機動戦士ガンダムSEED eventual   作:kia

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第42話 激戦

 

 

 

 アポロン要塞を抜けた先。

 テタルトスの防衛圏内をバイアランが漂っていた。

 機体の所々には無数の傷が刻まれ、無事とは言い難い有様。

 背中に取り付けられたブースターユニットが無傷な事が幸いと言える。

 そんなバイアランに一隻の戦艦がゆっくりと近づいていた。

 

 「聞こえているかね、ディノ中尉。こちらエウクレイデス、バルトフェルドだ」

 

 相変わらずの軽い口調にバイアランのコックピットに座っていたセレネは笑みを浮かべた。

 

 「ええ、聞こえています。バルトフェルド艦長」

 

 「そいつは結構。新作のコーヒーをご馳走しながら積もる話もあるんだが、それは全部終わってからにしよう。収容するぞ」

 

 「了解です。細かい報告は後で上げますけど、簡略に経緯を説明します」

 

 ワイヤーで牽引されたバイアランがエウクレイデスの格納庫へ収容される中、セレネは今までの事を説明する。

 

 「――という訳で、別ルートでシャトルが本国へ向かっています。それにはアルノルト議員を含めた停戦派の方々が同乗してます」

 

 「なるほどね。そっちは連絡を入れとこう」

 

 「ありがとうございます。それで戦局はどうなっているのですか?」

 

 「アポロンの方には大佐が向かったよ。アルテミスの方はまだ戦闘が続いているようだ」

 

 セレネの脳裏にアスランの顔が浮かび上がる。

 彼の技量であれば大丈夫だとは思う。

 しかし、同時に思い浮かぶ存在がそれを信じさせない。

 

 アスト・サガミ。

 

 アスランが誰よりも倒したいと願う宿敵。

 彼がアルテミス攻撃部隊に加わっている以上、対決は不回避だろう。

 

 「アスランが心配かな?」

 

 「それは……そうです」

 

 「そうか。申し訳ないが、エウクレイデスはまだ任務があってね。セレネにも付き合ってもらうことになる」

 

 「構いません。それでどのような任務でしょうか?」

 

 そこでモニターに映るバルトフェルドの顔にいつもの軽薄そうな笑みが浮かんだ。

 

 「アルテミスの状況を確認し、統合軍側の情報を得ること。可能なら人質にされている面々の行方を探る事だよ」

 

 「あ」

 

 バルトフェルドの笑みの訳を察したセレネは呆気にとられつつ、すぐに微笑んだ。

 

 「意地悪ですね。今度アイシャさんに言っておきます」

 

 「すまん、すまん。君の機体も用意させてあるから、後で確認しておいてくれ」

 

 「了解」

 

 バイアランのコックピットから降りたセレネは用意されていた自身の機体の下へと足を向ける。

 

 LFSA-X005E 「エリシュオンガンダム・ディアナ」

 

 ユニウス戦役時に開発されたテタルトスの最新型モビルスーツの改修機。

 元々この機体はテタルトス軍の特殊装備の実証機として開発されたもので、タキオンアーマーを装備する事で本来の性能を発揮できるものだった。

 そこに改修を受け、タキオンアーマーと一体化されたことで整備性や機体本体の脆弱性も解決されている。

 

 セレネはユニウス戦役で扱った機体を見上げると静かな決意を胸に抱く。

 

 「……アスト・サガミは私が倒します」

 

 彼自身が悪い人間でない事は理解している。

 

 彼なりの戦う理由がある事も解っている。 

 

 それでもセレネはアスランを守りたいのだ。

 

 だから―――

 

 「今から行きます、アスラン」

 

 踵を返したエウクレイデスは進路をアルテミスへ向ける。

 

 そこにある戦場を目指して。

  

 

 オーディンからの連絡を受けたシンはジャスティスのシグナルが消えたポイントへと急いでいた。

 

 「まさかジャスティスがやられるなんて」

 

 ラクスの力を知っているからこそ、どうにも信じがたい。

 それとも彼女すら上回る強敵がいたのか。

 

 「だとしたら油断できないよな」

 

