機動戦士ガンダムSEED eventual   作:kia

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第37話 決戦の号砲

 

 

 

 アルテミス要塞における戦闘開始の合図となったのは同盟軍から発射されたミサイル攻撃だった。

 

フォルセティを中心とした艦隊のミサイルが一斉にアルテミスに向けて撃ち込まれる。

 

しかしそれは統合軍側からしても予想範囲内の事だ。

 事前に展開された戦艦とモビルスーツの砲撃が並みいるミサイルをすべてを薙ぎ払い、要塞手前で破壊されたミサイルは閃光となって宇宙を照らした。

 

 だが、それで終わるはずもなく眩い光に紛れ、新たな攻撃が迫ってきた。

 

 

 「敵艦隊から第二波ミサイル!」

 

 

 「迎撃!」

 

 アルテミスに新たに設置された砲台も迎撃に加わり、再び同盟のミサイルは尽く撃破されてしまう。

 

 

 「ミサイルの目標はエネルギープラントか」

 

 

アルテミスのコントロールルームで攻撃の様子を見ていたアスランはすぐに同盟の目的を看破する。

 

 

「レクイエムの破壊……本命はアポロン要塞だな」

 

 

 「敵艦からモビルスーツの発進を確認しました」

 

 

 「正面から力押しでくるつもりか? 前面の部隊に迎撃させろ」

 

 

「大佐、サリエル所属のモビルスーツ隊から出撃要請が来ていますが?」

 

 

サリエルの名にアスランは僅かに表情を固くする。

 

 あの戦艦についてはアスランも詳しく把握していない。

 イスラフィールに情報の開示を求めた際にも見事に拒否されてしまった。

 

 だが艦を指揮する艦長とは顔を合わせたことがある。

 

 ニコラス・フリードマン。

 

 メキシコ戦線においても改革派を手玉に取った傑物。

 彼がサリエルの指揮を執っているならば多少の信頼も置けると、そう判断しようとしたのだが、部隊自体を指揮している人物は別にいるらしいという噂が耳に飛び込んできた。

 しかもその真偽は未だに不明。 

 地球軍の特殊部隊ファントムペインの母艦らしい秘密主義とでも言えば良いのか、どうも信用しきれない。

 

 「大佐?」

 

 黙っているアスランを訝し気に見つめてくる部下の姿に我に返るとすぐさま指示を出した。

 

 「いや、出撃させていい」

 

 「了解」

 

 不信感は募るものの、イスラフィールから聞くなと言われた以上は詮索はすまい。

 

 「……信用はしないが」

 

 モビルスーツ戦に移行した戦場に向かう黒い戦艦をアスランは鋭い視線で見つめ続けた。

 

 

 

 

 艦隊からの砲撃は一旦止み、戦闘は次のステージへと移行した。

 すなわちモビルスーツによる戦い。

 二つの陣営の機体がぶつかり合い激しい混戦へともつれ込む。

 それこそ強化兵ラディス・グエラの待ち望んだ戦場だった。

 

 「雑魚どもが! どけェェ!!」

 

 鬼気迫るアルタイルの猛攻。

 ラディスはスオウのビームライフルをあっさりと躱し、瞬時に懐へ入り込むとビームサーベルを突き立て、力を込めて振り下ろす。

 真っ二つになったスオウが爆散すると続けてライフルでヴィヒターを撃ち抜いた。

 

 「ノロマが!」

 

 ラディスは手応えのない敵を嘲るように吐き捨てる。

 動きが、反応があまりに遅すぎるのだ。

 

 「その程度、目を閉じてても躱せるんだよ!!」

 

 上方からサーベル片手に突っ込んできたブリュンヒルデの初動を見極め、紙一重で回避する。 

 そしてすれ違う一瞬。

 シールドをコックピットへと押し付け、三連ビーム砲で吹き飛ばした。  

 

 「まとめて消してやる!」

 

