機動戦士ガンダムSEED eventual   作:kia

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第41話 友へと捧ぐ

 

 

 

 各勢力の入り乱れた戦場を三つの影が駆け抜ける。

 背中のスラスターユニットと各所に設置された姿勢制御バーニアによって実現された高機動。

 敵機からの攻撃をすべて避けながら、機械のように正確な連携を組む三機。

 各々武器を構え戦場を駆けていたのはテタルトス軍最新鋭モビルスーツ『ジンⅢ』である。

 

 「正面、フローレスダガー、数は5」

 

 ジンⅢを操る男が冷静かつ正確な情報を他の二機に伝達する。

 コックピットに座っていたのはテンペスターズ最後の一人、ヴィクトル・シアーズ。

 ヴィクトルの情報を聞いた他の二機のパイロット、アルゼーネ・バルマとカーラ・アルマディオは素早く行動に移った。

 

 「了解!」

 

 「私から行きます」

 

 カーラのジンⅢが前に出る。

 中型対艦刀『ヴァハグン』を握り、単独でフローレスダガーへ攻撃を仕掛けた。

 

 「援護を!」

 

 「あの子なら必要ないよ! それより私らも仕事するよ!」

 

 「了解です!」 

 

 先行した一機を援護すべく、二機のジンⅢが敵部を左右から挟み込む。

 

 「新型!?」

 

 「バウ以外に新型が存在したのか!?」

 

 元々テタルトス側だったフローレスダガーのパイロットはジンⅢの姿に驚愕する。

 

 「戦場で動きを止めるなんて!」

 

 対艦刀の切っ先から発射されたビーム。

 完全に虚を突かれたフローレスダガーは避ける間もなくを破壊された。

 

 「ッ、全機散開して」

 

 「もう遅いんだよ」

 

 左右から突撃するジンⅢ。

 ヴィクトルのビームライフルが敵数機を撃破。

 陣形を崩した所でアルネーゼが両手で握ったビームサーベルで斬り込んだ。

 

 「ハアア!」

 

 振るった刃フローレスダガーの土手っ腹に叩き込み、もう一方のサーベルで袈裟懸けに切り裂いた。

 

 「ご機嫌だねぇ、この機体はさ!」

 

 ジンⅢの性能は確かなものだ。

 それこそワンオフ機にも劣らない。

 量産機とは思えない性能に満足そうにアルネーゼは笑みを浮かべる。

 

 「ホントですね。最初はどうなるかと思いましたけどね。少佐に感謝しないと」

 

 声を弾ませるカーラにアルネーゼはニヤニヤしながら突っ込みをいれた。

 

 「嬉しそうに言うねぇ、カーラ」

 

 「な、何ですか、それ! 変な事言わないでくださいよ!」

 

 「私は別に何も言っちゃいないんだけどねぇ。ねぇ、ヴィクトル?」

 

 「返事に困る質問をしないでくださいよ、大尉。それより次がきますよ」

 

 騒ぐ二人を諌めるヴィクトル。

 その表情に嫌悪感は無く、むしろやる気で満ちていた。

 

 「……またチームで戦えるなんてな思っていませんでした」

 

 ガンダムに敗れ、テンペスターズは完全に終わったと思った。

 自分も立ち上がる事はできないと。

 そんな自分を無理やり立ち上がらせ、この二人に引き合わせたのはヴィルフリートだ。

 彼女らも地球でガンダムに痛手を受け、仲間の一人を失ったらしい。

 そんな同じ境遇故か、ヴィクトルとアルネーゼ達はあっと言う間に意気投合できた。

 

 「そういう意味では感謝してもいいかもしれませんね。ヴィルフリート・クアドラードに」

 

 あれだけ見下していた相手に感謝するとか、正直妙な気分ではある。

 だが新生テンペスターズとしてチャンスをくれた事はありがたい。

 

 「さて、行くよ、アンタ達!」

 

 「「了解」

 

 快進撃を続ける三機のジンⅢ。

 それに続き戦場へ介入したテタルトス機も統合、同盟、両軍を撃破してゆく。

 

 「次は……アレだね」

 

