機動戦士ガンダムSEED eventual   作:kia

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第48話 女の戦い

 

 

 

 

 

 最終局面に突入したアルテミス攻防戦。

 

 ギリギリの戦いが繰り広げられる戦場の中、銃口を向け睨み合う二機のガンダムが居た。 

 

 トワイライトフリーダムとエリュシオン・ディアナ。

 

 コックピットに座るマユとセレネは互いに警戒を崩さず、目の前の機体を注視する。

 

 嵐の前の静けさとでも言うべき沈黙の中、先に口を開いたのはフリーダムを操るマユだった。 

 

 「……どういうつもりなのですか、ディノ中尉? 私達を騙していたのですか?」

 

 咎めるようなマユの声。

 だが、刺々しいのも当然だった。

 アストを狙撃しようとしたからというだけではない。

 この場にいる事こそが問題なのである。

 

 セレネ達の役目は今回の作戦における同盟側にとっての要。

 

 それがすべて茶番であったなら、アポロンに向かった兄やラクス達は―――

 

 そんなマユの懸念をセレネは何の迷いもなく否定する。

 

 「それは勘違いです、アスカ中尉。私の役割は果たし終えました」

 

 「え、では?」

 

 「はい。作戦は成功、もうすぐテタルトス議会の方から戦闘一時停止の命令が下る筈です。そうすれば統合軍も退かざる得なくなる」

 

 「ならば何故、アストさんを狙っていたんです?」

 

 「分っているんでしょう? 彼を放置しておけば私の大切な人を傷つける。だからその前に」

 

 「ふざけないで!」

 

 その言い分はマユにとって到底受け入れる事などできないもの。

 それはセレネにも分かっていた。

 接した期間こそ短いものの、マユがアスト・サガミを慕っている―――いや、愛している事は。   

 だからセレネがやろうとしている事を彼女が受け入れられる筈はないのだ。

 

 「アスカ中尉、貴方がそう言う事も分かっている。それでも!」

 

 そう、それならば、セレネもまたアスランを愛している。

 

 だから彼を討たねばならない。

 

 例え目の前にいる自分と同じ気持ちを抱えている女性を殺したとしても。

 

 「私はアスト・サガミを討つ! 大切な人を守る為に!」

 

 「そんな事させない!」

 

 二人は互いに譲れない。

 

 故にこうして銃を向けるのだ。

 

 「貴方が邪魔をするなら……此処で倒す!」

 

 「私も同じです、セレネ・ディノ!!」

 

 マユはビームライフルを連射しながら前に出る。

 狙いは一つ。

 ミーティアだ。 

 アレを装着したエリュシオンの砲撃能力は圧倒的。

 遠距離からの砲撃戦に持ち込まれれば、勝ち目はない。

 だからアドバンテージのある機動性をもって即座にミーティアを潰しにかかったのである。 

 

 「ハアア!!」

 

 マユの想定通り、ミーティア装備のエリュシオンはフリーダムの機動性には対応出来ていない。  

 ライフルで相手を牽制しながら、ビームサーベルを抜き放った。

 

 「このまま斬り潰す!」

 

 「それはすでに想定済み!」

 

 フリーダムの斬撃を前にセレネはミーティアを装着したまま実体剣でサーベルを弾いて見せた。

 予想外の器用な動きにマユは驚愕を隠せない。

 

 「なっ!?」

 

 同時に発射される全火力。

 マユは咄嗟に速度を上げ、繰り出される砲撃を回避する。

 だがミーティアの砲撃は苛烈さを増し、高速移動するフリーダムに振り注いでいく。

 

 「くっ、こんなもので!」

 

 砲撃を潜り抜け、ライフルやレール砲で牽制しながらフリーダムは再び接近戦を仕掛ける。

 方針に変更なし。

 ミーティアを最優先で潰すのみ。

 しかしセレネは慌てる事無く、またも斬撃を鮮やかに捌いて見せた。

 

 「貴方の考えてる事はお見通し!」

 

 何故ならミーティアの弱点を一番熟知しているのはセレネ自身。

 だからこそミーティアを使った戦い方の訓練には力を入れていたのだ。

 故に接近戦を挑まれる事も予想範囲内。

 そのまま攻撃にもスムーズに移行する。

 

 「行け!」

 

 弾き飛ばされ体勢を崩すフリーダムにミサイルを一斉に発射。

 さらに避ける暇を与えず、ビーム砲を叩き込む。

 出し惜しみは無し。

 相手は『オーブの熾天使』なのだから。

 ミサイルと共に砲撃が突き刺さり、フリーダムを爆炎が包む込む。

 

 「……手応えはあったけど」

 

 倒したか?

