ハイスクールD×D~チンピラ匙くんが行く~   作:シグマ強攻型

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水銀コカビエルの人気に爆笑。

ご安心ください。コカビエルが水銀になることはありません


第2話

 

 

匙暴走事件から数日がたった。一誠は流石に少し自重しようと思ったのか松田たちが覗きをしようとすれば止めるなどして、周りを唖然とさせた。誰もが病院を薦めたりするなど普段の行いが分かる。ただ、一誠は一言「匙が……」とつぶやくと納得された。全員が、匙がマジで切れたのだと理解したのだ。

 

 

「よ、よぉ匙!」

「……おう」

 

 

そして、一誠は若干腰を引かせつつも匙とあったら挨拶をするようになった。木場などと話して、匙の逆鱗に触れたことを反省したのだ。自分だって、リアスを侮辱されたりすれば激高する。少しどころか詳細は全く違うが、ライザー・フェニックスとの会話を思い出していた。あの時だって、ライザーがリアスや朱乃たちを侮辱したからキレたのだ。

 

 

「人によって怒るポイントって違うんだなぁ」

「僕としては君が怒るポイントを知りたいなぁ」

 

 

木場と二人で購買に向かう。アーシアは桐生に連れて行かれたため、さてどうしようかと思っていたところに木場がやってきたのだ。まぁ、一誠としても松田たちがいなくなっていたため付き合うことにしたのだ。

 

 

「まぁ、イッセーくん。別にその……君が本当は頼りになるっていうのは知っているんだけど、誰かれ構わず噛みつくのはやめたほうがいいかも。例えそれが君がいつも敵視しているイケメンでも」

「うぐぐ」

「今回は……部長と会長の立場が対等だった。だから不始末を起こした会長が匙くんに罰を与えて、部長がそれを受け入れたから大事にはならなかったけど……仮に会長が部長よりも高い地位にいたら逆に部長が罰せられる可能性もあったんだ。眷属悪魔の教育不足で」

 

誰もいない屋上で二人並んで座って購買で買ったパンとお茶を開けて食べ始める。そして、木場は一誠に以前の事を語り始める。だが、一誠には寝耳に水だった。確かに、自分も悪かったが、何故立場が変われば部長が罰せられる可能性があったのだと。

 

 

「は!? なんで!?」

「イッセーくん。イッセーくんには馴染みないかもしれないけど、悪魔にかぎらず上流階級っていうのはメンツを重んじるんだ。それが事実でなくても。ライザー・フェニックスの場合は多分すごく運が良かったことなんだと思う」

 

 

サーゼクスやグレイフィアが婚約反対側だったから、フェニックス家がライザーの行状を重く見ていたから、そんなリアスたちに都合のいい状況だったからこそお咎め無しになったようなもの。

 

 

「多分、アレで……どこかボタンの掛け違いがあったらどうなっていたかわからない。だから……イッセーくん。別にハーレムを目指すのはいいと思う。でも、周りを見たほうが絶対に君のためになる」

「お、おう」

 

 

下手をすればキミは処刑されていたかもしれないと木場は告げる。そして、先日の顔合わせの時、一誠はやらかしたのだ。

 

 

もし、ソーナがリアスより立場が上だったら。もし、ソーナがライザーみたいな性格だったら。もし---。そんな考えが頭をよぎるが、そんなこと考えたくもない。木場はリアスとソーナが親友で良かったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「元士郎。今日から悪魔としての仕事に復帰しますが……問題はないですね?」

「はい。二度とあのような失態はしません」

 

 

ある夜。匙はソーナの私室に呼び出された。あの顔合わせの事件から今日まで匙は緊急時以外は悪魔業をせずに屋敷で謹慎。ひたすら精神修養のために滝に打たれていた。そして、今日でその謹慎も解ける。

 

 

「そして、貴方には兵藤一誠くんと協力してもらいます」

「は? 何故です?」

 

 

流石に、あの一件は自分が悪かったとはいえ一誠に対して好感は持っていない。あの時のように激高することはないが何故という疑問がわく。

 

 

「実は、数日前にリアスたちの下に教会……つまりは天使勢力ですね。その人間がやって来ました。内容は、バチカンやその他の施設より奪われた聖剣エクスカリバーの奪還のため、駒王町を動き回るとのことです。

