資源衛星『メークリウス』
最近、各勢力の間で話題に上るこの資源衛星は外宇宙用の窓口となるべく開発されたものである。
元々は同盟が火星軌道以遠領域の探査、開発を目的に設立された機関『D.S.S.D』と共に開発を行っていた。
しかし統合戦争の影響で途中で放棄に近い形で開発が中断。
戦争終結後に開発再開の話が持ち上がるものの、戦争による財政悪化の影響で目途が経たないまま計画中止が決定された。
それを惜しいとして待ったを掛けたのがテタルトスだった。
外宇宙を目指すテタルトスとしては足掛かりが必要。
独自で開発は進めていても、コストを考えれば安いに越したことは無い。
そこで同盟にメークリウスの開発にテタルトスも参加、完成後には共同使用させて欲しいと交渉を持ちかけてきたのである。
勿論、それを地球圏統合政府も黙っている筈はなく、商工連合に仲介される形で半ば強引に計画に参加。
結果、資源衛星『メークリウス』は各勢力共同の外宇宙進出の窓口となったのである。
ただすべてが上手く解決した訳ではない。
管理の問題、使用優先権の問題など未だに解決していない揉め事は山ほどある。
だが問題は後々解決していけば良いし、何よりも頻発するテロに屈しないという意思を示す為今回、完成式典を催す事になったのだ。
それ故に各勢力の議員や政治家達は万全の態勢で挑もうと頻繁に会議や会談を行っていた。
しかし順調だった筈の式典開催は此処に来て重大な問題に直面していた。
《世界を生きる人々よ! 我々の言葉を聞くがいい! 私の名はウォーレン・マクベイン! 今は亡きファウスト・ヴェルンシュタインの意思を継ぐ者である!!》
モニターの中で演説を行っているマクベインの姿に誰もが目を奪われる。
《生前ファウスト司令は常に世界の在り様と人類の行く末を案じておられた。かつての宣言を覚えている者も多いだろう。しかし現実はどうか?》
《各勢力は言わずもがな。人類を導く役目を担った筈の統合政府は未だ旧連合と変わらず、勢力争いを続けている。今生きる者たちすべてを無視してだ。そして今度はそれを外宇宙にまで持ち出そうとしている始末!》
《何一つ変わっていない! この歪んだ世界で生きる者ならわかる筈だ! 故に我らが立ち上がる! この欺瞞に満ちた現状を撃ち砕く為に!》
《我々は『マクベイン・エクスキューター』、人類を新たなステージへ導く為の執行者である!》
突如流れたこの放送は当然の如く、大きな波紋となって世界中を駆け巡った。
溜まった鬱憤を晴らすかのような外宇宙進出を反対する抗議活動。
頻発していたテロの拡大。
この影響を受けた経済の打撃。
一連の騒動によってこの先開催が予定されている『メークリウス』完成式典にも多大な影響をもたらす事は容易に想像できた。
その対応策を話し合う為、各勢力の重鎮たちは極秘に集まり連日会議を開いていた。
「敵―――『マクベイン・エクスキューター』と名乗るテロリスト達は統合軍の拠点である『エレボス』を占拠。配備されていたモビルスーツ、戦艦ともに奪取されたと思われます」
「全くこの時期にこのような連中が姿を見せるとは。これはそちらの怠慢ではないのかな、イスラフィール代表」
会議場でウォーレン・マクベインの演説の映像を見ながら、テタルトスの重役が正面に座る男、統合政府の実質的トップであるクレメンス・イスラフィールに嫌味を込めて投げかける。
「否定はできん。こういった自体にならぬように目は光らせていたのだがな」
しかしイスラフィールは特に動じた様子もなく、淡々と告げる。
それが不気味と言えば不気味だった。
そもそも今回の件で最も面目を潰されたのは統合政府だ。
