思いついたネタの短編集   作:綾宮琴葉

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 短編集のため、タグはこちらに表記しております。
 タグ:逆行,独白,ギャグ,綾瀬夕映

 この作品は去年の八月頃にブログで公開した短編に少し手を加えたものです。現在はブログごと削除しています。


【一発ネタ】逆行夕映さんのおかしな冒険

 今日も良い天気ですね。こんな一日の始まりはラジオ体操からに限ります。ババくさいという人はどなたでしょうか。表に出なさいビリビリの刑にするですよ。さて今日もおじい様と一緒にラジオ体操です。私のおじい様は哲学者であり研究者であり良き師でもあります。

 もっとも、後数年でお亡くなりになる事でしょう。それを変える事をおじい様は望むでしょうか? 恐らく否。天寿と言うものです。例え出来たとしても数年から十数年。若返り薬でもあれば良いのでしょうが私の”知識”ではそこまでのものはありません。

 さて自己紹介が遅れましたが、私は綾瀬夕映。どこにでもいる小学生です。え、そんな考え方をする小学生はいないと? 問題ありませんここは麻帆良学園ですから、この程度なら十万人程度は居るでしょう。現にクラスメイトの葉加瀬さんなんて大学のプラズマ発生装置の開発などを自己流で行っております。ときどき爆発していますが焦げる程度です。ね、問題ないでしょう?

 

 おっと言葉が過ぎました。おじい様を尋ねてラジオ体操をしましょう。ええ今すぐに行きますよ。何せせっかく起きた奇跡です。死後に精神だけが時代を遡って小学生として覚醒するなんて滅多にある事ではないです。ですので小学生として、それはもう充実した日々を送っております。あぁ、いけません。おじい様に呼ばれています、それではまた後ほど。

 

 

 

 光陰矢のごとし、とはこの様な事を言うのでしょうか。やはり歴史と言うのは繰り返すのでしょう。そうです、おじい様がお亡くなりになりました。前史と同様に中学校入学に合わせての事です。天寿、と言うものなのでしょうか。いえ、言い訳ですね。分かっているのです。

 正直なところ、一度体験している事なので泣かないのではないかと思ったのです……。ですが、ダメでした。軽く一週間は布団に引きこもりました。泣きました。年甲斐もなく喚き叫んでしまいました。

 

 何度おじい様に、私が”魔法使い”であると相談しようか悩んだか分かりません。それでもやっぱりいけない事なのかと思い止まった事は後悔してしまいます。

 しかし、いつまでも後悔して居ても仕方がありません。そうです中学校からは後悔しない様に行動することにしましょう。そうと決めればまずは友人関係でしょうか。のどかの後押しは確定ですね。今生のネギ先生は誰を伴侶に選ぶのか少々楽しみです。出来ればのどかを選んであげて欲しいのですが……。

 

 え、私ですか?

 

 いやですね、もう百歳を優に超えて魔女とまで呼ばれた事があるのです。今更恋人が欲しいなんて思いません。

 あぁでもやっぱり、ネギ先生を見たら欲しくなってしまうのでしょうか。……略奪愛ですか。良い響きですね。いえ、待って。待ちましょう私。略奪どころかまだネギ先生は誰もくっ付いて居ませんよ? ふぅ、危ない危ない。ドラマの見過ぎもいけませんね。未来のドラマに比べて現代はドロドロとした愛憎劇が多すぎて困ります。え、未来のドラマの内容ですか? リア充爆発しろとだけ言っておきます。

 

 

 

「と言うわけなのですが、魔法発動体をください」

「いきなりやってきて、いきなりくれとは何だ貴様は」

 

 おかしいですね。私の計画ではエヴァンジェリンさんに会えば魔法発動体は貰えるはずだったのですが。何処かおかしかったのでしょうか?

 うーむ、とても怪しいものを見る目で見られています。心外な。これでもれっきとした中学生。まだピチピチの中学生ですよ? 外見だけならエヴァさんより上ですから、ピチピチと言うのはおかしかったかもしれませんね。

 

 そんな事より魔法発動体です。無くても極々初歩の術式なら使えるのですが、やはり触媒が無ければ大きな術を人間の身で使うのは難しいです。やはりここは取引と言うのが妥当でしょうか?