 警戒しながら進むデスティニー。

 途中で邪魔する敵機を撃墜しながらアポロン要塞付近まで近づき、ようやくジャスティスをロストしたポイントが見えてきた。

 

 「あれは……」

 

 シンの目が捉えたのは破壊されたモビルスーツの残骸。

 無残に破壊された腕や武装。

 それは間違いなくジャスティスガンダムのものだった。

 

 「くそ! でも残骸が少ない?」

 

 周辺に残骸は散らばっているが、それはあくまでも腕や武装だけだ。

 ジャスティス本体は見当たらない。

 

 「本体は無事なのか? それを確かめないと」

 

 周囲に目を凝らし、ジャスティスの姿を探すと戦域から離れていこうとしている敵機の姿が見える。

 ワイヤーでモビルスーツの胴体のようなものを牽引していた。

 

 「ジャスティス!? 敵に鹵獲された? でも今ならまだ間に合う!!」

 

 翼を広げ、最大加速でジャスティスを追撃する。

 

 「行かせるかァァ!!」

 

 一気に距離を詰め、ビームライフルを連射、二本のスラッシュブーメランを投擲した。

 ビームライフルが敵機の動きを乱し、その隙にブーメランがジャスティスを牽引していたワイヤーを引きちぎった。

 

 「ッ、あのガンダムは!?」

 

 「ジブラルタルに現れた奴!」

 

 ワイヤーを切られたアルネーゼ達は散開してデスティニーのビームライフルを回避した。

 

 「せっかくガンダムを鹵獲したのに!」

 

 「油断しないように! 奴は手強いよ!」

 

 「了解!」

 

 フォーメーションを組み、ジンⅢがデスティニーに襲い掛かる。

 

 「大した連携だけど!」

 

 三方向からの同時攻撃。

 ライフルを躱し、さらに左右から挟むように接近戦を挑んできた二機の斬撃を上昇して回避する。

 

 「今のを避けるか!」

 

 「まだまだ!」

 

 デスティニーの動きを妨害するように発射されるジンⅢのビームライフル。

 

 「そんなもの!」 

 

 シンはすべての射線を見切り、接近戦に持ち込む。

 腰からビームサーベルを抜き、ジンⅢに斬りかかった。

 

 「計算済みですよ!」

 

 攻撃を仕掛ける瞬間を狙ったかのようにアルネーゼが背後から攻撃を仕掛けてきた。

 狙いは完全に無防備な背中。

 

 「その翼ごと毟り取ってやる! 落ちな!」   

 

 「チッ、こいつら、上手い!」

 

 昔、戦ったカオス、ガイア、アビスの三機よりも手強いかもしれない。

 倒立するように機体を逆さまにして斬撃を回避する。

 

 「隙だらけですよ!」

 

 逆さまのデスティニーに向けてヴィクトルはビーム砲を構える。

 

 「舐めるなァァァ!!」

 

 無理矢理機体をひねったデスティニーはビーム砲を避け、ビームライフルでジンⅢの腰部ビーム砲を吹き飛ばした。

 

 「くっ、ジャスティスとの戦いで消耗していたとはいえ!」

 

 「なら! カーラ!」

 

 「了解」

 

 「このぉぉ!」

 

 デスティニーは振り返る事無く腕を背後に向け、パルマ・ジャベロットを発射。

 斬りかかろうとしていたジンⅢの腕ごと吹き飛ばした。

 

 「ぐぅぅぅ!」

 

 「大尉!?」

 

 「迂闊だ!」

 

 シンは大破したアルネーゼ機に気を取られたカーラ機目掛けてビームサーベルを叩き込んだ。

   

 「ッ!?」

 

 ジンⅢの頭部へサーベルが突き刺さり、稲光を発しながら動きを止めた。

 

 「後はお前だけだ!」

 

 「ガンダム!」

 

 ヴィクトルのジンⅢにビームサーベルを突きつける。

 だがそこでふとシンに疑問が沸いてきた。

 確かに彼らは強い。

 連携も上手く、パイロットの技量も高い。

 

 だが、彼らではラクスを追い詰める事は出来ても、倒せるとは思えなかったのだ。

 

 では一体誰がラクスを倒したのか?

