ハイスクールD×D~チンピラ匙くんが行く~ 作:シグマ強攻型
少年が進むそこは冥界の中心部。少年は周りの奇異の目を気にせずに街を進む。
「周りがウゼェ」
『多種族がいればそうもなる。周りなど気にするな』
「チッ」
少年は不機嫌な顔を隠すことなく歩く。そして、10分ほど歩いた所に依頼人の指定した場所はあった。そこには―――。
「待っていたよ。『突然変異のヴリトラ使い』君」
「アンタは……確か、サーゼクス・ルシファーだったか」
「ああ。私が四大魔王の一角サーゼクス・ルシファーという……今日はよろしく頼むよ?」
圧倒的強者がいた。自分が最強と思っていたわけではない。だが、それなりに強いと思っていた。だが、違う。目の前に居るのは片手間に自分を殺せる存在。
「(これが魔王かよ―――!)」
『(然り。今の我が半身では勝つどころか戦うことすら不可能な存在。後ろにいるセラフォルー・レヴィアタンとアジュカ・ベルゼブブも同様の存在よ)』
サーゼクス・ルシファーだけではない。その後ろにいる男女も自分とは比べることすらおこがましい強者たち。少年は折れそうになる足に力を入れる―――ここで屈すれば死ぬ。それだけは認められない。今まで文字通り全てをかけて生きてきたのだ。
「初めまして。貴族とかの礼儀作法は知らないし、生まれてからまともな育ちじゃないので名前もないが……今回の依頼を受けたヴリトラ使いだ」
「いやいや。気にしなくていいよ。しかし、話に聞いていたよりしっかりしているね。仲介屋から聞いていたけども―――言っては悪いが、もっと常識知らずかと思っていた」
自分はヴリトラのおかげで最低限の礼儀は知っている。だが、それ以上は知らない。仲介屋もそれを分かっているからこそサーゼクスに伝えていたのだろう。まぁ、それを面と向かって言うのもどうかと思うが。
「まぁ、俺には勿体無い保護者が居るんでね。ヴリトラ」
『応。さて、久しぶりというか何というか……我が半身共々よろしく頼むぞ?』
「ほう? 本当に『黒い龍脈』のみだというのにヴリトラの意思があるのか」
ヴリトラの声に妖しげな雰囲気を纏う男が口を開く。少年はヴリトラ自身から聞いていたが、ヴリトラという存在はかつて幾分にも分割されたらしく、複数あるヴリトラの神器を融合させねばならぬのに『黒い龍脈』のみでヴリトラの意思が目覚めるのはありえないことらしい。本人――又は本龍曰く『意思自体は我が半身が所有していた神器にあった。そして、赤子だった我が半身が本能で周りの『全て』を手当たり次第に食らい続けた結果何かの拍子に意思が目覚めた』とのこと。まさしく偶然。
「時間があれば調べてみたいところだg「はいはい! そんな小難しい話は終わり! それよりもキミがソーたんの護衛なんだよね? ふむふむ~」おっと。紹介しておこう。彼女が君の依頼人であるセラフォルー・レヴィアタンだ」
「……どうも」
話を強制的に終わらせたのは後ろにいた女性。と言っても、その出で立ちはツインテールにヴリトラに教えてもらったアイドルとかいう職業の女性が着ているようなフリフリの洋服。魔王の一角というには何かが足りないその姿に面食らったが、それを飲み込み頭を下げる。
「固いな~……まぁいいか! さぁさぁ、早速ソーたんのところに行くよ!」
「その前に一つ。何故俺を? あんたらは魔王だ。信頼できる部下も居るはずだ。それでなくても貴族なんだから俺みたいな不審者雇う必要はないだろう」
少年のその言葉に魔王たちは三者三様の顔をする。妖しげな雰囲気の男―――アジュカ・ベルゼブブは興味なさげな顔を。サーゼクスは困ったような顔を。セラフォルーはよくぞ聞いてくれましたと言いたげな顔を。
「俺は知らんぞ。というか、俺は突然変異のヴリトラ使いを見に来ただけだ」
「私は……まぁ、一応友人の妹の事だし、ね?」
「フッフッフ……よくぞ聞いてくれました! といっても、別に大したことじゃないよ? 悪魔ってのは欲望に忠実だからね。端的に言えば、君をソーたん……私の妹のソーナ・シトリーの眷属にしようかなって? 突然変異のヴリトラ使いなんて将来性ある存在がソーたんの眷属になれば、ね?」
「……」
実に『悪魔』らしいというか。アジュカは、ただ自分を見に来ただけ。サーゼクスも同様。だが、セラフォルーは違った。要するに目の前の女は自分を妹の眷属にしたいのだ。悪魔たちは昔に起こった戦争で数を減らしているらしい。故に『悪魔の駒』というアイテムを使い多種族を転生悪魔として自勢力に加えているという。なるほど自分は子供なのにはぐれ悪魔の討伐ができる程の強さ。そして、五大龍王のヴリトラの意思とも友好。たしかにそれだけ見れば優良物件だろう。だが―――
「生まれも育ちもまともじゃない。礼儀作法なんざ最低限しか知らない。はっきり言って野良犬だぞ? そんなのを自分の妹の眷属にしたいのか?」
「でも、犬って飼い主には忠実だよね?」
「俺がアンタの妹に首輪をつけられるのをよしとすると?」
「うん。私はソーたん……ソーナが大好き。目に入れても痛くないし、ソーナはいずれ私以上の存在になると確信している」
そこには先程までのアイドルのような笑顔はなく。四大魔王が一柱の笑顔があった。
「あなたのことは調べられるだけ調べたよ? まだ親元でぬくぬくと暮らしている年齢だというのにゴミ山の中で目覚めて残飯を漁って、はぐれ悪魔を狩って日銭を稼ぐ。日銭を稼ぐ以前は泥水を啜ってネズミ等を『黒い龍脈』で捕食。知恵をつけた頃には肝試し感覚で路地裏に来た学生とかを襲撃して身ぐるみを剥ぐ。うん! はっきり言って野良犬だね! いや、もっとひどい……人の形をしたナニカだね」
「……チッ」
笑顔のまま自分がやってきたことを言われる。別に後悔しているわけではないし、生きるために自分の意志でやってきたことだ。だが、こうも笑顔で言われると思うものもある。
「でもさ? そんな野良犬だからこそ……忠犬になれると思わない?」
魔王らしく妖艶な笑みを浮かべてセラフォルー・レヴィアタンはそう言い放った。
うちの魔王少女はこんな感じ。