 

 いや、そう簡単に倒せる筈はない。

 

 警戒を崩さないセレネ。

 その予測は当たり、爆炎の中からビーム砲が発射されてきた。

 視界を遮られているとは思えない程、正確な一撃がエリシュオンに襲い掛かる。

 

 「くっ」

 

 操縦桿を巧みに操り、ビーム砲の射撃を避けるエリュシオン。

 砲撃がミーティアの本体を掠めていくが、損傷自体は軽微。

 戦闘継続にも問題はない。

 

 「今ので大体の位置は分かりました!」

 

 取集したデータを解析し、フリーダムの予測位置を割り出すとそこに向けて火力を解放する。

 戦艦ですら撃滅できる火力が降り注ぎ、敵機の居場所を蹂躙した。

 

 「この火力に晒されればフリーダムといえども―――」

 

 だがその時、爆炎の中から飛び出してきたものがあった。 

 それは投げつけられた斬艦刀だ。

 回転しながらミーティア目掛けて飛んでくる。

 

 「ッ!?」

 

 迎撃は間に合わないと判断し、咄嗟に後退する。

 しかし回避しきれず斬艦刀はミーティアの右アームユニットを捉え、斬り飛ばした。

 すかさず別方向から飛び出してくるフリーダム。

 装甲の所々を損傷しているが、戦闘に支障はないようでその動きに衰えはない。

 むしろ先ほど以上のスピードでエリュシオンへ肉薄してくる。

 

 「さらに速い!?」

 

 避ける間もなく振るわれた一撃がミーティア側面部を斬り裂いた。

 裂かれた部分の爆発を歯を食いしばって耐えながら、セレネは翼を翻すフリーダムに視線を向ける。

 

 「……速すぎる」

 

 想定以上。

 フリーダムの速度はもはや小手先の技術ではどうにもならないレベルに達している。

 セレネは残った左アームユニットを握りミーティアをパージ。

 弾丸のように突っ込んでくるフリーダムを迎え撃った。

 

 「これ以上は!!」

 

 「ハアアア!!」

 

 同時に振り抜かれた斬撃が交錯。

 激しい衝撃と閃光が弾け飛ぶ。

 

 「私はアスト・サガミを倒す! 彼こそアスランを苦しめる最大の原因だから!」

 

 「アストさんは私が守る! これ以上、あの人を悲しませない為にも!」

 

 刃と刃が交差し苛烈な斬り合いを繰り広げる二機のガンダム。 

 

 マユはその速度と高い技量を持ってエリュシオンを翻弄。 

  

 反面セレネは培われた高い分析力と対応力でフリーダムと拮抗していた。

 

 「強い。流石に『オーブの熾天使』」

 

 実体剣でビームサーベルの斬撃を捌きながらセレネは敵の技量に舌を巻く。

 反応速度、射撃精度、近接戦能力。 

 それらすべてが高水準。

 テタルトスや統合軍にもこれほどの技量を持つパイロットはいない。

 戦えるとすればそれこそトップエース達だけだろう。

 だからと言ってセレネは微塵も怯まない。

 彼女もまたテタルトスに名を連ねるトップエースの一人なのだから。

 

 「このまま押し込む!」

 

 見事な機体制御。

 淀みなく斬り返しで刃を振るってくるフリーダム。

 袈裟懸けの一太刀がエリュシオンの装甲を容赦なく斬り飛ばし、抉り取っていく。

 傍から見れば劣勢に見えるこの状況。

 しかしセレネは冷静さを失う事なく、氷のような冷たい目でフリーダムの動きを観察していた。

 

 「……確かに強い。でも、大分動きも見えてきました」

 

 一合。

 

 二合。

 

 剣を打ち合う度に劣勢だったセレネの状況が互角へと変わっていく。

 

 「こちらの動きを読んでいる!?」

 

 「こういった分析は昔から得意分野なんですよ!」

 