 

 疑問を口に出そうとしたその時、コックピットに警報が鳴り響く。

 突如下方から砲弾がデスティニーに迫ってきた。

 

 「なッ!? 下から!!」

 

 シンは機体を急上昇させ砲弾を迎撃しようと機関砲を発射した。

 しかし、機関砲が砲弾を砕くより前に四方へ弾け、デスティニーに直撃する。

 

 「ぐっ、散弾!?」  

 

 この手の武器はデスティニーにとって厄介なものだった。

 VPS装甲により実体弾のダメージは無い。

 だが衝撃ににより肝心のスピードが殺されてしまう。

 これではデスティニーの本領が発揮できない。

 

 「まあ、その前に迎撃できればいいんだけど!」

 

 パイロットの腕前次第ではそれも出来ない。

 使い方によってはデスティニーにとっての天敵にもなり得る武器なのだ。

  

 「くそ!」

 

 体勢を立て直したシンの前に銀色の装甲を持つ機体が姿を見せた。

 

 「銀色……それに獅子のパーソナルマーク。こいつか、ジャスティスを落としたのは」

 

 警戒しながらライフルを構える、デスティニー。

 そんな敵機の姿を銀色の機体ジンⅢ・レーヴェを操るヴィルフリートもまた静かに闘志を燃やしていた。

 

 「……デスティニーか。ヴィクトル、カーラ達を連れ、一旦下がれ。ガンダムの相手は俺がする」

 

 「了解」

 

 損傷した味方と供の下がるジンⅢ。

 それを守るように立ちふさがるヴィルフリート。

 聞き覚えのある声にシンは思わず呟いた。

 

 「お前はアムステルダムで戦った……」

 

 「此処で貴様と戦う事になるとはな」

 

 ヴィルフリートにとってデスティニーは因縁のある相手だった。

 

 アムステルダムでの戦い。

 

 そこでヴィルフリートは完膚なきまでに敗北した。

 

 昔の自分ならば怒りに任せて突撃していただろう。

 

 だが今は違う。

 

 恨みはない。

 

 むしろ感謝すらしている。

 

 愚かな自身の誤りに気付けたのだから。

 

 「また性懲りもなく!」

 

 「貴様には感謝している。あの時の敗北のお陰で今の俺がいる。だからこそ全力で貴様を倒す。それこそが俺なりの礼だ!」

 

 「何!?」

 

 ヴィルフリートはウイングスラスターの出力を上げ、機体はさらに速度を増す。

 そしてデスティニーに肉薄するとビームライフルを発射した。

 

 「当たるかよ!」

 

 連射された砲撃を器用に機体を左右に振って回避したシンは負けじとビームライフルを撃ち返す。

 

 「俺は以前とは違うぞ!」

 

 ヴィルフリートもまたデスティニーのビームライフルを速度を上げて振り切ると、接近戦を挑む。

 両手に対艦刀を握り、デスティニーに振り下ろした。

 

 「速い!」

 

 「うおおお!!」

 

 ヴィルフリートはシールドで斬撃を止めたデスティニーごと力任せに吹き飛ばし、全火力を一斉に解放した。

 

 ビーム砲、バズーカ砲、ミサイル。 

 

 それらが一斉にデスティニーに襲いかかった。

 

 「落ちろ、ガンダム!」

 

 「こいつ!」

 

 砲撃を防御し、迎撃しながらシンはジンⅢ・レーヴェの手強さに歯噛みする。

 敵はただ火力をぶつけてきている訳じゃない。

 こちらの動きを読みながら、的確に砲撃を撃ちこんできているのだ。

 

 「強い!」

 

 焦りをにじませるシンとは対照的にヴィルフリートは確かな手応えと共に沸き上がる高揚感を押さえ込むので必死だった。

 

 「やれる。やれるぞ! ガンダム相手に戦える!」

   

 逃れるデスティニーに食らいつくように、背中に設置された二丁のビームマシンガンを叩き込む。

 無数に降り注ぐ閃光の雨。

 デスティニーの装甲を僅かに掠め、傷を産み出した。

 

