機動戦士ガンダムSEED eventual   作:kia

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第21話 舞い散る蒼翼、砕ける剣

 

 

 パナマ基地。

 

 かつて地球連合軍に所属し、改革派の拠点として使用されている軍事基地である。

 ヤキン・ドゥーエ戦役ではマスドライバーごと無残にも破壊されてしまった。

 しかしユニウス戦役時には再建を果たし、現在では激化しているメキシコ戦線を支える一大拠点となっていた。

 

 「準備、急げ!」

 

 「滑走路のモビルスーツを退けろ、出撃の邪魔になる!」

 

 活気のある格納庫。

 絶えない声が鳴り響くこの場所ではいつ侵攻の知らせを受けても発進できるようにモビルスーツとパイロット達が順次待機していた。

 手が空いている者は休息や訓練に費やすことで非常事態に備えている。

 その表情は緊張感と使命感に満ち、兵士たちの士気が高さが伺える。

 そんな彼らを率いているのが、腰まで伸びた金髪の髪に深々とかぶる仮面が特徴的な人物ネオ・ロアノーク大佐である。

 ネオの素顔を知る者は殆どおらず、名前すら本名かどうかも窺い知れない。

 しかし、パナマ基地、ひいては改革派の中でネオに疑いを持つ者は誰一人としていなかった。

 これまでの戦績と劣勢ながら保守派を抑え込んでいるその手腕は確かなもの。

 ネオがいなければ、改革派がこうも持ちこたえることはできなかったに違いないと誰しも思っているからである。

 そんなネオの元に緊急の知らせが届いたのはいつも通りの哨戒任務から帰還した直後の事だった。

 

 「ミュンヘンで武力衝突?」

 

 ≪はい。詳細は未だ不明ですが≫

 

 「……保守派の動きはどうなっている? スウェンから何か報告は?」

 

 ≪今のところ何の報告も上がってきておりません≫

 

 オペレーターからの報告にネオは違和感を覚えずにはいられなかった。

 世界が注目する会談で起きた武力衝突。

 この機に乗じて何かを仕掛けてくるものと思ったからだ。

 しかもネオたちと対峙しているのは猛将ニコラス・フリードマンである。

 むしろ動かない筈がない。

 それとも動けない理由があるということだろうか。

 もしもそうだとすれば――

 

 「……防衛線の戦力を倍に増やせ。それから偵察部隊を出し、敵を探らせろ。特に敵部隊の配置をな」

 

 ≪了解≫

 

 これが連中の仕込み、もしくはこの状況を利用しようとしているならば必ず何かある。

 

 「……少尉もついている。皆なら大丈夫。それよりも」

 

 ネオは渦中にいるだろうアオイの身を案じつつ、今回の件を思案し始めた。

 

 

 

 

 非常通路を走ってきた車の運転席から降りてきたセレネ・ディノ中尉に全員が安堵したように肩の力を抜いた。

 敵の襲撃に備え緊張感を抱えていただけに見知った人間であった事に全員がホッとしてしまったのだ。

 

 「バレル中尉、無事でしたか?」

 

 「ディノ中尉、防衛部隊の貴方がどうして此処に? いえ、それよりも外はどうなっているんです?」

 

 レイの質問にセレネは一瞬、言葉を詰まらせた。

 その表情は明らかにこの状況が良くないと暗に示していた。

 

 「ディノ中尉?」

 

 「……いえ、正直、私も正確にすべてを掴んでいる訳ではありません。しかし外では同盟とテタルトス、地球軍保守派との戦闘が始まっています」

 

 「は?」

 

 「どういう事です?」

 

 「先ほどクアドラード大佐から全軍に命令が下りました。『ミュンヘンに存在するすべての敵対勢力を排除せよ』と」

 

 セレネの話に皆が息を飲んだ。

 

 「それでヴェルンシュタイン指令は?」

 

 「それが……」

 

 ゲオルクが襲撃者による銃撃で死亡した事を伝えるとセレネの表情は険しさを増す。

 現状を悪化させかねない話なのだから当然だ。

   

 「これは……とにかく今はこの場所からすぐにでも脱出する事ですね。皆さん、車に乗ってください」

 

 「ちょっと待ってくれ、アンタはそれでいいのか? というか信用できるのか?」

 

 警戒心を隠そうともしないハイネの制止にセレネは表情を硬くする。

 

 「今回の件、正確な所はまだ判断できない。だが、話を聞く限りクアドラードがそれなりに絡んでるのは間違いない。目的もまだわからん。しかしディノ中尉、アンタがクアドラード側の人間である可能性もある」

 

 「当然の反応ですね」

 

 「悪いな。でもこっちも守らなくちゃいけない者がある以上は、慎重にならざる得なくてな」

 

 「いえ、気にしないでください。ハッキリ言いますが証明はできません。口では何とでも誤魔化せますから。ただ、私はクアドラード大佐ではなく、ヴァリス大佐の命令で動いている事は伝えておきます」

 

 「ヴァリス……ユリウス・ヴァリス大佐か」

 

 セレネの言葉にレイは納得したように軽く頷いた。

 彼女の目的がレイと同じものであると理解したからだ。  

 セレネの目的もまたレイと同じく停戦派議員たちを守る事。

 つまり彼女は万が一の場合に備えたユリウスの保険だったという事だ。

 

