機動戦士ガンダムSEED eventual   作:kia

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第47話 鷹と天帝

 

 

 

 

 

 

 

 アルテミスの方向転換と共にレクイエムのチャージ開始。

 これらの意図に気がついたイザークは自分の迂闊さに歯噛みしていた。

 

 「これが狙いか、アスラン」

 

 特殊艦を囮に、レクイエムの砲口をアポロンへ。

 そして発射すれば、確かに統合軍の勝ちは揺るがないだろう。

 だが、だからこそ腑に落ちない。

 確かに勝てるが、同時にリスクも高い。

 実直な性格のアスランがこんな作戦を取るとは思えなかった。

 

 「いや、それも昔の話だからな。奴も勝つ為にはこんな手を打つようになったのかもしれん」

 

 何にしろこれが危機的状況である事に変わりはない。

 

 こうなっては打つ手は一つ。

 

 迅速にアルテミスへ向かい、レクイエムを破壊する事だけだ。

 

 「これよりフォルセティは最大戦速でアルテミスへ向かう。狙いは変わらずレクイエムだ。最悪の場合、陸戦もあり得る。総員、準備せよ!」

 

 「「了解」」

 

 イザークの号令にフォルセティを含めた艦隊がアルテミスへの道を駆け始める。

 

 《艦長、使えるモビルスーツはないのか?》

 

 「ハイネか。もう少し休んでいたらどうだ?」

 

 《そうはいかないだろ。皆、戦ってるんだ。俺だけ休んでられないよ》

 

 「俺の機体でもいいが調整に時間が掛かる。……ならフラガのスオウを使え。あれならすぐに乗れる」

 

 《了解!》

 

 作戦自体は変更なし。

 ミサイルと砲撃で攻撃しながら、敵を撹乱。

 無理やりこじ開けた穴からアルテミスへ突撃する。

 元々は陸戦も想定内だ。

 

 「このまま直進する!」

 

 エンジンを吹かすフォルセティ。

 スオウで出撃したハイネ率いるモビルスーツ隊と敵防衛隊との戦闘が激しさを増す。

 そんな戦場を駆けるルナマリアは別方向からアルテミスへ向かっていた。

 背中の翼から光を放出し、いつも以上の速度のまま敵陣を突っ切っていく。

  

 「あれは?」

 

 その先でやたらと味方の被害が大きな地点を発見する。

 隊列を組んだ味方の部隊が次々と撃ち落とされ、レーダーから反応が消え失せた。

 

 「敵の大部隊でもいるのかしら?」

 

 何にせよ放ってはおけない。

 火の中に飛び込む危険は承知の上でインパルスは蹂躙が行われている現場へと足を踏み入れた。

 

 その場では暴れていたのはティアマト。 

 

 所々に傷を負いながらも、まだまだやれるとばかりに砲撃を撒き散らす。

 

 「逃がさない、逃がさない、アレン!!」

 

 コックピット内でミレイアは錯乱したかのように頭を振り乱し、凄惨な表情を浮かべていた。

 傍には使用済みの注射器。

 コンソールには『I.S.システム』起動済みであると表示されている。 

 

 「私は……大佐を!」

 

 イノセントガンダムの圧倒的な力によって植え付けられた恐怖。

 それを抑え込む為、彼女は最後の手段に打って出ていた。

 

 その一つがI.S.システムだ。 

 

 これを用いれば余計な恐怖は消え、戦闘能力を向上させることができる。

 

 ただ強化兵には効きが薄いのが問題らしいが、戦えるのであればミレイアには十分な代物だ。

 

 そしてもう一つが研究者から渡された即効性の強化剤。  

 

 詳しい説明は専門的すぎて分からなかったが一時的に自身の能力を強化できるものであるらしい。

 

 当然、それなりのリスクが伴うようだが、これも関係ない。

 

 そんな事は些事だ。

 

 「―――邪魔ァァァァ!!」

 

