ハイスクールD×D~チンピラ匙くんが行く~ 作:シグマ強攻型
コカビエルはケルベロスたちに向かうリアスたちを見て物思いに耽る。フリードはコカビエルの横に座り、未だ動かない匙を見ている。
「オラァ! ドラゴンショット!」
『相棒。右からくるぞ』
「イッセー! 伏せて!」
一誠たちはゼノヴィアも交えてケルベロスに立ち向かっている。粗削りで連携もまだまだだが、なにげにケルベロスを二匹相手取っている。何より覚醒した二天龍の片割れのサポートがあるのが大きい。あれでだいぶ楽にはなっている。
「おりゃあ!」
「流石にまともな武器もない状態ではきついぞ!」
「そうは言ってもどうしようもないです!」
一方のソーナたちは攻撃の要とも言える匙が未だ気絶しているため防御一辺倒だが、それでも大した怪我すらなくケルベロスの攻撃を耐え切っている。ヴリトラも未だ復活していないところを見ると少しやり過ぎたかと思ってしまう。だが---。
「やはり……種族関係なく必死に生きる姿は美しい」
「随分と余裕ね。貴方の目的は何!?」
リアスの叫びにコカビエルはただ微笑むだけ。フリードはその横でカップ麺をすすりながらパズスと「ケルベロスをこいつらが何匹倒せるか」と賭けをしていた。
「俺のような堕天使ごときの目的など知る必要はない」
コカビエルたち堕天使はその名の通り堕ちた天使。かつてはミカエルたちと同じく聖書の神の命に従って生きてきた。そしてある時、人の営みを見てみたいとアザゼルが仲間や友人たちを連れて人間の世界に降りようとした。勿論、聖書の神はそれを禁じた。理由は分からなかったが、おそらくは人間という存在をこれ以上進化させたくはなかったのだろう。ただでさえアダムとイブをエデンより追放したことを悔やんでいたのだ。だが---。
「聖書の神の愛とはいわば無垢への愛。しかし、それは違う。それは真の愛ではない」
コカビエルはアザゼル達みたいに人間と交わることはなかった。だが、決して人間とそのような行為をすることを忌避していたわけではない。十数年前にバラキエルが結婚し、子供ができた時などいの一番に駆けつけて祝福をした。そして、まだ自分たちが堕天した当初には人間と交わってはいないが、小さい頃から面倒を見ていた子どもたちが成長し、それぞれ伴侶を見つけて結婚の挨拶をしに来た時は心より祝福した。コカビエルはそこまで人間を愛していた。
「聖書の神の愛はいわば一から十まで行動を決め、自分の思い描く子を作ろうとする愛。実に結構だ。だが違う。それではいつまで経っても『子供』のままだ! 困難にぶつかろうと、高い壁を目の前にしようとも自分たちで考えてそれを乗り越えなければ『子供』は『大人』にはなれない」
一誠たちがケルベロスを一匹消滅させたのを見届けつぶやく。アダムとイブがエデンを追放された後に安住の地を見つけるまでどれほどの困難に立ち向かったのか。バベルの塔が破壊され、意思疎通ができなくなってどれだけの血が流れたのか。それぞれが大国を築くにあたってどれだけ争いが起こったか。かつての三つ巴の戦争に巻き込まれた人間たちもいた。
「だが、数多の困難を乗り越えて人間はここまで繁栄してきた。だが、その繁栄ももう遠くないうちに滅びる可能性がある」
「滅びる可能性、ですか」
コカビエルはある時星を見た。その時に知ってしまった。冬の早朝の水たまりに張った薄い氷の上に立つような今の状態では決して乗り越えることなどできない戦乱が迫っていると。
「赤龍帝をキーマンとして時代が動く。人間界も冥界も天界も、そして各神話体系すらも巻き込むほどの、な」