 「ハイネ、俺の口から言っても信用できないかもしれないが、彼女はクアドラード大佐側の人間ではない。怪我人もいるし、時間もないぞ」

 

 「……確かに。ハァ、時間も、情報もないし仕方ないか。レイ、お前を信じさせてもらう。代わりと言っちゃなんだが出来るかぎり情報を提供してもらうけど、それでどうだ?」

 

 「分かりました」

 

 話は纏まり優先的に怪我人を車に乗せ、その後にカガリ達と護衛役が乗り込んだ。 

 そして怪我の少なかった他の者はこの先に停めてあるもう一台の車で出口を目指す。

 運転席に座り車を走らせるセレネに早速ハイネが声を掛けた。

 

 「それで最初に何があったんだ? 詳しい情勢を教えてくれ」

  

 「そうですね。まずは状況を整理しましょう。最初に起こったのは遠距離からの奇襲でした。強力なビーム砲が会場に直撃したんです」

 

 「……ビーム砲。おかしいですね、特務隊が調査した時にはそんな物この近辺には砲台等は配置されて居なかった筈ですが」

 

 周辺の情報も頭に入れていたレヴァンが訝しむように顎に手を当てる。

 

 「いえ、砲台ではありません。ビームを撃ち込んだのはデストロイです」

 

 「デストロイ!?」

 

 「ええ、改良されそれなりに小型化していたようですけど間違いありません」

 

 「それはそれで妙だけどな。いくら小型化したからって通常のモビルスーツサイズを軽く超えてる筈だろ? それが近くにあったら気がつかない筈ないけどな。何かの仕掛けで隠してたって事か?」

 

 「もしくはこちらの警備の穴を巧妙についてきたか」  

 

 「それについては現在不明です。そのデストロイと共に襲撃者が操っていると思われるモビルスーツが市街地を強襲。同盟と地球軍改革派がこれに応戦しました」

 

 アークエンジェルとミネルバはデストロイを含めた敵モビルスーツを市街地から引き離し、ミュンヘンから離脱。

 

 アイザックとドミニオン、そして特務隊は市街地に侵入した敵の排除と要人救出の為にその場に留まり迎撃行動。

 

 そこにテタルトス軍が介入した。

 

 聞けば聞くほど不味い状況に思わずカガリの顔が強ばる。

 

 「ドミニオンかアイザックに連絡が取りたいが、この状況では難しいか」

 

 「ええ。この件の裏で何が動いているのか確かめるまでは、迂闊な通信も危険です」

 

 「ではどうする?」

 

 味方にも通信できず、敵が何時現れるか分からない。

 さらに怪我人までいるとなると――

 

 「アムステルダムへ向かいましょう。あそこは完全な非戦闘区域ですからここよりはマシです」

 

 「だが、特殊部隊も入ってるとかゲオルク・ヴェルンシュタインが言ってたけど、大丈夫なのか?」

 

 「あの部隊ならすでに撤収していますよ。そもそも目的はある人物を探し出す事だったみたいですし、それなりの成果は得たみたいですから。それでよろしいですか?」

 

 「ああ」

 

 異論があろう筈もなく、カガリ達が頷く。

 車は徐々に速度を上げ通路を走る。   

 それはカガリ達の今後を示しているかのように暗く先の見えない道。

 それでも止まる事は出来ないと車は加速しながら、暗がりの中を突き進んで行った。   

 

 

 

 

 戦場に現れた黒い戦艦。

 

 アークエンジェル級と似通った造形を持ちながら、全く異質な艦。

 

 その名は『サリエル』

 

 死を司る大天使の名を冠した戦艦。

 

 地球連合軍保守派の影であるファントムペインが運用する新造戦艦である。

 サリエルの艦長席に座り戦況を眺めながら指揮を執っていたのは保守派の№2メキシコ戦線の司令官ニコラス・フリードマン少将であった。

 

 「いきなり呼び戻されたと思えばサリエルの指揮を執れとは。しかも相手があのアークエンジェルとミネルバ、全く」 

  

 「貴方以外に適任者がいなかったのです。仕方がありません」

 

 ニコラスは恨めしそうに傍に控える女性№Ⅰを見やる。

 長い髪を束ね、パイロットスーツを着込んだ№Ⅰは何時でも出撃できるように臨戦態勢を取っていた。

 気合いが入っているのか、感情を表に出さない彼女らしからぬ鋭い殺気の籠った雰囲気が伝わってくる。

 だが、ニコラスはそれも気に掛けぬとばかりに嘆息した。

 

 「メキシコ戦線の指揮もあるのだがな。ロアノークは馬鹿じゃない。私の不在を感づかれたら、一気に攻勢に出てくるぞ」

 

 「それをさせない為に部隊は配置済みの筈でしょう?」

 

 「貴様は知らんだろうが、それを見抜いてくるのがロアノークなのだ。油断していると、即座に喉元に食いつかれる。だからこそ隙を見せるべきではない」

 

 「……知っていますよ。十分にね」

 

 №Ⅰの囁くような呟きに気が付かないままニコラスは格納庫に通信を繋ぐ。

 

 「準備は出来ているか、バルマ大尉」 

 

 「こっちは何時でも。というか待ちくたびれたよ」

 

 モニターに映るアルネーゼ・バルマが不敵に笑った。

 上官に対する言葉遣いとは思えないアルネーゼの物言いにブリッジメンバーはビクビクしながらニコラスの様子を伺う。

 だが、予想に反しニコラスはただ苦笑するだけで、叱責が飛ぶことは無かった。

 