 アルタイルの肩からエレメンタルドラグーンが射出され、素早く同盟の機体を囲むと一斉に砲撃を開始する。

 三百六十度からのオ-ルレンジ攻撃。

 同盟のパイロット達に回避できるはずもなく、逃れる事すらできないままドラグーンの餌食となった。

 

 「……ラディス」 

 

 少し離れた場所でラディスの戦いを見ていたミレイアは、その猛攻に思わず身震いしてしまった。

 射撃も斬撃も完ぺきに相手を捉え、さらにドラグーン操作も完ぺき。

 砲台はすべてコックピットを一撃で射貫いているのだから凶悪とすら言える。

 

 「私だって負けるものか」

 

 ミレイアのアルタイルがラディスに続くように敵陣へ突っ込んでいく。

 

 「ミレイア、迂闊だぞ!」

 

 「うるさい! アンタなんかに!」

 

 ミレイアもドラグーン操作であれば自身がある。

 ラディスにも負けはしない。

 切り離された砲台を巧みに操り、敵機の死角を突く形で攻撃を放つ。

 背後、下方、上方と撃ち抜かれたブリュンヒルデは火を噴き、爆散した。

 

 「やった! 私にだって!」

 

 一流パイロットと遜色ない動きで次々と敵機を打ち落としていくミレイア。

 しかし――

  

 「この勢いのまま――ッ!?」

 

 ミレイアは思わずその場から飛びのいた。

 アルタイルに撃墜されそうになっていた同盟機を守るように別の機体が割り込んできたからだ。

 しかもドラグーンを正確に撃ち落として。

 興奮していた頭に氷水でもぶっかけられたような気分だった。

 

 「アレって」

 

 知らない筈はない。

 世界でも有名なモビルスーツの一つ。

 蒼い翼と白い四肢を持つ機体。

 

 「フリーダム!?」

 

 ミレイアの前に現れたのは同盟最強の一機『トワイライトフリーダム』だった。

 腰から抜いたサーベルをすれ違い様にフローレスダガーを切り捨て、さらに追いすがるリゲルを次々と狙い撃ちにしながら接近してくる。

 見ているだけでも分かる。

 一線を画する圧倒的な技量を持った強敵であると。

 

 「アレが強化兵用モビルスーツ」

 

 先発隊の一員として出撃したマユは猛威を振るうアルタイルに目を向ける。

 あの機体に関する情報はすでに頭に叩きこんであった。

 テタルトスの技術を用い、地球軍のエクステンデットやブーステッドマンと同じように強化を施された強化兵と呼ばれる兵士達専用の機体。

 当然、その性能は普通の機体とは一線を画している。

 その性能に加え実力は並みのエース級を上回るだろう。

 

 「放っておけば味方の被害が広がる。なら此処で落とせば!」

 

 アルタイルに目標を定めたマユは蒼い翼を広げて突撃する。

 

 「例えフリーダムが相手でも!」

 

 ミレイアは弾丸のように速度を上げて向かってきたフリーダムに残ったドラグーンを差し向けた。

 確かに速いが、強化された自分であれば捉えられる。

 しかしその判断は誤りだったとすぐに気がついた。

 フリーダムはドラグーンの動きを完璧に見極め、すべての射線を避けると逆に反撃に転じてきたのである。

 

 「嘘!?」

 

 バレルロールしながら逆さになり、フルバースト。

 フリーダムの強烈な火線をギリギリ飛び退いて回避する、アルタイル。

 しかしそれすら見越していたマユは即座に距離を詰めビームサーベルを一閃、アルタイルの右腕を斬り捨てた。

 

 「なっ!? は、速すぎる」

 

 慢心していたと言われればその通り。

 だが、断じて油断はしていなかった。

 ミレイアは常にフリーダムの動きを注視していたのだから。

 

 「反応できなかった」

 

 それが示すのはフリーダムのパイロットの実力は強化されたミレイアを上回っているという事。

 

 「だからって、負けない!」

 

 振り向きざまにヒュドラを放ち、同時に残ったドラグーンをすべて展開した。

 