 目的は逃げた白いガンダムのみ。

 邪魔する羽虫はすべて消す。

 そんなミレイアの思いに答えるようにティアマトの砲口が光を集め、同盟軍のモビルスーツを蹂躙する。

 

 「は、はは、アハハハ!!」

 

 駆け巡る力。

 

 潰されていく敵。

 

 満ちる万能感にミレイアは笑いを堪える事ができない。

 

 初めからこうしておけば良かったのだ。

 

 こうすれば例え相手が誰であろうと。

 

 「勝てる! アレンにだって! 大佐の邪魔はさせないよ!」

 

 先ほどまでとは比較にならない操作精度でドラグーンをコントロール。

 邪魔な連中を排除しながら、目標であるイノセントガンダムの後を追う。

 しかしそれをさせまいと割り込んできたのはルナマリアだ。

 

 「好き勝手にさせないわよ!」

 

 ビームライフルで狙撃で見事なまでにこちらの進行を阻害してくる。

 

 「また邪魔な奴が!」

 

 苛立ちながらミレイアは突っ込んでくるインパルスにドラグーンを差し向けた。

 先ほどまでの連中と同じだ。

 ドラグーンで囲い、四方からの攻撃とティアマト本体の砲撃で嵌め殺す。

 

 「落ちろ!」

 

 しかしインパルスは先ほどまでの敵とは違った。

 明らかに普通ではない速度を持ってドラグーンを引き離すと、背中のレール砲を発射した。

 発射された砲弾は途中で弾け飛び、砲台を巻き込み爆発を引き起こす。

 

 「そこ!」

 

 動きを鈍らせた所に狙いをつけ、高エネルギー収束ライフルが火を噴いた。

 発射されたビームの奔流が砲台を纏めて消し飛ばしていく。

 

 「あいつもドラグーンを落とすなんて!?」

 

 「凄い数、囲まれたら終りね」

 

 相対するパイロットは二人共、理由こそかみ合わないものの全く同じ感情を共有していた。

 それは敵に対する警戒感。

 互いに冷や汗を掻きながら、相手の姿を注視する。

    

 「こいつを放っておく訳にはいかないか」

 

 とはいうものの、ルナマリアにとって不味い状況である事に違いはなかった。

 最初に断っておきたいが、ルナマリアにドラグーンを撃ち落とす、もしくは回避するなどという化け物染みた事はできない。

 先ほどドラグーンを落とす事ができたのは、全軍に行き渡っているドラグーン対策に則った行動を取っただけ。

 2、3基程度であるなら十分対応可能だ。

 だがそれが10、20と増えれば話は別となる。

 しかも精度が並みではないとなれば、尚の事だった。

 

 「私はアレン達みたいにはやれないから、よく考えないと」

 

 基本方針は変わらない。

 ドラグーンに囲まれないように距離を取りつつ、隙を見て攻撃を加える。

 口にするのは簡単だが、そう上手くいけば苦労は無い。

 

 「それでもやるしかないけどね」

 

 差し向けられた砲台を振り切るように加速するインパルス。

 それを苛立たしげに睨むミレイアは、砲撃を繰り返す。

 

 「消えろ、私の邪魔をするなァァ!!」

 

 「ミレイア!?」

 

 ビーム砲をシールドで防御しながら、聞き覚えのある声に驚愕する。

 

 「アンタ、何やってんのよ!」

 

 「ルナマリアに答える必要なんてないでしょ! 私は貴方達の敵! それだけよ!」

 

 複列位相砲の一撃をインパルスへ発射。

 同時にビーム砲を叩き込む。

 

 「弟を置いてテタルトスに走った結果がコレなの?」

 

 ルナマリアは素早く砲撃をかわし、ビームライフルで反撃する。

 その間も動きを止めず、ドラグーンへの対処も忘れない。

  

 「チョロチョロ動くな! 私に弟なんていない!」

 

 「何を言って……ケイはアンタの弟でしょうが!」

 

 「そんなのは父親がどこぞの女と勝手に作って連れてきただけ! 私には関係ない!」

 

 そう、ミレイアにはもう関係ない事。

 

