非戦闘区域コロニー群。
通称『商工連合コロニー群』と呼ばれ、テタルトスが建国前にL4区域にあった老朽化や荒廃したコロニーを撤去し空白が出来た場所へ商工連合主導で建造されたコロニー群である。
建設目的は宇宙における強固な経済圏の確立。
地球の経済要所がアムステルダムだとしたら、宇宙の経済要所はこの商工連合コロニー群だ。
アムステルダム同様各勢力が駐屯しある種火薬庫のような状態であるが、現在は別の意味で危険な場所となっていた。
その理由の一つが『防衛隊』の存在だ。
民間組織である商工連合が力を持つ。
いや、それだけでなく世界中にネットワークを持つ彼らがその力を量産し、裏で流通させ始めたら―――
それがもしも公になれば彼らがどれだけの影響力を持っているにせよどの勢力も看過出来ない。
つまり新たな火種になりかねないという事だ。
そんな高まる緊張の中、ヴィンゴルヴでの補給を終えたウリエルは商工連合コロニー群にたどり着いていた。
正体不明の新型モビルスーツの出所を掴む為に。
◇
「艦長、接舷完了しました」
ヴィンゴルヴから発進したウリエルは特にトラブルに遭遇する事なくコロニーの港へ無事入港できた。
しかし本番は此処から。
ある意味で戦闘よりも疲れる会談が待っている。
裏で何を考えているか分からない、そんな連中との腹の探り合い。
かなり憂鬱だ。
「ハァ、嘆いていても仕方ないね。大佐、一緒に来てくれ。護衛にはミナト中尉を。艦の防衛にはカル・バヤン大尉に任せる」
「了解した」
ネオを伴い、格納庫に降りるとあらかじめ用意させていた車に乗り込む。
運転席にはすでに命令を受けたアオイが待っていた。
「済まない、中尉。待たせてしまったね」
「いえ、では行きましょうか」
慣れた手つきでナビを起動させ、道順を確認したアオイはゆっくり車を発進させた。
「あ、そういえば艦長就任おめでとうございます、レフティ艦長」
「ありがとう。正直、遠慮したかったんだけどね。唯一の救いは君達がそのままクルーとして配属されている事くらいだよ」
よほど不本意だったのかヨハンはあからさまにため息をついた。
そういえばここ最近でずいぶんやつれたようにも見える。
このままでは胃痛で倒れるか、勤め上げても将来頭の頭髪も薄くなってしまうのではと心配になってしまう。
「あはは、別の艦長が来るって噂はどうだったんです?」
「さあ。噂は所詮噂って事だよ」
ハッキリ言って今回の件はかなりの厄介事だ。
誰だって何かあるとわかっているものの責任など取りたくはない。
不審船の件を含めれば以前から報告が上がっていたし、おそらく上官たちは初めから『グラオ・イーリス』にこの件を押し付けるつもりだったのだろう。
そして白羽の矢が立ったのが運用試験を行っていたウリエル。
何かあっても未確認情報の調査に最新鋭の戦艦を調査に投入したという事でちゃんと対処したと言い訳も出来る。
さらに余計な人事異動も行う事無く、試験運用を行っていた艦長を含めたクルー達を続投させれば手間も省ける訳だ。
つまりヨハンは貧乏くじを引かされたという事。
これではため息の一つもつきたくなる。
「せめて援軍でも来てくれればね。ま、嘆いていても状況は変わらない。今は任務に集中するさ」
「それでこれから会うのはどういう人物で?」
「商工連合の役員の一人だよ。昔は同盟の企業に所属していたそうだけど、今はアムステルダムの企業に移ったらしい。それでも元々同盟企業の人間だった事もあって話し易いだろうってさ。上の有難い配慮だよ」
「こちらの要件については?」
「多分、知ってるだろうけどね。まあどういう反応をしてくるか見せてもらおう」
後は出たとこ勝負。
相手の様子を見ながら決める以外にないと結論付けるとアオイ達は面会の予定されている高層ビルへと車を走らせた。
◇
「うわ、高いビルだなぁ」
モビルスーツを超える高さを持つ高層ビルを見上げてアオイは思わず声に出してしまった。
「フフ、中尉、口が開いている」