 

 

エクスカリバーを奪った連中の中に悪名高き『皆殺しの大司教バルパー・ガリレイ』が混ざっており、調べた結果駒王町に潜伏していると発覚したらしい。そのため、バチカンは聖剣奪還任務をエクソシストたちに命じた。その際、駒王町にかつて住んでいたという紫藤イリナと、彼女とコンビを組んでいたゼノヴィアという二人の少女を伝令役とし、他のエクソシストたちは別ルートで駒王入りしたという。

 

 

「お姉さま---コホン。セラフォルー・レヴィアタン様からもこの件に関しては同じくらいの時間に連絡が来ています。現状は、駒王町の重民に被害がない限りは教会勢力の動きを制限しない。もしものために、冥界単独最強戦力であるマッキーの派遣を検討中とのことでした」

「……つまり、本来ならば我々が何かアクションを起こすことはなかったと」

 

 

匙の言葉に頷く。ただ単に聖剣を奪還するだけならマッキーの派遣を検討する必要もないのだ。最悪「失敗したら君たちも教会の連中のサポートをするように」とソーナとリアスに言っておけばいい。だが、それができない理由があるということ。

 

 

「確定ではないのですが……堕天使コカビエルの関与があると」

『ほう? 聖書に名が記されている堕天使か』

「へぇ」

 

 

堕天使コカビエル。『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部であり、かつての戦争では最前線に立って悪魔や堕天使たちと死闘を繰り広げたという武闘派として知られている。その堕天使が関与している疑いがあるのなら、セラフォルーの懸念も理解できる。実力で言えば、四大魔王と同等。流石に全盛期ほどの力はないとはいえそのような存在が動いているのなら、自分たちでは荷が重い。

 

 

「また、それだけではなく……昨日リアスの『騎士』である木場祐斗が、フリード・ゼルセンと遭遇しています。その際、フリード・ゼルセン本人から聖剣をバチカンより強奪したと言われており、尚且つフリード・ゼルセン自身もエクスカリバーを所持していたので事実でしょう」

「……」

 

 

フリード・ゼルセン。その名前をソーナが口にした瞬間、匙の目が鋭くなった。兵藤一誠が悪魔として、『赤龍帝』として覚醒するきっかけとなった事件。主犯の堕天使の名前を冠して『レイナーレ事件』と呼ばれている一件において、姿を表した元エクソシスト。一誠たちからは倒したと言われたが、死体等は発見できず隙を見て離脱したと思われいた男が、再び駒王入りしとある事情で町内を歩いていた木場と遭遇。その場で戦闘になったが、木場は手も足も出ずに敗北。木場を探していた一誠とも戦闘を行い、こちらも完封されたらしい。

 

 

「兵藤くん曰く、前に戦った時とは何もかもが違っていたらしいです」

「寧ろあのキ印が殺さなかっただけで驚きなんですが」

 

 

匙はフリードと自分は似ているがそれは『畜生』という本質であって、それ以外は全く違うと判断している。もっと言えばフリードには快楽殺人犯の気があると思っている。機会があれば、木場たちなど殺していただろう。だが、それがなかった。

 

 

「それには理由が2つあります。一つは、フリード・ゼルセン自身が木場くんたちをメッセンジャーとしたこと。内容は、元士郎。貴方への宣戦布告です」

 

 

フリードは木場の攻撃を難なく躱し、魔銃らしきもので四肢を撃ち抜き、ダガーナイフ型の魔剣らしきもので木場を剣ごと袈裟斬りにすると、塀に蹴り飛ばす。追撃を加えようとしていたところに一誠と小猫が参戦。この二人も圧倒すると、一誠の胸を踏みつけながら告げたらしい。

 

 

『オメェらみたいな奴には興味ありませーん。あの何つったっけ? あ、ブリトラ使いだわ。そいつに伝えておけ。今、殺し合いに行きますってな!』

 

 

その後、追撃を仕掛けようとしたのだがどこから現れたのかゼノヴィアが参戦。一誠曰くフリードに何度も戻って来いと叫びながら攻撃をしており、フリードは悪態をつきながら撤退したという。

 

 

