかというと、それはもう怒っていた。

顔が笑っているだけに余計に怖い。

 

 

「ひろくん♪」

 

「は、はい!」

 

刀華の様子にただならぬものを感じた翔人はすぐさま正座し、刀華の言葉に元気よく答える。

姿勢はといえばすぐにでも土下座ができる状態だ。

 

「私に何かいうことない?」

 

「い、言うこと?」

 

刀華の言葉に翔人は必死に頭を動かす。

しかし、エーデルワイスとの戦いのことで頭が一杯で他のことなど考えられるはずもなく、

 

「な、何かあったっけ?」

 

と気まずそうに告げる。

そんな翔人を見た刀華は一つ溜息を吐くと、怒気を沈ませた。

そして呆れるように告げる。

 

「今日解放軍(リベリオン)に襲われたんでしょ?」

 

その言葉に翔人はようやく思い出す。

 

「あぁ…そういえばそんなこともあったな」

 

「そんなことって…。…やっぱ、忘れてたのね」

 

「というかそれがどうかしたのか?もしかして心配してくれたり?刀華なら俺がそんなやつらに何かされることがないことくらいわかりそうだけど」

 

呆れてものも言えない刀華に翔人は質問を投げかける。

 

「まぁそうだけど…。でもそれと関連した話。…直接じゃないけど聞いたわ黒鉄君たちの話。…さすがにやりすぎよ。もう少し手加減してもよかったんじゃないの?」

 

呆れた顔から徐々に真面目な顔になっていく刀華に、翔人もだんだんと状況が読み込めるようになってきた。

つまり刀華はこう言いたいのだ。

『例え解放軍(リベリオン)だとしても、もう少し手加減して拘束できたのではないか?』と。

それを理解した翔人は刀華と同じように真面目な顔で告げる。

 

「確かに手加減してもあの程度の連中、拘束するのはたやすいさ。」

 

「な、なら…「でも」

 

「なるべく早く解決したほうがいいだろ?人質たちだって酷く緊張してたんだから。それに俺ムカついてたしな。あいつらに」

 

「それが本音でしょ…」

 

ジト目で刀華が見てくるが、翔人は取り合わない。

態度もこれ以上は何も言わないと言っている。

それを感じた刀華は、再び溜息をつきながらも話題を変えた。

 

「それよりその傷どうしたの?ひろくんにそんな傷つけるなんて普通じゃないと思うけど」

 

「あぁ。師匠と戦ってたらこうなった」

 

「師匠?…まさかエーデルワイスさん…?」

 

翔人の言葉に恐る恐る尋ねる刀華。

 

「そうだけど?…それにしても今日はすごかったんだぞ?ついに師匠に俺の力を認めさせることが出来たんだ」

 

「へ、へぇ。そうなんだ…」

 

エーデルワイスと聞けば誰もが恐れるべき存在だと言うのに、目の前の少年はそのエーデルワイスと戦ったことを楽しそうに話している。

さらに、世界最強の剣士の名高いエーデルワイスに力を認めさせたということに刀華は驚きを通り越し、最早あきれていた。

 

「それでな「それより時間も遅いんだし寝ない?言っとくけど明日は学校なんだよ?」

 

なおも続けようとした翔人の言葉を遮り、刀華は寝ることを促す。

翔人が話始めたら止まらないことを刀華は知っているためだ。

 

「確かにそうだな。じゃっ寝るか」

 

翔人がそう告げたことにより、刀華は内心安心して布団に入った。

長い話にならずにすんでよかった…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

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翌日

 

翔人と刀華は生徒会室で書類を片づけていた。

 

「それにしてもひろくんは、みんなと一緒に黒鉄君の試合見に行かなくてよかったの?」

 

自分の分の書類を片付け終えた刀華は翔人に問う。

 

「いいんだよ。黒鉄が負けるはずがない。相手が俺や刀華でない限りな」

 

「ずいぶんかってるんだね。…でも私もそう思うな」

 

「だろ?俺からしたらあいつが負けると思っている奴らの方が信じられないよ。泡沫しかり、カナタしかりな」

 

「二人は直接黒鉄君の試合を見てないからね。私みたいにステラさんとの模擬戦を見てれば評価は変わったかもよ?それに……私はステラさんとの模擬戦を見たときから彼とは戦いたいと思ってるから」

 

「…そうか」

 

刀華は答えるまでに少し間が空いたことを疑問に思った。

故にその理由を翔人に尋ねる。

 

「どうかしたの?」

 

