同盟における宇宙の拠点は幾つか存在する。
軌道上に存在する『アメノミハシラ』
かつての地球連合の拠点だった宇宙要塞『エンリル』
数々の激戦の舞台ともなった最も世界に名の知れた宇宙ステーション『ヴァルハラ』
これらはそれぞれに防衛拠点としても高い能力と戦力を持っており、それが同盟の精強さを示している。
それは同盟内における不和が大きくなっている現状においても、変化はなかった。
理由は幾つかあるものの大きなものとして同盟がどれほど精強であろうとも、統合軍には量が、テタルトスにおいては質が劣っていると誰もが自覚している事だった。
昨今では大規模な武力衝突こそないものの、緊張感は未だに維持されており、士気はどの勢力よりも高いのである。
そんなヴァルハラの一室。
軍事関係者が使う執務室の一つで長めのプラチナブロンドの髪を持つ男が頭を抱えていた。
イザーク・ジュール。
『第一次統合戦争』ではグラオ・イーリス旗艦であるフォルセティの艦長を務め、アルテミス攻略戦における指揮官を任せられた人物である。
その際の功績が高く評価され現在ではグラオ・イーリスの司令官を命じられ、内情複雑化している軍内部を奔走する日々を送っていた。
「ふざけるな! 何故、こちらの人事を勝手に口出しした挙句に報告も事後承諾なんだ!」
「落ち着いてください、司令」
「俺は十分に落ち着いている!」
ヴィンゴルヴから送られてきたデータを見た瞬間に怒り心頭のイザークを副官がどうにか必死に宥めていた。
とはいえイザークの抑え役である副官からしても今回の件は怒るのも無理ないとは思う。
今回の件―――ウリエルの配属と任務及び正式な艦長の任命。
本来であればグラオ・イーリスの司令官であるイザークが任務や配属先の決定権を持っている。
人事に関しては上と協議の上に決定されるものではあるが、今回のように事前に何の協議も無く勝手に決められるというのは流石に看過できない。
「レフティ大佐には外宇宙用の任務が用意されていたというのに、勝手な事を。しかも今回の調査任務をウリエル単独で行わせるなど」
「上としてはそれで十分だと思っているのでは?」
「それが甘いと言うんだ」
イザークが素早くキーボードを叩くと報告が上がっていた正体不明機のデータが呼び出される。
「こんな物を作る奴らが何もしない筈がない。……急いで消さねばこの火種、取り返しのつかない事になるかもしれんぞ」
「それは分かりますが、上は例の式典の方に目を向けていますからね。それにカガリ様やアイラ様は同盟締結時の負債消しで精一杯のようですから。今のプラントは……その、あまり当てになりませんし」
「今の評議会議長は日和見だからな。カーライル前議長はアイラ様と婚約されてからは一切政治には干渉しないとしている。せめて後進が育つくらいまでは現場に居て貰いたかったが」
プラント前議長であるレヴァン・カーライルはアイラ・アルムフェルトと婚約し、すでに政治の世界から身を引いていた。
二人の結婚は同盟とプラントとの関係を強固にする為の政略結婚の意味合いも強かったが、それによって今までの遺恨による諍いはほぼ無くなっている。
それ自体が悪い事ではなかったのだが、問題は次の議長だった。
とにかく動きが遅いのだ。
事なかれ主義とでもいえばよいのか、積極的に動く事をせず、問題を避けたがる。
しかも他の議員達もかつてのメンバーからほぼ総入れ替えとなり、議長の方針に反論もしていないという。
これは『第一次統合戦争』においてやや強引にプラント、連合改革派と条約を結んだ影響だ。
かといってカガリやアイラに頼ろうとも二人はそう言った政治的、軍事的な緩みを正す為に奔走し、連絡が取れるような状況ではない。
つまりグラオ・イーリスの後ろ盾になってくれるような人物は非常に少ないのである。
そう言ったツケがこうして現場に回ってきているのだ。
「しかし現状をぼやいていても仕方ないかと」
「分かっている! とにかく現場が少しでも動き易くするのが俺達の仕事だ。まずはヴィンゴルヴの艦長を呼び出せ!」
