機動戦士ガンダムSEED eventual   作:kia

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第39話 瀬戸際の光明

 

 

 

 

 同盟と統合軍がしのぎを削るアポロンの戦局。

 状況は一進一退の膠着状態へと陥っている。

 その様子を指揮官であるファウストは鋭い目付きのまま、司令室のモニターで眺めていた。

 

 「あの装備……同盟め、まだあんな手札を残していたとはな」

 

 スレイプニルの思った以上の火力に、思わず歯噛みした。

 コロニーすら破壊するあの火力は明らかな驚異だ。

 しかし対策は出来ている。

 あのザムザザーの部隊はスレイプニルの存在を抑える為に配備したものなのだから。

 

 「しかし思ったよりも使えるじゃないか、ザムザザーは」

 

 巨大モビルアーマーなどモビルスーツを相手にするには前時代的な兵器だと思っていたが。

 どんなものでも使いようだという事か。

  

 「だが、アレでは何時までも持つまい」

 

 「イスラフィール」

 

 いつの間にか隣に来ていたイスラフィールの視線の先。

 戦況を映し出す巨大モニターに映っているのは同盟のモビルスーツであるユニオン・エクセリオンとリベルテ・ストライクがザムザザーを次々と撃破していた。

 アレではいつかスレイプニルの砲撃を防ぎきれなくなるだろう。

 

 「手は打ってあるさ。それよりそちらの準備はどうなんだ?」

 

 「もうすぐ完了する。準備ができ次第、出撃させるつもりだ」

 

 ファウストが手元のキーを操作すると椅子に設置されたモニターに映像が映し出された。

 格納庫に立つ三機のモビルスーツ。

 内一機はファウスト専用のもの。

 そして隣に立つ二機は色を持たず灰色の装甲を晒している新型機だった。

 

 「お前も戦場に出るつもりか?」

 

 「そうなった場合は躊躇うつもりはない。戦場で怯む指揮官に部下はついて来ないものだ」

 

 「勇ましいな」

 

 「そう言うお前はどうなんだ?」

 

 「軍の指揮を執っているのはファウスト・ヴェルンシュタインだ。出番を奪うつもりはない。期待してもいいんだろう?」

 

 去っていくイスラフィールの後ろ姿を見つめていたファウストは自信に満ちた声で応じた。

 

 「無論だ。俺は勝つ、必ずな」

 

 ファウストの決意に呼応するように戦況もまた変化しようとしていた。

 

 

   

  

 アポロンを攻める同盟軍の要はスレイプニルの強力な火力を用いた砲撃と数機のモビルスーツによる奇襲攻撃だった。

 現状、それが功を奏し、同盟軍は統合軍と一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

 しかし状況は変化する。

 

 スレイプニルによる砲撃を阻むように一機のモビルスーツが乱入してきたのだ。

 

 「あれはデスティニー!?」

 

 シンの直上から突っ込んできたディアドコスがすれ違い様にスレイプニルの砲塔を切り捨てた。

 さらにビームライフルの追撃がスラスター部分に直撃する。

 

 「ぐっ、くそ! アレがルナの言ってた奴かよ!!」

 

 下方に逃れた敵にビーム砲を撃ち込むが速度を上げたディアドコスに振り切られてしまう。

 

 「速い!」

 

 逃がさないと発射した対艦ミサイルも機関砲によってすべて迎撃され、さらに速度を上げて突っ込んでくる。

 

 「スレイプニルを装着したままじゃ、あの速度に対応できない!」

 

 シンはスレイプニルをパージすると斬艦刀を抜き、ディアドコスを迎え撃つ。

 

 「ハアアアアア!!」

 

 激突する斬艦刀と対艦刀。

 互いの刃は盾に阻まれ、すれ違う度に火花を散らす。

 

 「ここでお前と決着をつける、シン・アスカ!」

 

 「リベルト・ミエルス!!」

 

 シンの闘志に応えるようにリベラシオンデスティニーが光の翼を展開、そしてディアドコスもまた翼を解放する。

 黒き翼と紅き翼が鍔迫り合いながら、戦場の真っ只中へ突入していく。

 