 すでに過去は振り払った。

 

 ケイの事だってそうだ。

 

 彼女は幼かろうが両親の汚点であるケイという存在を心底憎んでいるのだから。

 

 「私はあんな家族と本当に決別した!」

 

 ビームシールドに弾かれるビーム砲。

 しかし圧力に押されインパルスは動きを鈍らせる。

 そこにドラグーンを叩き込んだ。

 

 「貴方達も同じ! 過去なんてもうどうだっていい! 私は変革し、本当に自由になるの!」 

 

 動く砲台の速度が増し、インパルスを捉えると猛攻を仕掛けた。

 両手から展開したビームシールドを使い、防御していくものの、インパルスに無視できない大きなダメージを与えていく。

 

 「大佐は私を導いてくれる! 先にある変革が世界を変える! そうすればもう二度と家族に苦しめられるような事もない。その邪魔をする奴はすべて消してやる!!」

 

 その為に自分は戦っている。

 

 ああ、そうだ。

 

 その先にこそ―――

 

 自分の主張ごとありったけの攻撃を相手に叩きつけ、止めを刺すべくビームサーベルを振り下ろした。

 

 しかし、斬撃はインパルスの眼前でブルートガングによって受け止められていた。

 

 そしてミレイアの主張を真っ向から否定すべく、ルナマリアの声が上がる。

 

 「ふざけてんじゃない!」

 

 力一杯サーベルを押し返し、斬艦刀で斬りつけた。

 

 「アンタの言っているのはあまりに勝手! ケイはまだ何も知らない子供なのよ!」

 

 「だからそれが―――」

 

 「自分には関係ないって何も知らないあの子を突き放すだけなら、好き勝手な事ばかりしてたっていうアンタが嫌う両親と何が違うの?」 

 

 「ッ!?」

 

 狼狽えながら懐に入り込んできたインパルスを突き放し、再びティアマトが得意とする砲撃戦へと誘いこむ。

 

 「私が、あいつらと一緒?」

 

 「当たり前でしょ!」

 

 ルナマリアとしてはミレイアの言葉は話半分に聞いていた。

 此処までの会話からも分かるように、ミレイアは自分の事しか考えていない。

 思い込みも激しく、人の話も碌に聞いていない始末。 

 両親の件も何処までが本当のことやら怪しいものだ。

 

 「違う、私は!」

 

 「違わない! アンタは結局、変革なんてどうでもいいんでしょ! 煩わしい全てが無くなれば!」

 

 「……ッ」

 

 沸き上がる憤りとは裏腹にミレイアの声は出ない。  

 ルナマリアの指摘はミレイアの図星を突いていたからだ。 

 

 「うるさい、うるさい!! 何も知らない癖に偉そうに! 私に関わるな!」

 

 「そう、じゃあもう遠慮しないから!」

 

 「貴方ごとき、今の私に勝てるとでも!!」

 

 ビーム砲で動き回るインパルスを牽制しながら、ドラグーンで囲い込む。

 ミレイアにもすでにルナマリアの弱点が分かっていた。

 彼女にドラグーンを捌く技量はない。

 先程まで防御一辺倒なのがその証拠。

 

 「なら先程までの戦法で十分!」

 

 仮に逃れたとしてもルナマリアにこちらを倒す術はない。

 

 「接近したさっきの瞬間こそ、最後のチャンスだったのにね!」

 

 インパルスは変わらず、逃げの一手。

 囲まれないように、必死に速度を上げて砲台を引きはなそうとしている。

 

 「無駄よ、ルナマリア。逃がさないから!」

 

 インパルスの進路を予測。

 近くを漂う残骸に逃れようとする前に複列位相砲を発射した。

 捉えた一撃は寸分の狂いも無い。

 インパルスの背中を突き刺さそうと直進する。 

 だが次の瞬間、ルナマリアは装備していた斬艦刀を切り離し、盾にして砲撃を防いだ。

 

 「なっ!?」

 