 順調に突き進んでいたアルネーゼ達の前に巨体を一機で屠る強敵が姿を現す。

 アポロン要塞近辺でデストロイの迎撃を行っていたクスィフォス・ジャスティスガンダムである。

 ジャスティスはデストロイから発射された幾重もの砲撃を加速しながら回避。

 すれ違い様に斬艦刀で砲塔を切り落とすと背後へ回り込んだ。

 デストロイはジャスティスの素早い動きに全く対応できない。

 その隙に連結させたビームサーベルで巨体を背を斬り裂き、傷口に撃ち込んだビーム砲がデストロイを内側から暴発させた。

 

 「幾ら改良された所で、単なる的にしかならないか」

 

 「デストロイなんて砲撃戦以外、何の役にも立ちませんよ。懐に入られれば終わりです」

 

 アルネーゼの呟きにカーラは心底呆れたように肩を竦めた。

 カーラの言は正しい。 

 幾ら小型化し、接近戦への備えをした所でデストロイの弱点は知られつくしている。

 それを何とかしようと足掻いても結果はコレだ。

 その証拠にジャスティスの周りには抵抗もできないまま破壊されたデストロイの残骸が無数に散らばっていた。

 

 「全滅ですか。流石、同盟のエースですよ」

 

 「だからこそ落としがいがあるってもんだ! 行くよ!」

 

 「はい!」

 

 分散し、ジャスティスを囲むように攻撃を仕掛ける。 

 

 「新手!?」

 

 ジンⅢの接近に気が付いたラクスはサーベルを構え直し、敵の動きを観察する。

 

 「見た事のない機体ですわね……テタルトスの新型。ジンⅡの面影があるという事は後継機?」

 

 三方から発射されたビーム砲を上昇して回避したラクスは最も近い位置にいたアルネーゼのジンⅢに攻撃を仕掛けた。

 ライフルで牽制しながらシールドからせり出したブーメランを投げつける。

 

 「舐めてんのかい、ガンダム!!」

 

 しかしブーメランは届くことなく破壊されてしまった。

 

 「想定内です」

 

 接近したジャスティスはビームサーベルを下段から切り上げた。

 

 「速い! けどねぇ!」

 

 ジンⅢが掲げた腕から光の膜が展開され、サーベルが直撃する寸前で止めてみせた。

 

 「ビームシールド!?」

 

 「核動力機だけの専売特許って訳じゃないだろうが!」

 

 ジンⅢはジャスティスのサーベルを押し返し、対艦刀を叩きつけた。

 

 「くっ」

 

 ラクスは咄嗟に機体を引く。

 対艦刀の刃が浅くジャスティスの装甲に傷をつけた。

 

 「よくかわした。流石同盟のエースだ!」

 

 「この程度で!」

 

 「相手は大尉だけじゃない!」

 

 ジャスティスの背後に回ったカーラのジンⅢがビーム砲を発射してきた。

 それも宙返りしてかわすジャスティス。

 しかし―――

 

 「きゃあああ!!」

 

 背後で起こった爆発にジャスティスに大きく体勢を崩されてしまう。

 それはヴィクトルがあらかじめ配置していたグレネードランチャーだった。

 

 「回避先くらいなら、予測できますよ!」

 

 その隙に距離を詰めたヴィクトルの対艦刀がビームライフルを切り落とした。

 

 「この連携、あの時の敵と同等!」

 

 三機からの猛攻にラクスは堪らずシールドを展開して後退する。

 高い機体性能。

 ややぎこちなさは残るものの十分に機能した連携。

 ラクスの脳裏にユニウス戦役で戦った三機のモビルスーツが思い起こされる。

 確かザフトの実験機で、ドム・トルーパーと言っただろうか?

 彼らもまた手強い相手だった。

 

 「だからといって!」

 

 好き勝手にされるつもりはない。

 タイミングを見計って背中のファトゥムー02を切り離す。

 

 「戦いようはあります!」

 

 「撹乱のつもりかい!」

 

 「行きなさい!」

 

 ファトゥムー02がビーム砲を発射しながら、ビームウイングを展開。

 弾丸のように突き進む刃の鳥がジンⅢの陣形を掻き乱す。

 

 「こいつ邪魔!」

 

 「そこ!」

 

 ビームサーベルを分割、二刀に構えた斬撃がカーラの駆るジンⅢの装甲を捉えた。

 

 「くぅ」

 

 咄嗟の判断で対艦刀を盾にする事で難を逃れるも、ジンⅢの装甲に深々と傷が刻まれた。

 