「何言って……」
「わからないならば構わない。俺の占星術など外れるべきだからな。だが、再び星の動きが変わった。赤龍帝のみだったはずのキーマンが増えた。黒龍王、白龍皇、英雄王、人修羅。赤龍帝に追加してキーマンとなるだろう者達。まぁ、黒龍王はそこのヴリトラ使いで人修羅はフリードなんだがな」
「あれ? 俺っちなんかスゲェ名前になってる。上半身脱いだほうがいい? 体に蛍光塗料で線書いたほうがいい?」
『ふむ……なら俺も実体化した方がいいか? そんでコンゴトモヨロシクと言うか? 正直使えるのザン系とムド系……あ、ランダマイザ使えるぞ!』
「バッカ! 至高の魔弾撃てんだろ!」
『ヤベェテンション上がってきた!』
騒ぐフリードたちを軽くたしなめコカビエルは一誠を見据える。その目は鋭く、直接見られている一誠だけではなくリアスたちですら息を呑むほどの威圧を放っている。
「赤龍帝。望む望まないに限らずお前たちは時代の変化の中心にいる。だからこそここで俺のような過去の亡霊に手こずってもらっては困る。お前たちが倒れる時、世界は終わると知れ」
「そんな「ゴチャゴチャうるせぇ」え?」
一誠の言葉を遮ったのは、ソーナに抱きかかえられている匙だった。未だ全身血まみれではあるが復活したのだ。そして、匙は立ち上がりソーナたちを少し下がらせると全身より触手を生やし始めた。その数は有に百を超える。ヴリトラの頭部を模した触手は涎を垂らしながら、本体のゴーサインを待っている。
「時代のキーマンだとか、お前がこんなことをしでかした理由とか、そんなことどうでもいいわ。重要なのはテメェがお嬢の敵ってことだけだ。それ以外の理由は必要ねぇ」
触手は全てケルベロスたちに殺到し、十数匹いたケルベロスは全て肉を食われ骨を飲み込まれ匙の糧となった。触手より送られてくるケルベロスの力や魂を使い自身の治癒を行う。腹に空いた穴は塞がり、消耗していた魔力等はすでに全快している。
「兵藤。お前の今までの行動に対する俺の感情なんざ捨てる。だから手を貸せ」
『ドライグよ。本来なら昔話に花を咲かせたいが、そうも言っていられん』
『む?』
「ええと匙?」
「元士郎。説明を」
一誠からすれば、匙がどこか焦っているようにも思える。それに気づいたソーナは短く問う。ソーナからすれば自分が最も信頼する眷属である匙が焦っていることに。一誠は、匙はコカビエルやフリードから視線を外さずにその問に答える。
「コカビエルは秘密裏にとんでもねぇものを持ち込んでいます」
「とんでもないもの? ケルベロスではないの?」
「リアス。いくら匙の不意打ちとは言え、倒されたケルベロスがとんでもないもののはずがないわ。多分、それ以上のもの」
ソーナの言葉を肯定するかのように、校庭の空気が重くなった。コカビエルはただ微笑見ながら空を見上げるだけ。そして見上げた空が割れ夜よりも暗い世界が見えている。
「安心しろ。お前たちの今の限界のほんの少し上の力を持っているだけだ。お前たちが一丸となれば打倒できる存在でしかない。そもそもこいつは聖餮。必ず倒される存在だ」
「うわーお。俺っちも見るのは初めてだわ。パズスは?」
『俺も、だな。だが、こうしてみると……」
それは巨大な鳥。駒王学園すら覆い隠してしまうほどの巨大な翼を持つ鳥。空間の割れ目からその鳥が頭を覗かせていた。
「知名度は低いが……それでも『終末の獣』の一匹だ」
「コカビエルの野郎はどっから入手したのか……ジズを持ち込んでいたんですよ」
終末の獣『ジズ』は、ベヒモスやリヴァイアサンと同じく『ヨブ記』にその名が記されている空の獣。少なくともこの場に連れて来ていい存在ではない。