「フリード・ゼルセンがそういった以上、貴方を襲撃してくる可能性が高い。そこでリアスと協議した結果、兵藤くんと木場くん、塔城さん……そして紫藤イリナさんとゼノヴィアさんとチームを組んで聖剣捜索に当たることになりました。これは、すでにセラフォルー様経由でバチカンにも連絡済みです」

 

 

つまりは、聖剣強奪犯の一味であるフリードが現れる可能性が一番高いのは匙のところ。ならば、そこに人員を集めればいいと判断したのだ。

 

 

「……やれと言われればやりますが……教会側のエクソシストたちは?」

「……全員死亡が確認されました。現場に残っていた遺留品より、犯人はフリード・ゼルセンと思われます」

 

 

しかも、全員がブラジルの風土病に罹り死亡というありえない死因。恐らく、神器を使用しての奇襲でやられたのだろう。

 

 

「病を誘発する神器の存在は確認されています。もし、フリード・ゼルセンがそれを入手している。そして、それで無差別にやられれば手のうちようがありませんので---」

「俺が動いてフリードを殺せ、と」

「ええ。流石に、教会のメンツをこれ以上潰せば余計な火種を作ることになると思われたので、紫藤イリナさんたちと協力。また、今回の話が出る前から彼女たちに協力していた兵藤くんたちもです」

「了解です」

「元士郎? 復帰早々暴走はしないでくださいね? それと……無事に帰ってきてください」

 

 

ソーナの言葉に匙は敬礼で応える。もうあのような無様は晒さない。ソーナに必要なのは狂犬ではない。猟犬だ。匙は深く心に刻んだ。そして、だからこそフリードは逃さない。アレはチャンスが有れば確実に殺しておくべき存在。放置しておけば取り返しの付かない事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フリード。件の赤龍帝はどうだった?」

「んあ? まぁ、前よりかは強くなっていたけど……まだっすねぇ。噂じゃあフェニックス家の……ライザーだかランサーだかとやり合って勝ったらしいけど」

 

 

駒王町のとあるホテルの一室。そこにはスーツを着た長髪の壮年の男---コカビエルとジーパンにタートルネックのシャツにジャケットを羽織ったフリードがいた。

 

 

「つーか、堂々とホテルに泊まるって……旦那って大胆なのね」

「俺の顔なぞ各勢力の上の連中しか知らん」

 

 

故に、『大物』がいない今の駒王町に自身を知る者などいないのだ。だからこそこうやって外国人観光客を装って真昼間に堂々と街に入ってこられた。

 

 

「しかし……やはり人間はすごいな」

「おんや意外。てっきりレイナーレ達みたいに人間見下してんのかと思ってましたわ」

 

 

コカビエルはワインを片手に窓から見える夜景と、その中にいる人々を心から賞賛している。フリードはそれが意外だった。フリードが知る堕天使とは、レイナーレ達みたいに多種族を見下している連中ばかり。傭兵として会った人外たちも大なり小なり人間を見下していたのだ。

 

 

「ククッ……忘れたのか? 俺やアザゼルたち聖書に記された堕天使は人を愛して追放されたのだぞ?」

『確か、アザゼルが最初に人間の女に欲情して堕天したんだったか?』

「流石はパズス。よく知っている。アイツは速攻で堕天して速攻で女と交わったぞ』

「わーお。流石は堕天使のボス。色々速いのね。アッチの方も速かったりして」

「……装弾数は多かったぞ?」

「……すんません。いや、マジですんません」

 

 

コカビエルも仲間のそのような事は話したくはなかったのだろう。目をそらしてつぶやくと、フリードもいたたまれなくなって謝罪した。何度か仕事の関係でアザゼルに会ったことはあるが、まさかあれだけ女好きをアピールしておいてアッチが速いなど。ちなみに、パズスは大爆笑していた。

 

 

「んんっ---とにかく、俺達は人を愛したからこそ堕天したのだ」

 

 

故に自分たちは人間たちを見下してなどいない。レイナーレたちは堕天使同士の子出会ったゆえに知らないだろうが、グリゴリの上層部の連中は全員人間の妻や夫を娶ったのだ。そして、子を成したものもいた。それはひとえに『人間』を愛しく思ったから。自分は勿論のこと、アザゼルやシェムハザ、バラキエルにアルマロスにベネムネ達全員が『神の子たち』を心より愛した事に後悔はなかった。だからこそ---。