 「カーラ!?」

 

 「大丈夫、戦闘には支障なし」

 

 カーラの機転とジンⅢの性能のお陰か、損傷は大した事は無かった。

 しかしヴィクトルとアルネーゼは安堵すると同時に戦慄する。

 

 「油断なんてしていなかったにも関わらずコレとは」

 

 「分かってたつもりだけどね」

 

 コンビネーションの僅かな隙を狙い、撹乱。

 その間に体勢を立て直し、奇襲。 

 一機でも撃墜できれば良し。

 出来なくとも、流れを変える事が出来る。

 

 「一瞬で流れを変えてくるとは。ハハ、ガンダムに乗っているだけあるじゃないか!」

 

 「仕切り直しましょう」

 

 ジャスティスは二刀を逆手に構え、三機のジンⅢと睨み合った。

 

 流れはジャスティスにある。 

 

 それでも怯まず攻勢に出ようとする、テンペスタ―ズ。

 

 だがそこで思わぬ乱入者が現れた。

 

 「アレは―――」

 

 速度を上げて急接近してくるモビルスーツ。

 

 銀色の装甲。

 

 光を放つ一つ目。

 

 特徴的なその機体に全員が目を奪われた。

 

 LFSAー03E 『ジンⅢ・レーヴェ』

 

 ジンⅢを大幅に改修し、開発された機体。

 背中にはウイングスラスターの出力を限界以上に引き上げ、さらに高出力化させた大型スラスターユニットを搭載、同盟のガンダムに勝るとも劣らない機動性を得ている。

 

 「全員、無事だな?」

 

 「クアドラード少佐!」

 

 戦場に現れたジンⅢ・レーヴェの姿にカーラの声が弾む。

 反面ラクスは新たに現れた敵に嫌な汗が流れていた。 

 

 「また新型ですか……」

 

 「俺がどこまでやれるのか」

 

 ここまで血の滲む訓練を積んできた。

 

 戦闘データを解析、敵の動きを分析し、自分の欠点を見つめ、克服する。

 

 そんな事を繰り返してきた。

 

 愚かな自分を乗り越える為に。

 

 そしてこれ以上、負けない為にだ。

 

 ジンⅢ・レーヴェは腰から対艦刀を抜き放つ。

 

 「試させてもらうぞ……ガンダム!!」

 

 「ッ!?」

 

 迎え撃つジャスティスに向け、ジンⅢ・レーヴェが突撃した。

 

 

 

 

 戦艦の砲撃がオーディンの装甲に突き刺さり、爆煙が上がる。

 

 「右舷カタパルト被弾!」

 

 「三時方向から敵モビルスーツ、数3」

 

 「オーディンに近づけるな! 主砲、撃てぇ!!」

 

 オーディンの主砲が火を噴き、数機の敵を撃ち落とした。

 しかし敵の攻勢は緩む事無く続き、オーディンに降り注ぐ。

 

 「ミサイル、来ます」

 

 「ぐっ、迎撃!」

 

 読み通りテタルトスの参戦により、状況は変わった。

 統合軍は陣形を崩し、同盟に対する攻勢を緩めている。

 しかし物量の差は未だ侮れず、不利な状況に変わりは無かった。

 オーディンも戦場に突入し、アポロン要塞近辺で突入したモビルスーツ隊の支援を行っている程である。

 

 「後は持久戦になるが……ディノ中尉からの連絡は?」

 

 「未だに」

 

 「くっ」

 

 セレネ達が月本国に辿りつけばそれで同盟の作戦目的は達成である。

 しかし未だに彼らが月に到着していないならば、撤退する訳にはいかない。

 

 「艦長!! ジャスティスガンダム、シグナルロストです!」

 

 「何だと!?」

 

 オペレーターからの報告にテレサのみならず、ブリッジにいた全員が息をのんだ。

 ラクスは紛れも無い同盟のエースだ。

 ヤキン・ドゥーエ戦役から共に戦い続けてきたテレサ達が一番それを知っている。

 そのラクスが敗れるとは。

 

 「ラクスは無事なのか?」

 

 「……不明です」

 

 「……近くにいる味方機にジャスティスの状態を確認させろ」 

 

 「了解」

 

 爆発するミサイルの衝撃が艦を揺らす中、オーディンは徐々にアポロン要塞へと近づいていく。

 テレサは陸戦になる可能性も考えながら、通信機に手を伸ばした。

 