 上段から振り下ろされた一撃を実体剣で受け止め、弾き飛ばす。

 そしてビーム刃を放出させたアームユニットを投げつけた。

 伸びた刃は真っすぐにフリーダムの目掛けて突き進む。

 

 「ッ!?」

 

 咄嗟に発動させたSEEDによる爆発的な反応。

 それによりマユは致命傷を避ける事に成功する。

 しかしそれは無傷という意味ではない。

 アームユニットのビームソードはフリーダムの脇を削り、レール砲を破壊していったのだから。

 

 「ぐっ」

 

 「今の避けるとは。やっぱり凄い。でも、私も負けられない!」

 

 セレネは一切の容赦もせず、フリーダムを仕留めに掛かった。

 発現するセレネのSEED。

 両手に握った実体剣『イシュタルⅡ』の先端から伸びるビーム刃がフリーダムに襲い掛かる。

 

 「落ちろ!!」

 

 二刀の斬撃から逃れようとたまらず後退する、マユ。

 だがセレネはそれをさせるほど甘くは無かった。

 

 「逃がしはしない!」

 

 フリーダムの逃れる方へあらかじめ散布しておいた誘導ミサイルが背後から直撃した。

 

 「ぐぅぅぅ!! いつの間に!?」

 

 「さっきミーティアをパージした時です!」

 

 実体剣がフリーダムの肩ごと左腕を破壊。

 さらなる追撃が腹部に大きな傷を生み出した。

 

 「うぅぅぅ!?」

 

 「止め!!」

 

 「まだァァ!!」

 

 スラスターを噴射し、一回転。

 突きつけられた切っ先諸共敵機を蹴り飛ばすと同時に発射したビームライフルがエリュシオンの装甲を撃ち砕いた。

 

 「っ! まだ足掻く」

 

 「当然です! 私は負けられない!」

 

 さらにマユは残ったレール砲を展開。

 エリュシオンの至近距離で炸裂させると、反動を利用して距離を取った。

 

 「ハァ、ハァ!」

 

 乱れた呼吸を整えながら両手に剣を構える敵の姿を見据える。

 

 強い。

 

 今まで戦ってきた敵とはタイプが違うがその実力は本物。

 爆発力こそ他に及ばないが、敵に対する分析力とそれに伴う対応力は群を抜いている。 

 技量においてはマユが上。

 しかし型に嵌ればセレネの力がそれを上回る。

 

 「何とかするしかないけど」

 

 だが反撃に移ろうにもフリーダムの状態はお世辞にも良いとは言えない。

 左腕は欠損。

 一部装甲も抉られ、武装も破損している。

 切り札であるC.S.システムが起動できるかも怪しいものだ。

 無理やり発動させれば、機体が持たずに自滅する危険すらある。

 仮に発動させたとしても、それすらセレネは計算に入れているだろう。

 

 「それでもやるべき事は変わらない」

 

 幸い敵も無傷ではない。

 先ほどのビーム砲が装甲を吹き飛ばし、腕部に影響が出ている筈。

 ならば、これまでのように器用な捌き方はできまい。

 覚悟を決めライフルを腰にマウントしてサーベルを抜く。

 

 「これで決着をつける!」

 

 マユが選んだのは速度を生かした近接戦。

 色々考えはしたがこれしかない。 

 武装の損傷を考えれば、砲撃戦は明らかに不利。

 ならば残るアドバンテージを生かす方がまだ勝機がある。  

 しかしそれはセレネからすれば無謀な特攻と何も変わらない。 

 

 「勝負に出ますか。なら私も応じましょう!」

 

 翼を広げ移動を開始したフリーダムに向けて砲撃を開始する、エリュシオン。

 ビーム砲、レール砲、ビームライフルなど持ちうる火力をもってフリーダムを追い詰める。

 だがマユは速度を緩めない。

 砲撃によるダメージを受けながらも、エリュシオンへと突っ込んでいく。

 

 「本当に特攻するつもりですか!?」

 

 「貴方に勝つにはそれくらい必要でしょう!」

 

 「馬鹿な事を!」

 

 セレネは突撃してきた敵機を斬り裂かんと実体剣を構えた。

 しかしフリーダムは予想外に背中のビーム砲を発射してきた。

 

 狙いは―――

 

 「ミーティア!?」

 