 「こんなもので!!」

 

 シンはここで勝負に出た。

 SEEDを発動させ、C.S.システムを発動させたのだ。

 

 「いつまでも付き合っていられるか! 行くぞ!!」

 

 光の翼が解放され、一気にジンⅢ・レーヴェの懐へ飛び込んだ。

 

 「ッ!? これが例のシステムか!」

 

 先程とは比べ物にならないスピードにヴィルフリートは瞠目する。

 マシンガンもビーム砲も掠りもしない。

 機体だけでなく、パイロットの反応も上がっていた。

 

 「落ちろ!」

 

 「だが、無敵という訳ではあるまい! 戦いようはある!」

 

 このために今まで訓練を積んできた。

 当然、デスティニーの対策も考えてあった。

 斬艦刀で斬りかかってきたデスティニーの一撃をライフルを囮にして防御する。

 そして間合いに入らないよう、最大までスラスターを噴射。

 出来る限り距離を稼ぐと、バズーカ砲を発射した。

 

 「また散弾か!」

 

 「そのスピードは逆に命取りだろう!」

 

 「何度も同じ手が通用すると思うな!」

 

 急制動をかけ動きを止めたデスティニーは高エネルギー収束ライフルで散弾を一斉に薙ぎ払った。

 

 「くっ」

 

 「もう一撃!」

 

 発射された収束ライフルの砲撃をスラスターを噴射しギリギリで回避するジンⅢ・レーヴェ。

 掠めただけで装甲が剥がれ、内部が露出する。

 異常を示すアラームに顔を顰めながら、ヴィルフリートは素早く機体を立て直した。

 

 「呆れた威力だ。直撃を受ければ、それだけで撃墜される。ならば!!」

 

 機体をその場でターンさせ、砲撃を躱しマシンガンを連射した。

 

 「そんなもの!」

 

 圧倒的な機動性をもってマシンガンの砲弾を回避するデスティニー。

 それを待っていたかのようにジンⅢ・レーヴェはミサイルポッドを解放する。 

 

 「当たるか!」

 

 デスティニーの機関砲が火を噴き、ミサイルを一つ残らず叩き落とした。

 しかしヴィルフリートの狙いはデスティニーではなかった。

 彼の狙いは――

 

 「このまま距離を詰めれば――」

 

 距離を詰めようと前に出た瞬間、デスティニーの背後にあったデブリがミサイルの直撃で爆発し、細かい破片が機体に激突する。

 

 「何!?」

 

 「散弾砲の代わりだ! これでも喰らえ!!」

 

 腹部から発射された複列位相砲『アドラメレクⅡ』が収束ライフルを掠め、吹き飛ばした。

 

 「ぐっ!」   

 

 ライフルの爆発でさらに体勢を崩す、デスティニー。

 そこを見逃さず、距離を詰めたジンⅢが対艦刀を振り下ろす。

 

 「舐めんな!」 

 

 シンの絶叫と共に右手を突き出す。

 対艦刀はデスティニーに届かず、右掌の盾パルマ・スクードによって掴まれ止められていた。  

 

 「対艦刀を掴んで止めただと!?」

 

 「わざわざこっちの間合いに入ってくれるなんてな!」

 

 「しまっ――」

 

 シンはすぐさま掌に刃を形成するパルマ・ラーマに切り替え、対艦刀を叩き折った。

 

 「ぐぅ!? だが!」

 

 ジンⅢはビームシールドを刃状へ変化させ、デスティニーに突きを放つ。

 しかし再びパルマ・スクードによって止められてしまった。

 

 「この間合いは俺の距離だ!」

 

 「ッ!?」

 

 ヴィルフリートは咄嗟に右足を蹴り上げ、振り下ろされた斬艦刀を受け止める。

 だが斬艦刀の刃を止める事は出来ず、軽々とジンⅢ・レーヴェの足を斬り落とした。

 

 「ッ、剣閃を逸らせただけでも十分だ!」

 