 「いくらフリーダムでも、これならば!」

 

 ドラグーンでフリーダムを誘導し、ヒュドラで仕留める。

 背を向けた敵にこれを捌く事はできないだろう。

 しかしマユはそんなミレイアの上を行く。

 

 「甘いです!」

 

 ライフルでドラグーンを撃ち落とし、宙返りでヒュドラを紙一重で回避する。

 そのまま加速、近接戦の間合いに飛び込むとミレイアに避ける暇すら与えない速度で脚部を両断した。

 

 「きゃああああ!!」

 

 ミレイアはコックピットを襲う衝撃を堪えながら敵の姿を目に焼き付ける。

 翼を広げる姿と圧倒的な強さ。

 無慈悲なまでの攻撃といい、まさに天上を舞う熾天使だった。

 

 「ミレイア!? 貴様ァァァ!!」

 

 「同型機?」

 

 ラディスの咆哮に応えるような強力な砲撃。

 空間を焼き払うヒュドラの一撃をシールドで受け止める。

 

 「この敵は……さっきの機体より動きがいい」

 

 猛獣のような殺気を放ちながらも、その攻撃には無駄がない。

 

 「手強いけど、もしかしてこの機体のパイロットが強化兵?」

 

 アルタイルのライフルを回避しながら、再びフルバーストを叩き込む。

 

 「当たるかよ!」

 

 フルバーストを上昇して回避したラディスに向けて距離を詰めようと前に出るフリーダムだが、それを阻むように別の機体が割り込んできた。

 

 「何!?」

 

 アルタイルを追い越し、怒声と共にビームソードを展開して斬りかかる。

 

 「ハアアアアアアア!!」

 

 フリーダムに届く前に展開したシールドがビームソードを受け止め、鍔迫り合いのように二機のモビルスーツは睨みあった。

 

 「ッ!? この機体は!?」

 

 マユの脳裏に浮かぶのは、ユニウス戦役で相対した不気味さと不吉さを滲みださせた機体。

 

 「ベルゼビュート」

 

 自然と操縦桿を握る手に力が籠る。

 

 忘れる筈があろうか。

 

 この機体とそのパイロットの事を。

 

 「死ねェェェェ!!」

 

 飢えた獣のごとく牙を剥くベルゼビュート。

 ビームソードを下段から切り上げ、フリーダムを弾き飛ばし、さらにビームキャノンで追撃を掛けてくる。

 

 「ぐぅ、アイギス!!」

 

 吹き飛ばされながらも背中のアイギスドラグーンを射出する。

 トワイライトフリーダムを守るように張られたフィールドが砲撃を弾き、同時にビームキャノンを撃ち出した。

 突っ込んでくるだけの相手には十分な一撃。

 だが、エリニスはただの獣ではない。

 

 「そんなものにィィ!!」

 

 ベルセビュートはスラスターを使い無理やり機体の軌道を変えた。

 それでもビームがベルゼビュートの装甲を僅かに掠めるが、エリニスは意を返さないとばかりに両手を振り上げる。

 

 「フリーダム!!」  

 

 ソードからクロウへ武装を変更し、強力なビーム刃を形成した爪がシールドの上からフリーダムを脅かす。 

 上段からの強烈な一撃を止めたマユの耳にエリニスの声が聞こえてくる。

 

 「お前もだ! お前もレティシアと同じで私を不快にする!!」 

 

 エリニスがその名を口にした瞬間、マユの中から抑えきれない感情が湧きあがってきた。 

 

 「変わらない、貴方は。昔のままです」

 

 無暗に殺意を撒き散らし、自分勝手な理屈を振りかざす。

 巻き込まれるこちらはたまったものではない。

 だが――

  

 「……本当ならば貴方なんかとは関わりたくありませんが、今回は別です」

 

 マユは自分でも驚くほどに冷たい声で呟くと鋭い視線でベルゼビュートを睨みつけた。

 