 

 

 

 要塞傍を漂う岩片。

 ぶつかれば確実に命を失う巨大な岩の間を二機のモビルスーツが高速で移動し続けている。

 その内の一機。

 アンフェ―ルを駆るベアトリーゼは激し苛立ちに支配されていた。

 

 「ちょこまかと!」

 

 先行する敵機に狙いを定め、収束ビーム砲のトリガーを引いた。

 強烈な閃光が岩を砕き、逃げる敵機に迫っていく。

 しかし射線を見切っているかのように旋回し岩陰に飛び込んだエクセリオンはビームを容易く回避する。

 背中のウイングスラスターを左右に広げ、悠々とこちらの攻撃をかわしていくエクセリオンにさらなる苛立ちが募った。

 

 「逃げるな!!」

 

 再び収束ビーム砲が火を噴く。

 周囲を巻き込む強烈な一撃。

 それすらエクセリオンを掠める事すら出来ない。

 

 「何故、何故だ! 何故、避けられる!!」

 

 完璧に捉えた筈の砲撃。

 それをエクセリオンはあり得ない反応で見事に回避していく。

 

 「くそォ! 落ちろ!」

 

 速度をさらにあげ、邪魔な岩を吹き飛ばした。

 

 「迂闊だぞ!」

 

 「何!?」

 

 破壊された断片の陰から飛び出してきたエクセリオンがビームライフルを発射する。

 

 「ッ!? そんなものに!」

 

 ビームライフルの一射をシールドで防ぎ、ビームサーベルを叩きつけた。

 

 「やめろ、ベアトリーゼ!!」

 

 押しつけられたサーベルの閃光がエクセリオンが掲げたビームシールドに阻まれ、激しい稲光が発生する。

 それでもサーベルを押しつけるのをやめない。

 さらに左腕に再び巨大なビームクロウを形成し、エクセリオンへ叩きつけた。

 

 「やめろって言ってるだろ!!」

 

 「黙れ! 馴れ馴れしい!!」

 

 サーベルでクロウを弾くとエクセリオンはアンフェールは距離を取った。

 

 「俺が分からないのか?」

 

 鬱陶しい。

 

 さっきから何を言っているのか。

 

 「分かるさ。お前はアオイ・ミナト、我々の敵だ!」

 

 最優先排除対象の1人であり、調和同盟に所属するエースパイロットを知らない筈がない。

 

 「違う。俺とお前は仲間だ! ベアトリーゼ、お前は統合軍に――」

 

 「洗脳されているとでも? 世迷いごとを言うな!」

 

 マシンキャノンの牽制をかわし、収束ビーム砲で狙いをつけた。

 

 「今度こそ!」

 

 「撃たせるか!」

 

 発射直前に懐へ飛び込んだアオイは腕を掴み上げ、砲口を上へと逸らした。

 

 「俺の話を聞けよ!」

 

 「敵に話す事などない!!」

 

 何度も組みついてくるアオイにベアトリーゼは感じた事のない感情が膨れ上がる。

 

 「何なんだ、お前は!」

 

 エクセリオンに蹴りを入れて吹き飛ばすと今度こそとビーム砲を発射した。

 

 「落ちろ!」

 

 「そんな簡単に行くと思うなよ!」

 

 発射された強烈なビーム。

 アオイはフットペダルを踏み込み、一気に下方へ移動する。

 ビーム砲の一撃をやり過ごしこちらも収束ビーム砲を発射した。

 

 「ぐっ」

 

 シールドで防御するアンフェール。

 凄まじいビームの圧力に見動きすら取れない。

 

 「ベアトリーゼ!!」

 

 アオイはウイングスラスターを吹かし、動きを止めたアンフェールへ突撃するとアポロン要塞の岩壁に叩きつけた。

 

 「グハァ!」

 

 思い切り岩壁に叩きつけられたベアトリーゼは凄まじい衝撃に意識を失いかけてしまう。

 

 「き、貴様」

 

 「まずはその機体を破壊する。話はその後だ」

 

 さらにウイングスラスターを噴射させ、岩壁を滑るように移動しながら要塞内へと押し込んでいく。

 

 「私を馬鹿にするのもいい加減にしろ!」

 