「あ、す、すいません、大佐」
確かに傍から見ていると口を大きく開けているその様はどこの田舎者かと思われても仕方ない。
「大佐、その、体調の方はいかがですか?」
「うん? ああ、私は大丈夫。地球で改革派を率いていた頃よりはずいぶん楽だ。……それにあの頃と違って貴方が一緒に居てくれるからね」
垣間見た素顔にアオイは照れくささを誤魔化すように頭を掻くとネオは楽し気に笑みを浮かべていた。
例の件もあって最近は忙しくて碌に休暇も取れていない。
しかもネオは自分から誰かに頼るという事をしないという悪癖があった。
故にアオイは常日頃からネオの体調を気にしていたのだが、杞憂だったようだ。
「大佐、一段落したらまたお茶でも飲みましょう」
「楽しみにしておく」
「楽しそうで結構だね、君らは本当に仲が良い」
先にビルの中に入っていたヨハンが渋い表情で出てきた。
どうやらまた彼にストレスを与える出来事があったらしい。
「相手方に急な要件が入ったらしい」
「まさかキャンセルですか?」
「いや、だが1時間くらいずれ込むそうだ」
「嫌がらせですか……じゃあ、俺達は?」
「待つしかないだろう。この場を離れる訳にはいかない。それで勝手に帰ったとキャンセルされても困る。向こうの急用が早く終わる可能性だってあるからね」
ヨハンは希望的観測口にしながら、ビルの中へ入っていく。
「俺達も行きますか」
「そうだな」
外で突っ立っている訳にも行かず二人もヨハンと共にロビーでたすら待つ事にした。
まあ休む時間ができたと考えれば、悪くはないのかもしれないが、いかんせん退屈だった。
すでに周囲の調査は行っているしヨハンとネオは今回の面会について再確認を行っている。
他にやることがない。
仕方ないので何気なく窓の外に視線を向ける。
「凄い風景だな」
並び立つビルの群れ。
これだけのものを作り出すとはやっぱり商工連合の力は侮れない。
それだけに考えるとあの正体不明のモビルスーツを作り上げたのが、彼らであると言われても何ら不思議はない。
益体の無い事を考えつつ周辺の様子を伺っていると、何というか予想外の光景が飛び込んできた。
「は……仮面?」
そう、仮面だ。
ビルとは反対側の通りに仮面をつけた人物が立っているのが見えたのだ。
「ッ!?」
背筋に凍るような冷たいものが走る。
強烈な悪寒と同時に射貫かれるような視線を感じた。
まさかアオイの視線に気が付いたというのか?
ここまで離れているのに?
しかも仮面の人物から発せられていたものは冷たい殺意とドス黒い憎悪だ。
この距離でなお、あの人物から発せられる殺気のようなものが感じ取れるなんて。
「……なんだよ、アイツ」
仮面の人物はすぐに視線を逸らすと迎えに来た車に乗り込みそのまま去っていった。
だがアオイの悪寒は消え去らない。
直感がいっている。
アイツは危険だ。
「見たか?」
「大佐?」
いつの間にか隣に立っていたネオも警戒したように拳を握りしめている。
何かに気が付いたのだろうか。
「……多分、アレだ」
「え?」
「今の世界を覆う黒い影は」
「私の直感だが」と呟くとネオはそれきり口を開かず、窓の外を睨みつけている。
アオイもまた嫌な予感が消えず、車が走り去った方向から視線を外す事が外せなかった。
◇
コロニーの港へ向けて走る一台の車。
暗殺や襲撃に備えて特殊な細工を施された車の車内に一人の黒髪の人物が座っていた。
隙のない佇まいに服装は軍服を思わせるデザインだが、どの陣営のものとも違う制服を身に纏っている。
そして一番特徴的なのが目元を覆う仮面。
しかもその仮面を知っている人間にとって忘れ難いもの。
それはかつてザフトに所属していた男の物と全く同じデザインだったからだ。
仮面をつけている為、表情は見えず何を考えているのか分からない。
しかし運転席に座っている女性は仮面の人物の感情を読み取れるのか、不機嫌なのが手に取るように分かった。