自軍からの離反者を出し、挙句クーデターを阻止しきれなかった。
これは誰の目から見ても統合の失態である。
にも関わらず焦った様子もないのは胆力があるからなのか、それとも即座に終息させる余裕でもあるのか。
「こうなった以上は迅速に動かねば取り返しのつかない事になる。現に今までテロを起こしていた連中も呼応している」
「分っている。統合軍は全力を持って奴らを排除するつもりだ」
「そう簡単にはいかないでしょう。各国の治安維持で統合は部隊を派遣しているのでは? それに肝心な『メークリウス』の防衛を蔑ろにされても困る」
『メークリウス』の防衛に関してはアムステルダムと同じ形がとられている。
すなわち各勢力の戦力が集まり、合同で防衛を行うというものだ。
だがここでテタルトスが『マクベイン・エクスキューター』排除の為に部隊を動かせば『メークリウス』防衛に障害が出る恐れがあった。
いや、むしろ敵はそれを狙っているのかもしれない。
それを見越していたのかイスラフィールの隣に座る小柄の男が提案があると切り出した。
「此処は少数精鋭で敵の本拠地を叩くというのはどうでしょう?」
「規模も、戦力も不明な相手に少数を派遣しろと!? 派遣した者達に犬死しろというのか!」
「犬死ではありません。成功すればよい。仮に失敗しても敵の目的を図る材料には出来ましょう」
イスラフィールと共に出席している小柄の男、統合政府の高官の物言いに怒りを隠せないのは同盟の代表として出席していたカガリだ。
「何も同盟に出撃せよなどとは言っておりません。元々マクベインは我々統合の所属。誰に言われるまでもなく我らの手で処理いたしますとも」
「ッ、待っていただきたい。もはや統合のみの問題ではありません。テタルトスとしても今回の問題は無視できないもの。それに敵の本拠地とされている「エレボス」に最も近いのは私達だ。安全保障の問題からしても我々が出ます」
「では合同と形でいかがです?」
話を聞いていたカガリは心の中で歯噛みする。
この流れは上手くない。
統合、テタルトス、二国が自ら出撃しようという中で同盟のみが何もしないというのは今後の立場を考えると不味い。
カガリとしてはこれ以上軍内部が混乱する前に刷新を行ってから、次の行動に移りたかった。
だがこの流れでは同盟も部隊派兵を行わざる得ない。
この流れを作り出した統合の高官はかなり食えない奴のようだ。
そして代表の筈のイスラフィールは事の成り行きを見届けているだけで、何も話そうとはしない。
また何か考えているのか。
それとも今回の件も含め、すべて計算づくなのか。
どちらにせよ動くしかない。
イザークからはまた苦情が上がるかもしれないが、この機を逃せば世界の信用を失い羽目になる。
それだけは避けなければならない。
「分かった。では我が方はグラオ・イーリスに出撃を命じよう。彼らは精鋭中の精鋭だ。それで問題はあるまい」
「おお、あのグラオ・イーリスを! 同盟も本気という事で、それは朗報ですな。是非お願いいたしますよ」
「……狸め」
やや大げさな演技をする高官を小声で毒づきながら、カガリは今後の詰めの話に耳を傾けた。
◇
「よろしかったのですか、これで?」
会議を終え部屋を後にしたイスラフィールに高官が問いかけた。
今回の会議の結果、各勢力で選りすぐった精鋭でエレボスに奇襲を仕掛け、一気に叩くという作戦が決定した。
それもすべてイスラフィールの指示で行ったもの。
本音でいえば統合のみで『マクベイン・エクスキューター』を討ち取った方が良いのではと思っていた。
力を見せつければ今後の政策、外交も上手くいきやすくなる。