 高速で移動しながら腕にマウントされていたヴァリアブルアームズを再び展開する。

 今度形成するのは爪では巨大な剣のような刃。

 

 「死ねェェ!」

 

 力任せにエクセリオンを振り払い、上段から叩きつける。

 

 「ハアアアア!!」

 

 「それはもう何度も見たんだよ!」

 

 シールドでヴァリアブルアームズの刃を止め、ビームライフルを発射した。

 

 「そんなものが!」

 

 「言っただろう。何度も見たってな!」

 

 ライフルの射撃がビームを発生させている基点に撃ち込まれ、刃を形成するビームフィールドを消し去った。

 

 「要するにフィールドを形成させなきゃいいんだ」

 

 巨大な刃を形成していたのは腕から射出されたパーツ。

 フィールドを展開される前に吹き飛ばせば、簡単に刃の形成を防ぐ事が出来る。

 

 「おのれ!」

 

 「俺の勝ちだぞ、ベアトリーゼ!」

 

 隙を見せたアンフェールの腕をシールドで弾き、懐に向けて思いきり蹴りを入れた。

 

 「ぐあああああ」

 

 蹴りを受けきれなかったアンフェールは要塞の入り口付近へ叩きつけられてしまった。

 衝撃がコックピット全体に伝わりベアトリーゼはコンソールに頭を打ち付けてしまう。

 

 「まず機体から引きずり出す。話はその後で――」

 

 その時、アオイの耳に敵機接近の警戒音が鳴り響く。

 アンフェールに近づこうとしたエクセリオンに背後から別の機体が迫ってきた。

 

 「エクセリオン!? アオイ・ミナトか!」

 

 ファウストのバウ・バジリスクがエクセリオンへ突っ込んできた。

 

 「バウ!?」

 

 途中、邪魔なスオウを切り捨て、ビーム砲を発射してくる。

 

 「貴様を落とせば、同盟の戦力はさらに低下する!」

 

 「その声―――ファウスト・ヴェルンシュタインか!?」

 

 正確な射撃がエクセリオンの動きを鈍らせる。

 避けるのは無理。

 そう判断したアオイはサーベルを抜き、ファウストと激突する。

 

 「統合軍指揮官がわざわざ戦場に出てきてくれるなんてな! 探す手間が省けたよ!」

 

 「私を探していたのか!」

 

 「貴方を倒せば、統合軍は終わりだからな!」

 

 「お前が私を倒すと? 笑えない冗談だ!」

 

 エクセリオンとバジリスクが弾け飛ぶ。 

 

 「私を倒したいならキラ・ヤマトでも連れてくる事だな!」

 

 ファウストは距離を取ると同時に腹部に装備された複列位相砲『アドラメレクⅡ』を叩き込む。

 

 「ッ!」

 

 スキュラと同格の複列位相砲。

 掠めただけでも致命傷になりかねない。

 

 「当たるかァァ!」

 

 回避に全力をつぎ込む。

 上昇するエクセリオンのすぐ傍をアドラメレクⅡが通過した。

 どうにかアドラメレクⅡを回避したアオイに今度はミサイルが降り注ぐ。

 

 「くっ、ファウスト・ヴェルンシュタイン! 貴方の存在が戦乱を巻き起こす!」

 

 「思い上がるな! ただの一兵士が政治家気取りか!」 

 

 マシンキャノンでミサイルを撃破。

 そしてビームサーベルを抜き、落とし切れず左右から飛んでくるミサイルをサーベルで斬り払った。

 

 「サーベルで斬り払うとは!!」

 

 「落とす!」

 

 エクセリオンが爆煙から飛び出すと即座にビームライフルで狙い撃つ。

 

 「甘いな!」

 

 ビームライフルを物ともせず、エクセリオンの懐へ飛び込みサーベルを横薙ぎに叩きつけた。

 斬撃がエクセリオンの脚部を捉え、装甲を斬り飛ばす。

 

 「どうした? これで終わりか!」

 

 「ッ、舐めるな!」

 

 構えたビームライフルが同時に発射され、互いの肩部を撃ち抜いた。

 

 「チッ」

 

 「ぐっ、まだまだ!」

 

 アオイはバジリスクを体当たりで突き飛ばし、一度後退する。

 コンソールを操作し、損傷を確認しながら浮遊していた戦艦の残骸に身を潜めた。

 