 「シン!?」

 

 「ッ、キラ、前を!!」

 

 アポロン要塞から出撃してくるのは黒い巨体デストロイMk-Ⅱだ。

 数機の巨体が戦場へ躍り出てくる。

 

 「アレが出てくると不味い」

 

 デストロイは機動性こそモビルスーツの劣るが、その火力は折り紙付きだ。

 砲撃戦になれば勝ち目がなくなる。

 

 「私が行きます。キラはミナト少尉達の援護を!」

 

 「了解!」

 

 デストロイはジャスティスに任せ、キラはザムザザーの排除に向かったアオイとニーナの援護に向かう。

 敵をロックしフリーダムとスレイプニルの火力を解放する。

 

 「いけ!!」

 

 通常のフルバーストとは比較にならない圧倒的な砲撃が敵陣を薙ぎ払っていく。

 

 「ニーナ達のお陰で壁が薄くなってる。これなら!!」

 

 後から続く味方の援護には十分だろう。

 戦場はすでに敵味方入り乱れた、乱戦になっていた。

 

 「味方も巻き込みかねないな。スレイプニルの砲撃もここまでか」

 

 そのまま砲撃を継続していたキラだったが、戦場の状況を把握しスレイプニルをパージした。

 

 「行くぞ!」

 

 翼を広げたユニバースフリーダムが戦場へと飛び込んでいく。

 

 「まずは!」

 

 キラが最初に目を付けたのは中央からこちらに攻め入ろうとしている進撃部隊だ。

 

 「数が多い。あれを進ませる訳にはいかない!」

 

 速度を上げたフリーダムは敵部隊の先頭にいたリゲルをビームサーベルで切り捨てた。 

 

 「フリーダムか!?」

 

 「奴を行かせるな! ここで落とせ!!」

 

 リゲルやジンⅡは即座に連携を取りビームライフルを発射する。

 見事な連携。

 しかしそれすらも避け続けたフリーダムは直進しながら、サーベルを構えた。

 

 「ハアアア!!」

 

 すれ違い様に振るわれる斬撃。

 左右に煌めいた光の軌跡がリゲル、ジンⅡの急所を抉り、瞬時に撃破して見せた。

 さらにビームライフル、レールガン、斬艦刀。

 武装を器用に使い分け、敵モビルスーツを次々と落としていく。

 

 「後はモビルアーマーだ!」

 

 フリーダムの背中からドラグーンが射出され、部隊背後に控えていたザムザザーを囲むように砲撃が開始される。

 

 「ドラグーンは陽電子リフレクターでは防げない!」

 

 ザムザザーに装備された陽電子リフレクターは一方向だけ。

 死角から攻撃できるドラグーンを防ぐ事はできない。

 砲台から発射されたビームがザムザザーの撃ち抜き、大きく爆発を起こす。

 その隙に懐に飛び込んだキラは斬艦刀を敵機の中央に突き差した。

 

 「落ちろ!」

 

 突き刺さった斬艦刀を振り抜き、ザムザザーを叩き斬る。

 そして全砲門を構え、敵部隊をロック、一斉に解放した。

 

 「いけぇぇぇ!!」

 

 フルバーストが突き刺さり、敵部隊を成す術無く吹き飛ばす。

 砲撃が敵を撃破していく中で正面から姿を見せた機体にキラは思わず顔を顰めた。

 

 「アレは」

 

 見覚えがある。

 背に特徴的な二対の羽に二つの砲塔、さらに腕に装着された二本の対艦刀。

 ヤキン・ドゥーエ戦役で猛威を振るった機体に酷似していた。

 

 GAT-X147 『ヴァニタス・ゼニスガンダム』  

  

 ヤキン・ドゥーエ戦役で投入されたゼニスガンダムの正当後継機。

 今まで開発された機体と鹵獲したアルカンシェルのデータを用い、各武装の高出力化に加え、最新の技術を用いた高性能機に仕上がっている。

 

 「……ゼニスガンダム」

 