「構わない。むしろ都合が良い展開になった。……お前の言いたい事は分かる。だが今は治安維持が最優先。テロリストの殲滅はテタルトスや同盟に任せておけばいい」
「では部隊の派遣を行わないのですか?」
「部隊は派兵するさ。しかし戦力は温存させてもらう。囮の可能性も十分にある。今後を考えればここで無駄に戦力を失う訳にはいかない」
「つまり派兵はするが、本気で敵の本拠地を攻める事はしないと。それを同盟とテタルトスが納得するでしょうか?」
「それを悟らせるつもりはない。それに奴らはエレボスを叩かざる得ないさ。テタルトスは地球圏の争いには消極的だが、本国に近い「エレボス」は絶対に放置できない。同盟も此処で動かなければ国際的な信用を失う上に軍内部の混乱の噂、それが本当なのだと勘ぐられかねない。真偽はどうあれそれだけは避けたい筈」
「なるほど」
会議の始まる前に此処まで考えていたイスラフィールに感服する。
やはりこの男は何処までも恐ろしい。
今回のマクベインの反乱についても何処まで把握しているのか。
「ウラノス要塞に駐留している部隊に出撃命令を出せ。ただし開発中の新型は伏せろ」
「ハッ!」
改めてイスラフィールに心酔しながら、高官は頭を垂れた。
◇
『マクベイン・エクスキューター』と呼ばれるテロリストの決起。
これに一番危機感を抱いたのはテタルトスであっただろう。
イスラフィールの推測通り、『マクベインエクスキューター』の本拠地と目された場所は月本国に近い位置にある。
これでは地球と月を行き来する交易船や旅客機、輸送船などが使用する航路の安全が保証できない。
さらにこんな近い位置にいるテロリストを放置しているなど、国家の威信に関わる事。
故に早急に排除しようと考えるのは当然の結果であった。
「ほら、出撃準備急げ!」
「パイロットは機体のチェックを忘れるな!」
出撃前の格納庫というのはメカニックやパイロットたちで溢れかえる。
そこはもう一つの戦場といっても過言ではないだろう。
怒声が溢れかえる慌ただしさ中、一人の女性が護衛艦に乗り込もうとしていた。
「セレネ・ディノ大尉、君が何故ここに居る?」
女性―――セレネ・ディノを呼び止めたのはパイロットスーツに身を包んだヴィルフリートだ。
困惑した表情を隠しもせず、問いかける。
「クアドラード中佐。実は今回、ヴィクトリアさんと護衛艦のオペレーターとして乗船する事になったんです」
「なっ、ランゲルトさんも!? 君も彼女も後方勤務だった筈だ」
「ええ。実は『メークリウス』の方にも人員を割いている所為か、人手が足りないそうなんです」
「しかし慣れている君はともかく碌な訓練も受けていないランゲルトさんをいきなり戦場に向かわせるのは」
ヴィルフリートの懸念は最もなのだが、セレネ的にはそれが面白くなかったらしい。
笑顔のまま顔を引きつらせて、ヴィルフリートに詰め寄った。
「クアドラード中佐、私はともかくって何か含みを感じますけど」
「い、いや他意はないんだ。別に君が屈強な戦士だなんて全く思っていないとも」
「それ、言ってるのも同然なんですけど。あんまり変な事言ってると奥さんに言いつけますよ」
「勘弁してくれ」
降参だと両手を上げるヴィルフリートにセレネは楽しそうに笑みを浮かべる。
「冗談ですよ。それにヴィクトリアさん一応訓練も受けてるんですよ。しかもかなり優秀です」
「そうなのか」
「はい。戦場に出る事になったと伝えても落ち着いていましたし」
そこでヴィルフリートに初めて疑問が生じる。
いくら何でも初めて戦場に向かう者が落ち着いているという事があるだろうか?
