『続いては本日第6試合だ!まず不敵な笑みを浮かべながらリングに現れたのは我らが生徒会副会長斎藤翔人選手だぁぁぁ!この大会まで一度も力を見せず、副会長就任時には不信任決議案を出されたほどでした。しかぁし、この大会に出ると分かると破軍学園全員がド肝を抜かれたはず!!なぜなら彼はAランクだったのだから!!破軍学園2人目のAランク騎士です!ここまでは7戦7勝無敗!そのうえすべての試合が相手の棄権負け!無傷だけでなく、まともに試合をせず威圧だけですべての試合を勝ち抜いてきた脅威の3年生だ!!』
司会がそう告げると会場のボルテージが一気に最高潮に達する。
入場した翔人はその言葉や周りの雰囲気に苦笑いだ。
「だがしかぁぁぁし、相手は学園序列第4位
司会はそうは言ったが、翔人がよく雷を見ると少し緊張している様子だった。
「雷、戦うんだろ?緊張して実力が出せませんとかなるなよ」
「無論。副会長を倒す準備はしっかりできているがゆえ」
「そうかい。それは楽しみだ」
翔人は雷の言葉に嬉しそうに笑った。
「イッキ、今日本当に来る意味あったの?ヒロト先輩はどうせ今日も戦わないわよ」
一輝、ステラ、珠雫、アリスの4人は翔人の試合を見るため第二演習場へ来ていた。
しかし、ステラは不満そうだ。
翔人が一度も戦っていないため、今日も戦わないと思っているのだろう。
誰だって、何度も相手が棄権する試合を見て楽しいとは思わないから当然と言えば当然である。
「大丈夫だよステラ。きっと今日の翔人さんは戦う」
「何で言い切れるの?」
「実況の人も言ってたけど、今日の相手は同じ生徒会の砕城さんだ。砕城さんの性格から考えて、翔人さんに真剣に戦うように頼んでるんじゃないかと僕は考えている」
「あっ、お兄様!」
一輝がそう告げると、珠雫が声をあげた。
どうしたのだろうと思った一輝は、ステラからリングへと視線を変える。
「ッッ!!」
するとそこには
『おぉぉぉっと!ついに斎藤選手が
「一輝の言った通りねって…って、あれ?ヒロト先輩って二刀流じゃなかった?」
ステラたちは一度翔人の
記憶にも新しいショッピングモールの事件の際だ。
その時翔人が使っていた
しかしリングに立っている翔人は一本の剣しか構えていない。
「こっちが本来の実力なのかしら?」
ステラ同様疑問に思ったアリスは一輝に尋ねる。
「いや…それはないだろう。一刀流の剣士が二刀流をやる道理がない。逆は考えられるけどね」
「つまり手を抜いているってことですか?」
一輝の言葉に珠雫が尋ねる。
「いや…それはどうだろう。翔人さんの目は決して手を抜いているようには見えない。真剣そのものだ」
「だったらどうして…」
「きっと二刀流を使うには何か理由が必要なんじゃないかな?それか今回は一刀流を使う理由があったとか。………詳しくは分からないけどね」
「なるほど……でもついにヒロト先輩の戦いが見れるのね!私テンション上がってきちゃった!」
「僕もだよ。こんな胸の高鳴りは久しぶりだ」
そう一輝が告げると、それぞれがステージ中央に視線を集中させた。
Let's go ahead
その言葉と共に試合がスタートする。
試合が始まると真っ先に動いたのは雷だ。
しかし足が動いたのではない。
頭上で
彼の能力は振り回せば振り回すほどに重くなる、というものである。
限界重量はおおよそ10トン。
翔人と言えど、10トンの重さには耐えきれないというのが雷の考えだ。
しかし不安な点はある。
それは速度。
斬馬刀という武装の性質上、速度は決して速くない。
そのためスピードファイターのような相手だと当たらないのだ。
雷は翔人がどのようなタイプの伐刀者か知らないため、スピードファイターでないことを祈り、このような賭けに出たのだ。
が、残念なことに翔人はタイプで言えば、スピードタイプだ。
それも超がつくほどのスピードタイプと言っても過言ではない。
翔人ほどのスピードを出せる相手はおそらく学生の中にはいないだろう。
故に翔人にとって雷の攻撃をかわすことなど、五感を奪われてもできる。
だが、彼のとった行動は雷が予想したどれとも合わなかった。
なぜなら試合開始の合図の後、翔人は一歩も動いていなかったのだ。
そんな翔人に雷は怒った様子で告げる。