 「相変わらずか。まあ貴様なら問題なかろう。だが相手はガンダムだ、油断するな」

 

 「重々承知しているよ。それに私は油断した事なんて一度もないよ、昔からね」

 

 「だったな。では頼む」

 

 「了解! アンタ達、しくじるんじゃないよ! 特にジルベール!」

 

 「勘弁してくださいよ、姉御」

 

 「ジルベールが悪いよ。二度もアオイに煮え湯を飲まされるなんてさ」

 

 「悪かったよ」

 

 軽口を叩きながら発進準備を進めるパイロット達。

 そんな会話を聞いていた№Ⅰは不思議そうに首を傾げた。

 

 「お知り合いなのですか?」

 

 「ああ。昔の部下さ」

 

 ニコラスとアルネーゼはヤキン・ドゥーエ戦役より前から上官と部下という形で面識があった。

 パイロットとして優れてはいたがアルネーゼは我が強く、隊の方針でニコラスと対立した事もある。

 もちろん意見の隔たりはあったが、険悪な関係だった訳ではない。

 むしろ面倒見の良さで隊員にも慕われていたアルネーゼをニコラスも信頼していた。

 

 「あの頃は手を焼いたものだが、今では立派な隊長という訳だ」

 

 「感傷も結構ですが、指揮もきちんとお願いします」

 

 「分かっているさ」

 

 「では、私達も出撃準備に入ります」

 

 「ああ、頼むぞ。『サリエル』戦闘体勢に移行! イ―ゲルシュテルン、バリアント起動、ミサイル発射管全問装填!」

 

 ニコラスの号令に合わせブリッジがキビキビと動き出した。

  

 相対するは名のある英雄達を退けてきた歴戦の勇士であるアークエンジェルとミネルバ。

 

 相手にとって不足はない。

 

 ニコラスは不敵な笑みを浮かべつつ、歯ごたえのある難敵をどう沈めようかと思考を巡らせ始めた。

 

 

 

 

 地球軍の新造戦艦と三機のガンダム。

 

 追随する形で展開されている敵モビルスーツ部隊。

 

 それはここまでの戦闘で消耗しているアレン達にとって最悪の状況であった。

 

 「あの数は少し厳しいか……どうにかバルト海を抜ければ」

 

 ミュンヘンを離脱して随分距離は稼げた。

 このままバルト海まで行けたら、そこまで敵も追っては来れ無い。

 

 「それまで何とか持ちこたえないと!」

 

 しつこく追ってくるブリアレオスを容易く屠ると三機のガンダムを迎え撃つ。

 最初にエクリプスに向かってきたのはヴォルケイノカラミティだった。

 素早く滑るように地面を駆け、背中の砲口をエクリプスに向けてくる。

 

 「さぁて、相手はエクリプス。ザフトの、いや、今は『グラオ・イーリス』のエースだったね。その実力、見せてもらうよ!!」 

 

 背中から発射されたビーム砲がエクリプスに襲い掛かる。

 一撃、二撃とエクリプスを左右に振って誘導し、さらにスキュラを叩き込む。

 強烈な閃光が飛びのいたエクリプスの肩を僅かに掠め、機体のバランスを僅かに崩された。 

 

 「くっ、たく、馬鹿みたいな火力だな。フリーダムといい勝負だよ!」

 

 アレンの視界を覆うほど幾重ものビームとミサイルの嵐。

 制圧能力だけならそれこそフリーダムにも並ぶ。

 

 「当たらなきゃ意味がない!」

 

 躊躇わずフットペダルを踏み込み、思い切り加速。

 装甲を掠めながらも砲撃の雨をかわしてみせた。

  

 「このくらいは軽く避けるか! でもねぇ、それで逃げられると思ったら大間違いだよ!」 

 

 高速で上空から迫ってくるのはシュトゥルム・レイダーである。

 十八番ともいえる、速度を生かした一撃離脱。

 獲物を狙う隼のようにエクリプスを狙い撃つ。 

 

 「これ以上、失態を重ねたら姉御に殺されかねないんでね! 今日は真面目にやらせてもらうさ!」

 

 「上空から!?」

 

 口元から発せられるツォーン。

 同時に鉄球が放たれる。

 絶妙のタイミングでの連撃をどうにか捌いて後退する、エクリプス。

 しかし今度は異形の怪物を思わせるモビルスーツ、ストリーム・フォビドゥンが鎌を構えて待ちうけていた。

 

 「いらっしゃい!」

 

 「チッ、こいつら!」

 

 振り向き様にニーズへグトライデントをビームサーベルで弾き飛ばし、三機の攻撃範囲から逃れようと距離を取った。

 完璧な連携。

 カラミティ、フォビドゥン、レイダーがそれぞれの機体特性をフルに生かす形で攻撃を仕掛けてくる。

 

 「昔、戦った連中とは雲泥の差だな」

 

 かつて戦った三機の同型に乗っていたパイロットたちは個々の力は抜きんでていたが、連携はまるで話にならないレベルのものだった。

 

 しかし、今戦っている相手は違う。

 

 日頃の訓練の賜物か。

 

 指揮官の優秀さか。

    

 どちらにせよかつて戦った奴らとは比べ物にならない。

 

 「だからって!」

 

