ハイスクールD×D~チンピラ匙くんが行く~   作:シグマ強攻型

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ちょっと駆け足かも。


第2話

 

 

「さぁさぁ! こっちにソーたんがいるよ!」

「はぁ……」

 

 

面通しをしていた部屋から連れだされた少年は、ルンルン気分で前を歩くセラフォルーを見る。先程までの魔王然とした態度はなく、初めて口を開いた時のような口調で歩を進める。

 

 

「(ヴリトラ。どう思う?)」

『(嘘は言っていない。アレは真実我が半身を自身の妹の眷属にしたがっている)』

「(正気かよ)」

 

 

自分より長い時を生きているヴリトラが言うのだ。本当に自分を妹の眷属にしたがっているのだろう。だが、自分の育ちくらいどのようなものか理解している。先程からすれ違う悪魔たちが自分を見る目が汚いものを見る目であることくらい分かる。だからこそ理解できない。仮にも妹を溺愛していると宣言した目の前を歩く魔王が、何故野良犬の自分をそこまで評価する? 妹がどのような目で見られるかくらい分かりそうなものだが。

 

 

「アンタ……正気か?」

「ん~? 何が~?」

「俺を妹の眷属にしたがっていることだよ。俺のことを調べてんなら分かってんだろ? 野良犬というか、あんたらからすれば下賤の輩だろうに」

「お~。そんな難しい言葉知っているんだねぇ? 優秀な保護者だね!」

「チッ」

 

 

さっきからこのように暖簾に腕押しの状態が続いている。真意を問おうとしてもはぐらかされる。

 

 

「さて、と。着いたよ。この部屋に私の可愛いソーたんが居るんだ。しっかりと挨拶お願いね? これから長い付き合いになるんだから」

「もう決定かよ。魔王さまは妄想癖があるようで」

「絶対にキミはソーたんの眷属になるよ?」

 

 

何を聞いても変わらないセラフォルーに毒づくもかわされる。苛立ちを隠す事なく開かれた扉に入っていく。その先には陽だまりの中で静かに本を読んでいる少女がいた。少年はその少女を見て息を呑んだ。ヴリトラは少年に気づかないように微笑んだ。

 

 

「やっほー! ソーたん元気かなー?」

「お姉ちゃん……ソーたんはやめてって」

 

 

ものすごいスピードで本を読んでいる少女に飛びついて抱きしめるセラフォルーに驚きつつ少年は少女を見る。自分と同年代と思われる少女は、抱きついている姉にやめてと言っているが本気ではない。むしろ嬉しがっている。

 

 

「(ヴリトラ)」

『(うむ。言うだけあって将来性はあるな)』

 

 

自分には分からないが、ヴリトラは少女―――ソーナ・シトリーに将来性を見たらしい。ヴリトラが言うのだ。それは真実なのだろう。だからこそ余計に理解できない。何故自分を?

 

 

「さて、ソーたん。この子がソーたんの護衛だ! 名前は……なんだっけ?」

「親の顔も知らないので名前なんざ知らねぇな」

「―――え?」

 

 

セラフォルーの言葉に思い切り舌打ちをしながら答える。ソーナは親の顔を知らない、名前がない事に驚いて言葉を詰まらせたが、少年は気にしない。

 

 

「うーん。名前が無いと不便だねぇ。ヴリトラ使いくんだと、他のヴリトラ使いが現れたら混乱するし……よし! ソーたん。この子に名前をつけてあげよう!」

「え!? おねえちゃん!?」

「あぁ!?」

『セラフォルー・レヴィアタン。どういうつもりだ?』

 

 

魔王少女は笑顔でとんでもないことを告げた。確かに自分で野良犬を自称していたが、流石にこうまであからさまに言われると腹も立つ。ソーナも護衛として連れてきた少年の名前をつけろと言われて声を荒げる。

 

 

「ん~? でも、キミ自分で野良犬って言ってたよね? 飼い犬には名前をつけないと」

「知るかボケェ!」

『落ち着け。我が半身よ!』

「え? え?」

 

 

ニコニコと恐ろしいことを告げるセラフォルーに殴りかかろうとする少年。ヴリトラが少年の影より触手を出して拘束する。言動を見るとセラフォルーに非があるが、ここは悪魔の本拠。殴りかかろうとすれば「下賤の輩が魔王を害した」とこの場で殺されかねない。大事な半身をここで失う訳にはいかない。この少年はまだ知らないことが多い。それに伝えてはいないが、ヴリトラ自身はセラフォルーが言っているソーナ・シトリーの眷属になるという提案は受け入れたい。何が悲しくて息子のように思っている少年をあのような劣悪な環境で育てなければならないのだ。

 

 

『セラフォルー・レヴィアタン。訂正してもらおうか。我が半身はそのような存在ではない』

「うーん。ちょっとふざけすぎたかな?」

 