「副会長!某は真剣に戦うようにお願いしたはず!!某を侮辱するつもりか!!」
「いやいや。勘違いだぜそれは。俺は至って真剣だ。俺は全力のお前を待ってるんだから。…お前こそ忘れたのか?お前は俺に『某は全力で挑みます!』って言ったろ?だったらお前が全力になるまで待つしかないだろ?先輩としては」
翔人がそう告げると、雷はニヤリと笑みを浮かべた。
「そんな細い剣で何ができるものか!某の能力を知ってなお限界までチャージさせてしまったことは副会長の落ち度だ!」
吠えるように告げて、雷は斬馬刀を翔人に打ち下ろす。
「クレッシェンドアックス!!」
「おーおー、やっとか。待ちわびたぞ?まぁ確かに普通の人にとっては10トンは重いと感じるかもしれないな…」
ガキィン!と振り下ろしたクレッシェンドアックスが翔人の右剣によって受けられた。
「な、なにいぃぃ!?」
自分の剣が受けられた。
その事実に雷は目を見開き驚愕する。
そう。雷は知らない。
彼の強さを。
「でも、俺にとっては10トンなんて重さのうちに入んないんだよ」
自身の一撃が無力化され唖然としている雷に、翔人はさらに告げる。
「覚えておけ、雷。この世には力も、異能も、小細工も、すべてをねじ伏せるやつがいるんだ。それが俺たちAランク騎士なんだよ。…それはそうとお前は全力を出したんだ。俺もそれに応えるためにちょっとばかし力を出すぞ」
翔人がそう告げた瞬間、雷や会場の生徒は信じられないものを目にすることになる。
それは光。
空から雷目がけて光が飛んでくる。
「≪
翔人がそう告げた瞬間、雷の身体に光がぶつかり、彼の身体は砲弾のような勢いで吹き飛ばされた。
そしてそのまま観客席したの壁面に衝突。そこを粉砕してもなお止まらず、壁を壊しながら雷の身体は会場の外側までふっ飛ばされた。
そして、会場の外までふっ飛ばされた雷はぴくりとも動かない。
『さ、砕城選手大丈夫でしょうか…?現在レフェリーが判断しに行っていますので、皆さま少々お待ちください』
実況はそう告げるが、翔人は自分の勝ちを確信していた。
なぜならこの
彼らに遠く及ばない雷が耐えきれるはずがない…
と、翔人が思ったところで実況が再び話し始める。
『レフェリーが戻ってきました。……おおっと!審判の腕がクロスされました!!よって勝者は斎藤翔人選手だぁ!!』
事実を確認したレフェリーの腕があがったことで、この戦いの勝者が決定した。
勝者が告げられると会場のボルテージは一気に最高になる。
『あ、圧勝ぉぉぉぉ!!砕城選手の全力の一撃を真正面からねじ伏せ、ものすごい威力の攻撃を放った斎藤選手!!これがAランク!強い、強すぎる!!彼なら長らく七星の頂から遠ざかっていた破軍学園に七星剣王の栄冠をもららしてくれるかもしれませんッ!』
興奮する実況と観客の歓声にまたもや苦笑いしつつ、翔人はリングをゆっくりと去っていった。
-------------------------------------------------------------------------------
「か、かいちょう…副会長の使った技って何なんです?」
翔人がリングを去った後、恋々は刀華に尋ねる。
恋々は相性で彼に勝つことができるが、それでも雷の学園序列は4位。
簡単に負けるはずがないのだ。
故に目の前で起こったことが信じられない彼女は質問したのだ。
「…私もわからないわ。私もひろくんの伐刀絶技を見るのは初めてだもの…」
「えっ?でも会長は昔副会長と戦ったことがあるんじゃ…?」
「そうよ。でもひろくんは剣技だけで私を圧倒していたから、一度も伐刀絶技は使わなかったのよ」
そう。
刀華は過去何度か翔人と戦う機会があったのだが、自身の伐刀絶技≪雷切≫をもってしても翔人に勝つことはできなかった。
剣技だけで圧倒できるのに伐刀絶技をわざわざ使うはずもない。
それにもともと面倒臭がりなのも加わって、翔人は伐刀絶技を一度も使わなかったのだ。
「そうですね…私も翔人君の伐刀絶技を見るのは初めてです」
「もちろん僕もだよ」
刀華に続きそう答えるカナタと泡沫。
そんな3年生を前に恋々は言葉を失い何も言うことができなかった。
そんな中刀華がつぶやく。
「それにしても優しいね、ひろくんは」