「俺は兵藤たちと引き離されてコカビエルが作った異空間に連れ込まれたんですが、そこにこいつがいて……無様ですが手も足も出ませんでした」
「え? お前、アレに戦い挑んだの?」
頭だけで1メートルはありそうなジズと戦闘をしたという匙。一誠は信じられないというが、匙は無視。
そもそも匙の戦闘スタイルが先天的剛力に悪魔の力をプラスした徒手空拳のためジズのようなデカイ相手はきついのだ。
「でも、まだ出てこれないらしいし……フリードはヤベェけど全員でかかればイケるだろ!」
「ああ。イッセーくん。援護するよ!」
「はい!」
「待てお前ら!」
一誠と木場、小猫が動き始めたため匙が慌てて止めようとするが、その前に突風が吹き一誠の目の前にいた子猫のスカートを捲り上げ、可愛らしいピンクの下着が一誠の視界に広がる。
「うひょ「イッセーくん! 足元!」へ?」
降って湧いたラッキースケベな自体に鼻の下を伸ばした一誠。しかし、木場の声に我に返ると足元には尖った石が落ちており、思わず転けそうになるが無理やりダイブで避ける。しかしそこには---。
「……流石にカップ麺を粉落としでは俺っち食えんよ?」
「アツイーーーーー!」
ダイブした先にはフリードがお湯を入れていたカップ麺があり、そこに頭から突っ込んだ。フリードは追撃と言わんばかりに魔法瓶のお湯を一誠にかける。熱湯から逃れようとゴロゴロ転がり、何かにぶつかる。何やらいい匂いがするし、何やら柔らかいものを触っているので顔を上げると---。
「アワワワ---元ちゃんならともかく兵藤くんはイヤァァァァァ!」
「へぶらっ!?」
「ちょ桃!?」
どうやら花戎の胸を揉んでいたらしく、思い切りビンタされて再び転がってしまう。だが、今回は匙により回収される。最も、触手で縛り上げられた形だが。
「あの……匙さん。僕は何をしたんでしょうか? あと、なにげに心が痛いです」
「とりあえず殺しはしねぇから、その状態で人の話を聞け。あと心が痛いことに関しては自業自得だ」
「あの……めっちゃ強い力で締められているんですg「文句はねぇな」はい」
匙が横目で花戎を見ると頭から湯気を出して思考停止状態。それを皆が介抱しているところ。グレモリー眷属の方は、一誠の離脱でタイミングがずれた木場たちが距離を取っているところ。コカビエルは若いなと呟いており、フリードはペヤングを地面にこぼして項垂れていた。
「兵藤。お前が下着見たのも熱湯被ったのもコカビエルの能力だよ」
『どういうことだ?』
『ドライグよ。占星術と聞いて何を思い浮かべる?』
『ん? 占星術だと? 普通は星を媒介に吉兆を占う……おい待てまさか』
一誠は開放され深呼吸をしているが、一方のドライグはヴリトラたちの言葉に戦慄する。リアスたちは理解しきっていないが、ドライグはもし自分の予想が当たっていれば厄介なことになると歯噛みする。
「匙。コカビエルの能力は?」
「平たく言えば、自身の宿星を操作することで自身に『幸運』を敵には『不運』を与える能力です」
「それ、可能なの?」
「恐らく自分の宿星を操作するのはコカビエル程の実力者なら可能かと」
リアスの言葉に匙は苦々しく答える。異空間に隔離された際も、この運勢操作ともいうべき能力で『不運』にも牙がコカビエルが光の槍に弾かれたりしたことでという『相手の力を吸収し自身の強化に充てる』自分の戦闘スタイルを崩された。自身の強化ができなくとも匙には悪魔化でより強化された剛力があるし、マッキーとの模擬戦等で鍛え上げられた戦闘センスがある。だが、相手はかつての大戦を生き残り、武闘派として名が知られている存在。未だマッキーとの本気の戦闘で勝率が一割にも満たない自分では勝てなかった。