配置を見ても戦場の後方に配置される戦艦ではあるし、まだ実感がないという事かもしれない。
ヴィクトリアの素性はすでに調べが付いているという事ではあるが、記憶がなく怪我をする前はどこに居たのかも、生まれた双子の娘の父親も不明。
妊婦だった事を考えると流石にスパイというのはあるまいが。
「どうしたんです?」
「いや、何でもない。ディノ大尉、後方支援は重要な役目だ。よろしく頼む」
「了解です」
ヴィルフリートは余計な疑問を棚上げすると、自身の隊へと足を向ける。
余計な事を考えている余裕はない。
何故ならば、これから向かうエレボスにはヴィルフリートにとっても因縁深い相手が待っているのだから。
◇
その命令を受けたヨハンはあまりに予想通りの展開に頭を抱えたくなる衝動を抑えきれなかった。
「我々グラオ・イーリスだけで敵の本拠地を攻め落とせとおっしゃる訳ですか、ジュール司令」
《気持ちは分かる。命令を受けた時は俺も同じ気分だった。しかし今回は各勢力との合同作戦でもある。拒否はできん》
「拒否権なんて初めからないでしょうに。上層部は我々に功を競って討ち死にしろと? 本来そんな曲解をしたくはありませんが、そうとしか受け取れませんよ」
送られてきた作戦概要に思わずそう吐き捨ててしまった。
襲撃前に統合、テタルトス、同盟の戦艦から同時に陽電子砲で砲撃を行い、敵が混乱した所に少数精鋭で三方向から襲撃する。
だが、問題は数だ。
グラオ・イーリスから出撃するのはウリエルを含めた二隻の戦艦のみ。
しかもその艦はあくまで補佐を主任務としている為、実質的な戦闘はウリエル単艦で行う事になる。
あり得ない。
《今、動けるのがウリエルしかいないんだ、仕方ないだろう。勿論すぐにでも他の部隊を回すつもりではあるがな、上から押し付けられた任務や例の所属不明機の調査の所為ですぐに動ける部隊は少ない。他は『メークリウス』の件で動かせん》
「普段嫌ってるくせにいざという時は色々押し付けてきますからね。ハァ、それを見越して動いているのなら、ウォーレン・マクベインは大したものですよ。一発殴りたくなる」
《ああ、存分に殴ってやれ。ついでに俺の分も一発頼む。とにかく出来るだけ早く増援の手配はする。開発中の新型も完成次第ウリエルに配備されるように念押ししておいたから安心しろ。今回の作戦は他の連中もいるから上手く立ち回れば被害も少なくて済む筈だ。レフティ艦長、負担が大きくて済まんが頼む》
「了解しました」
イザークからの通信が切れると同時にヨハンは抑えきれないため息を漏らした。
「とはいえそう上手くいくかな」
砲撃による拠点破壊と少数精鋭による奇襲攻撃。
作戦自体は悪いものではない。
しかしこれをウォーレン・マクベインが予測していないとはとても思えないのだ。
『マクベイン・エクスキューター』の規模がどの程度かはまだ判明していない。
だがあんな放送を行えば当然、各勢力を敵に回す事は誰にでもわかる筈。
真正面から戦えば勝ち目がないのが分からない程、ウォーレン・マクベインという男が節穴には見えない。
「もう一つ気になるのが、あの所属不明の新型との関連だな」
他のグラオ・イーリスの部隊も調査を行っているとは言っていたが、ヨハンの勘はあれらの機体と『マクベイン・エクスキューター』は関係があると告げている。
いや、此処までの経緯を考えても無関係な筈はない。
「という事はこの作戦中にも必ず出てくる筈だ。モビルスーツ隊にも注意を促しておかないとな」
同じ轍は踏めない。
不安要素はまだあるが、それでもやらねばならないのだから。
◇
アオイはいつの間にか船の甲板の上に立っていた。
広がる海。
透き通る青空。
どこかで見覚えがある。
此処は地球連合軍の航空母艦J・P・ジョーンズの甲板の上だ。
「何やってんだよ、アオイ」
「え?」
振り向いた先にいたのは懐かしい人物。
大事な仲間達。
「アウル……スティング」
バスケットボールを片手にこちらを見ていた。
「どうした、そんな抜けた顔して?」
「アオイは何時だって抜けた顔だろ」
「だな」
二人がこちらを見て楽しそうに笑っていた。
これは夢だ。
分かっている。
それでも、泣き出しそうになるのを堪える事が出来ない。
「アオイ、後は頼むぜ」
パスされたボールを咄嗟に受け取る。
「……ああ。分かってるよ」
彼らから託されたものがある。
だから―――
「アウル、スティング!」
どんなに手を伸ばしても、それが届くことは無い。
そのまま二人は笑ってアオイの元から去っていく。