 正確には斬り裂かれたミーティアの残骸である。

 ミサイルポッドが含まれた残骸をビーム砲が貫通。

 爆発したミサイルが周囲を爆煙に包みこんだ。

 

 「くっ、視界を塞いだ程度で!」

 

 フリーダムが向かってくる予測進路へビーム砲を叩き込む。

 爆煙の中を突き進む閃光の先。

 そこからセレネの予想通り、フリーダムが飛び出してきた。

 

 「アイギス!!」

 

 放出されたドラグーンユニットがビーム砲を防ぎ、さらに発動させたC.S.システムがフリーダムをさらに加速させる。

 

 「システムを作動させた!? 自滅覚悟か!!」 

 

 翼が光の膜が攻撃を弾く。

 

 そして爆煙を切り裂き。

 

 光を纏い。

 

 先程までとは比較にならない速度でエリュシオンの間合いに飛び込んでいく。

 

 その姿はまさに熾天使。

 

 「だとしても!!」

 

 セレネの予想範囲内である事に変わりはない。

 

 フリーダムの攻撃に合わせ実体剣を振り抜こうとした―――

 

 「なっ!?」

 

 しかしエリュシオンの腕は動かない。

 否、正確には振り抜こうとした直前で、剣が光の膜によって阻まれていたのだ。

 そこでセレネはマユの本当の狙いに気が付く。

 

 「ミーティアを狙撃した本当の理由はドラグーンの配置を把握しにくくする為!?」

 

 「ハアアアアア!!」

 

 エリュシオンの動きが止った瞬間、フリーダムの斬撃が下腹部へと突き刺さる。

 

 「ぐぅぅぅ」

 

 咄嗟の反応でコックピットへの直撃を避けたものの、その衝撃は凄まじい。

 セレネは意識を奪われそうになりながらも、動くもう片方の腕を振り上げた。

 実体剣がフリーダムの腹部へ突き刺さった。

 

 「ギッッ!?」

 

 腹部から火花が散り、フリーダムの動きが明らかに鈍る。

 

 此処こそ勝機!

 

 「コレで止め!!」

 

 振りかぶったもう片方の実体剣を振り下ろす。

 

 「まだァァァァァァァ!!!」

 

 マユの絶叫に応えるように機体を纏う光が一層輝きを増した。

 瞬間、フリーダムの姿を一瞬セレネは見失う。

 故に振り下ろされた実体剣はフリーダムの姿を捉える事ができずに空を切った。

 

 「残像!?」

 

 光学残像。

 実体剣が貫いたのは光で生みだされた虚像だった。

 フリーダムはエリュシオンの背後へ回り込み、ビームライフルを構えていた。

 

 「セレネ・ディノ!!」

 

 「マユ・アスカ!!」

 

 振り向きざまのビーム砲がフリーダムに直撃するも、発射されていたビームライフルがエリュシオンを背後を撃ち砕いた。

 爆発と共に吹き飛ばされるエリュシオン。  

 フリーダムも装甲から色を失い、完全にシステムがダウンしてしまう。

 

 「ハァ、ハァ、ハァ、ア、アスト、さん、助けに」

 

 どうにか立て直そうとする。マユ。

 しかし彼女に戦う力はもう残っていなかった。

 無理をし過ぎた代償。

 それを支払うようにフリーダムは力を失い、マユもまた意識を失った。 

 

 

 

 

 損傷すら気に留めず突き進むグラオ・イーリス艦隊。

 護衛のモビルスーツ隊と共にアルテミスの間近にまで迫っていた。

 

 「主砲、発射! モビルスーツを近づけるな! 空いた穴にミサイルを叩き込め!」

 

 敵の連携を崩し、空いた防衛網の穴。

 そこからアルテミスへ向けてミサイルを発射する。

 しかし何度目かの一撃もシールドを張る機体と陽電子リフレクターによりすべて防がれてしまった。

 

 「くっ、やはりアレを排除しないとどうにもならないか!」

 

 レクイエムを守る陽電子リフレクターも厄介ではある。

 だがそれ以上に面倒なのは特殊シールド『オハン』を装備したバウであろう。

 その機動性を生かした守備範囲の広さに加えオハンの堅牢さは厄介極まりない。

 現に艦隊の攻撃は大半バウによって阻止されている。

 

 「まずはアレをどうにかする方が先か」

 