まあ長年の付き合いなのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。
「何故そう不機嫌なの、ルドラ?」
「不機嫌にもなる。あのような俗物どもが世界のトップに立っているとは、世も末だ。それに―――」
「それに?」
「お前も気が付いただろう、シルヴィア。いやお前だからこそ気が付いた筈。こちらを見ている奴がいた。それに正面のビルにはあの女もな」
それで仮面の人物―――ルドラ・アシュラが不機嫌な理由を察した。
「なるほど。そういえばあの男から連絡が来たわ。『彼』がこちらに合流するそうよ。それからデータも送信されてきてた」
「そうか。流石だな、諜報活動にも遅れなしとは」
手にした端末に送られてきたデータを満足そうに眺めながら素早く精査していく。
「ルドラ、あの男にあまり気を許し過ぎないで」
「当然だ。同じ轍は踏まんさ。利用しているだけだ。まあ奴も承知済みだろうがな」
ルドラは昔の記憶を懐かしむように仮面を弄る。
そう、今度はこちらが利用してやるだけ。
同じ手は通用しないと教えてやるとも。
「それよりも情報通りグラオ・イーリスが動いているようだな」
「ええ。新造戦艦の入港も確認済み。彼女があのビルに居た事も輸送艦の件でしょうから。それでどうするの?」
「ふん、アレらが見つかるのも元々時間の問題だった。それも想定済みだ」
「では」
「予定通りだ。すべての準備は整いつつある。後は時が来れば―――」
ルドラは口元に笑みを浮かべるとシートに身を任せて目を閉じる。
来るべき時を待つように。
そしてその時はもうすぐそこまで迫っていた。
◇
ウリエルのブリッジは実に重苦しい空気に包まれていた。
オペレーターを含めたクルーたちは息を潜め、誰一人声を発しない。
その重い空気を発している中心にはたった今面会から戻ってきたヨハン達の姿があった。
ヨハンも、ネオも、アオイでさえ厳しい表情を崩さない。
後ろに控えたスウェンは元々口数が多い方ではないし、この沈黙は外側にいる人間にはつらい。
もしかして上手くいかなったのかという疑問がクルー達の胸中に湧き上がってくる。
そんな状況を打開する為、ブリッジクルーたちも行動に出た。
「……ジャンケンで決めよう」
「マジか」
「私、苦手」
「ガタガタ言うな。いくぞ、ジャンケン」
「「「ポン」」」
生贄は決まった。
勝ったものはガッツポーズを決め、負けた者は絶望にうちひしがれる。
「えぇぇ、私ぃ?」
「よし、いけ」
哀れにもジャンケンに負けた女性オペレーターが涙目で恐る恐る沈黙するヨハン達に問いかけた。
「あの、艦長、面会の方は、そのどうだったか、聞いても大丈夫でしょうか?」
一斉に向けられた四人からの視線にますます涙目になってしまう。
それに気が付いたアオイは慌ててフォローに回る。
「あ、えっと、皆にも今日の件を話しませんか?」
「む、そうだね。こうして黙り込んでいても仕方がないか」
「ええ。此処で一度情報整理を整理してみましょう」
重い空気は霧散し、いつもの雰囲気が戻ってきた。
あからさまにホッとした様子のオペレーターの女性がアオイの傍に寄ってくる。
「ありがと、アオイ君。それで上手くいかなかったの?」
「いや、その逆。上手くいきすぎたっていうかさ」
そう、上手くいきすぎた。
結局、きっかり一時間待たされた後で面会は無事に果たすことが出来た。
流石に正体不明のモビルスーツに関しては、何も知らないと否定されたが不審艦については情報が得られたのである。
「これがそのデータだ」
映し出された宙域図にあるのはL4の端の端にあるゴミ捨て場。
掃除されたL4における昔の名残とでもいうべき場所で、破壊された戦艦や完全に修復不可能なコロニーの残骸などが放置されている。
さらにはコロニー開発で出たゴミも投棄されているとか。
確かにテロリストや海賊などが身を隠すには絶好の場所であるが、あからさますぎる。
「情報を提供も抵抗なくあっさりとしすぎた」