「待ってくれ、俺は!!」
二人の背中に手を伸ばした所で飛び起きるように目を覚ました。
「ハァ、ハァ」
目の前にはデータが表示された所で止まっている机の上の端末の画面がある。
どうやら開発中の新型機の概要説明を見ていてそのまま眠ってしまったらしい。
「ハァ、何で今頃あんな夢を」
二人が死んだ直後は確かにあんな夢を見る事は度々あった。
しかし最近は夢自体見る事がめっきり減っていたのだが。
何かの予兆なのか。
そんな風に考えた自分を一笑に付すとさっさと片付けを始める。
「最近、色々あったし疲れてるのかな……あ、そろそろ大尉と打ち合わせの時間だし、行くか」
机に飾られている皆で映った写真。
一瞬だけそれに目を向けるとアオイはもう一度、その誓いを口にする。
「大丈夫だ、アウル、スティング。俺が守るからさ」
死後の世界なんてものがあるかは知らないが、もしかしたら気を抜くなと二人が警告してくれたのかもしれない。
だとしたらこっちもこれ以上情けない姿は見せられない。
「よし!」
気合いを入れ、先に逝った仲間達に笑みを浮かべるとアオイは足早に格納庫に向かった。
格納庫ではいつも以上の怒声と喧噪が待ち構えていた。
エレボス攻略準備の為に整備班はいつも以上に忙しいようだ。
Mk-Ⅱの状態を確認したかったが、後回しにしてスウェンと合流する。
「お待たせしました」
「いや、時間通りだ。では早速は始めるか」
「了解です」
端末の画面に映るモビルスーツ。
所属不明の新型機であり、アオイを追い詰めたパイロットの搭乗する機体。
格納庫でその性能を検証していたアオイとスウェンは改めてこの機体の厄介さに舌を巻いていた。
「厄介だな」
「ええ。従来の機体とは火力が違いますよ。しかもゲシュマイディッヒパンツァーやドラグーン装備まであるときてる」
アオイがボロボロの機体でありながら、あそこまで奮戦できたのはパイロットの経験不足もあるが、それ以上にドラグーンの性能をフルに生かしきれないデブリの中だったからだ。
恐らくあの機体の本領はまだまだあんなものではない。
その火力を生かした砲撃戦に徹すればフリーダムとも遜色ない。
並みのモビルスーツは近寄る事も難しいだろう。
「かと言って接近戦が弱い訳じゃない」
「だろうな。中尉の話では敵のパイロットはSEED持ちなのだろう?」
「ええ。しかもこの戦闘で痛い目に遭いましたからね。次はこう甘くない筈です」
ネオとの戦闘で辛酸を舐めさせられたあのパイロットは確実に強くなっている。
出来ればこれ以上の強敵となる前に仕留めたい所だ。
「まあそんなに甘くないだろうけど」
「アオイ、ちょっと来いよ!」
「班長?」
整備班長に呼ばれ、ついて行くとそこには生まれ変わった愛機の姿があった。
『イレイズガンダムMk-Ⅱ』
アオイと共に戦場を駆けた機体が新たな姿で立っている。
生まれ変わったといっても細かい部分に変化はあるが外見はそのままだ。
「直ったんですか?」
「苦労したけどな。外見はまんまだけど中身はほぼAAAのパーツと交換したよ。後はお前に合わせて調整するだけだ」
どうやらエレボス攻略に間に合わせる為、かなり急ピッチで進めてくれたようだ。
感謝しなければならないだろう。
間に合わなければアオイは出撃すらできず、ウリエルで待機になっていただろうから。
早速、コックピットに飛び乗りOSを立ち上げる。
「これってW.S.システム?」
「おう、新型搭載予定のシステムをこっちにも載せておいた。これで新型に乗り換えても違和感はない筈だぜ」
「ありがとうございます」
コックピットを覗き込む班長に礼を言いながら操縦桿を握り、感触を確かめる。
この駆動音。
この手に馴染む感触。
「やっぱりいいね」
「わかんねぇなぁ。AAAと殆ど同じだろうによ。これがメカニックとパイロットの違いなのかね」
「どうでしょう」
「お前、開発中の新型に乗ってもこいつが良かったとか言い出すなよ」
「それはないですよ。向こうの新型にだって思い入れはありますし。それでもこいつは特別かもしれないですけど」
懐かしい相棒の感覚を思い出しながら、昔との変化を確かめつつ調整していく。
「先に言っとくがこいつは急場しのぎの機体だ。新型が完成するまでのな。だから今度壊れたらどうにもなんねぇぞ」
「分ってます。大切に使いますよ」
もう戦闘は間近に迫っている。
機体のVPS装甲を展開、白く染まったガンダムを見上げながらアオイは決戦に向けて準備を進めていった。