 「それは俺らの仕事だ!」   

 

 ギア部隊を率い、先行するのはハイネの駆るスオウ。

 慣れない筈の可変型をハイネはすでに手足のように扱いながら、敵機を翻弄。

 持ち前の機動性を持ってバウ部隊へと攻撃を仕掛ける。

 さらにそこへルナマリアのシークェル・インパルスも駆けつけてきた。

 

 「ルナマリアか!?」

 

 「遅くなりました、援護します!」

 

 所々損傷しながら動きを鈍らせないインパルスに頼もしさを感じ、ハイネはニヤリと笑みを浮かべた。

 

 「頼むぜ!」

 

 「了解!」

 

 バウに肉薄したインパルスの一撃が胴体を貫く。

 そのまま腕ごと引きちぎるとオハンを奪い取った。

 

 「使わせてもらうわ!」

 

 オハンを使ってフォルセティを守りながら攻勢に出るインパルス。

 それに合わせフォルセティはさらに速度を上げていく。

 

 「バウはハイネやルナマリア達に任せておけばいい。残る問題は――」

 

 砲口を守る陽電子リフレクターだ。

 ユニウス戦役時には同じ性質を持つビームシールド装備の機体が陽電子リフレクターを突破した記録が残っている。

 しかし今、それに該当する機体はすべて出払っていた。

 となれば方法は一つ。

 

 「……やはり直接乗り込むしかないか」

 

 アルテミス要塞に潜入し、陽電子リフレクターの制御装置を破壊する。

 運が良ければレクイエムの制御室も発見でき、発射も止められる可能性がある。

 

 「総員、陸戦用意!」

 

 「「了解」」

 

 敵の砲火を物ともせず、フォルセティは直進する。

 その先にはアルテミスへの入り口が待ち構えていた。

 

 

 

 アルテミスの外壁を滑るように移動する白と紅のモビルスーツ。

 高速で移動しながら敵の攻撃を避け、さらには反撃するその様はまさに絶技。

 決着をつけるべく始まったアンセム・イノセントガンダムとユースティアガンダムは一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

 「アスト!」

 

 二本の実体剣『オートクレールⅡ』の一撃。

 さらに背中のリフターから放出されたビームウイングがイノセントへ襲いかかる。 

 

 「お前との決着は後だ!」

 

 ビームウイングをかわしユースティアの砲撃をバレルロールで回避したアストはビームライフルで反撃する。 

 アストはユースティアを無視し、常にレクイエムの方へ向いていた。

 それにアスランも当然気が付いている。

 戦略的に当然の選択ではあるが、それがより一層苛立ちを募らせていく。

 速度を上げてビームを振り切ったアスランは怒声を発しながら実体剣の射撃でイノセントを狙撃した。

 

 「逃しはしない!!」

 

 ビームがアルテミスの外壁を抉る度に、岩片が舞い上がる。

 アストは散った岩片を隠れ蓑に武装を持ち替えるとユースティアを狙って発射した。

 

 「バズーカ砲? そんなもの―――」

 

 VPS装甲を持つ機体には通用しない。

 しかし同時に感じ取る嫌な予感。

 それは数多の戦場で培ってきた第六感だ。

 アスランは躊躇う事なく、その直感に従った。 

 

 「ッ!」

 

 咄嗟に差し出すシールド。

 バズーカ砲の直撃を受けた盾は容易く打ち砕かれ、その衝撃はユースティアの一部装甲にも影響を与えた。

 

 「今の砲弾は……まさかVPS装甲を無効化する?」

 

 僅かに破壊された装甲を見て砲弾の正体を看破したアスランは思わず冷や汗を掻く。

 

 「避けた!?」

 

 アストは対PS装甲弾を避けてみせたアスランの判断に舌打ちしながら、距離を取りつつ弾数を確認する。

 

 「残りは二発か」

 

 対PS装甲弾は特別製の弾頭。

 試作段階故にコストも高く、一度の戦闘で装填できる数も限られている。

 

 「だが、威力は十分に分かっただろう」

 

 この武装はアスランにとっても脅威となる。

 実体弾だから大丈夫という油断を突く奇襲はもう通用しない。

 だが、警戒感を煽るという意味では十分すぎる威力を示してくれた。

 通常弾頭と併用して使えば十分な効果が得られるだろう。

 アストは足元の外壁を機関砲で崩し、さらに岩片を撒き散らすと離脱を図る。

 