 斬りおとされた脚部をマシンガンで撃ち抜く。

 破壊された脚部の爆発で斬艦刀諸共デスティニーを突き放し、攻撃範囲から離脱する。

 そして同時にバズーカ砲を撃ち込んだ。

 

 「チッ」

 

 シンはアンチビームシールドを掲げ砲弾を受け止める。

 だが至近距離からの砲撃にシールドは耐えられず、そのまま破壊されてしまった。

 

 「ぐぅぅ、この!」

 

 シールドが破壊された余波で体勢を崩しながら、デスティニーがビームライフルを撃ち込む。

 その一射がジンⅢ・レーヴェの腰部ビーム砲、そして片方のビームマシンガンを吹き飛ばした。 

 

 「ぐあああ!! ぐっっ、今のは……」

 

 ヴィルフリートはデスティニーから距離を取り、デブリの中に紛れながら、今までに得た情報を整理する。

 

 強い。

 

 射撃や反応速度は言わずもがな。

 

 近接戦における力量は尋常ではない。

 

 そこにパイロットの力を100%引き出すあの機体の性能が加われば、どんな相手だろうが敵ではないだろう。

 

 でも、同時に見えてきたものもあった。

 

 「すべては俺次第か……落ち着け、ヴィルフリート・クアドラード。落ち着け」

 

 深呼吸しながら、冷静に。

 

 熱は内に秘め。

 

 思考はクリアに。

 

 まるで自身に暗示をかけるように、言い聞かせる。

 

 するとヴィルフリートの感覚は味わった事がないと思うほどにクリアに、澄みわたる。

 

 「……よし」

 

 澄みわたる思考で戦略を決めたヴィルフリート。

 その眼前にビームサーベルを振りかぶったデスティニーが迫っていた。

 

 「もらった!」

 

 ヴィルフリートは自身でも驚くほど冷静に機体を上昇させる。

 デスティニーのサーベルはジンⅢ・レーヴェを捉えられず背後のデブリに傷を刻んだ。

 

 「何!?」

 

 仕留めたと思った一撃をかわしたジンⅢ・レーヴェの動きにシンは驚愕する。

 その上方からもう一丁のマシンガンとミサイルの雨が降り注いだ。

 

 「いい加減にしつこい!」

 

 攻撃をビームシールドで防ぐもライフルが破損してしまった。

 

 「また距離を取るつもりか」

 

 離れているジンⅢ・レーヴェ。

 その機影を追いながら破損した武装を投棄し、シンは残った武装を素早く確認する。

 

 大半の武装は破壊され、機関砲は弾切れ。

 

 残りはレール砲にビームサーベルが一本、そしてパルマ・アルマのみ。

 

 「ハァ、機体の損傷も考えるとこれが最後だな」

 

 ディアドコスから受けた損傷は思った以上に酷い。

 

 C.S.システムの解放していられるのも後僅かだけ。

 

 ビームサーベルを構え、敵機の逃れた方向を見据える。

 

 ラクスを倒しただけあって、ヴィルフリートは強い。

 

 アムステルダムで戦った時とはまるで別人だ。

 

 よほど訓練を積んできたのだろう。

 

 「俺だって負けられない。これで決着をつけてやる!」

 

 デスティニーの翼が広がり、大量の光を生み出す。

 

 光を機体に纏い、シンはジンⅢ・レーヴェの元へと向かった。

 

 デブリを抜けた先。

 

 巨大な岩に損傷したジンⅢ・レーヴェが倒れ込んでいる。

 

 罠か。

 

 それとも損傷で動けないのか。

 

 どちらだろうとも関係ない。

 

 シンは躊躇う事無く、敵機に向けて加速する。

 

 「ハアアア!!」

 

 そこでようやくジンⅢ・レーヴェが動き出す。

 構えたバズーカ砲から散弾が発射された。

 

 「そんなもの!!」

 

 背中のアラドヴァルレール砲を投棄、盾にして散弾をやり過ごすと速度を落とさないまま接近戦の間合いに入り込んだ。

 

 そのままビームサーベルを突き出そうとしたその時――敵機もまた右腕に装備されたビームシールドをサーベルへ形成した刃を突き出してくる。

 

 カウンター狙い?