 「ミレイア、アンタの敗因を教えてあげるわ。戦い方がド素人丸出しな事よ!」

 

 残骸の陰に飛び込んだインパルスをミレイアは鼻で笑う。

 

 「それで隠れたつもりなの? そんなものティアマトの火力の前じゃ盾にすらならない!」

 

 複列位相砲で残骸ごと吹き飛ばそうとする、ミレイア。

 しかし、それが甘いと言わんばかりにルナマリアの一撃が炸裂する。

 

 「ハアアア!」

 

 残骸目掛けて突きだした右掌。

 パルマ・フィオキーナが残骸を砕き、周辺に爆風と破片をばらまいた。

放射状に散らばった破片が衝撃波と共にドラグーンに激突。

 ミレイアからコントロールを奪い去った。

 

 「嘘!?」

 

 「今!」 

 

 好機とばかりに翼を広げたインパルスがティアマトへ突撃する。

 

 「ま、まだまだ!」

 

 「いえ、アンタの負けよ!」

 

 虚をつかれた動揺と光学残像に翻弄され、砲撃の狙いが甘い。

 掠めて傷を負う程度は問題ないと、インパルスはティアマトに肉薄する。 

  

 「な、速い!?」

 

 「アンタが遅いのよ!」

 

 ティアマトが苦し紛れに放った一撃が装甲を抉っていくが、止まるには至らない。

 腰から抜いた二振りの斬艦刀。

 それをティアマトの腹部に突き刺した。

 

 「キャアアア!」

 

 複列位相砲の発射口に突き立つ刃。

 その衝撃と機体へのダメージがコックピットに座るミレイアに思わぬ激痛をもたらした。

 

 「あ、ああああ、痛い、痛い!! 頭が!」

 

 故に眼前へと迫るインパルスに対処できない。

 

 「アンタはいい加減、正気に戻りなさい!」

 

 用意していた左掌のパルマ・フィオキーナを頭部に突きつけ、粉砕した。

 

 「ああ、やああああああああ!」 

 

 襲う痛みが限界を越え、ミレイアの絶叫が木霊する。

 

 「わた、わた、私……は」

 

 手を伸ばすミレイアの手を掴む者は誰もおらず。

 そのまま闇に底に引きずられるように、そして大切なものを砕かれるような感触と共に意識を失う。

 破壊されたティアマトは爆発を起こしながらアルテミスとは逆方向へ流されていった。

 

 「味方に救助してもらいなさい。……それにしても結構派手にやられたわね。ミレイアが素人で助かった」

 

 ルナマリアがミレイア相手に勝利を収められた理由。

 それは単純な戦闘経験の差であった。

 ミレイアの操縦技術自体は強化されていた事もあって、エース級にも劣らないものだった。

 しかし、それを使う為の経験があまりにも不足していたのだ。

 

 「さて、私もアルテミスへ!」

 

 漂うティアマトの残骸を一瞥するとルナマリアはアルテミス方面へと機体を向かわせた。

 

 

 

 

 カース―――いや、ラウ・ル・クルーゼとムウ・ラ・フラガ。

 切っても切れない深い因縁で結ばれた二人の戦い。

 飛ぶ砲台とビームライフルの光線が入り混じる膠着状態となっていた。

 

 「思ったよりもやるじゃないか、ムウ!」

 

 「俺だって今まで遊んでいた訳じゃないんでね!」

 

 プロヴィデンスより発射されるビームライフル。

 撃ちかけられたドラグーンと同時に射線を見切ったムウは鮮やかに回避運動を取る。

 その動きに淀みはない。

 なるほど。

 確かにヤキン・ドゥーエ戦役の頃よりも明らかに技量が上がっている。

 感じる手応えにムウはさらにプロヴィデンスに攻勢を仕掛けた。

 

 「やれる!」

 