「ええ。まるで此処に誘導したがっているみたいに。もしかすると『防衛隊』の事を誤魔化したいという意図があったのかもしれない。もちろんこちらの考えすぎという可能性も十分にある訳だが」
「でも他に手がかりはないですよ」
「そうだね。どちらにしろ放っておく事は出来ないか」
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
何かの手がかりがあるかもしれない以上、この場所に行ってみる他ない。
無論、罠である事も承知の上で。
「ウリエル、発進準備を。モビルスーツ隊も出撃準備を頼む」
「了解」
ヨハンの命令と共に艦内が慌ただしく動き出す。
この先に待っているかもしれない未知の敵にアオイも自然と力が籠っていく。
「中尉、いつも通りでいくぞ」
「はい。行きましょう」
スウェンの何気ない気遣いに感謝しながら、アオイは格納庫に繋がるエレベーターに乗り込んだ。
◇
宇宙に散乱するゴミ。
大抵が戦闘で破壊されたものであったり、事故で遭難した船であったりする訳だがそれらが減る気配はない。
必要になれば作られ、不要になれば捨てられる。
さらに散発的な戦闘により、破壊されたモビルスーツも増え続けていた。
勿論、各陣営ごとに不要なゴミの撤去作業は行われているものの、いかんせん数が多すぎた。
特にデブリベルトには撤去しきれない数のゴミが増え続け、未だに漂っているのだ。
此処、L4の端にあるゴミ捨て場もそんな人類の負債とも言うべき場所の一つである。
元々存在していた物に加え商工連合コロニー群開発のゴミが集積され、撤去される事無く放置されていた。
「周辺警戒を怠るな。レーダーは?」
「駄目です、ゴミが多すぎますよ」
周辺には戦艦やモビルスーツのみならず、コロニー建設の際に投棄された金属片などが残留している。
これではレーダーは当てにできない。
「モビルスーツ隊に周囲を探るように伝えてくれ。ただしくれぐれも慎重に頼む」
「了解」
奇襲を警戒しモビルスーツ隊はすでに出撃している。
しかし正体不明の機体についての手がかりは発見できないままであった。
「ゴミが多いな。これもコロニー建設の名残ですかね?」
「そうだろうな。ヤキン・ドゥーエ戦役が行われた頃に比べればコロニーの数もかなり増えた。こういったゴミ捨て場は宇宙の各所に存在している。デブリベルトのゴミも増大していると報告もあった」
「ハァ、何にしろこの視界の悪さは―――不味いですよ」
「ああ」
警戒しつつも、嫌な予感が止まらない。
そしてこういった予感というものは当たってしまうものである。
「大尉、あれを」
「コロニーか」
アオイとスウェンの目の前に現れたのは半壊したコロニーだった。
円筒の胴体が半ばから折れ、中身が剥き出しの状態になっている。
身を隠すには絶好ともいえる。
「大尉、俺が先行します」
「いや、その必要はないようだぞ」
「ッ!?」
コロニー内部から数機のモビルスーツが飛び出してくる。
フローレスダガーだ。
ウイングコンバットを背負った機体が迷いなくこちらに突っ込んでくる。
「今度はフローレスダガーかよ!」
ビームライフルを回避しながら、アオイとスウェンは左右に別れる。
「そちらは任せた」
「了解」
コロニー外壁を沿うように移動し出来るだけ敵を引き付けると、反撃とばかりに発射したビームライフルの一撃は容易くフローレスダガーを撃破した。
しかし次の瞬間、別方向からの強力なビームがアオイに襲い掛かる。
「ッ、狙撃!?」
機体を急加速させ砲撃を回避するも、次々とビームが押し寄せてくる。
どうやら三機以上が狙撃を行っているらしい。
「くっ、このゴミだらけの中じゃ!」
機動が制限されている所為で動き難くい。
デブリの陰に隠れ砲撃をやり過ごすと、ビームライフルよりも射程の長い武装を持ち替えた。
量産型高エネルギー収束ライフル『グランシーザ』である。
第一次統合戦争でのデータを基に量産化された武装であり、威力と射程を維持したままコスト削減に成功している。