 「貴方は此処で―――私が殺す」

 

 マユのSEEDが弾けると同時にトワイライトフリーダムのシステムが機動する。

 

 

 『C.S.system activation』

 

 

 装甲の一部が拡張し、スラスターが迫り出される。

 

 そして光の翼が解放された。

 

 これこそトワイライトフリーダムの切り札『C.S.システム』である。

 SEED発現を感知すると機体の一部装甲が拡張、格納されていたスラスターを解放。

 両翼から光の翼が放出され、通常とは比較にならない速度での高速戦闘を可能としている。

 さらに収集した戦闘データから機体制御や補助を行い、パイロットの力を100%発揮できるようにシステムがサポートするようになっている。

 ユニウス戦役時に投入されたC.S.システムはパイロットや機体への負担が大きすぎる為に、幾つか制限が設けられていた。

 しかし改修を受け機体への負担が減らされ、使用回数、制限時間共に緩和されている。

 

 光を纏うその姿はまさに天使。

 

 眼前に佇む熾天使の姿にエリニスの中の何かを刺激する。

 

 「あ、ああ、そうだ。その姿だ、貴様に―――」

 

 それは何時の事なのか。

 

 どこかの戦場。

 

 姿を現した熾天使によって一蹴されてしまった。

 

 「そうだ、お前だ……お前だ、お前だ、お前だァァァァ!!」

 

 今まで以上の殺意を漲らせ、エリニスもまたベルゼビュートの切り札を発動させた。

 

 

 『I.S.system starting』 

 

 

 それは殺意を刃へ変える悪魔の力。

 全身を包む感覚に身を浸し、エリニスは哄笑しながら動き出す。

 

 「フリーダム!!!」

 

 「ハアアアア!!!」

 

 尾を引く光が軌跡を描き、己が力を解放した二機のガンダムが宇宙を駆ける。

 

 追尾することすらかなわぬ速度の中で、マユとエリニスは互いに刃をぶつけ合った。

 

 

 

 

 戦況はほぼ五分。

 いや、統合側が押していると言っても良い。

 そもそもの物量が違うのだから当然と言えば当然。

 しかしアスランの表情は険しさを増す一方だった。

 

 「大佐、どうなさいました?」

 

 「……この状況が少し不可解なだけだ」

 

 「何がでしょうか?」

 

 「同盟は何故積極的に前に出ない?」

 

 「出れないのでしょう。そもそも我々とは物量も違います」

 

 「そんな事は同盟も承知の筈」

 

 だからこそ今の戦況が不可解なのだ。

 同盟にとってこの戦いの重要さは言わずもがな。

 にも関わらず正面からの力押しだけでアルテミスを落とそうとするなど、そんな無謀な策を選択するとは思えなかった。

 

 「……戦場で指揮を執っているのは中央にいる黄金のモビルスーツか。傍にはインパルスとアイテル、『熾天使』の相手はサリエル所属の機体がしているが――」

 

 気になっているもう一点。

 それがアスト・サガミが未だに出撃していないという事。

 

 「機体の不備……いや、何かあると考えるべき」

 

 戦域図を見つめ、考え込んでいたアスランはふとアルテミスから戦力が同盟側へ引っ張られている事に気が付いた。

 

 「そういう事か」

 

 「大佐?」

 

 「防衛隊の一部を後方に回せ、敵が来る」

 

 「え?」

 

 「レクイエムのチャージ開始、出力調整、目標は敵艦隊だ。チャージ完了までの時間を稼ぐ。此処は任せたぞ」

 

 同盟はレクイエムを警戒し、射線上に入らないように布陣を敷いている。

 だが、それはこちらも想定済み。

 やりようはあるという事だ。

 

 「誰が来るかは知らないが、負ける訳にはいかない」

 

 その場を部下に任せたアスランは足早にコントロールルームを後にした。

 

 

 

 物量の差によって押され始めた同盟軍。

 だが、焦る事無く彼らは次なる一手を打とうとしていた。

 