 カラミティの砲撃を潜り抜け、鎌を振るうフォビドゥンにビームライフルを叩き込む。

 

 「簡単には倒させないか!」

 

 「カーラ!」

 

 「大丈夫だって!」

 

 ゲシュマイディヒパンツァーによりビームを歪曲して逸らし、フレスベルグでエクリプスを狙撃する。

 

 「ビームが曲がる……相変わらず厄介な!」

 

 フォビドゥンの最大の特徴であるゲシュマイディヒパンツァーにビーム兵器は通用しない。

 アレンは舌打ちしながらライフルからバズーカ砲に持ち替え懐に飛び込んだ。

 レールガンがエクリプスの装甲を掠めるが気にしない。

 至近距離からバスーカ砲を直撃させてフォビドゥンを吹き飛ばした。 

 

 「きゃあああ!」

 

 「流石と言った所だね。でもいつまでも持つと思うな! ジルベール、カーラ!」

 

 「「了解!!」」

 

 三機の猛攻にエクリプスは押されアンチビームシールドによる防御に回らされてしまった。

 

 「機体の反応が鈍い! 一旦体勢を――あれは!?」

 

 ブリアレオスとの戦闘で無茶をしすぎた所為か。

 

 又はアレンの反応に機体が付いて来れなくなったのか。

 

 エクリプスの挙動が鈍く感じ始めていた。

 

 反応の鈍さにイラつきながらもアレンは何とか体勢を立て直そうとする。

 そこでモニターに映った友軍の状態に目を見開いた。

 他の敵モビルスーツがサリエルと攻防を繰り広げているミネルバ、アークエンジェルの方へ向かっていく。

 

 「あのままじゃ数で押しつぶされる」

 

 かといって援護に向かおうにもアレンにその余裕がない。

 

 絶え間なく降り注ぐ砲撃とミサイルの雨に二隻の対応が追い付かなくなる。

 

 「不味い!」

 

 「悪いけど、行かせる訳にはいかないんでね!」

 

 「ぐっ」

 

 援護に向かおうとしたエクリプスだが、レイダーのミョルニルによって母艦とは反対方向へと弾き飛ばされてしまった。

 

 他の機体も手一杯でとても母艦まで手が回らない。

 

 撃沈の二文字が誰しもの脳裏に過ったその時、強力なビーム砲の一撃がミサイルを薙ぎ払い、近づくモビルスーツを次々と射貫いていく。

 

 凄まじい射撃精度。

 

 射貫かれた敵機は成す術なく撃墜され、運よく狙われなかった者たちも二艦から距離を取らざる得ないよう誘導される。

 

 こんな事が出来る者はアレンの知る限り、一人だけ。

 

 そして想像通りの機体が戦場へ舞い降りた。

 

 広がる蒼い翼と白い四肢を持つ機体。

 

 窮地に陥った二隻を救ったのはキラの駆る量産型フリーダムであった。

 その後方からアドヴァンスアーマーを纏ったブリュンヒルデ、ランドグリーズが近づいてくる。

 

 「キラに、レティシアとニーナか」

 

 二隻の護衛をブリュンヒルデに任せ、フリーダムが両手で抜いたビームサーベルを使いながら敵を切り裂き、エクリプスの傍へ寄ってきた。

 

 「アスト、大丈夫!?」

 

 「助かったよ、キラ」

 

 「間に合って良かった。このまま蹴散らそう!」

 

 「了解!」

 

 アレンは素早く機体の挙動を確かめながら、三機のガンダムに向かうフリーダムの後追って武装を構えた。

 

 

 

 

 「ゴットフリート、撃て! ミネルバの進路を予測、ミサイルで進路を塞ぎ、動きを止めろ!」

 

 「了解!」

 

 二隻の戦艦との戦闘は概ねニコラスの予測通りに事が運んでいたといっていい。

 英雄と言われているだけあって二隻とも圧倒的に不利な状況でありながらよく戦っている。

 これも艦長やクルーたちが優秀であるが故だろう。

 

 「流石か……特にアークエンジェル」

 

 ニコラスは複雑な感情を籠めて白亜の戦艦に目を向ける。

 ザフトの名立たる名将たちを打倒し、不沈艦と呼ばれたかつて地球連合の所属していた戦艦。

 あれだけ優れた技能を持つ彼らが自軍にいれば、今のような状況も少しはマシであっただろうに。

 

 「全く、かつての上層部に文句の一つも言いたくなるな。だが、その見事な奮戦もここまでだ。すでに君達は詰んでいる」

    

 スイッチを押し、格納庫へ通信を入れる。

 

 「準備はどうか?」

 

 《こっちは問題ない。俺はいつでもいけるぜ》

 

 《……こちらもです》

 

 《準備完了》

 

 モニターの中にはジェラール、エリニス、そして№Ⅰが映っていた。

 

 「そうか。頼む」

 

 サリエルのハッチが解放され、三機のモビルスーツが姿を見せた。

 

 一機はイレイズガンダムMk-Ⅲ。

 

 もう一機は改修されたブリアレオスの強化型。

 

 GAT-07AE 『ブリアレオス・ゴライアス』

 

 ブリアレオスの強化型改修機。

 

 改良された『フォルテストラⅡ』を纏い、防御力を増すと同時に各所の小型スラスターを増設した事で機動性も強化されている機体である。

 

 そして最後の一機はイリアス。

 