 「ハァ、ファウスト・ヴェルンシュタイン……統合軍を率いているだけある」

 

 指揮官としてだけではなく、パイロットとしても間違いなく一流だ。

 

 「さてどう攻める?」

 

 破損した部分は幸い問題ない。

 すでにW.S.システムによる調整も行われている。

 だがバジリスクの損傷もこちらと大差無いだろう。

 

 「隙を見つければ……」

 

 「それで隠れたつもりか!」

 

 上方から発射された三連ビーム砲が戦艦の装甲を貫いた。

 

 「目的は何なんだ!?」

 

 「宣言した通りだ!」

 

 「貴方がそんな殊勝なタマかよ!」

 

 足元の爆風から逃れたエクセリオンは収束ビーム砲でバジリスクを狙い撃つ。 

 強力なビームがバジリスクのライフルを焼き尽くし、肩のビーム砲を消し飛ばした。 

 

 「野心が透けて見えるんだよ!」

 

 「ぐぅ、私はこの世界を統合する! 人類を新たなステージに押し上げる!」

 

 「まだそんな事を!?」

 

 「この世界は不完全に過ぎる! あまりに愚かで無能な連中が多すぎる! だからこそ変える!  だからこそ『SEED』が、人類の革新が必要! 統一はその為の土台だ!」

 

 アオイはファウストの本音を聞き、歯噛みした。

 

 この男は平和を望んでいる訳ではない。

 

 自分よりも劣る者達を見下しているのだ。

 

 だから自分が導いてやると本気で思っている。

 

 「その傲慢! やはり此処で貴方は倒れるべきだ!」

 

 振り抜いたサーベルがバジリスクの脚部を斬り落とす。

 

 「思い上がるなと言った!」

 

 バジリスクが発射したグレネードランチャーが収束ビーム砲に直撃、機体諸共弾かれてしまう。

 ファウストはこの機会を見逃さない。

 

 「ハアアア!!」

 

 ビームサーベルを構えエクセリオンへ突撃した。

 

 「その体勢では避けられまい!」

 

 だがファウストの予想を大きく外れた。

 エクセリオンはスラスターを全開、戦艦の甲板を滑るように移動しバジリスクの斬撃をやり過ごした。

 

 「何だ、今の反応は!?」

 

 「避けられた?」

 

 またアオイが反応する前に機体の方が先に動いていた。

 

 「W.S.システムか。助かるけど!」

 

 機体の体勢を崩したままもう一つの収束ビーム砲を発射した。

 

 「何度も当たると―――ッ!?」

 

 ファウストはビーム砲の一撃をシールドで受け止める。

 そのまま攻勢に出ようとしたその時、エクセリオンとバジリスクの足元にある戦艦が爆発した。

 

 「何だ!?」

 

 見ればアポロンの中で倒れていたアンフェールが収束ビーム砲を構えていた。

 

 「ベアトリーゼ!?」

 

 「どういうつもりだ!?」

 

 そして再びビーム砲が発射される。

 狙いはエクセリオンではなく、バジリスクの方だ。

 

 「おのれ!」

 

 ビーム砲の直撃によって戦艦は完全に消滅する。

 予期せぬ爆発にバウは大きく体勢を崩された。

 反面あらかじめ体勢を正そうとしていたアオイはそのまま機体を立て直し、バジリスクに向けて突撃する。

 

 「ウオオオオ!!」

 

 「この程度で!」

 

 バジリスクは体勢を崩したままでエクセリオンを迎え撃つ。

 

 エクセリオンはビームサーベルを腰から抜き打ちで切り払い、バジリスクは上段から振り下ろす。

 

 サーベルが交錯する一瞬。

 

 バジリスクの一撃がエクセリオンの左ウイングスラスターを捉え―――

 

 

 エクセリオンのサーベルがバジリスクの胴体を切り裂いた。

 

 

 

 

 エクセリオンとバジリスクの決着がつく、少し前。

 

 エクセリオンによって要塞内部に叩きつけられたベアトリーゼは頭部を強打した痛みに呻いていた。

 

 「ぐっぅぅうう」

 

 朦朧とする意識の中でベアトリーゼの脳裏に幾つかの情景が浮かび上がってくる。

 

 血を吐き、床に倒れ伏す女性。

 

 ピクリとも動かない所を見ると息絶えている事が分かる。

 

 その女性に駆け寄る青年。

 