 「艦長、こっちの出撃準備は整ったぞ」

 

 第二陣として待機していたアストはフォルセティのブリッジへ顔を出す。

 するといつも以上に不機嫌そうな顔をしたイザークがモニターを眺めている姿が目に入った。

 

 「どうした?」

 

 「アスランの事が気になってな。おそらくアイツはこちらの目的に気がついている」

 

 「そういえば奴とはアカデミー時代からの付き合いだったな? 確か相当優秀だったとか」

 

 その話題はイザークにとって面白くない事だったのか、益々顔を顰めていく。

 

 「色々あったがな。昔からアイツは――いや、それは今は良い。とにかくアイツならこの程度、気がついてもおかしくない」

 

 「なるほど。だが、それも想定内だろ」

 

 「勿論だ。昔のように負ける訳にはいかん。しかし何か切り札のようなものがある気がしてな」

 

 「今の『グラオ・イーリス』の指揮官はお前だ。いざって時も信じてるさ。……熱くなって出撃するなよ」

 

 「そんな事するか。今の俺はフォルセティを任された艦長だぞ」

 

 アストの軽口にイザークも幾分表情を和らげると拳を突き出した。

 

 「頼むぞ」

 

 「了解」

 

 コツンと軽く拳を突き合わせるとアストはそのまま格納庫へと移動する。

 降りた格納庫では万全な状態となったイノセントと整備兵が待っていた。

 

 「大尉、イノセントの整備完了です」

 

 「ありがとう、助かった」

 

 整備兵の肩を軽く叩き、イノセントのコックピットへ乗り込むと素早く機体を立ち上げる。

 

 《アスト、ハイネ達が動くそうだ》

 

 「分かった。もしもアスランがこっちに来たら俺が足止めする」

 

 《頼む》

 

 「アスト・サガミ、ガンダム、行きます!」

 

 カタパルトから射出されたイノセントが戦場へ飛び出した。

 

 

 

 

 アルテミスに気づかれないよう慎重に近づく機影があった。

 ザフト艦ナスカ級。

 特務隊の指揮するその艦から数機のモビルスーツが出撃する。

 イフリート・アルジェントと最新鋭機であるギアが先陣を切り、さらに後ろからオレンジ色に塗装された新型機が飛び出してくる。

 ギアと同じ特色を持ちながら、明らかに違う。

 

 ZGMF-3001 『リガル・ギア』

 

 ギア・ソルダートをより洗練し、高性能化を図った機体。

 外見上頭部ブレードアンテナの追加等見た目だけでなく中身もほぼ別の機体になっており、性能もまるで違う。

 それに伴い武装にも違いがある(ただし通常のギーアの武装が使用できない訳ではない)

 さらに個人の特色に合わせた改良機も存在しており、その機体はワンオフ機に等しい性能を持っている。

    

 「上手くやってるな。良い感じに敵も引きつけられてる。俺達も行くぞ、アレン達ばかりに無理はさせられないからな!」

 

 「「了解!!」」

 

 補足されるより前にアルテミスに取り付ければこちらの勝ち。

 

 「ま、そんなに甘くはないだろうけどな」

 

 案の定、こちらの接近に気がついた迎撃部隊が姿を現した。

 しかも陣形を整えているというオマケ付きで。

 

 「チッ、やっぱり簡単にはいかないか。動きを読んでいた事と言いどうやら敵指揮官は相当優秀らしいな」

 

 しかしあくまでハイネ達も囮。

 本命がアルテミスへ辿りつければいいのだ。

 

 「じゃ、派手に行きますか」

 

 ハイネは両手に対艦刀を構え、敵陣の中に斬り込んでいく。

 

 「敵はリゲルか。機動性は高いが!」

 

 変形したリゲルの加速に怯む事無くこちらもスラスターを噴射。

 先回りした先で対艦刀を叩きつけた。

 刃はリゲルを容易く斬り裂き、さらに背後から攻撃してきた敵機を斬り捨てた。

 