 エヴァンジェリンさんが最も求めて居るのは、ネギ先生の父でいらっしゃるナギ・スプリングフィールドの情報。あるいは登校地獄の解除でしょうか。どちらが良いでしょうかね。

 

「と言うわけなのですが、どちらが良いです?」

「何がだ!? 貴様は主語すら言えんのか!」

「言ってませんでしたか?」

 

 せっかちな方ですね。とりあえずナギさんの情報と、登校地獄の解除についてちらつかせて置きましょうか。もちろんどちらか片方です。なぜかと言えば手札は多いに限ります。さてエヴァンジェリンさんはどちらを選ぶのでしょうか。なかなか興味のそそられる所ですが……。

 やはり悩んでいらっしゃいますね。せっかくのチャンスです。悩み悶えるエヴァンジェリンさんというのはレアな光景です。ここはじっくり観察するべきですね。

 

「ではあと三十秒以内でお願いします」

「何っ!? ちょっと待て貴様!」

 

 おぉ! 涙目になりました。これはなかなかレアな顔ですよ。かわいいですねぇ。アルビレオ・イマさんがキティと呼んでからかうのが分かったかもしれません。試しにキティちゃんと呼んでみましょうか? 真っ赤になって怒ってさらに可愛くなるか、私が殺されるかでしょうか。流石にやめておいたほうが無難かもしれません。

 え、本当に解けるのかって? それはもちろん出来ます。なんと言ってもアレがありますからね。とは言ってもやはり魔法発動体と触媒が欲しい所です。

 

「ぐ……ナギ、だ!」

「おや、意外です」

「マスター。落ち着いてください」

 

 震えながらも悩ましげに決断する顔はしっかりと堪能させて頂きました。本当に可愛らしいキティちゃんです。そしてナギさんの情報ですか。うーん、可能性としてはフィフティフィフティであったとしても、彼女は開放を選ぶと思っていたのですけれどもね。少し残念です。

 ですが、私が嘘を付いているとは疑わなかったのでしょうか? まぁこれで魔法発動体が手に入るので、気にしないでおきましょう。

 

 それではナギさんの情報です。図書館島の地下深くに封印されてますよ。監視者はアルビレオ・イマさんです。おや、ポカンとした顔をしていますね。いったいどうしたと言うのでしょうか。そんな事より魔法発動体です。杖でも指輪でも何でも良いので早く渡して欲しいものです。

 

 

 

「リンー。リンや~」

 

 気付いていませんね。どうした事でしょうか。それとも意図的に無視して居るのでしょうか。あの子の事ですからそれもありえますね。まったく、小さな頃はおしめを変えてあげた事もあったと言うのに恩知らずな。

 しかしこれ以上返事をしないのであれば、恥ずかしい話でも暴露するのが適切でしょうか。そうですね、お腹を空かせたあまり台所に入り込み、何を思ったか石鹸を食べて病院送りになった話にしましょう。

 

「そう、アレはリンが九歳の時。お腹を空かせたリンは事もあろうに――。ふぐぅ」

「アハハハハ、ちょっと待つネ。綾瀬サン、突然何を言いだすカ?」

 

 ちょっとリン! 苦しいですよ。何も口を全力で塞がなくても良いと思います。

 うん? そう言えばここに居るリンと私がテラフォーミング化された火星で面倒を見ていたリンとは別のリンなのでしょうか? 逆行したと言う事は、荒れ果てた時代の火星のリンがここに居ないと成立しないと言う事ですよね。

 と言う事は、私が生きて、確実に知っている過去ではなく、平行世界の過去に生まれ戻ってきたと言う事でしょうか? リンに聞けば分かりますね。口に当てられたリンの手を引っ張って、塞いだ口を開放します。

 

「リン。火星の環境ですが、貴女が知っているのは滅び――。むぐぐ」

「ちょっ!?」

 

 またですか? そう何度も人の口を塞いでいると悪い噂が立ちますよ? 折角回りに溶け込んで、何の落ち度も無い天才少女の振りをして魔法使いとして目立たずにいるのですから、あまり派手な事をしてはいけません。

 おや? 私はいつのまに廊下まで引っ張り出されたのでしょうか。リンに片手を引かれてずるずると人気の無い所へ連れて行かれますが丁度良いかもしれません。このまま聞いてみるです。

 

「綾瀬サン。急に人の過去を捏造するのは困るヨ」

「つれないですねぇリン。あんなにかわいい娘だったのに、そんな仮面を張り付けてしまうなんて」

 

 そんなに驚いた顔をしてどうしました? もしかしてリン。貴女って不意打ちに弱かったのですか? 麻帆良学園祭の時、ネギ先生が戻ってきてカウンター作戦をされた時もかなり梃子摺っていましたからね。予定外のイレギュラーに弱いと言う事でしょうか。

 それにしても石鹸は無いでしょう貴女。何をどう間違ったら石鹸を食べて笑いが止まらなくなるのですか? え、そんなもの食べてないですって?