 ヤキン・ドゥーエ戦役時のムウはやはり経験不足であった事は否めなかった。

 訓練を怠ったつもりはない。

 だがモビルアーマーを操ってきたムウより、長い間モビルスーツに搭乗していたラウとの差は歴然。

 それがヤキン・ドゥーエでの戦闘に如実に表れ、ムウは結果敗北してしまった。

 故に此処までより訓練を、実戦経験を積み上げきた。

 その錬度はかつての比ではない。

 ムウの実力を理解したラウの口元が楽しげにつり上がっていく。

 

 撃ち合うビームライフル。

 

 飛び交う砲台。

 

 二機の間で激しい火花が散っていく。

 

 「しかしそれでもまだまだ! 私には及ばんよ!」

 

 「ッ!?」

 

 駆け巡る直感に合わせ、プロヴィデンスの斬撃を躱す、ムウ。

 そこにドラグーンの砲火が襲い掛かる。

 だが慌てる必要はなかった。

 ドラグーンの砲撃はすべてアカツキの装甲に反射され、ダメージを受けない。

 

 「報告通りその機体にはビーム兵器が通用しないようだな」

 

 アカツキの装甲『ヤタノカガミ』はビーム兵器を反射させ、跳ね返す事も可能なもの。

 故にアカツキはビーム兵器を主体としている機体にとっては最悪の相手となる。

 それはプロヴィデンスにとっても同じ事。

 現にドラグーンによる攻撃は全て反射されていた。

 

 「なるほど。それならそれで戦いようもある」

 

 ラウはライフルをビームから実体弾へと切り替える。

 

 「これは防げるか!」

 

 「ッ、実体弾!?」

 

 ムウはプロヴィデンスが撃ち込んできた実体弾をシールドを掲げて防御する。

 予想通りの反応にラウはさらに笑みを深くする。

 

 「その機体はビーム兵器に対する優位性はあるが、実体弾に対してはさほどではないようだな」

 

 その通り。

 アカツキの装甲はビーム兵器には強い反面実体弾には通常装甲程度の防御力しか有していない。

 直撃を受ければ『ヤタノカガミ』諸共砕かれてしまう。 

 

 「チッ、まあ当然気づくよな」

 

 アカツキのデータは向こうも解析しているだろう。

 ラウなら気がつかない訳がない。

 

 「それにコレも防げまい!」

 

 シールドから放出されるロングビームサーベル。

 

 「舐めるなよ!」

 

 ムウもまたアストより譲り受けた斬艦刀を引き抜き、プロヴィデンスの斬撃に合わせるように刃を振るう。

 

 交錯する一撃。

 

 すれ違った瞬間、斬撃がアカツキの装甲を僅かに掠めていく。

 

 「ハッ、その程度か?」

 

 「くそ!」

 

 やはり強い。

 

 ほぼ同時に繰り出した一撃にも関わらず、完全にムウが打ち負けていた。

  

 つまりは反応速度においてはラウの方が格段に上という事になる。

 

 「けどな、そんな事は承知の上!」

 

 「まだ足掻くか! アスト・サガミと同じように! そんな事をしても結末は変わらんよ!」

 

 「貴様の理屈に付き合う気はないんでね!」

 

 「前にも言った筈だ、私は結果だと! 仮に貴様らが勝利しても再び新たな戦いは起きる! そして最後に人は滅び去る!」 

 

 「相変わらず貴様という奴は!」

 

 ムウはドラグーンの砲撃は無視しながら、プロヴィデンスのライフルにだけ注目する。

 あれだけがアカツキの装甲を破壊できるからだ。

 しかしそんなムウの思考を見透かしたように、ラウの嘲る声が聞こえてきた。

 

 「成長を認めよう、ムウ。確かに強くなった。だが、それでもお前は出来損ないだ」

 

 ライフルの一撃を確かにかわしたアカツキに背後からビームスパイクを展開したドラグーンが迫る。

 

 「ッ!?」

 

 ギリギリ機体を捻り、回避運動を取る。

 持ち前の直感でスパイクをかわす事に成功するが、その隙に距離を詰めたプロヴィデンスの一撃がアカツキの肩部を斬り飛ばした。

 

 「ぐっ」

 