「了解しました」
慌てて部屋を飛び出した副官の背中を見ながらイザークは深いため息をつく。
「全く、こうもままならないとはな。……さっさと戻って来い、そうでなくては手が足らんぞ……キラ、アスト」
机の上にある皆で映った写真を見ながら希望を込めて呟くと、席を立つ。
自分がやるべき仕事をする為に。
◇
頭上から容赦なく降り注ぐ無数のビーム。
絶え間ない砲撃を前にアオイは崩壊したコロニー内部を地面を這うようにして逃げ回っていた。
「くそ、絨毯爆撃かよ!」
見境のない砲撃の嵐。
機体を掠め、装甲を奪われる度に冷や汗を掻く。
それを誤魔化すように毒づき吐き捨てると悲鳴を上げるスラスターをさらに酷使し、建物を盾にして砲撃をやり過ごす。
「何とか接近しないと、今のままじゃ勝負にならない」
正直、戦況は不利だ。
先ほどまでのスナイパー達との戦闘でアオイの乗るAAAは限界に近い状態にまで追い込まれている。
さらに不味いのが強力な火器を持つ敵を前に頭上を取られている事だ。
相手にこちらの動きは丸見えな上に、あの背中からの砲撃で狙いたい放題。
明らかに分が悪い。
「チッ、ならば!」
砲撃のタイミングに合わせ機関砲とイーゲルシュテルンで建物を破壊。
その破片に紛れて、建物の陰に隠れると素早く仕込みを済ませる。
「これで!」
破片を蹴り上げ、敵の注意を引きながら収束ライフルの引き金を引くと銃口から発射されたビームが正体不明の機体へ向かっていく。
もちろん前回の戦闘で敵がゲシュマイディッヒパンツァーを使用した事は分かっている。
だが通用しなくとも動きは止められる筈だと、隙に見逃さないように前に出た。
攻撃が当たると思われた時、正体不明機の背中から小型の砲塔が射出され、フィールドのようなものを作り出すと収束ライフルの攻撃が別方向へ曲がってしまった。
「ッ、あの時ゲシュマイディッヒパンツァーを展開したのはあの機体自体からではなくドラグーンユニットの方か!」
ゲシュマイディッヒパンツァーがある以上、今の武装では遠距離からの攻撃は無意味。
影響を受けない実体弾の武装はグレネード・ランチャーと機関砲のみ。
しかし射程が足りない。
ビームライフルで撃ち落とそうとしても、今の機体状態では難しい。
ならば―――
「活路が接近戦しかない事は承知済みだ!」
スラスター全開で加速しながら、背中の装備に設置された予備のビームライフルと共に再び収束ライフルを発射する。
当然、ゲシュマイディッヒパンツァーによって曲げられてしまうが、それは想定済み。
狙いは曲げられた先。
歪曲されたビームの光は周囲に撒かれた残骸へと吸い込まれ、同時に凄まじい爆発を発生させた。
これが先ほどの仕込みだ。
蹴り上げた残骸にグレネード・ランチャーの弾頭を仕込んで敵機の周りに浮かべていたのだ。
流石に正体不明の機体も虚を突かれたとばかりに体勢を崩す。
アオイはさらに機関砲でグレネードランチャーを撃ち抜き、生じた爆発に紛れてビームサーベルを振り抜いた。
「ハアアアア!!!」
光刃が避ける間もなかった敵機の胸部を抉り、さらなる一撃で肩の装甲も斬り飛ばす。
「このまま戦闘不能にして―――ッ!?」
狙うはスラスター。
それをを破壊すれば敵は動けなくなる。
だが敵を戦闘不能にすべく動いた筈のアオイは次の瞬間、瞠目する。
続けざまにサーベルを振るうと同時にAAAの手首の先から前が無くなっていたのだ。
「なっ!?」
いつの間にかサーベルを構えた敵機がAAAの手首を切り落としたのである。
突如として跳ね上がった敵機の反応に危機感を抱いたアオイは咄嗟に機体を下がらせる。
しかし敵はそれより早くAAAの腹部に蹴りを入れてきた。
「この動き!?」
蹴り落とされた衝撃に呻きながらシールドを掲げ、突撃してきた敵機からの斬撃を受け止める。
だが、それすらも取るに足らないとばかりに斬り上げられた一撃がAAAの装甲を抉った。
「ぐっ、速い! やっぱりこれは!?」
戦闘中に跳ね上がる反応。
別人のような動き。