 しかもただのイリアスではなく、ブリアレオス同様改良を施された新型機だった。

 

 GAT-06E 『イリアス・アキレス』

 

 イリアスの強化型改修機。

 ブリアレオス・ゴライアス同様改良された『フォルテストラⅡ』を纏い、防御力を増すと同時に各所の小型スラスターを増設した事で機動性も強化、さらに間接部を強化し無茶な機動にも対応できるようした特殊機である。

 

 出撃した三機のモビルスーツはそれぞれの目標に向かって分散、それぞれの戦場へと向かっていく。 

 

 「では予定通り、私がフリーダムの相手をします」

 

 「『戦神』は俺がやりたかったが、命令じゃしょうがない。俺が『魔神』をやる。で、エリニスは他の雑魚の掃除か。一番の貧乏くじだな」

 

 「……関係ないです。命令であれば誰だろうと排除するだけですから」

 

 淡々と答えるエリニスの肩を竦めるジェラール。 

 そんな二人を尻目に№Ⅰは静かに闘志を燃やし、フットペダルを踏み込んだ。

 

 「行きますよ」

 

 「「了解」」

 

 №Ⅰとジェラールと別れ、エリニスはアークエンジェルとミネルバの方へ向かう。  

 二隻は絶え間ない砲撃とモビルスーツからの攻撃に持ちこたえながら、徐々に後退しながら移動していた。

 援護に現れたブリュンヒルデやランドグリーズがk駆けつけたのも大きいのだろう。

 攻勢が押しとどめられていた。

 その姿を見たエリニスは今までに感じた事のない感情に支配されていた。 

 

 「何、これ」

 

 アレらの戦艦を見ているだけで、激しい感情が浮かび上がってくる。

 

 それは燃え上がるような何か。

 

 エリニスの起点ともいうべきもの。

 

 「私は、もしかすると……怒っている?」

 

 いや、怒りではない。

 

 そんな生易しいものでは、断じてない。

 

 これは――

 

 「……憎悪している?」

 

 そう、憎悪だ。

 

 憎しみだ。

 

 あの戦艦に何かあるのか?

 

 そんな戸惑いと共に燃え盛る憎悪の炎を感じながら反面氷のように冷たく暗く沈む心を意識する。

 エリニスは出来るだけ感情を押さえつけビームライフルのトリガーを引いた。 

 一直線に進んだ閃光は正確にミネルバの防衛についていたグフの腕を吹き飛ばす。

 

 「死ね」

 

 そのまま構えたビームサーベルが抵抗しようとしたグフより前に胴体を真っ二つに切り裂いた。 

 

 「やっぱり雑魚しかいないか、楽でいいけど」

 

 ミネルバからの砲撃を回避しながら、さっさと仕事を済ます為にビームライフルを構えるとそこにレティシアのブリュンヒルデが飛び込んできた。 

 

 「やらせない」

 

 「こいつ!」

 

 割り込んできたブリュンヒルデに何故か苛立ちを感じながら、ビームサーベルを叩きつける。

 しかしその一撃をアンチビームシールドで捌いたブリュンヒルデは逆にブリアレオスに斬り返してきた。

 

 「なんだ……お前は」

 

 激しい稲光が散る中でエリニスの苛立ちは膨れ上がっていく。

 

 「私は……知っている……お前を……」

 

 不愉快さ、一向に消えない怒り。

 

 それがこいつを見ていると増幅されていくのだ。

 

 

 「何だ、何だ、何だ、何だァァァ!!!! お前はァァァァァァ!!!!!」

 

  

 ブリュンヒルデを蹴り飛ばし、左手でビームクロウを放出すると一気果敢に突撃する。

 

 「何、この敵!」

 

 相対しているレティシアもまた猛攻を加えてくる敵の姿に戸惑いを覚えていた。 

 装甲越しでも伝わってくる圧倒的な殺気。

 まるで血に飢えた獣のような、捨て身ともいえる猛攻。

 

 「これは……ッ!? この感覚は――」

 

 獣と相対していたレティシアに何か悪寒のようなものが走った。

 これは今、目の前にいる相手ではない。

 しかしレティシアにとって無視できない相手が確実に近づいてくるのが分かった。

 

 「これは何?」

 

 初めての感覚に戸惑いながらレティシアが視線を向けた先。

 

 まだ視界には捉える事ができない程に離れた場所。

 

 そこから近づいてくる一隻の戦艦。

 

 テタルトス所属の戦艦クレオメデスが徐々に戦域へと近づいていた。

 

 

 

 

 三機のガンダムとの戦闘はフリーダムが加わった事により、互角の戦いに移行していた。

 アレンとキラのコンビネーションが優れていた事もその要因に挙げられるだろう。

 二人はヤキンドゥーエ戦役からずっと一緒の戦場を駆け抜けてきた。

 互いの癖も動きも良く分かっている。

 

 「フリーダムモドキ!」

 

 「やらせない!」

 

 エクリプスの一撃がフリーダムに攻撃を仕掛けようとしていたフォビドゥンと鍔迫り合い火花を散らす。

 

 「邪魔を! どきなさいよ!」

 

 「じゃ、遠慮なく」

 

 飛びのいたエクリプス。

 その陰ではレールガンを迫り出したフリーダムが待ち構えていた。

 

 「なっ」

 