 「ライフルを警戒しているのが見え見えだ!」

 

 「まだまだ!」

 

 体勢を立て直し、これ以上は近づけないとビームライフルを連射。

 それを前にプロヴィデンスは再びドラグーンを射出、展開したフィールドで弾き飛ばした。

 

 「防御フィールドが展開できるのか!?」

 

 「さあ。今度はどうする?」

 

 さらに射出した砲台をアカツキへと差し向ける。

 ラウの狙いはアカツキの装甲が破壊された箇所。

 そこはヤタノカガミの恩恵を受けられない。

 当たれば反射もできずに破壊されてしまうだろう。

 

 「何もそっちだけの専売特許って訳じゃない!」

 

 ムウもまたアカツキを覆うようにフィールドを展開。

 ドラグーンの砲撃を防いで見せた。 

 

 「なるほど。だが!」

 

 ラウは再び実体弾でドラグーンを狙撃し、フィールドを発生させていた基点を破壊。

 しかもほぼ同時にプロヴィデンスを狙撃しようとしていた砲台まで吹き飛ばした。

 まさに神業としか言いようがない。

 

 「これで終わりか? エンデュミオンの鷹の名が泣くな!」

 

 「うるせえよ!」

 

 強い口調とは裏腹にムウはジリジリと焼かれるような焦燥感に襲われていた。

 ラウの技量は無論知っていたし、それなりの機体で来るだろう事も予測していた。

 だがそんな予測も意味がないとばかりに駆けるプロヴィデンスの力は圧倒的。

 ラウの技量もまた予想を軽く上回っている。

 

 「……分かっちゃいたがな。覚悟を決めるしかないか」

 

 自身の力不足を痛感するも、それも分かっていた事。

 故にできれば使いたくない方法を自然と選択せざる得なくなった。

 

 「このままじゃジリ貧だからな!」

 

 実弾とビームを巧みに使い分けるラウの攻撃を捌き、距離を詰める。

 そしてタイミングを見計らって誘導機動ビーム砲塔を射出した。

 

 「何かするつもりか」

 

 当然、ラウもムウが何かしら仕掛けてくる事を察し迎え撃つ。

 慎重に動くという選択もある。

 しかしムウを相手に退く事などラウのプライドが許さない。

 

 「すべて叩き伏せるのみ!」

 

 だがそれはムウにとっても予想済み。

 

 「そのプライドの高さが命取りなんだよ!」

 

 僅かだけ誘導機動ビーム砲塔を残しすべてをプロヴィデンスへ差し向ける。

 

 ドラグーン同士の撃ち合い。

 

 拮抗していた状況を動かしたのはプロヴィデンスだった。

 飛び交う砲台を撃ち落とし、ロングビームサーベルを構えて距離を詰める。

 

 「そろそろ勝負を決めさせてもらおう! 終わりだ、ムウ!!」

 

 振り上げられるサーベル。

 

 ライフルによって巧みに体勢を崩されたアカツキにかわす術はない。

 

 しかし今にも振り下ろされんと迫る光刃を目前にムウは口元に笑みを浮かべた。

 

 「これを待ってたんだよ!」

 

 損傷を承知で腕で無理やり斬撃を止め、同時に蹴りを入れる。

 そして次の瞬間、最後の誘導機動ビーム砲塔を射出した。

 

 「そんなもの今更―――ッ!?」

 

 ラウもすぐにソレが普通の誘導機動ビーム砲塔で無い事に気づく。

 

 「ケーブル!? ガンバレルか!?」

 

 射出されたワイヤー付きの誘導機動ビーム砲塔は二機を巻き込むように何周か周り、アカツキとプロヴィデンスを結びつけた。

 ムウは生き残った誘導機動ビーム砲塔をワイヤーで動けない二機へと向ける。

 

 「これで自由に動けまい!」

 

 損傷しているとはいえアカツキの装甲は健在。

 反射されたビームを自由に動けないプロヴィデンスは防ぐ事が出来ない。 

 

 「貴様!?」

 