 

 「だとしても!」

 

 パルマ・スクードでビーム刃を防ぎ、そしてビームサーベルを突き出した。

 

 「かかった!」

 

 「ッ!?」

 

 ヴィルフリートは逆手に持った対艦刀にサーベルを突き刺し、そのまま弾く。

 そして構えていたバズーカ砲の残弾を一斉に叩き込んだ。

 発射された砲撃が容赦なくデスティニーの損傷部分に突き刺さり、装甲の色が消える。

  

 「うあああああ!!」

 

 「やはり掌の盾を使った時はシールドを展開できないようだな」 

 

 先ほどの攻防。

 脚部を斬り裂かれた時、距離を取る為バズーカ砲を発射した。

 だがその時、至近距離だったにも関わらずデスティニーはビームシールドを展開しなかった。

 その時に気が付いたのだ。

 展開しなかったのではなく、展開できなかったのだと。

 だからこうして自分の懐へ招き寄せ、隙ができる瞬間を狙っていたのだ。

 

 「これで!」

 

 残った最後の砲弾。

 

 それがデスティニーの頭部に直撃し、撃ち砕いた。

 

 頭部を破壊されたデスティニーは無防備に漂っていく。

 

 「終わりだ、ガンダム!!」

 

 ヴィルフリートが止めを刺そうとマシンガンを構えた瞬間、ゆらりとデスティニーの腕が動く。

 

 「ッ!?」

 

 掌に集まる光。

 

 それはデスティニーの最後の攻撃だった。

 

 ヴィルフリートは直感的に危険を察知し、逃れようとするがもう遅い。

 

 発射された閃光がジンⅢ・レーヴェを飲み込んだ。

 

 パルマ・ジャベロット。

 

 戦艦すら砕く一撃がマシンガンごとジンⅢ・レーヴェを食い破る。 

 

 岩ごと貫通した光は爆発となって二機を纏めて包み込んだ。

 

 

 

 

 ユニバース・フリーダムとディザスター・グリューエン。

 

 キラ・ヤマトとユリウス・ヴァリス。

 

 生まれた時からの因縁で結ばれた二人は掛け値なしの全力で相手にぶつかっていく。

 

 初撃から勝負を決めるべく一撃を繰り出す。

 

 対艦刀と斬艦刀が激突し、二機は常人では見切れないほどの速度で高速移動しながら攻防を繰り返していた。

 

 「流石!」

 

 「お前こそ、昔とは比べ物にならない程に腕を上げたな。しかしその程度か!」

 

 すれ違い様に蹴りを入れたディザスターはフリーダムに追い打ちを掛けるように複列位相砲を撃ち込んでくる。

 

 「くっ!」

 

 キラは無理やり機体を寝そべらせ複列位相砲を回避する。

 しかしすでにユリウスは次の手を打っていた。

 体勢を立て直すフリーダムの背後からドラグーンが迫る。

 

 「ッ、ドラグーンか!」

 

 すでに馴染んだ感覚に従い回避運動を取る、フリーダム。

 だがそれを見越していたユリウスは思い切り対艦刀を叩きつけてくる。

 

 「どうした、この程度か? アストなら余裕で捌いてみせたぞ!」

 

 「まだまだ!」

 

 対艦刀を防いだキラはアストからのアドバイスを思い出した。

 

 ≪ユリウスと戦う時は攻めろ。防御に回ったら、即座に押し込まれるぞ≫

 

 「君のアドバイス通りだ。なら!」

 

 キラも意識を切り替え、ディザスターに対し攻勢に出た。

 こちらもまたドラグーンを射出し、距離を詰める。

 

 「ドラグーンの撃ち合いで戦う気か?」

 

 「まさか!」

 

 キラは初めから接近戦をメインにして戦うつもりだった。

 ユリウス相手に射撃戦は焼け石に水。

 つまり活路は接近戦しかない。

 アストからそう教えられていたキラはずっとその為の準備を進めていた。

 ユニバース・フリーダムが近接戦を主眼に置いて設計されているのはコレが理由だ。

   

 「ドラグーンは囮だ!」

 