 虚を突かれたカーラは反応が遅れ、レールガンを避けられない。

 直撃を受けたフォビドゥンは吹き飛ばされ地面へと叩きつけられてしまった。

    

 「カーラ!? くそ、こいつらいきなり動きがよくなって――ヤバッ!?」

 

 レイダーは急旋回から無理やり回避運動を取る。

 エクリプスをけん制するつもりが逆に巧みな射撃によってフリーダムの攻撃範囲に誘導されていた事に気がついたからだ。 

 

 「それを待ってた!」

 

 動きを読んでいたアレンはバズーカ砲を発射。

 砲撃がレイダーに直撃し、カラミティに激突する。

 

 「ぐあああ」

 

 「ジルベール、何やってんだ!」

 

 「すいません、姉御。……って来る!」

 

 「遅い!」

 

 二機がバランスを崩した所に飛び込んだフリーダムが斬撃を放った。 

 体勢を崩したカラミティは避ける事もできず、手に持ったバスーカ砲諸共肩を深々と斬り裂かれた。

 

 「姉御!?」

 

 「大尉!?」

 

 「くっ、大した損傷じゃないんだから騒ぐな! けど、どうやら時間切れみたいだね」

 

 「えっ」

 

 アルネーゼの言葉に二人も近づいてくる反応に気が付いた。  

 

 「ま、これも予定通りだ。フリーダムモドキの相手はあっちに任せて、私達は戦艦狩りに加わるよ!」

 

 「くっ」

 

 カーラは悔しそうにフリーダムの姿を見つめる。

 

 「カーラ、これも任務だ。個人的感情は捨てな」

 

 「……はい。分かってます」

 

 カラミティの砲撃が地面を抉り、舞い上がった爆煙は三機を簡単に包み込んだ。

 

 「なっ、退いていく?」

 

 「このタイミングで――ッ、キラ! 新手だ!!」

 

 退いていく三機のガンダムと入れ替わる形で今度は二機のモビルスーツが近づいてくる。

 

 一機はウィーン前線基地で戦ったイレイズMk-Ⅲ。

 

 そしてもう一機はイリアスを改修したと思われる機体だった。

 

 高速で近づいてくるイレイズMK-Ⅲ。

 寸分違わず発射されたビームランチャーがエクリプスとフリーダムへと襲いかかる。

 

 「来る!」

 

 「あの距離でこうまで正確に狙ってくるとは」 

 

 その正確な射撃に二人は舌を巻き、左右に飛び退いて、ビーム砲を回避する。

 その隙にイレイズとイリアスは左右へ分散、体当たりで二機をそれぞれ反対方向へと吹き飛ばした。

 

 「ぐぅぅぅ!! このまま引き離す気か!」

 

 「悪いが付き合ってもらうぞ、『魔神』!」

 

 アレンは蹴りを入れてイレイズMk-Ⅲから距離を取ると、そこで近づいてくる戦艦の姿に気が付いた。

 

 「まさか……テタルトスの『ディオネ級』!?」

 

 戦場に現れたのはアムステルダムでも相対したアスラン達の母艦であるクレオメデスであった。

 すでにアスランの指揮の下でモビルスーツが展開され、クレオメデスもアークエンジェルとミネルバへ攻撃を開始している。

 

 「よりによってこのタイミングで現れるとは」

 

 「おいおい、よそ見してて良いのかよ!」

 

 アレンは振り下ろされた対艦刀を直前で受け止めると思わずスピーカーに怒鳴りつけた。

 

 「邪魔だ!」

 

 「仲間を助けたいなら、俺を倒して行け! 倒せればの話だがな!」   

 

 「なら押し通るだけだ!」

 

 互いがビームサーベルを構え、高速で動き回りながら激突を繰り返す。

 

 「やはり強い。でも、この動きは……」

 

 「懐かしいと思わないか? 貴様とは何度もこうして戦った事があったな」

 

 「何だと……」

 

 ビームランチャーをシールドで受け止め、バズーカ砲を撃ち返しながらアレンの脳裏に一機のモビルスーツの姿が浮かび上がってきた。

 

 そいつは紛れもなく強敵だった。

 

 自分もキラも何度も追い詰められた。

 

 だが――そいつは確実に打ち倒された筈なのだ。

 

 「お前は……誰だ?」

 

 「答えはもう知っているだろうが!」

 

 イレイズの放った凄まじい突きがアンチビームシールドを貫通してエクリプスの脇腹を抉り、そのまま盾ごと斬り伏せてくる。

 

 「チッ」

 

 シールドを投棄し、ライフルを構え直す。

 だが素早く発射体勢に入ったイレイズのビーム砲が右足を吹き飛ばした。

 

 「ぐっ、このくらい!」

 

 発射したライフルの一射がビームランチャーを破壊し、バズーカ砲がイレイズのビーム砲に直撃する。 

  

 「流石、『消滅の魔神』だ! だが――」

 

 「ッ!?」

 

 イレイズは破壊された武装を破棄。

 重量を落として速度を上げ、盾を刺すようにエクリプスに叩きつけると地面に突き落とした。

 速度が乗っていた為、地面に激突した衝撃はアレンの体の芯まで伝わってくる。

 

 「グハッ!?」

 

 「機体の反応が鈍いぞ! そんな状態で俺と戦えると思っていたか!」

 

 ジェラールはエクリプスの状態を正確に把握している。

 もはや無闇にビームシールドを張る余裕すらエクリプスには残されていない。

 