 「こうでもしないと貴様を倒せないんでね!」

 

 「初めからこれを狙って!」

 

 ラウとの実力差を一番痛感していたのはムウ自身。

 これまでの戦闘経験がそれを示している。

 だが逆を言えばラウの動きや癖を誰よりも知っていたのはムウだ。

 だからドラグーンを射出すればどう動くのかも、より高度な予測出来ていたのである。 

 

 「終わりだ!」

 

 誘導機動ビーム砲塔からアカツキへ向かってビームが発射された。

 

 その瞬間、急速に接近してくる機体があった。

 

 「カース様!!」

 

 「№Ⅰ!?」

 

 姿を見せたのはボロボロになったスカージ・リュカオン。

 ウェポンシザーズの片方が失われ、装甲の所々が焼け落ち、無残に突き刺さった対艦刀が損傷の大きさを物語っている。

 しかしそのスピードは全く落ちておらず、異常な速度でアカツキへと距離を詰めてきた。

 

 「貴様にカース様はやらせん!」

 

 伸ばすウェポンシザースがアカツキの胴体を掴む。

 

 「この後に及んで!」

 

 軋みを上げ今にも切断されそうなアカツキに出来る事は一つだけ。

 

 カウンター狙い。

 

 ムウは動く腕で握った斬艦刀で斬り払った。

 

 

 瞬間、到達したビームがアカツキの装甲へ反射され、スカージとプロヴィデンスに突き刺さる。

 

 

 その爆発は三機のモビルスーツを巻き込み、眩い閃光が辺り一帯を支配した。

 

 

 

 

 アルテミスの防衛しているモビルスーツを撃墜し、進み続ける白いガンダム。

 

 邪魔な敵を排除し、ようやくアルテミスへ近づいたアストは近づいてくる因縁の機体に表情を険しくする。

 

 紅い装甲を持った機体ユースティアガンダム。

 

 「来たか、アスラン!」

 

 挨拶代わりにビームライフルを叩き込み反応を見る。

 

 「これ以上は接近させん、アスト!」

 

 ビームライフルを回避したアスランはイノセントに向け、複列位相砲を発射した。

 浮かぶ岩片すら容易に砕く一撃を横っ跳びで避けたアストに今度はドラグーンの洗礼が襲いかかった。

 

 「チッ!」

 

 ビームシールドを展開した砲台を機関砲で牽制しつつ、ビームサーベルを抜く。

 

 「レクイエムは破壊させてもらう!」

 

 「やらせはしない!」

 

 ユースティアもまた実体剣オートクレールを構え、イノセントへ叩きつけた。

 

 

 激突した刃が火花を散らす。

 

 

 開始された白と紅のガンダムの戦い。

 

 

 結末がどうあれ、二人の決着はここで着く。

 

 

 しかしそれを阻まんと特徴的な機体が接近していた。

 

 

 ミーティアを装着したエリュシオンガンダム・ディアナであった。

 

 「もう始まってる!?」

 

 モニターに映し出されるセレネにとっての最悪な光景に思わず歯噛みする。

 

 いや、まだ間に合う筈だ。

 

 ―――ここで彼さえ倒せば。

 

 

 「……最低の行いだと分かってる。でも、それでも!」

 

 

 アスランと戦うビームサーベルを掲げる白い機体をロックし、砲撃を開始しようとトリガーに指を掛けた。 

 

 

 「やらせない!!」

 

 

 ミーティアの射線上へ割り込むように現れたのは蒼い翼を持つ熾天使トワイライトフリーダム。

 

 

 「貴方は何をしているんです、ディノ中尉!!」

 

 

 「マユ・アスカ」

 

 

 機体越しに睨み合う二人の少女。

 

 

 愛する者を守る為、彼女達の戦いも此処に始まろうとしていた。




予定では後2,3話で終了となっています。
ただ今後劇場版SAO見に行ったり、FGO1.5章開始されたり、ニーアオートマタ、スパロボなどゲームもたまってるので少し遅くなるかも(汗
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