「さて、ジズが完全に姿を表すまでおよそ……30分程だ。さあ……どうする?」
「腹も膨れたし俺っちたちも参戦~」
自分たちの目の前に立つのは二人。数ではこちらが勝っている。だが、フリードはともかくコカビエルに勝てるイメージがわかないのだ。
「安心しろってオレっちがまとめて相手してやっからよぉ!」
「最悪、ジズさえなんとかできりゃあいい。兵藤! あのクソ神父の相手は俺がするからテメェらでなんとかジズをやれ!」
「え? でもコカビエルが「あの野郎は早い話が俺らがこの局面を乗り越えられればそれでいいんだよ!」」
フリードの放つ弾丸を匙は両腕で弾いて吶喊。コカビエルとの距離も縮まるがコカビエルは手出しをしてこない。時折、流れ弾が来たらそれを弾くだけ。一誠たちがジズに一斉攻撃をかけてもそれを邪魔することはなく、ただそれを微笑みながら眺めるだけ。
「完全に眼中にないってことかしら」
「リアス。それならそれで構わないじゃない」
リアスの苛立つ声にソーナが答える。ソーナとしてもコカビエルの態度は気に入らないが、ジズは無視してはならない。頭だけでも1メートルある巨体。ただ羽ばたくだけでも被害は甚大になる。
「リアスの消滅の魔力でも毛ほどの傷もつかないなんて……」
「心折れそうよ」
「ドライグ。なんかいい案ないのか!?」
『大きさが違いすぎる。アリンコがゾウを倒すにはどうすればいいと言っているようなものだ』
全員で攻撃を仕掛けても目立った傷もできない。リアスの消滅の魔力でも大きさが違うため例えるなら髪の毛を一本消滅させた程度。それなのにジズは徐々に穴から出てきており、時折上げる鳴き声だけで空気が震える。
「どうした? ただ体が大きいだけの鳥だ。さあ……全力を尽くせ」
「デュランダルですら弾いたのだ、どうすれば……」
復活したゼノヴィアがデュランダルを振るっても弾く。ソーナの高圧縮ウォーターカッターも効果なし。朱乃と木場の雷撃でも意味が無い。一誠たちが殴りかかろうとしても鳴き声で動きが止められる。匙が動こうとしてもフリードに阻害される。
手詰まり。そう評するしかない現状。すでに体の半分まで出てきた終末の獣はその両目にソーナたちを映す。そして、ジズは嘴を開き魔力を吐き出そうとする。ただの魔力弾と侮るなかれ。それはいうなれば魔力の津波。防ぎきる事は不可能に近い---。
「どうした? 早くジズを「若者に無理な注文をつけるのは感心せんな」む?」
---規格外の存在でなければ。
「テュポーン」
『おう。確かにこれはひよっこ共ではキツイな』
マッキーの右腕から放たれるかつて世界を滅ぼしかけた噴流の衝撃はジズの口に叩きこまれ、体内を破壊しつくし、それでも止まらず衝撃を体外へと吐き出させ文字通りミンチへとその姿を強制的に変えさせる。
「コカビエル。お前は急ぎすぎているな」
「なるほど。お前が来るか……原初の殺人者にして大罪人トバルカイン」
「その名は捨てた。今の俺はセラフォルー・レヴィアタンの眷属のマッキーだ」
冥界単独最強戦力マッキーこと大罪人トバルカイン参戦。
コカビーの占星術は某エロゲのケバタケです。あれってやっぱりエロゲ版ジョジョだよなぁ。スタプラみたいな奴おるし、
フリードとパズスはフリーダム。
マッキーの名前がカインじゃなくてその子孫なのはわざとなのでご心配なく。
次回は、チンピラの戦いですよ。
あとリアスたちの影が薄いのは仕様です