 悠然とした動きではあるが隙がない。

 キラはスレイプニルを切り離し、ビームサーベルを抜くと即座に斬りかかった。

 先手必勝。

 しかしゼニスも同じ事を考えていたのか、全く同時に斬り込んでくる。

 

 「ッ!」

 

 ゼニスの斬撃を紙一重で避け、ビームサーベルを袈裟懸けに振るう。

 だがそれすらも避けて見せたゼニスは対艦刀で反撃してくる。

 横薙ぎの一撃を宙返りで躱したキラは逆さのままレールガンを叩き込んだ。

 砲弾の直撃を受け、ゼニスは体勢を崩す。

 

 「そこ!」

 

 出来た隙を突きキラはビームサーベルを振り抜いた。

 だが、驚くべき反応でゼニスは自らのスラスターを噴射し、寝そべるようにサーベルの軌跡を回避する。

 

 「ッ!?」

 

 さらにそのまま縦に一回転し、ユニバースフリーダムの懐に蹴りを入れた。

 

 「ぐっ、この動き!」

 

 蹴りを腕で止め、衝撃を最小限に抑えると飛びのくように二機が距離を取った。

 

 「……どうした戦神。動きを止めるとはお前らしくもない」

 

 「……君がアストが言っていたジェラール・フィレオル大尉か?」

 

 「何を言い出すかと思えば……俺は『シリル・アルフォード』だ!」

 

 ゼニスは加速しながら肩に装備したビームランチャーを構えて突っ込んでくる。

 

 「君こそ何を言っている!?」

 

 砲撃を上昇して回避したフリーダムはビームライフルを発射しながらゼニスを牽制する。

 

 「シリル・アルフォードはもうとっくに死んでいる!!」

 

 「戯れ事を!」

 

 フリーダムのビームを物ともせず距離を詰めたゼニスは再び対艦刀を振るう。

 強烈な斬撃をシールドで止めたキラは困惑と理解できない不気味さを覚えていた。

 確かにジェラールはアストの言っていた通りシリル・アルフォードによく似てはいる。

 しかし別人だ。

 シリル・アルフォードの力量は良く知っている。

 ヤキン・ドゥーエ戦役で最も多く鎬を削った相手だから。

 故に断言できるのだ。

 アレは違うと。

 

 「……もう一度だけ言う。君は何を言っている?」

 

 「信じられないというなら、貴様を倒す事で証明してやる! 俺が『シリル』であるとな!!」

 

 力任せの一撃がフリーダムを弾き飛ばし、再び距離を詰めたゼニスは対艦刀を振り下ろした。

 

 「そうか。なら僕も!」

 

 対艦刀を迫り出した腕部ナーゲルリングで受け止めたフリーダムは反撃とばかりに斬り返した。

 

 「死人に付き合っている暇はないんだ!!」 

 

 「ウオオオ!!」

 

 狂気すら滲ませる咆哮を発しながら突撃してくるゼニスをキラは真正面から迎え撃った。

 

 

 

 

 アポロンの戦場は戦艦や特殊兵装による砲撃戦からモビルスーツ戦へと移行した。

 各エース達もそれぞれの敵を相手にし、先行して敵を叩いていたアオイたちの前にも新たな敵が姿を見せていた。

 

 「アレは……」

 

 ザムザザー狩りを進めていたアオイの前に姿を見せたその機体に思わず操縦桿を握る手に力が籠る。

 

 「ニーナさん、此処は俺に任せてザムザザーをお願いします」

 

 「少尉?」

 

 「アレは俺がやります」

 

 アオイの固い声に何かを感じ取ったニーナはそれ以上は何も言わず、ザムザザーの方へ向かっていく。

 意外にも敵はリベルテストライクへの追撃は行わず、エクセリオンの方だけを警戒している。

 

 「よりによって、またその姿を見るなんて」

 

  GAT-X004b 『アンフェール』 

 