 「この好機は逃さん!」 

 

 ジェラールはビームサーベルを逆手にエクリプスのコックピットを狙って振り下ろす。

 

 「舐めるな!」

 

 アレンは思いっきりペダルを踏み込む。

 

 スラスターの噴射で舞い上がった砂煙でジェラールの視界を遮り、破壊されるのを覚悟で左腕を突き出した。

 

 腕に突き刺さった光の刃。

 

 ビームの刃が左腕を抉り耳を劈く警戒音が鳴り響く。

 

 もはやエクリプスの左腕は使い物にはならないだろう。 

 

 それらすべてを無視し、右手でカウンター気味に振るったエッケザックスがイレイズの頭部を切り潰した。  

 

 「メインカメラが!?」

 頭部が半分近く抉られ、イレイズの視界が遮られる。

 アレンはこの好機を見逃さない。

 残った右手のビームシールドを刃上に変化させ、イレイズのコックピットへ向けて叩き込んだ。

 

 「ハアア!」

 

 それはイレイズにとっては致命的な一撃。 

 

 避けるにしても暇がなく、防御に回るには近づきすぎている。

 

 だが、ここでジェラールは第三の選択肢を取った。

 

 すなわち回避でも、防御でもない、迎撃を選択したのである。

 

 「まだだ!!」

 

 脅威的な反応で左脚を振り上げ、ビームの刃に向けて蹴りを入れたのだ。

 当然、脚部は見るも無残に破壊されるが、エクリプスの腕は外側へと弾き飛ばされた。

 勢いを殺さずに宙返りすると背中のエールストライカーを切り離し、エクリプスにぶつけ、ビームライフルを構える。

 

 「終わりだ、『魔神』!!」

 

 「ッ!?」

 

 ライフルの銃口から発射されたビームがエールストライカーを砕く。

 

 爆発と同時に立ち上る爆煙。

 

 炎が周囲を薙ぎ、エクリプスもその中に包まれていった。

 

 

◇ 

 

 

 キラの眼前には改良されたと思われるイリアスがその推力を生かして動き回っていた。  

 

 縦横無尽に駆ける機体。

 

 正確な射撃。

 

 過剰ともいえる速度の中での機体制御。

 

 明らかに隔絶された技量であり、並みのパイロットではなかった。

 

 「速い!」

 

 イリアスのサーベルが的確にフリーダムの急所を狙って振るわれる。

 斬撃をシールドで弾き飛ばし、こちらもまた斬り返した。

 刃が空中で弾け、剣撃がシールドに滑らす度に稲光が発生する。

 

 「このパイロット、尋常な腕じゃない」

 

 背を向けた状態でありながらビームライフルも紙一重で回避。

 即座に体勢を立て直しビームライフルショーティ―で撃ち返してくる。

 

 「なら!」

 

 キラはレールガンで敵機を誘導。

 投擲されたブーメランをビーム砲で吹き飛ばすと接近戦を挑む。

  

 「やはり強い。データとは比べ物にならぬ程、遥かに手強い。なるほど、これが最高のコーディネイター。カース様の言う通りです」

 

 サーベルの斬撃を捌きながら№Ⅰは焦る事無く機体を操り冷静に戦況を分析する。

 形勢はほぼ五分の状態。

 いや、フリーダムがやや有利であろうか。

 機体性能はイリアスの方が上であるにも関わらず、攻めきれないのはパイロットであるキラ・ヤマトの優れた技量故であろう。

 

 「テタルトスも来た以上、時間を掛けては居られない。さっさと勝負を決めさせてもらう」

 

 №Ⅰがコンソールを素早く操作すると、システムが起動する。

 

 

 『I.S.system starting』 

 

 

 システム起動と同時に腰と肩、そして脚部の装甲がスライドしイリアスの形状が僅かに変化した。

 先ほど以上に加速を上げ、フリーダムに肉薄する。

 

 「さらに速度を上げる!?」

 

 軌跡を描いたサーベルがフリーダムの装甲を抉り、針の穴を通すような正確な射撃が防御したシールドの上で弾けた。

 

 「これは、この動きはまさか」

 

 キラにも覚えは当然あった。

 この動きの変化はSEEDによるもの。

 いや、もしかするとI.S.システムかもしれないが。

 どちらにせよこの相手が強敵である事実に変わりはない。

 狙った射撃も見透かしたような反応で容易くかわされ、高速で入れ替わるように交錯する。

 

 「なら僕も!」

 

 このままではジリ貧だとキラはSEEDを発動させる決断を下す。

 

 しかし――

   

 「なっ!?」

 

 戦闘に割り込む形で予想外の方向から撃ちかけられたビームをギリギリ回避。

 イリアスを警戒しながらライフルの銃口を向けた。  

 

 「あの機体は……」

 

 フリーダムに銃口を向けていたのはアスランの搭乗するガーネットだった。

 

 「フリーダム……キラか」

 

 「アスラン」

 

 かつての親友。

 

 幼い頃の思い出が二人の脳裏に蘇る。

 

 だが、それで揺らぐ二人ではない。

 

 すでに彼らの道は違えている。

 

 そんな事はすでに分かっているのだから。 

 

 「何処を見ているんです!」

 

 「くっ」

 