 「逃げる!? いや、狙いはエネルギープラントの方か!!」

 

 アスランの妨害もあって現状レクイエムの破壊は難しい。

 ならばとレクイエムにエネルギー供給を行っているプラントさえ破壊してしまえば、発射する事が出来なくなる。

 

 「例えリフレクターで防衛していたとしても!」

 

 ユースティアを振り切り、アストが目指したのはエネルギープラントから伸びるチューブだった。

 エネルギープラントを直接破壊しなくても、アレさえ切ってしまえばレクイエムの発射に影響が出る。

 岩盤に守られるように配置されたチューブをビームサーベルで断ち切った。

 しかし一本切った程度ではエネルギー供給が止まる気配がない。 

 

 「一本では駄目か。なら全部―――ッ!?」

 

 追いついてきたユースティアの射撃を飛び上がって回避。

 上段から振り下ろされた実体剣をサーベルを横薙ぎに振るって受け止める。

 

 「これ以上はやらせない!」

 

 サーベルを弾き、両足のビームサーベルを展開。

 両手に握ったオートクレールと共に猛攻を開始する。

 

 「ハアアアアア!!」

 

 アストもまたナーゲルリングを引き出し、ユースティアの斬撃を捌きながらサーベルで斬りつける。

 

 「前のように簡単に行くと思うな!」

 

 「いい加減に鬱陶しいんだよ! 俺はお前に構っている暇などない!!」

 

 「貴様には無くとも、俺にはある!」

 

 縦横無尽の斬撃にライフルで牽制しながら回避する、アスト。

 しかしすでに射出されていたドラグーンユニットが背後から襲い掛かった。

 

 「アスラン!」

 

 イノセントも残った『フリージア』すべてを射出。

 ドラグーン同士の撃ち合いを開始する。

 

 「いちいち情けない! そんなだから!」

 

 「貴様が言えた義理か! その力と才能を生かさず、ただ無駄に犠牲を振りまくだけ!」 

 

 「なんだと!」

 

 ビームが飛び交う中を激突した二機のガンダムが斬り結ぶ。

 

 「自分を愛してくれた女一人守り切れなかった者の言う事がそれか!!」 

 

 「お前こそ、いつまでも!!」

 

 激しい剣撃を潜り抜け、懐に入ったイノセントの一撃が脚部のビームサーベルを破壊。

 同時に繰り出したユースティアの実体剣がビームライフルを斬り潰した。

 

 「これで!」

 

 止めを刺すべく複列位相砲発射体勢に入る。 

 

 「舐めるな!」

 

 至近距離からの複列位相砲を避ける為、機体を寝そべらせバルカン砲を叩き込む。

 砲撃はリフターへ直撃、ビームウイングを吹き飛ばす。 

 

 「ぐっ、貴様!」

 

 「落ちろ!」

 

 さらに追撃。

 下降しながら発射された対PS装甲弾がリフターを完全に破壊した。

 

 「ぐっ、おのれ!」

 

 アスランは咄嗟にリフターを切り離し、爆発を避けつつビームサーベルを投げつける。 

 

 「くっ、切り離して致命傷を避けたか!」

 

 サーベルが肩部を掠め、傷を負うもののユースティアがバランスを崩した隙を狙い離脱を図るイノセント。

 

 「リフターは失ったが……機体自体に問題はない!」

 

 状態を確認したアスランはスラスターを吹かし、敵機を追撃する。

 距離も離れておらず、すぐに追い付いたユースティアはイノセントに斬りかかる。 

 

 

 鍔迫合い高速で移動する二機。

 

 「オオオオ!!」

 

 「本当にお前は!!……アレはフォルセティか?」

 

 稲光によって照らされる中、アストの視界にアルテミスへ上陸しようとしているフォルセティが見えた。

 イザークは予定通りに陸戦を挑むつもりなのだろう。

 

 「上陸を許した? やるな、イザーク!」

 

 「行かせないぞ!」

 

 立場は逆となり、今度はアストがユースティアを行かさない為にビームサーベルを振るっていく。

 

 

 そのままイノセントとユースティアもアルテミスの中へと突入する。

 

 

 決戦は最終局面へと移行しようとしていた。

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