 

 

「フリード。お前はこれから苦難の道を行く。それは修羅道と言っていい。覚悟はあるのか?」

 

コカビエルにしか見えない星たちの動きが見える。それは、自身の後ろにいるフリードを象徴する星。そして、その星はフリードの行く末を示していた。

 

 

---『占星術』は星々の動きや位置で吉兆を占い、それを指針として日々を生きていって欲しいとコカビエルが人間たちに教えた知識。その存在を象徴する星『宿星』とは種族など関係なく存在する。コカビエル自身にもあるし、ゼウスやアマテラス、果てはかの伝説のドラゴンたちにも。そして、コカビエルは『占星術』に関してはずば抜けて才能があった。聖書の神がそのように作ったのかもしれないが、コカビエルには対象の名前と顔さえ分かればその存在の行く末すらも分かる。

 

 

故に、フリードのこれから進むべき道も分かってしまった。それは、血塗られた道。それは決して人間が歩むべき道ではない。だからコカビエルはフリードに問う。

 

 

---覚悟はあるのか?と。

 

 

「ハッ---上等。どうせ俺みたいな破綻者はいわゆる平和な道ってのは歩けねぇ。畜生道だろうが修羅道だろうが突き進むだけよ。久しぶりにゼノヴィアとかいう『思い出』と会ったけどよぉ。何も感じなかったな。あいつは俺をどうにかして連れ戻したかったようだが……無理だわ」

 

かつて自分に愛していると言った少女は、破綻者で畜生であるフリードから見ても美しく育った。あれほどなら男も放っては置かないのではないか? 多分、誘惑すれば禁欲を良しとする連中ですらコロッといってしまうだろう。それほどまでに美しく女として成長した。 だが---。

 

 

「ここで映画ならかつての幼なじみに説得されてグラッと揺らいで、クライマックスで改心するんだろうけど……無理だわ~。あの顔見たら汚したくて仕方なかったわ」

 

 

フリードは何てことないように笑う。こちらを見るゼノヴィアを見た時、フリードの心は後悔も何もなかった。ただ、ゼノヴィアを汚せばどうなるのか? ここで赤龍帝を殺せばゼノヴィアはどうするのか? 教会はどう出てくるのか? そのような事ばかり考えていた。

 

 

「俺は結局クズで畜生で破綻者だ。パズスと契約したからじゃねぇ。この世界に生まれ落ちた時からこうだったんだろうな。孤児院にいる時も、エクソシストとして悪魔討伐をしている時も何か違うと思っていた。パズスと会ってようやく自覚したんだよ……『俺』を。自分以外を殺したくてどうしようもない俺を」

 

 

 

フリードはある任務でパズスと出会い契約した。きっかけは何だったかは覚えていない。確か、隣にゼノヴィアがいた気もするがもはや記憶に無い。だが、その時自分は自分を知った。種族の区別なく三千世界の全てを殺し尽くしたいと思う自分を。滅尽滅相を願う自分を。

 

 

「俺は教会の教義で言うなら異端で罪人で地獄に落ちるべき存在だろうよ。でも俺はこのまま俺が思うがままに生きていく。死んだときゃ死んだ時だ」

 

 

そう簡単に死にたくはないが、殺し合いの果てに死ぬなら別にいいかと思う。誰が自分を殺すのか? 教会か? ゼノヴィアか? 赤龍帝か? それとも---。

 

 

「匙元士郎……今んとこお前との殺し合いが一番楽しそうだわ」

 

 

だからこそメッセンジャーを無理やり作った。やはり少しでも楽しめるほうがいい。フリードは嗤う。自分が持つ2つの武装は自分と相性が良い。自身が契約してるパズスに鬼の王の怨念が染み付いた妖刀。どちらも死を撒き散らすもの。その全てを持って自分はこの道を進む。その先に破滅があろうか知った事か。

 

 

「俺は俺に誓うぞ---滅尽滅相」

 

 

そう宣言するフリードをコカビエルはただ静かに見ていた。




ね? コカビエルは水銀じゃなかったでしょう?

え? フリード? でぇじょうぶだ畸形嚢腫は持ってねぇ
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