これらにはアオイも覚えがある。
『SEED』に間違いない。
「だとしても!」
コックピットへと突き出された一撃が躱す為、スラスターを逆噴射させ機体を沈みこませる。
その反応が功を奏し斬撃は外れ、頭部を抉るに止められた。
しかし追い込まれている事に変わりはない。
もはやアオイのAAAは死に体だ。
コックピットには警告音が鳴り続けてりるし、計器を見ても機体全身から異常ありと示している。
さらに先の斬撃の影響でメインカメラも破損、映像の乱れが酷い。
続けざまに振るわれる攻撃をこれでは防ぐ事が出来なくなるのも時間の問題だ。
「このままじゃ、不味い」
斬撃を受け流しコロニーの破壊された地面すれすれを逃げ続けるAAAを敵は砲撃を繰り出しながら追撃してくる。
アオイは素早く周囲を見渡し、戦略を決めると覚悟を決めるように息を吐いた。
「賭けだな。あまり好きじゃないんだけど」
移動しながら収束ライフルの使用済みカートリッジを交換する。
そして残りのグレネードランチャーと機関砲を全弾撃ち込みながら、宇宙港らしき場所へと逃げ込んだ。
港の中には民間用のシャトルなどが散乱し酷い状態ではある。
しかしそれはアオイにとって好都合。
「ハァ、ハァ、残った武装はビームライフル二、収束ライフル一、サーベル一か」
ご丁寧に敵機はこちらを追って宇宙港の中に突入してくる。
どうしても自分の手でアオイを仕留めたいらしい。
だが、それこそがこちらの狙い。
「行け!」
サーベルを掲げこちらに向かってくる敵に収束ライフルを発射する。
しかしその攻撃は敵が展開したビームシールドによって防御されてしまった。
だが―――
「賭けは俺の勝ちだ!」
スラスター全開で突撃してきた敵の突きをシールドで受け止める。
だが勢いのついた一撃を容易く止める事も出来ず、シールドは融解、貫通してAAAの肩を突き破った。
「ぐっ、この!!」
その瞬間を狙いアオイは敵機の腕を掴み取り、力任せに懐へ引っ張り込んだ。
「これで動けまい!」
しかし敵もさるもの。
間合いを詰めた事を好機と捉えたのか空いた左腕でサーベルを抜き、振り下ろそうとしてくる。
「まだまだ!!」
手が無くなったとはいえ腕は動く。
アオイは斬り裂かれた右腕を敵の腕に激突させ、斬撃を押し止めた。
力任せに押し込み合う二機は完全に膠着状態となり動けない。
損傷している分、アオイの方が不利、長くこの状態は続けられない。
しかしアオイもそれは分かっている。
何時までも睨みあうつもりは毛頭なかった。
「言っただろ、賭けは俺の勝ちだってな!」
背中の装備『ジラント』に装着されているビームライフルの銃口を正体不明機に向けた。
「この狭い空間で接近戦を挑んできた時点でお前の負けだったんだ!」
どうにか逃れようとする敵機に銃口を向け、発射。
放出されたビームが正体不明機を捉え、破壊された腕部が爆発する。
二機のモビルスーツは閃光に包まれ、宇宙港は崩れ落ちた。
◇
ここまでの戦況はグラオ・イーリス側が優勢で状況が事が運んでいた。
しかしモニターを見るヨハンの表情は固い。
何か腑に落ちないという顔だ。
「どうしました、艦長?」
「おかしいと思わないか、大佐? 確かに敵は此処にいた。だが新型も一機だけで他は型落ちの既存機ばかり。目ぼしい施設や戦艦らしいものもない」
「確かに。敵の数もさほど大きくはない。これはやはり誘いだったと考えるべきでしょうね」
「ああ。だが目的が見えない。単純にこちらを奇襲したかっただけか、それとも他に―――」
その時、ウリエルの前方で爆発が起き、宇宙港が崩れ落ちていく。
あそこら辺ではアオイが新型機と交戦していた筈。
ヨハンが味方機にアオイ機の支援を要請する為、オペレーターに声を掛けようとするとネオがすでにシートから飛び出していた。
「私が出ます」
「……頼む」
確かにネオが向かった方が確実。
こちらの思考を読むような行動の素早さに頼もしさを感じながら、ヨハンは少しでも情報を集める為、モニターを注視し始めた。
◇