 「考える事は同じか!」

 

 放出したドラグーンが進路を限定させ、二機は正面からすれ違う。

 

 交錯する瞬間、二刀の刃がお互いの装甲を傷つけた。

 

 「浅い!?」

 

 「やるな! アストに私の戦い方でも聞いてきたか! だがな、それも昔の話だ!」

 

 ディザスターはさらに速度を上げ、フリーダムの背後に回り込む。

 そしてビームサーベルを引く抜くと、そのまま投げつけてきた。

 

 「なっ!?」

 

 咄嗟にサーベルを避けるが、その隙に距離を詰めたディザスターの蹴りがフリーダムの胴体に直撃する。

 

 「ぐあああ! このォォ!」

 

 大きく吹き飛ばされながらも、ディザスターにレール砲を炸裂させた。

 

 「私に当てるとはな!」

 

 「やっぱり強い!」

 

 即座に体勢を立て直し、二丁のビームライフルでディザスターを狙い撃つ。

 だがディザスターは不利な体勢のままスラスターの角度を調整し、僅かな移動のみで攻撃を避けてみせた。

  

 「ッ!? 射撃戦が不利なのは承知済み!」

 

 フリーダムは砲撃を囮に回り込み、ディザスターに接近戦を仕掛ける。

 

 「そこ!」

 

 砲撃を避けた敵機目掛けて側面から斬艦刀を振り抜いた。

 しかし流石はユリウス。

 不利な状況にも関わらず、斬艦刀を捌き反撃してくる。

 対艦刀の一太刀がフリーダムの片翼数枚と一丁のビームライフルを抉り取った。

 

 「甘いな! 戦略を練り直してこい!」

 

 「そちらこそ!」

 

 腕部ナーゲルリングから放出したビームサーベルを下段から振り上げ、ディザスターを逆袈裟に斬り裂いた。

 そのまま立ち位置を入れ替えて距離を取り二機。 

 ユリウスは斬り裂かれた部分を見つめながら、高揚している自分を自覚する。

 

 「損傷自体は大したことはないが……此処までやるとはな。それでこそ、キラ・ヤマトだ! 私が倒すべき敵!」

 

 「分かってはいたけど、想像よりも遥かに手強い」

 

 アストは彼を相手によく相討ちに持っていったものだと感心してしまう。

 

 「やはりお前は危険だ。お前という存在がユーレン・ヒビキの狂気を世界に示す事になる!」

 

 「何を言っている!」

 

 「分からんか? 証明しているんだよ、お前の力と戦果が! 奴の行い! 研究! その思想! それらが『正しかった』というな!!」

 

 最高のコーディネイター。

 

 どんなに否定しようとそれがキラ・ヤマトが生み出された理由だ。

 

 非人道的な手段で誕生させられたとしても、生み出された個体の能力は破格。

 

 ならば、と同じような研究に手を出そうとする者は出てくる。

 

 何故なら、キラ・ヤマトは此処で、この世界で、その力を示し続けているのだから。

 

 「だからこそお前は此処で死ぬべきだ! これ以上、狂気に触れる者が現れん内にな!」

 

 「勝手な事を! 貴方だって似たようなものだろう!」

 

 キラはSEEDを発動、コックピット内のe.s.デバイスが起動する。

 ビームライフルを発射しながら移動を開始したディザスターはさらに速度を上げる。

 デブリすら気に止めないその動きは狂気すら感じられる。

 それに追随するフリーダムもまた同様だ。

 片翼を損傷しながらも、その動きに一切の乱れはない。  

 二機の速度は上がり続け、ビームライフルの撃ち合いも激しさを増していく。

 

 「化け物染みた反応だな。だが、それだけか?」

 

 ディザスターはデブリを蹴った反動を利用し、さらにスピードを上げた。

 

 「デブリを蹴って加速!? どっちが化け物だよ!」

 

 もはや神業としか言いようがない。

 少しでもタイミングがずれれば加速どころか、バランスを崩して動きを止めてしまう事になるというのに。

 さらに厄介な事に蹴られたデブリがこちらを撹乱する役割を持っているという事。

 お陰でキラはディザスターを捉えきる事ができない。

 ユニバース・フリーダムすら追い切れないスピードで動くディザスターの一射が左肩の装甲を吹き飛ばす。

 