 ユニウス戦役時に鹵獲されたアルカンシェルをベースに開発した新型モビルスーツ。

 新型機の開発プランのデータを混ぜ合わせ、火力、機動性、操作性、すべてを強化、さらにストライカーパックを装着する事も可能であり汎用性も高い機体に仕上がっている。

 

 「アルカンシェルの後継機」

 

 外部装甲が排除された所為か依然と比べて全体的にスマートでシンプルな印象を受けた。

 幾つか武装は変更されているようだが、かつてアオイが搭乗した事もある機体だけにその性能は折り紙付きだ。

 

 「保守派が開発したのか。それとも統合軍か……どちらにしても厄介だな」 

 

 性能を知っているが故にアオイは警戒感を滲ませる。

 だが、そんな事はお構いなしでアンフェールはビームサーベル片手に突っ込んでくる。 

 

 「ッ!?」

 

 いきなりスラスター全開で間合いに踏み込んできたアンフェールの一撃に驚きながらも眼前で受け止めたアオイは負けじとビームサーベルを抜く。

 

 「俺だって負けられないんだよ!!」

 

 背中のウイングスラスターを吹かし、アンフェールの斬撃を押し返すと、そのままシールドで突き飛ばした。

 アオイはその勢いに任せて攻勢に出る。

 肩のマシンキャノンで牽制しながら収束ビーム砲を発射する。

 空間を焼き払う強力なビーム砲を流石にアンフェールも警戒していたのか、即座に距離を取った。

 

 「そこ!」

 

 それを予測済みだったアオイはもう一丁の収束ビーム砲でアンフェールを狙撃する。

 しかしアンフェールは装甲の隙間から放出されたミラージュ・コロイドでアオイの照準を僅かに乱し、さらに想像以上の機動性をもってビーム砲を躱してみせた。 

 

 「何!? この動き……いや、まさか。何にしろ、命知らずかよ!」

 

 ビームの周りを回転しながら迫ってくる黒いガンダムにアオイは戦慄しながらも、敵機の攻撃を上昇して回避する。

 そこに狙いを付けたアンフェールはビームライフルとは別の武装に持ち替え、こちらに照準を向けた。

 

 「まさか……『アンヘル』!?」

 

 アンフェールもまた収束ビーム砲を構えてエクセリオンを狙い撃ちにしてきた。

 

 「くそ!」

 

 横っ跳びでビーム砲をやり過ごす、エクセリオン。

 その隙に距離を詰めてきたアンフェールが左腕を振り上げるとシールドの裏側に内蔵されていたパーツが射出され、巨大な爪と化しエクセリオンに襲いかかる。

 

 「チッ、新装備か」

 

 ドラグーンシステムの応用だろう。

 射出されたパーツがビームを発生、大きな爪を形成しているのだ。

 振りかぶられた爪をビームライフルで迎撃するも、すべて弾かれてしまう。

 

 「ビームシールドと同じ特性を持っているのか!」

 

 ならばとビームサーベルで巨大な爪を受け止めると激しい稲光が発生する。

 その光に照らされながらアオイは自分の中に疑念が生じ初めていた。

 先ほども思った事だがアンフェールのパイロットはエクセリオンの動きを予測したような攻撃を見せていた。

 W.S.システムに連なるシステムを搭載してこちらの動きを読んできたのかもしれないが、それにしても読みが的確で癖すら見抜いていたように思う。

 

 「このパイロットは俺を知っている?」

 

 光爪を弾き飛ばし、確かめるようにビームライフルを発射した。

 

 それを『予想通りの動き』で避けたアンフェールは『思った通り』に接近戦を挑んでくる。

 

 「お前はやっぱり……」

 

 思い描く動きと敵の動きが一致する。

 

 やはりという思い。

 

 これまで一緒に戦ってきたのだ。

 

 だから――

 

 

 「俺が分からない訳ないだろ! 何でお前がそこに居るんだ、ベアトリーゼ!!」

 

 

 黒いガンダム――アンフェールのコックピットに座るベアトリーゼ・フォルケンマイヤーは何も語らず、エクセリオンに刃を向けた。

 

 

 

 

 