「クハァ、何とかなったか」
崩れ落ちた宇宙港からにどうにか逃れ出たアオイはどうにか上手くいった事に安堵していた。
あの狭い限定された場所ではドラグーンユニットは展開できない。
つまりゲシュマイディッヒパンツァーは使えないという事。
アオイは敵の防御を封じると同時に自身の間合いに誘い込んだのである。
しかしこれは賭け的な要素があった。
敵が誘いに乗らず冷静に遠距離からの砲撃戦を選んでくる可能性もあったからだ。
しかし同時に敵が誘いに乗ってくるだろうとも思っていた。
根拠は『SEED』
アオイも限定的とはいえ『SEED』を使えるからこそ分かる事。
アレを解放すると慣れない内は感情的になり、冷静な判断力に欠けるという弱点があった。
それにあのパイロットはまだ戦闘に慣れていない気がする。
頭上の優位を捨て安易に近接戦を挑んできた所などに、戦闘経験の不足が如実に現れていた。
「とにかく一度ウリエルに―――ッ!?」
ウリエルに連絡を入れようとした瞬間、眼前の瓦礫がビームにより吹き飛ばされる。
理由は考えるまでもない。
煙が晴れた後に姿を見せたのはあの正体不明機。
ビームライフルによって撃ち抜かれた右腕は完全に破壊され、爆発によって所々装甲も剥げている。
しかしアオイのAAAに比べれば、その損傷も可愛いもの。
未だ戦闘継続可能な状態なのは、明らかだった。
「くそ、あれで動きを止められたと思ったけど甘かったか。こっちの機体は―――」
鹵獲する為、戦闘不能に止めようとしたのが仇になった。
満身創痍とはまさにこの事。
スラスターの半分は死んでいるし、武装も大半が破損。
この状況で攻撃を数回避けられれば御の字といったところだろう。
「向こうはやる気満々って感じだな。舐めてた相手に此処までやられて怒り心頭ってところか」
パイロットの怒りを示すようにモノアイが爛々と輝く。
敵機は残った腕でサーベルを構えると殺意を漲らせてAAAに突撃してきた。
残ったビームライフルで牽制するが物ともしない。
いつの間にか射出した砲塔によって形成されたフィールドでビームを歪曲されてしまった。
そして間合いに入られ、光刃が振り下ろされる。
「俺はまだ死ねないんだよ!」
アオイは切り札を切った。
『SEED』の発動である。
感覚の拡張。
反応速度の向上。
すべてが通常とは異なる景色をアオイに見せる。
「オオオオオ!!」
生きているスラスターを全投入。
無理やり姿勢を変え、斬撃をギリギリのタイミングで回避する。
同時に敵機の背後から体当たりすると敵機をデブリへ叩きつけた。
「これでサーベルも砲撃も使えないだろう!」
もはや鹵獲するなんて事は言っていられない。
ここで撃墜する。
ビームライフルを敵の背後に突きつけトリガーに指を掛けた瞬間、悪寒のようなものが全身を駆け巡った。
これが何なのか正確には分からない。
しかし『SEED』によって感覚が研ぎ澄まされていたアオイにはそれが何かを知らせるようなものであると本能的に理解できた。
咄嗟に動こうとするが、機体は満足に動かない。
それでも、もがくように敵から僅かに離れると四方から発せられたビームがAAAの腕と足、そして背中のスラスターをもぎ取っていった。
「ドラグーン!?」
何という迂闊。
あの砲塔はゲシュマイディッヒパンツァーを展開するだけでなく、攻撃にも転用できるものだったのだ。
ゲシュマイディッヒパンツァーを展開できるという特性に気を取られすぎて、そこを失念していた。
もはや打つ手なし。
機体は碌に動かず、アオイに待つのは死と言う結果だけ。
「ッ!?」
銃口を睨みつけ、訪れる結末を前に操縦桿に力が籠る。
しかしそこへ一機のモビルスーツが介入してきた。
飛行形態からモビルスーツへ変形するとAAAと敵機の間に割って入る。
MVFーM17A 『オウカ』
オーブで開発された同盟の可変型最新鋭主力量産機。
『ユニウス戦役』にて開発された高性能機『オウカ』をベースに『第一次統合戦争』にて実戦投入された『スオウ』『ヴィヒター』などのデータを戦闘データを反映させた事により、高い性能を持たせながらも量産化に成功。