その為にカートリッジ方式を採用しており、一カートリッジにつき弾数は五発となっている。
「量産型とはいえ収束ライフル、並みのビームライフルよりは射程は長い。後は」
敵の位置を掴むだけ。
アオイは先ほどの砲撃点と周辺の地図を重ね合わせて位置の予測を開始する。
「ゴミが邪魔だけど、おおよその位置はこの辺りか。でも連中だって止まってる訳じゃないだろう。……出たとこ勝負か」
時間を掛けてはいられないと判断したアオイは思いっきりペダルを踏み、勢いよくデブリの陰から飛び出す。
それを待ち構えていたとばかりに発射されるビーム砲。
「それは読んでた!」
操縦桿を押し込み、機体をさらに加速させてビームの一撃をやり過ごした。
だが矢継ぎ早に次の砲撃が撃ち込まれてくる。
「この!」
デブリを足場に無理やり、移動方向を変え砲撃の射線から逃れていく。
当然、そんな無茶な機動を続けていけば機体にもパイロットにも負担がかかる。
それでもアオイは動きを止めない。
捕捉されないよう、複雑な機動を取り続ける。
その結果、機体が悲鳴を上げるように警告音がコックピットに響き始めた。
「ピーピーとやかましい! イレイズだったらこのくらい何てことなかったぞ! しっかり動け!」
整備班が聞けば思い切り怒号が飛び交いそうな事を叫びながら加速し、同時に進行方向とは反対側へシールドを切り離す。
作った囮に敵の狙撃手は引っかかり、シールドを撃ち抜いた。
その隙に反対方向へ逃れたアオイは収束ライフルを構える。
ただ闇雲に逃げ回っていた訳ではない。
こちらも敵の位置を把握する為にデータを集めていたのだ。
「そこ!!」
トリガーを引くと同時に発射される砲撃。
強力な収束ライフルの一撃は散乱するデブリ諸共敵モビルスーツを消し飛ばした。
「位置は全部掴んだぞ」
残りは二機。
一機減った事で敵の砲撃による圧力は弱まった。
「この隙に前に出る!」
ビーム砲を紙一重で躱しながら、一気に距離を詰め、再び収束ライフルのトリガーを引く。
スナイパーを仕留めるべく、発射された一撃。
敵機もただ棒立ちという訳ではなく飛び上がり強烈な砲撃を回避して見せた。
だが遅い。
その間にアオイは距離を詰めている。
「ハアアア!」
腰から抜いたサーベルがフローレスダガーの腕ごとビーム砲の砲身を叩き切り、迫り出したブルートガングの刃が深々と腹部に突き刺さる。
「お前には話を聞かせてもらうぞ」
あえて爆発させなかった機体をデブリの陰に押し込むと、最後の一機を仕留めに向かう。
「後はお前だけ!」
正面から向かってくるビームをブルートガングで無理やり斬り払う。
当然、そんな無茶な代価は機体にそのまま帰ってくる。
ブルートガングは半ばから破壊され、腕の装甲もボロボロになってしまった。
それでもアオイはこの機を逃さずとばかりに、収束ライフルを発射する。
だがデブリに邪魔され直撃には至らない。
「これで狙いはつけにくくなっただろう!」
スラスターを全開、背後に回り込みビームサーベルを突き刺す。
避ける間もなく背中から斬り裂かれたフローレスダガーは爆散した。
「これで全部か。機体状態が悪い……結構、無茶させたな」
アデプトは全身から異常の反応が出ている。
脚部、スラスター、左腕。
特にこれらの部分が酷い状態だ。
これはまた整備班からどやされてしまう。
「ハァ、それより何か手がかりは」
慎重にコロニー内部へ機体を降下させていく。
だが手がかりのようなものは発見できない。
「やっぱり囮か何かだったのか―――ッ!?」
仕方なく破壊したフローレスダガーを回収しようとした時、上方から無数の光が降り注いでくる。
「この攻撃は!?」
フローレスダガーのシールドを奪い、ビーム砲を防御しながら後退するとアオイの目の前にあの機体が姿があった。
「ようやくお出ましか」
そこにはあの時遭遇した背中に特殊な装備を背負う機体がアオイを睥睨するように見つめていた。