 彼は顔を涙で濡らし、憤りに震えていた。

 

 「良くやったわ、ベアトリーゼ。それでこそ私の娘よ」

 

 頭を撫でながら、艶やかな声で呟く女。

 

 気持ち悪い。

 

 この女は自分を物以下としか見ていないのに、何を言う。

 

 しかし声は出ない。

 

 そんな自由は初めから奪われている。

 

 自分はあくまでこの女の人形なのだから。

 

 死ぬまで自由などあるまい。 

 

 だが意外にも母を名乗る女はあっけなく排除された。

 

 「お前は何のために生きている? もうお前を縛るものはない。今お前の母親も死んだ。にもかかわらず何も感じないのか?」

 

 いつの間にか自分の前に立っていた青年が問いかける。

 

 だが、答えなどある筈がない。

 

 そんな感情も自我も、何も持たされなかったのだから。

 

 「薬の影響か。哀れとは思おう。だが、それがお前の免罪符にはならん」

 

 青年の冷たい指摘がジワジワと染みわたる。

 

 間違いじゃない。

 

 このまま彼に殺されるのだろう。

 

 それが償いになるのなら―――

 

 そう思っていたのに、気がつけば軍服を纏って訓練を受けていた。

 

 毎日同じ訓練を繰り返す。

 

 何の為かは、あまり思い出せなかった。

 

 だが戦場で無残に朽ちるのも悪くないと思っていた。

 

 そこで出会ったのだ。

 

 アオイ・ミナトに。

 

 最初は同期の訓練兵の1人というだけで別段思うところは無かった

 

 しかし何の因果か、訓練でも組む事が多くなり、嫌でもアオイの存在を刻みつける事になった。

 

 はっきり言ってこいつは放っておけるような奴じゃなかったのだ。

 

 危なかっしい上に自分に頓着が無い。

 

 見ているだけでもハラハラする。

 

 本当に何でこんな奴の面倒を見なくてはならないのかと、常に愚痴っていたくらいだ。

 

 でも、そんな生活が嫌いじゃなかった。

 

 自分でも驚くくらいに感情が表に出るようになっていた。

 

 失っていた筈の自我を取り戻していた。

 

 

 「ハ、ハハ、何だそれは。全く」

 

 

 簡単な話。

 

 要するに自分はアオイとのそんな生活が好きだったのだ。

 

 こんな罪深い自分にそんな救いを得る資格はなかったというのに。

 

 

 先ほどのアオイの言葉が蘇る。

 

 

 『俺とお前は仲間だ!』

 

 

 あの馬鹿は今でも本気で自分を信じているのだろう。

 

 

 「本当に馬鹿だ。だが」

 

 

 その信頼だけは裏切れない。

 

 いや、裏切りたくなかった。

 

 過去と現在の記憶で朦朧としながら、操縦桿を握り収束ビーム砲の銃口を向けた。

 

 ターゲットは―――

 

 迷いなくトリガーを引くと、強烈なビームが発射され正確に目標へと直撃する。

 

 ビーム砲によって撃ち抜かれたターゲットは火を噴き、爆散した。

 大きな爆発はアンフェールのいた入口まで巻き込んでいく。

 

 

 「助けてやれるのはこれで最後だ。さようなら、アオイ。お前に会えて、私は――――」

 

 

 ベアトリーゼの視界が眩い閃光で埋め尽くされ、アンフェールは崩れ落ちた瓦礫に埋まっていった。

 

 

 

 

 戦場を進むユニバース・フリーダム。

 キラはすれ違い様にリゲルを斬り伏せ、進路を阻む敵機を撃ち落としながら、近づいてくる殺意を感じ取っていた。

 

 「こちらに気がついている。当然だな」

 

 ユニバースフリーダムの進行方向。

 

 その先で青紫の装甲を持つモビルスーツが姿を見せる。

 

 あの色。

 

 あの動き。

 

 そして感じ取れるこの感覚。

 

 「……ユリウス・ヴァリス!」

 

 フリーダムを視認したディザスターが対艦刀クラレントを抜く。

 

 そしてキラも斬艦刀ガラティーンを構えるとスラスターを吹かした。

 

 初めから掛け値なしの全力で。

 

 互いに倒すべき相手を打倒する為に。

 

 宇宙を駆ける強者同士の刃が激突した。 

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