 「こいつは普通のギアとは違うんだよ!」

 

 イフリートのガトリング砲の援護を受けながら進むハイネ。

 ライフルに一撃に貫かれ、爆散した敵機の閃光に紛れ、見慣れない機体が姿を見せた。

 

 「アレは!?」

 

 ハイネの前に姿を見せたのはアスランのユースティアだった。

 

 「ザフトか」

 

 アスランは攻撃を仕掛けてきた部隊を見て、僅かに顔を顰める。

 

 「新型機もいる。ザフトの機体は侮れない」

 

 かつて所属していただけにザフトの技術力は侮れない。

 アスランは気を引き締めながら、一際目立つ色を持った機体の方へユースティアを向かわせた。 

 

 「お前が指揮官機だな」

 

 腰から抜いたビームサーベルを連結させたユースティアがギアに向かって斬りかかる。

 

 「速い!?」

 

 袈裟懸けの一撃を肩のアンチビームシールドで防ぐハイネだが、斬撃の威力と速度に思わず目を見開いた。

 

 「落ちろ、オレンジ色!!」

 

 「チッ」

 

 たまらずユースティアに蹴りを入れて引き離す。

 しかし強力なビーム砲がハイネに襲いかかった。

 

 「接近戦だけでなく、射撃も上手いな!」

 

 上昇してビームをやり過ごすハイネだが、安堵する間もなく次の攻撃に晒される。

 ユースティアの放っていたビームブーメランが左右から迫ってきた。

 

 「この程度!!」

 

 ハイネは素早くブーメランを迎撃し、斬りかかってきたユースティアと激しい攻防戦を繰り広げる。

 

 「やるな」

 

 「舐めるな!」

 

 サーベルの斬撃が盾に阻まれ、対艦刀の一撃が空を切る。

 形勢はほぼ互角に見える戦い。

 しかしハイネは焦りを隠しきれない。

 

 「こいつ、とんでもないな」

 

 凄まじいまでの斬撃。

 一撃、一撃がとてつもなく重い。

 シールドで防いでいるにも関わらず、衝撃が殺しきれずコックピットまで響いてくる。

 

 「新型じゃなけりゃ、持たなかったかもな!」

 

 対艦刀からビームライフルに持ち替え、牽制しながら距離を取る。

 接近戦を避け始めたリガル・ギアにアスランはすぐに目的を看破する。

 

 「時間稼ぎをするつもりか」

 

 「悪いが、まだまだ付き合ってもらうぜ!」

 

 距離を取りながらも食い下がってくるハイネにアスランは受けてたつとばかりにあえて前に出た。

 

 

 

 

 前後から挟まれる形で攻められるアルテミス。

 その戦闘を掻い潜るように数機のモビルスーツが要塞へと近づいていた。

 

 「要塞を視認した。各機、作戦行動に移る」

 

 「「了解」」

 

 ステルス機能を持った外装を破棄、同盟のカゲロウが姿を見せる。

 

 「第一目標、レクイエム砲塔。第二目標、アルテミスコントロールルーム。第三目標、エネルギープラント!」

 

 全機がX字スラスターを吹かし、アルテミスに取り付く為に一気に加速する。

 統合軍側はこちらの動きに対応できていない。

 このまま取り付けると全員が判断する。

 しかし―――

 

 「えっ」

 

 一番後ろを飛んでいたカゲロウのパイロットはいきなりの事に呆然とした。

 どこからともなく発射されたビームによって先行していたカゲロウが撃墜されてしまったのだ。

 

 「な、何が? 」

 

 「馬鹿、ドラグーンだ! 訓練やったろ!」

 

 僚機からの怒声に我に返る。

 そして砲台に囲まれない内に離脱を図ると、数発ほど散弾バスーカ砲を叩き込んだ。

 ドラグーンの対処法の一つが高速で範囲外へ離脱と同時に散弾などの広範囲の攻撃で一気に砲台を殲滅してしまう事だ。

 コントロール元である機体への攻撃というのもアリだが、今は姿が見えない。

 