 「ぐぁああ!? でも!」 

 

 事前配置しておいたドラグーンに反応したディザスターを狙ったビームライフルが腰部を撃ち抜いた。 

 そしてバランスを崩した敵機に接近戦を仕掛ける、キラ。

 先ほどまでとは比べ物にならない精度の斬撃が対艦刀をへし折り、ディザスターに再び傷を刻んだ。

 

 「ッ、やってくれる!」

 

 損傷しながらも引き抜いたビームサーベルがフリーダムのレール砲諸共右脚部を斬り捨てる。   

  

 「ユリウス・ヴァリス!」

 

 「キラ・ヤマト!」

 

 デブリの中を駆け抜け、激突を繰り返した二機のモビルスーツはいつの間にかアポロン要塞近くまで接近していた。

 

 「アレは……オーディン!?」

 

 ディザスターを弾き飛ばしたキラが見たのはアポロン要塞内部に不時着していたオーディンの姿だった。

 近くいるイザナギと共に敵艦との砲撃戦を繰り広げている。

 

 「あのままじゃ」

 

 「仲間を気にしている場合か?」

 

 「ッ!?」

 

 絶妙に配置されたディザスターのドラグーンがフリーダムを容赦なく狙い撃ってくる。 

 だがここでキラは神懸かり的な反応を見せる。

 背後からの一撃をターンして躱し、側面に配置されたドラグーンをビームライフルで叩き落とした。  

 

 「精度はラウ・ル・クルーゼと同格か!」

 

 「ラウならこの倍以上は簡単に操作してみせるさ。だが私には少数だけで十分!」

 

 キラは数機を落としても撃ちかけられるドラグーンのビームを捌きながら、本体であるディザスターを狙う。

 

 「コントロールを先に潰す!」

 

 「潰せるのか!」

 

 「こちらにだってドラグーンはあるんだ!」

 

 フリーダムに残っていたドラグーンをすべて放出。

 ディザスターを囲むように配置する。  

 

 「ドラグーンで私は倒せんぞ!」

 

 その言葉を証明するようにディザスターは配置されたドラグーンをビームライフルで落としていく。

 しかしそれは百も承知。

 キラはその間に残りの敵ドラグーンを撃墜して前に出る。

 

 「近づけばドラグーンは使えないだろう、ユリウス!!」

 

 ビームライフルが至近距離からディザスターの肩を吹き飛ばした。

 

 「こんな戦いは無意味だ!!」

 

 「意味ならある! この先の未来にお前という人類の汚点を消し去る意味がな!」

 

 同時に発射されたライフルがフリーダムの頭部の半分を消し去った。

 

 「まだまだ! メインカメラがやられたくらいで!」

 

 キラはギリギリまで伏せていた一撃をディザスターへ叩き込む。

 

 それは最後に一つ残ったドラグーン。 

 

 伏せておいたその一つをディザスターの下方から突撃させる。

 

 「ッ!?」

 

 ユリウスは接近戦を仕掛けるフリーダムが居る為、避けられない。

 先端からビームサーベルを放出したドラグーンがディザスターのスラスターを斬り裂いた。 

 

 「チッ、メインスラスターが!」

 

 「これでも倒しきれないなんて」

 

 キラは今ので勝負を決めるつもりだった。

 ドラグーンをあえてディザスターの周りに配置したのも、接近戦を挑んだのも、すべてはこの為の布石だった。

 完璧な奇襲に近い攻撃になった筈。

 しかしユリウスはあえて機体を前に出す事で致命傷を避けて見せたのだ。

 

 メインスラスターを失いながらもアポロン要塞に不時着するディザスター。

 

 

 それを追うフリーダム。

 

 

 敵の殺意を鋭敏に感じ取り、二機は最後の攻撃を繰り出した。

 

 

 ビームライフルがディザスターの頭部に突き刺さり、複列位相砲がフリーダムの腕ごと残った翼を消し飛ばした。

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