ハイスクールD×D~チンピラ匙くんが行く~   作:シグマ強攻型

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今回は地の文少なめ。

父親ドラゴンの片鱗現る。


第3話

 

「さぁ! 元士郎。次はこっちです!」

「……領内とは言え仮にもシトリー家のお嬢様が走り回るのはいいのか?」

「中心部ですし、大通りとかなら問題無いですよ! それに、あなたもいるでしょう?」

「お嬢……頼りにしているのはいいんだが……」

 

 

ソーナに手を引かれて匙はシトリー領の中心部を歩く。正式に雇われたので呼び方を考えないとと思ったが、そもそも「ソーナお嬢様」だったらなんか自分自身合わないし、呼び捨てでは護衛としてダメだろう。結局、セラフォルーより「沸点低いし言動も外見もチンピラだからお嬢でいいんじゃない?」と言われたのでそれでいくことにした。ただ、チンピラという言葉にはムカついたので触手を伸ばすが何てことないように弾き落とされた。やはりまだまだ力の差は大きすぎる。そう思いつつもソーナが街に出ようと提案してきたため緊急用の連絡手段としてヴリトラの触手の一部をシトリー卿に渡しておく。

 

 

「ほう? こんな芸当もできるのか」

『まぁ、かつては魂を分割されたからな。この程度大したことではない。『偏在』とでも言えばいいか?』

 

 

恐らくこの芸当ができるのは今のところ自分くらいだと。かねてより技巧派だった自分だからこそ簡単にできるのだとヴリトラはシトリー卿に告げる。

この状態でもヴリトラは匙と一体化している。今はまだ同時に二つしか意識を割くことが出来ないが、いずれは触手の数だけ意識を割いてみると豪語するヴリトラ。シトリー卿は内心本当にいい存在と知り合えたと自身の娘に感謝した。

 

 

『ここだけの話。我もセラフォルー・レヴィアタンには感謝している。我が半身は一人でも生きていくことは可能ではある。しかし、な』

「まぁ、所詮はまだ子供。それに、貴殿のみでは教えられることも限られると?」

『うむ。簡単なことなら我も教えることができる。しかし、それ以上は無理だ。どこまで行っても我は龍。悪魔や天使、堕天使たちは人の世界に溶けこむことができる。そして人の常識を知ることができる。だが、我は無理だ。ティアマットのように人に化けられるわけでもない。ドライグやアルビオンのように自身の内に人が居るわけでもない』

「この世界で一番数の多い人間の事を深く知ることは出来ないと?」

『うむ。どれだけ強大な力を持とうとも、結局大勢に溶けこむことができなければどうしようもない。我が半身はそこを知らぬ』

 

 

ヴリトラにとって匙は息子も同然である。もし、匙と話すのがもっと歳を経ていたらまた違う関係になったかもしれない。だが、ヴリトラが覚醒したのは匙がまだ赤子だった頃。最初は理解できなかった。魂が分割された自分が覚醒することも驚いたが、周りの物を際限なく『黒い龍脈』で捕食し続けていた匙にも驚いた。

 

 

『とにかく必死だったのだろうな。ネズミや泥水、果ては地面や建物すらも捕食していた。我が気づいて制御しなければどうなっていたか』

「まぁ、いずれは体が崩壊していたでしょうな」

 

 

本能のまま捕食し続ければいずれ匙が壊れていた。だからヴリトラが触手を制御し、ネズミや廃棄されたコンビニの弁当などを捕食していた。幸いにも匙がヴリトラを自分を守る存在と認識したのか全てヴリトラにまかせたため匙が壊れることもなく成長していった。

 

『子育てなど生まれてこの方したことがなかったからな。触手で書物を取り寄せたのもいい思い出よ』

「かつて『黒邪の龍王』と呼ばれたヴリトラ殿とは思えませんな。他のドラゴンたちが知ったら何というか」

『案外ティアマットあたりは共感するかもな。奴は恐れられてはいるが情が深い女でもある』

 

 

匙が初めてハイハイした時のこと、自分のことを名前で読んだ時のことなどを嬉しそうに話すヴリトラにシトリー卿は苦笑する。かつて恐れられていたドラゴンの面影などそこにはなかった。

 

 

『我は我が半身には幸せになってほしい。他の連中のように友を作り、愛する者を作り、子を成し生きて欲しいのだ、そのためにはまず『普通』を知らなければならん。そういう意味では今回の話は渡りに船だった』

「悪魔ではあるが『普通』を知るにはいいということですかな?」

『うむ。ソーナ・シトリーは将来性もある。なにより、『愛』を知っている。『親愛』『情愛』にしろ我が半身は『愛』を知らぬ。母親の暖かい愛を知らぬ。父親の厳しい愛を知らぬ。我が半身にあるのは「生きる」という本能のみ。それでは幸せにはなれぬ。だからこそ、我はソーナ・シトリーに期待している。我が半身に『愛』を教えてくれるだろうと』

「まぁ、私としてもソーナの成長のため彼には期待しております。貴殿が息子を愛しているように、私も娘を愛しているのであまり言いたくはないですが……娘のそばにおいてもいいとは思っていますよ」

『ほう?』

「彼は知識はないが、教えれば水を吸うように覚える。言動こそ粗野ではあるが、誠実だ。そして、自分がすべきことを理解している。我々のような貴族は時として親族すら敵となる時がある。そのような時に、全てを捨ててでもそばにいる存在は貴重なのですよ。私は彼がソーナの『忠犬』になればと思っています。セラフォルーは彼を野良犬と称していたらしいが、恩を受けた野良犬が飼い犬となれば主人を裏切ることはない。飼い犬に手を噛まれるという言葉があるが、それは先に主人が裏切っているからだと私は思っています。」

 

気を悪くしたら申し訳ないとシトリー卿は言う。だが、ヴリトラはくつくつと笑い声を漏らすだけ。

 

 

『それを言うなら我もよ。貴殿が我が半身を娘の成長に使おうとしているのと同様に我も我が半身の成長に使おうとしているのだからな』

「そうですか」

 

 

二人して笑う。二人は確信している。匙元士郎はソーナ・シトリーの眷属になるだろうと。そして、恐らく二人はいつか『そんな仲』になるだろうと。

 

 

「私は純血にはこだわりませんよ? 確かに、純血の悪魔は貴重かもしれない。ですが、時代はすでに変わっている。貴族という存在は重要です。しかし、それに拘って娘達の幸せを潰すくらいなら、ね? それに悪魔とは欲望に忠実な存在ですから。娘が『そう』思ったなら『そう』なんでしょう」

『我としては我が半身の今までを否定しないなら問題はないぞ?』

「ほほう?」

『フッフッフ』

 

 

二人は思った。恐らく、我々は親友となれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに、セラフォルーも自分の眷属に懸想をしているようでして」

『なんと! どのような男だ! 是非、我が半身の時の参考にしたい』

「匙くんとは正反対の軍人気質な男でドラゴンの神器を持っておりますが、何より誠実ですな!」

『誠実さなら我が半身も負けてはいない!』

 

 

二人の話は数時間にも及んだという。それを見ていたシトリー夫人は「あらあら旦那様ったら楽しそう」と微笑んでいたという。




うちのヴリトラはこんな感じ。匙の成長記録をつけています。

そして、最後にフラグだけ立てておこうかと。

次くらいで終わって、その次から原作の時間軸に行こうかなと。ただ、フェニックス編の結婚式辺になるかと。

ところで、原作のシトリー眷属の参入どうしましょう? ダイジェストで書くか番外で書くか……うぅむ。
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