 激しい戦闘を繰り広げるアポロンの戦場。

 統合軍に数で劣る味方を援護する為、オーディンを含めた戦艦もまた戦場にて砲撃を行っていた。 

 

 「主砲、撃てぇー!!」

 

 オーディンの一撃が近づくモビルスーツを撃墜し、発射されたミサイルが敵機を吹き飛ばす。

 艦全体を揺らす振動に耐えながらテレサはセーファスと共にセレネからの思わぬ提案に耳を傾けていた。

 

 《以上が私達からの提案です》

 

 「しかし、それは……」

 

 《はい。これは賭けになります》

 

 「リスクが大きいな」

 

 《だが今のままでもジリ貧には変わり無いぞ、アルミラ艦長》

 

 「ええ」

 

 元々不利な状況。

 出来れば不確定要素は避けたい所ではあるが、こちら側が有利になる要素も無くは無い。

 つまりは賭け。

 

 「呑気に考えている暇は無いな」

 

 オーディンに直撃する砲弾の衝撃に歯を食いしばりながら、テレサは決断を下した。

 

 「オーデン准将、やりましょう。今の状況でどの道――」

 

 《……そうだな。賭けになってしまうが、このまま敗走を待つよりはマシか。了解した。ディノ中尉、そちらの提案を乗らせてもらおう》

 

 《了解しました。では私達は準備ができ次第、すぐに動きますので》

 

 「分かった」

 

 通信が切れると同時にテレサは前を向く。

 

 「オーディン、敵を引きつける! 全砲門開け! 一斉射撃! 各モビルスーツにも作戦を打電!」

 

 「了解」

 

 激しさを増すオーディンの砲撃に合わせイザナギを含めた戦艦もまた援護射撃を開始する。 

 それを潜んでいたポイントで確認したセレネ達もまた動き出す。

 

 「準備はいいですか?」

 

 貨物室に積んでいたモビルスーツのコックピットに座ったセレネは機体を立ち上げながら、シャトルの方へ通信を繋げる。

 

 「こちらは問題ない。何時でも行ける」

 

 シャトルの操舵を担当するのはレイだ。

 彼の操縦技術であれば余程の事が無い限り、デブリの中であろうと問題あるまい。

 

 「操舵は頼みます、バレル中尉。ヴェルンシュタイン議員、そちらはどうです?」

 

 「大丈夫だ。全員、シートに体を固定している。君こそ気をつけてな」

 

 「はい。最後までお供が出来ない事が心苦しいですが」

 

 「それは気にしなくていい。こっちはこっちでどうにかするさ」

 

 覚悟は決まった。

 後は行くのみ。

 

 「では行きましょう」

 

 「了解!」

 

 戦場から少し離れた岩陰からシャトルが発進すると一直線にアポロン方面へと加速する。

 

 「何だ?」

 

 「シャトルだと?」

 

 戦場に現れたシャトルに統合軍の兵士達は困惑したように首を傾げる。

 

 「何をしている! 同盟のシャトルだぞ、撃ち落とせ!!」

 

 「しかし確認もせずに」

 

 「馬鹿者! こんな戦場のど真ん中で民間のシャトルがいる訳ないだろうが! つまり敵だ! 貴様は後で懲罰だからな、覚悟しておけ!」

 

 「そ、そんなぁ」

 

 戦場を突っ切るシャトルをバウ率いる数機のモビルスーツが追撃してくる。

 

 「レイ!」

 

 「任せておけ!」

 

 レイの巧みな操縦で撃ち掛けてくる無数の砲撃を絶妙のタイミングで回避する。

 

 「くっ、流石に少しきつい」

 

 「私達の、事は、気にしなくていい」

 

 「了解です。もう少し耐えてください、アルノルト議員」

 

 シャトルとは思えない無茶苦茶な動きに追撃してきた統合軍のパイロット達は目を見開いた。

 

 「何だ、あのシャトルは!?」

 

 「何としても撃墜しろ!!」

 