 

 なるほど、では貴女は私の知らないリンなのですね。と言う事はこの過去は間違いなく私が一度辿った過去だと言う事ですか。これは興味深い情報です。今後の私の行動に役立つ大切な情報ですよ。

 おや、リン。貴女そんなに目を丸くしてどうしたのですか? 心配しなくても強制認識魔法の発動の邪魔はしませんよ。多分。

 

「多分て何ネ! 私の、いやっ! 私達の事を知てるなら協力して欲しいヨ!」

「強制認識魔法を使わないのならば良いですよ」

 

 待ちなさいリン。なぜ口をあんぐり開けて再び目を丸くするのです? あぁ、年頃の娘がはしたない。きちんと口は閉じるです。ほら涎も吹いて。ポケットティッシュは要りますか? そんなに目を開けてばかりでは疲れますよ。私みたいに半目くらいでちょうど良いのです。

「大体貴女は力を入れすぎですし、作戦も甘いのです。どうせやるなら学園の魔法先生の洗脳とかもっと過去に行けば良いのです。しかもネギ先生をあからさまなターゲットにして居る辺り、ご先祖様パワーに頼りすぎなのです……。それからですね、おや?」

 

 また目が丸くなっていますね。どうしたですか? え、途中から声に出ていた? なるほど、思考が駄々もれになっていまいましたか。気をつけなければいけませんね。ともあれ今の貴女の作戦では穴だらけです。もっと一般人に迷惑をかけない方法を考えなさい。内容次第では協力するですよ?

 

 

 

「――つまりこの巨大な図書館島の蔵書を把握する為に、図書館探検部が――」

 

 さぁ、やってまいりました。のどかです。いえ、図書館探検部です。間違えました。それにしても懐かしいですね。

 ここの司書さんは相変わらず胡散臭いあの方がやっているのでしょうが、学園長も一枚も二枚も噛んでいる筈です。迂闊に近寄るのは稚拙と言うものですが行かないことにはのどかがゲットできません。さてさて、どこに座って居るやら――と、居ましたね。

 

 まずは気軽に挨拶からです。リンとの会話でここが一度辿った過去である可能性が高い事が分かりました。となれば今ののどかは内弁慶で、背中を押さなければ他者と殆んどまともに会話することは無いのでしょう。

 やはりこちらから声をかけて友達になる事ですね。そのついでにハルナも友人にしましょうか。ハルナの趣味もやはり変わらないのでしょうね。それではまずは近付いて……。

 

「そこの貴女」

「ひゃい!?」

 

 おかしいですね。なにか間違えましたか? 何故のどかは直立不動になって緊張して居るのでしょうか? ハルナはハルナで目を剥いてこちらを凝視しています。

 まさか、二人とも私の様に精神が逆行してきているなんて事は無いですよね? それならそれで楽なのですが、のどかの今の反応を見る分にはその可能性は限りなく低いでしょう。ハルナもどちらかと言えば、いきなり話しかけてきた相手を値踏みする様な雰囲気です。とりあえず友達ですね。きちんとお願いしなくてはいけません。

 

「のどか。私の親友になりなさい!」

「へぅ!? し、しんゆー?」

「あんたそれ親友の誘い方じゃないから!? しかも友達飛び越えてるから!」

 

 間違えましたか? のどかと私の間でしたら、これくらい阿吽の呼吸で分かりそうなものなのですが、分かってもらえなかったようです。困りましたね。

 ではもう一度、にこりと笑って友達になりましょう? と問い掛けてみます。……待ちなさい。何故引くのですハルナ。そんなに私の笑顔はおかしいですか? 貴女のそんな顔見た事が無いですよ。

 

「綾瀬夕映。貴様はそれが常識なのか?」

「おや? エヴァンジェリンさん、なぜここに?」

 

 おかしいですね。私の知って居る限り彼女が図書館探検部に所属したことは無いはずです。たしか茶道部と囲碁部だったような記憶がありますが。

 そんな事よりも何故彼女がここに居るかでしたね。ひょっとして彼女も友達になりに来てくれたのでしょうか? え、違うのですか? それは残念ですね。せっかくとっても便利な友人が出来たと思ったのに。って頬を引っ張らないでください。いけませんね、また思考が漏れていましたか。

 

 あぁ、なるほどナギさんを探しに来てアルビレオ・イマさんに追い出されたと。

 違う? むしろ逃げてきたと言う事ですか。彼にからかわれて来るとは災難な事です。それでなんでしょう、つまり合法的に図書館を調べる為に図書館探検部にやってきたと。なるほどなるほど。ではこれで私たちも親友ですね。

 ほらのどかも一緒に手を繋ぐですよ。”エヴァ”とのどかの手を、左右の手で掴んで高く持ち上げます。はい親友親友です。よろしくお願いするですよ。

 

「ふ、ふん。まぁ良いだろう」

 

 おや、生ツンデレです。これはなかなか良い友達をゲットしたかもしれません。ネギ先生が来るまでの間、飽きないかもしれませんね。ついでに別荘を借りて復習でもさせてもらいましょうか。色々試しておきたいこともありますからね。

 さてのどか。ちゃんとネギ先生とくっ付くように後押しをするですから、きちんとお話できるようになっておくですよ。

 

「よろしくですよ。のどか?」

「は、はい。夕映さま」

「「「え!?」」」

 

 ハルナ!? そこで何かに目覚めた目をしたのどかをスケッチするのは止めてください! エヴァもニヤニヤしていないで何とかするです! や、やめてくださいのどか。私をそんな目で見るのはダメです。

 と、とりあえず先にのどかを落ち着かせる事が重要ですね。ネギ先生が来るまでに目を覚まさせて上げなくては。

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