「…いや、刀華にそこまで思わせるなんて黒鉄もなかなかやるなって思ってさ。刀華がそんなに相手に興味を持つことなんて中々ないだろ?」

 

「そうかな?…でも言われてみればそうかも。幼馴染のひろくんやかなちゃんを除くと確かにあんまりいないかもね」

 

「だろ?…それより話を戻すけど、黒鉄なら大丈夫だろ。まぁ初戦だから緊張してるってのはあるかもしれないけどな」

 

「黒鉄くんの事情を考えるとかなり緊張してるかもしれないね…」

 

去年の一輝を知っている刀華は苦しそうに告げる。

 

「まぁそれは考えられるけど、あいつなら大丈夫だろ。自分の信じた道を真っ直ぐ突き進むことができるやつなんだから」

 

「ふふっ…そうだね」

 

「…なんだよ」

 

「ひろくんも黒鉄くんのこと興味持ってるんだなって思って」

 

「そりゃあまぁな。去年のことを知ってるからあいつには頑張ってほしいって人並み以上には思ってるし」

 

「それだけ?」

 

「…それだけだ」

 

実際には剣を交えてみたいという願望が少しだけあったのだが、今の一輝では相手にならないことを悟っている翔人はそう短く告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2週間後

 

翔人は今日も生徒会で仕事をしていた。

生徒会副会長という立場なのだから、仕方がないと言えば仕方がないのかもしれないが…

 

「ふぅ~疲れた」

 

「お疲れ様です」

 

翔人が仕事を一通り終えると、タイミングよくカナタがオレンジジュースを持ってくる。

 

「おう、サンキューな」

 

翔人はカナタにお礼を言い、部屋を見渡す。

現在部屋にいるのは翔人、カナタ、恋々、雷の4人だ。

2人ほど欠けていることを疑問に思った翔人はカナタに尋ねる。

 

「カナタ、刀華と泡沫は?」

 

「会長は理事長に呼ばれています。泡沫君はサボりです」

 

「サボり~?」

 

カナタの告げた内容に翔人は不満げに声を出した。

 

「あいつ俺が頑張ってるときにサボりとは…明日お灸を添えないとだな」

 

そんな翔人にカナタは微笑みながら言葉を続ける。

 

「ちなみに新作のゲームを買いに行ったそうです。なんでもス○ブラとかいうゲームだとか」

 

「よし、許そう。でもゲーム内ではボコボコにしよう」

 

自分の意見を180度変えた翔人に苦笑いのカナタ。

そんな会話をしていると、2人の端末が同時になった。

 

1人は翔人。

内容は次の対戦についてだ。

対戦相手が気になったカナタは翔人の端末をのぞき込む。

するとカナタは驚愕する。

なぜならそこに書いてあった名前は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三年Aランク 斎藤翔人 VS 二年Cランク 砕城雷

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう先ほどの着信音は翔人と雷のものだったのだ。

カナタが驚いていると、後ろから声が聞こえた。

 

 

「うわぁ…、さいじょーも運がないね。相手がふくかいちょーだなんてさ」

 

「………」

 

 

現在翔人は7戦7勝。そのうえすべて棄権勝ちだ。

対する雷も7戦7勝。学年序列4位なだけはあろう。

しかし、相手はあの翔人だ。勝てるなどとても思えない。

故に恋々は雷のことを運がないといったのだ。

 

だが、恋々にそう言われた雷の目にはギラギラしたものがあった。

そんな雷は恋々には何も言わず、翔人の前へと赴き告げる。

 

「副会長」

 

「…どうした、雷?」

 

翔人が答えるのに少しためらったのは恋々が余計なことを告げたせいだろう。

その眼には申し訳なさがうかがえる。

 

「明日の試合、某は全力で挑みます!だから副会長も真剣に某と戦ってくれぬか」

 

雷の告げたことに一瞬目を見開く翔人。

しかしすぐに挑発的な顔に変わった。

 

「いいのか?後悔するかもしれないぞ?」

 

「覚悟の上」

 

「そうか…分かった。真剣にお前と戦おう。ここまで一度も戦ってないからさすがに暇でな。お前のようなやつがいて助かったよ」

 

そう翔人が告げると生徒会には翔人のプレッシャーが広がった。

翔人にも少し戦いたい気持ちはあったのだろう。

プレッシャーの中に嬉しさが垣間見えたことを、幼馴染のカナタは見逃さなかった。

 

 

 

 

 




次話ついに翔人が力を見せます!!
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