 幾らパイロットの腕が卓越していようが、所詮は輸送用のシャトル。

 モビルスーツの機動性とは比べるまでも無い。

 ライフルの照準をシャトルに合わせ、今度こそ撃墜しようとトリガーに指を掛ける。

 その時、部下の悲鳴にも似た声が聞こえてきた。 

 

 「隊長、上方から敵機、急速接近!」

 

 「何!?」

 

 彼らの直上、そこから来たのはリベルテストライクガンダムだった。

 

 「邪魔はさせない」

 

 正確な射撃で数機がシャトルから引き離されてしまう。

 

 「くそ、逃がすな! 追撃しろ!!」

 

 立ちふさがるリベルテストライクを無視し、何機かがシャトルの方へ向かって行く。

 ニーナはそれをあえて無視した。

 それも作戦の内だからだ。

 

 「行かせるのは彼らだけ。貴方達は此処より先には行かせません」

 

 「フン、貴様らが幾ら立ちふさがろうが必ずあのシャトルは撃墜する!」

 

 「状況が見えていないようですね。少し冷静に周囲を見てみる事をお勧めしますよ」

 

 「何!?」

 

 リベルテストライクの斬艦刀を受け止めたバウのパイロットは宙域図を見てようやく状況を把握する。

 その顔は真っ青になっていた。

 

 「……い、いつの間にかテタルトスの防衛圏内ギリギリの位置に――」

 

 追撃に意識を取られていたが故に今の現状に気がつかなった。

 あまりの不覚に隊長は愕然とした。

 

 「不味い! 追撃中止!! 戻れ!!」

 

 「もう遅いですよ」

 

 バウのコックピットにビームサーベルを叩き込む。

 叫ぶ間もなく焼け死んだパイロットと共にバウを撃墜するとリベルテストライクは残りの敵機を行かせまいとビームサーベルを構えた。

 

 その間にもシャトルは追撃から逃れようと加速し続け――そしてようやく目的地まで辿りつく。

 

 「このままテタルトス防衛圏内に突入する! ディノ中尉!」

 

 「了解! ハッチ解放!」

 

 シャトルの後部ハッチが解放され、モビルスーツが姿を見せた。

 

 「アレは……バイアランだと!!」

 

 「何でアレが!」

 

 「すでに貴方達はこっちの策に嵌ったんです!」

 

 バイアランの砲撃を敵モビルスーツは散開して回避する。

 

 「動きが鈍い。やっぱり地上用では上手く動けないか」

 

 セレネの乗るバイアランは地上用に改修されたもので宇宙用に換装する事が出来なかった。

 後付けのブースターユニットである程度は改善されているが、それでも宇宙用に比べて明らかに動きが鈍い。

 

 「このままシャトルごと撃墜してやる!」

 

 「やらせません!」

 

 シャトルから飛び出し、盾代わりになるように前へ出た。

 

 「そんな動きで!」

 

 「くっ」

 

 追撃を仕掛けてきたモビルスーツが動きが鈍いバイアランを僅かに損傷させ、そのままテタルトスの防衛圏内に侵入する。

 

 

 ―――これこそ同盟側の狙い。

 

 

 月は確かに協定を結んだ。

  

 統合側との会談での協力要請。

 

 それが出るまで統合軍が何をしても関知しないと。 

 

 

 ただし、それは『テタルトスの防衛圏内へ侵入しない限り』はという条件付きでの話。

 

 だがそれは破られた。

 

 

 つまり―――

 

 

 「大佐、統合軍側の防衛圏内への侵入を確認しました。戦闘も行っているようです」

 

 彼らテタルトス、いや、ユリウス・ヴァリスの介入を意味していた。

 

 「アリストテレス、推力最大! モビルスーツ隊、出撃準備!」

 

 アポロン要塞戦を離れた位置でみていたユリウスは即座に指示を飛ばす。

 

 「ヴィルフリート、そちらはどうか?」

 

 「俺の機体の調整ももうすぐ終わります。他は問題なく」

 

 「良し、テンペスタ―ズ、出撃。我々も行くぞ」

 

 「了解」

 

 月の精鋭達も動き出し、戦いは益々激しさを増そうとしていた。




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