 「敵本体は何処に?」

 

 「……ッ、上だ!!」

 

 声と共にレーダーにも反応する。

 甲高い音と共に見上げた先にいたのは―――異形だった。

 

 「アレは……何だ?」

 

 大口を開けたように開閉された先端部から見えたのは、巨大な砲口。

 光が圧縮されたように砲口に集まり、一瞬の間もなく発射された。

 

 「なっ!?」

 

 カゲロウのパイロット達は通信する暇もなく、強烈なビームの閃光に包まれた。

 咄嗟に盾を構えるも意味がない。

 アンチビームシールドはドロリと溶け、ビームを諸に浴びた機体は跡形も残さず消え去った。

 眩い閃光が晴れ、視界が戻った頃にはその場に残るものはなく、物言わぬ異形だけがその場に佇んでいた。 

 

 

◇  

 

 

 戦場を行く白い機体アンセム・イノセントガンダムは行く手を阻む敵を打ち倒しながら、アルテミスを目指して歩みを進めていた。

 

 「ムウさんの指揮とハイネの挟撃のお陰か、戦線は安定しているみたいだな」

 

 遭遇したリゲルから発射されたミサイルを機関砲で叩き落としながら、ライフルで敵機を狙撃。

 コックピットを貫通されたリゲルはモビルアーマー形態のまま後方に流され爆散した。

 さらに接近戦を挑んできたH・アガスティアのライフルをナーゲルリングで斬り裂き、至近距離からのビーム砲で撃破する。

 

 「ん? 伏せてあった部隊の反応が消えた……チッ、そう甘くないか」

 

 アルテミスに張り付く予定だった伏兵が消されたとなれば、正攻法で行くしかない。

 アストがアルテミスに侵入する為のルートを計算しながら進んでいると、それを阻むように立ち塞がった敵機がいた。

 

 「これ以上は進ませません、アスト」

 

 「……ヴィクトリアか」

 

 目の前に立つユングヴィから聞こえてきた声にレティシアと話しているような錯覚を覚えながら、アストはビームサーベルを抜いた。

 

 「悪いが行かせてもらう」

 

 「行かせないと言いましたよ」

 

 まるで朝の挨拶でもしているような気軽さでヴィクトリアもまたビームサーベルを構えた。

 周囲で起きた爆発を合図に同時に動く。

 イノセントとユングヴィ。

 同時に繰り出した斬撃が激突する。

 

 「流石、アストですね」

 

 最初の攻防は相手を傷つける事無くただ弾け合い、二機のモビルスーツはその立ち位置を入れ替える。

  

 「どうしました? 本気で来ないと私は倒せませんよ」

 

 「ヴィクトリア、お前は一体何者なんだ?」

 

 こうして手合わせすると良く分かる。

 

 ヴィクトリアとレティシアの戦い方は本当によく似ているのだ。

 

 まるで本人と戦っているのではと錯覚しそうになるほどに。

 

 「フフ、気になりますか? でもそんな事を気にしている暇はないのでは?」

 

 「何?」

 

 そこでアストも気が付いた。

 アルテミス前面の隔壁が解放され、無骨な砲塔が顔を見せた事に。

 

 「レクイエムだと!? 狙いはアポロンか?」

 

 だとしても攻撃部隊は事前にそれを計算して射線上には極力近づかないようにしている。

 今、撃った所で何の意味がある?

 

 「あれは……」

 

 アストが見たのは戦場の端に居るプレイアデス級。

 丁度、レクイエムの射線上に陣取っている。

 だが普通の戦艦とは違い、見慣れないものを装備しているのが見える。

 艦上部にある円形の物体、それがレクイエムの砲口と呼応するように発光し出す。 

 

 「まさか、ゲシュマイディヒパンツァー!? 不味い、逃げろ!!!」

 

 アストの叫びと同時にレクイエムから死の閃光が発射された。

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