 

少年を拘束したままヴリトラは告げる。その声にははっきりと怒りがあった。セラフォルーは流石にやり過ぎたかと頬をかいて頭を下げる。少年は面食らいながらもその怒気を納はしない。ソーナはオロオロとしているが仕方あるまい。

 

 

「ごめんね? ちょっとおふざけが過ぎたね。お茶を持ってこさせるよ。キミ、紅茶は好き?」

「……」

「ありゃりゃ」

 

 

完全に嫌われたかな?と呟きながらセラフォルーはメイドに紅茶を用意させるために部屋を出る。残されたのは拘束を解かれた少年とおねえちゃんがごめんなさいと謝るソーナ。

 

 

「その……おねえちゃんが……」

「別にアンタのせいじゃねぇ」

「うん。全部私のせいだからソーたんは嫌わないでほしいな」

 

 

ティーセットを持って苦笑するセラフォルーが現れ、三人とも椅子に座り少年の視線が冷たくなった所でセラフォルーが口を開く。

 

 

「まずは謝罪を「そんなのはもうどうでもいいからさっさと話すこと話せや」そう?」

 

 

内心「紅茶ってウメェ」と未知の飲み物に感激しつつも表情に出さないようにする。といっても、セラフォルーは気づいているようではあるが。

 

 

「まず、キミをソーたんの護衛にしたいのは事実」

「え? そうなの?」

「理由は? 今度はちゃんと答えてくれるんだろうな?」

「理由は……簡単にいえば、ソーたんに『絶対に裏切ることがない存在』が欲しい」

「「?」」

 

 

セラフォルーが語った少年を欲しがる理由に二人共首を傾げる。『絶対に裏切ることがない存在』は確かに貴族なら欲しいだろう。少年は貴族の世界を知らないが、そんな存在がいれば安心できるのだろう。

 

 

「まだ詳しいことは言えないけど……いずれソーたんは危険な状況に陥る。私自身がレヴィアタンって言うのもあるし、シトリー家は名家だからね。敵も多い」

「おねえちゃん……」

「……」

 

セラフォルーはそう言ってティーカップを傾ける。少年はセラフォルーのソーナを見る目に自分が知らない感情があるのに気づいた。そして、それは尊いものだと無意識に感じた。

 

 

「……依頼は前金で貰っている。俺は受けた仕事は投げ出さねぇ。眷属どうこうは関係ない。とりあえずはソーナ・シトリーの護衛は引き受ける」

「うん。ありがとう。必要な物とかあったら私に言って。用意させるから。それと……ソーたんをお願い」

「えっと……お願いします?」

 

 

金を貰っている以上投げ出す訳にはいかない。ヴリトラからも「依頼人に重大な非がないならば依頼を完遂するまでは決して裏切るな」と常日頃言われている。セラフォルーの言動は気に入らないが、ソーナを溺愛しているのは間違いではない。それがひどく羨ましい。ヴリトラに聞けば『それは、愛だ』と言われた。愛とは何だ? そう問えば『ならば、ソーナ・シトリーに名付けてもらえ。そうすれば近いうちに分かる』と返ってきた。

 

 

「名前の件は……お嬢。アンタに任せる」

「え? で、でも……」

「多分、アンタと一緒にいる時間が多くなる。なら、アンタに決めてもらったほうがいいだろ。そこも魔王は別だ」

「ありゃ。まぁ、いいけどさ」

 

 

ならば『愛』とやらを知るために目の前の少女に名づけてもらおう。名前がない俺に名前をつけてもらおう。少年は気づいていないがヴリトラは確かに気づいた。少年にある感情が芽生えたのだ。ヴリトラは言動は気に入らないがセラフォルーに感謝した。この出会いに。自分の半身であり息子にこんな出会いをくれたことを。

 

 

「えっと……匙、元士郎というのはどうでしょう? 匙という文字は『物を掬い取る』という意味があります。元には始まりや根源、士と郎には男性という意味が。その……私にはあなたがなんで名前が無いのか想像することしかできないし、多分それも想像したらダメなんだと思います。だから、私はあなたにこうなってほしいという願いを込めます。『あなたという人は今ここから始まって、困っている人を掬い上げて助けて欲しい』と」

「……畜生には出来ないことだと思うんだが?」

「だったら、私があなたを畜生では無くします。だってあなたは生きるために必死だったのでしょう? だから畜生になった……でも、生きたいと思う事は悪いことではない。だから、私はあなたを受け入れます。それに、悪いことをしたからってそれ以降いい事をしてはダメって事はないんです」

 

 

そう言って微笑むソーナに少年―――元士郎は見惚れた。

 




買っていたゲームをしつつ年末の掃除中。

タムソフトって結構癖あるキャラですな。
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