「えっ?どこに優しい要素があったの?」
刀華の言ったセリフに疑問を覚えた恋々は刀華に質問する。
会場外まで吹き飛ばしておいて、優しいなんてとても言えないと思ったからだ。
「兎丸さんは気がつかなかった?ひろくん攻撃する前に固有霊装を幻想形態にして攻撃したことを」
「えっ…!?」
「砕城君に怪我はさせたくなかったのかな?でも幻想形態であれじゃぁ…」
その言葉に恋々は驚き何も言うことが出来なかった。
しかし、会場外で倒れている雷に対しては
(幻想形態でよかったね…)
と心の底から思った。
-------------------------------------------------------------------------------
「どうだいステラ?同じAランクとして翔人さんの力は」
翔人の試合を見終わり、寮へと帰る最中一輝はステラに尋ねる。
「…同じAランクであることに疑問を感じるわ。あんなの見せられちゃ…ね」
ステラは翔人の強さを見て戦慄していた。
そして今の自分ではどんな手を使っても倒せないと感じていた。
「七星の頂に辿りつくための最大の敵は校内にしかいないのかしら…」
一輝はそう告げたステラに苦笑いしつつも答える。
「そうかもしれないね…」
と。
-------------------------------------------------------------------------------
「なぁ寧音。先ほどの技はお前の物とは違うのか?」
黒乃は理事長室で寧音と先ほどの試合について議論していた。
「全然違うと思うよ。私の覇道天星は大気圏外のスペースデブリ…宇宙ゴミを重力の力で引っ張ってきて第二次宇宙速度でたたきつけるってものだけど、ひろ坊のさっきの技は自分で作りだした疑似流星を相手にぶつけてた…と思う。最初は私も大気圏外から流星物質を引っ張ってきたんだと思ってたんだけどね」
「流星物質?お前のスペースデブリとはどう違うんだ?」
黒乃は寧音の話を聞いていて、見知らぬ言葉が出てきたので尋ねる。
彼女でも知らぬことはあるのだ。
「簡単に言うと、私のは人工物、流星物質は自然物ってとこかな。似てるっちゃ似てるんだけど、中身は全然違うんだぜ」
「そうか…でも何で斎藤の技がその流星物質でないと分かったんだ?」
「別に分かってはないよ?でもそりゃあ私の必殺技を簡単に真似されたら私の立場がないじゃん。とは言っても疑似的に作り出す方が圧倒的に難しいんだけど」
寧音はそう苦笑い気味に告げる。
しかし寧音が告げていることは不正解だ。
実際には翔人の
それも翔人がもつ伐刀絶技の中で最も威力の低いものだ。
しかしそんなことを知る由もない彼女らはそのまま話を進めていく。
「お前でもそんなこと考えてたんだな…」
「くーちゃん…それどういう意味?」
「そのままの意味だ」
その後ギャーギャーと文句をいう寧音を無視し、黒乃は先ほどの映像をより真剣に見直した。
「やはり斎藤は全然本気を出していないようだな」
「そりゃーそうっしょ。相手にならないやつに全力見せるほどひろ坊はバカじゃない」
「まぁそうだろうな。そして校内予選ではもう戦うことはないだろう」
「うんうん。そーだね」
2人ともわかっていた。
翔人が全力を出していないことを。
だが故に翔人の実力は未知数。
そのことは教師としてはうれしく思う反面、同じ伐刀者としては恐怖を感じていた。
「もし黒坊やステラちゃんと当たったら面白くなりそうだね」
「…滅多なことを言うな。今の奴らでは斎藤に手も足もでないことは明白だろ?」
「くーちゃんは厳しいねぇ。確かに
「…私は2人がいくら成長したとしても斎藤に敵うとは思えんが」
「あれ?くーちゃんはそっち派?」
「………一度奴と戦えばわかるさ」
黒乃は冷や汗を流しながらそう告げると、たばこに火をつけ、かつての模擬戦へと思考を巡らせた。
「私としてはひろ坊と戦うなんて勘弁したいけどな~」
寧音はそう告げると苦笑いしながら部屋を出て行った。
黒乃はそんな寧音を横目で見ながら、心の中で疑問を浮かべる。
(斎藤…お前の本気は一体どれだけのものなんだ…)
そんな黒乃の心の中の質問に答えられるものは誰もいなかった。