 キラはSEEDを発動し、イリアスを牽制しながら反撃に移る。

 先ほどまでとは比べ物にならない動きで肉薄。

 至近距離からのレールガンでイリアスのシールドを破壊、同時に蹴りを入れて吹き飛ばす。

 その姿を鋭い視線で見つめながら、アスランは誰に聞かせるでもなくポツリと呟いた。

 

 「強い……キラ、お前もまたアスト・サガミと同じ、決着を付けなくてはならない存在だ」

 

 キラとアストによって何人の仲間が討たれたか。

 無論、戦争だ。

 お互い様である事は分かっている。

 だから、これもアストと戦う事と同じ。

 自分が抱えた暗い感情や過去にけじめをつける為に、前に進むために決着をつける。 

 「だから手加減はしない。行くぞ、キラ!」

 

 アスランの決意と共にSEEDが弾けた。

 イリアスを退けたフリーダムにガーネットの三連ビーム砲が迫る。

 

 「くっ!?」

 

 驚異的な反応で回避したフリーダムにビームサーベルを振り下ろした。  

 

 「アスラン!!」

 

 「俺は……お前を討つ!」

 

 シールドで上段からの光刃を止めた、フリーダム。

 しかしガーネットは手を緩めない。

 同時にビームサーベルを蹴り上げる。

 

 「当たらない!」

 

 「まだまだ!」

 

 光刃を宙返りで回避したフリーダム。

 その回避先を読んでいたアスランはさらに追撃を掛ける。

 

 「アスラン!!」

 

 「キラァ!!」

 

 ガーネットの四本の刃がシールドで弾かれ、同時に振るわれるフリーダムのサーベルが空を切る。

 常人では捉えられない速度で振るわれる光刃の軌跡。

 激突する刃が発する光の中、キラは目の端で何かが飛んでくるのを捉えた。

 

 「ブーメラン!?」

 

 それは蹴り落としたイリアスが放ったビームブーメランだった。

 

 「この!」

 

 咄嗟に反応し、シールドで弾き飛ばす。

 しかしその間に回り込んだイリアスから発射されたビーム砲がフリーダムの左翼を破壊した。

 

 「ぐあああ!」

 

 直撃を受けバランスを崩したフリーダム。

 それはアスランにとって絶好の隙。

 

 「ハアア!!」

 

 袈裟懸けの刃がフリーダムの腹部を裂き、立て続けに放った蹴りが脚部を斬り捨てる。

 その一撃によってフリーダムは下方へと落下していく。

 

「くぅぅ」

 

 歯を食いしばり落下するキラの視界にはいつの間にかたどり着いていたバルト海が広がっていた。

 

 「このォォォ!!」

 

 残った右翼とスラスターを使い、強制的に体勢を立て直す。

 

 「おおおおお!」

 

 キラのサーベルが突っ込んできたガーネットの右腕を斬り裂いた。 

 

 「ッ、流石だな、キラ! だが、俺も昔のようにお前達に遅れは取らない!!」 

 

 「僕だって負けられない!」

 

 その時、キラはバルト海にたどり着いたアークエンジェルとミネルバの姿に目を見開いた。

 

 二隻はミュンヘンからの戦闘に加えサリエルの猛攻。

 

 そこに加わったクレオメデスの攻撃によって満身創痍の状態に陥っている。

 

 デストロイと交戦しているラクスやルナマリアは離れた位置に。

 

 レティシアやニーナもエースと思われる敵と交戦中でとても援護に回れる状態ではない。

 

 そしてエクリプスはイレイズMk-Ⅲによって追い詰められていた。 

 

 「アスト!」

 

 「だから余所見している余裕があるんですか?」

 

 「ッ!?」

 

 周りに気を取られた隙にイリアスが投擲したスティレット投擲噴進対装甲貫入弾がシールドに突き刺さり、ライフルと盾を粉砕する。

 

 「ぐっ、まだ!!」

 

 キラは咄嗟に残っているビーム砲でイリアスの右腕を消し飛ばす。

 

 「ぐぅ」

 

 「落ちろ!」

 

 そして落下していくイリアスをビームサーベルで切り伏せ、海上へ突き落とした。

 

 「そこだ!」

 

 隙を伺っていたアスランはオートクレールを残った左腕で抜き、加速した。  

 キラはアスランの突進に気がつくが、もう遅い。

 すでにオートクレールの攻撃圏内まで接近しているのだから。 

 

 「キラァァァァァァァ!!」

 

 オートクレールの切っ先から伸びた光刃がフリーダム目掛けて直進する。

 

 「アスラァァァン!!!」

 

 キラも二刀のサーベルをガーネットに向けて叩きつけた。

 

 交錯する光刃がお互いの機体を裂く。

 

 ガーネットは残った左腕と頭部を斬られ―――

 

 そしてフリーダムは下腹部に突き刺さったオートクレールと共に海中へと沈んでいった。

 

 

 

 

 ミュンヘンでの戦闘が終息して数時間。

 

 市街から離れた場所には幾つかの残骸が転がっていた。

 

 一際大きなソレは地球軍地上戦艦の面影を色濃く残している。

 

 甲板らしきものは大きく抉られ、艦橋と思われる場所は無残に潰されていた。

 

 佇むのは損傷しながらも健在な姿を保つ一つ目の機体。

 

 その傍にはモビルスーツの破片が無数に転がり、まるで墓標のように地面には半ばから折られた対艦刀が突き刺さっていた。 

 

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