現場のエース級や指揮官などの要求に応えうる機体に仕上がっている。
「間に合ったようだな」
「大佐!?」
「中尉は下がっていろ、こいつは私がやる」
新たに姿を見せた機体に敵も警戒しすぐにライフルを向け、ネオもそれに応えるようにビームライフルを発射した。
そしてビームが交錯すると同時に二機が動く。
敵は片腕を失っていようとも怯む事無く、果敢に攻めに打って出た。
ドラグーンを射出、さらに腹部、背部のビーム砲を発射する。
オウカを中心に空間を覆うようなビームの檻だ。
しかもSEEDを発動させているからか、精度も針の穴を通すように正確で神懸っていた。
逃げ場はなく敵は勝利を確信したに違いない。
しかしネオはすべての射線を見切るように最小限の動きだけで容易く回避、同時に動き回る砲塔をビームライフルで狙撃して、撃ち落とした。
流石に驚いたのか敵機は動きを止め、隙を見せた。
そこを見逃すネオではない。
敵の砲撃を回避しながら、間合いを詰めるとビームサーベルを一閃。
鮮やかな一撃は敵機の両足を切り捨て、逆手に持ち替えたサーベルの刃が頭部を串刺しにする。
ああなってはもうどうにもならないだろう。
両足切断と共にスラスターは損傷しており、メインカメラが潰された事でドラグーンのコントロールにも深刻な影響が出ている筈。
戦闘不能と判断して良いだろう。
「流石、大佐。助かりました」
「いや、中尉こそ慣れない機体で良く持たせてくれた。怪我はないか?」
「はい。機体はボロボロなんで整備班から怒鳴られそうですけどね」
「それは仕方がない。覚悟しておくんだな。それよりもこの機体を回収する。それで情報も得られる筈だ」
アンカーを射出し、正体不明の機体を回収しようと手を伸ばす。
これで今動いている世界の影を掴む手がかりを得る事が出来る。
だがそれをさせまいと再び乱入者が現れる。
「大佐、上です!」
「ッ!?」
突如として現れ高速で近づいてきたのはモビルスーツよりも明らかに大きな物体。
「モビルアーマー!?」
その形状は連合で開発されてきたものとは明らかに違う。
モビルアーマーらしきものに装備された砲門か一斉に解放され、アオイとネオに狙いを付けた。
「くっ」
「中尉!?」
砲撃からアオイを守るようにシールドを掲げたネオが射線上に割って入る。
「いけ!」
オウカの背中に装着された小型の砲塔が展開され、二機を包み込むようにフィールドが展開。
それと同時に開始された周辺を薙ぎ払う凄まじい砲撃にオウカはAAAを守る為に身動き一つ出来ないまま耐えるしかない。
その間にモビルアーマーは損傷した敵機を回収し、戦線を離脱した。
「逃がすものか!」
オウカが飛行形態に変形するとモビルアーマーに劣らない速度で追撃を開始。
しかし追撃するオウカの進路を阻むように、突如小さな爆発が機体全体に巻き起こる。
「ぐぅ、機雷だと!?」
敵が離脱する時に展開したのか進路上には無数の機雷が散布されていた。
「チッ」
無理に突き進めば、機体を痛めてしまう。
そうなれば追撃どころではない。
ネオは速度を落としモビルスーツ形態へと変形、機雷源から脱出を図る。
「大佐!」
「私は大丈夫だが」
すでに敵は空域から離脱しておりもう影すら見えなくなっていた。
「してやられた。あんなものを伏せていたとは」
「あいつらは一体?」
「さあ。だが今回私達は奴らの掌で良いように遊ばれただけなのは確かだ。腹立たしいが」
アオイも悔しさで操縦桿を力任せに殴りつけた。
油断していた訳じゃない。
ただ相手がこちらの一枚上をいっていた。
こちらの完全な敗北である。
「……今回生き延びられたのは運が良かったからだ」
慣れない機体だったなんてただの言い訳だ。
「でも次はこうはいかないぞ」
雪辱を誓いアオイはネオと共にウリエルへの途につく。
そしてある意味予想通りウリエルへ帰還したアオイに待っていたのは整備班からの悲鳴にも似た怒号の嵐だった。