またネギ達の年齢が、原作と違うのは仕様です。理由は終盤とあとがきで分かります。
短編集のため、タグはこちらに表記しております。
タグ:オリ主、ネギの兄、ギャグ、お嬢様、TS、女装、男の娘、三人称練習
魔法使い。一言そう口に出すだけならば、ごくありふれた言葉の一つかもしれない。しかし、この世界ではその言葉はとても大きな意味を持っていた。特にここ、ウェールズにある山間の小さな村では。
「やっぱり、そうだよな……」
確かめるように小さく呟いたその言葉は、野山に囲まれた自然の中に溶け消えていった。そう呟いたツンツン頭の赤毛の少年は、さらりと流れる髪をガシガシとかき乱して溜息を吐いた。今年、数え年で六歳となる彼は、その小さな体を包み込む赤茶のボレロに黒いズボン、そして赤茶の小さな靴を身に纏っている。とても少年らしい可愛らしさを備えた外見だったが、その反面、物思いに耽る顔はとても六歳とは思えないものだった。
「……プラクテ ビギ・ナル 火よ灯れ(アールデスカット)!」
まるでおもちゃのような星の付いた棒――初心者用の魔法使いの杖――を、呪文詠唱と共に空に翳すと、その先端からボボッとくぐもった音と共に小さな火が生まれた。それを見た彼は、口元を緩めて少しだけ満足そうな表情をしてから、ハッとして自身を戒めた。
「(これじゃダメだ……!)」
六歳という年齢を考えると、彼は異常な程に理知的な行動を取る少年だった。周囲からは少し不気味がられる事も有ったが、それ以上に「あのナギの息子だから……」と、特に異常な存在としては扱われていなかった。
むしろ、共に村に住む双子の弟であるネギ・スプリングフィールドの方が、やんちゃで手が付けられない悪ガキとして認識され、その容姿もあいまってナギの再来と注目されていた。だからこそ彼は、たまに村を抜け出して、人知れず魔法の練習をする事が出来た。
「すぅ……はぁ……」
呼吸を整えて精神を集中する。彼の胸中に有るものは「焦り」のただ一言だった。魔法を使う者、即ち魔法使い。この世界にはそれが現実に存在する事を、彼は知っている。それがこんな小さな少年を動かす為の動機かと言われれば、そうではない。もう直ぐある重大な事件が起きる事を知っているからだ。
「……プラクテ ビギ・ナル 光の精霊1柱 集い来たりて敵を射て 魔法の射手(サギタ・マギカ)! 光の1矢(ウナ・ルークス)!」
再び小さな杖を翳して、呪文詠唱と共に前方に振り下ろす。すると、少年の体に薄っすらと纏わり付く光――体内魔力(オド)――が、光のマナと混ぜ合わさって一つの光球が作られる。そしてその直後、光球は前進して光の尾を引き……地面に落下した。
「あぁっ! くっそ、また失敗かよ!」
地面に落ちた光の矢の成り損ないは、ポスンと情けない音を立てて浅く地面を削り取る程度の威力しかなかった。
「これじゃダメだ! このままじゃ、死んじまう! ……くそっ!」
彼の中では自分を異分子(イレギュラー)だと、本来存在してはいけない異物だと認識している。何故こんな小さな少年が、まだ僅か六歳の少年がその結論に至ったのか。それは、彼の中に有るとある知識が問題だった。
転生――。口に出すのは容易いが、魔法使いという言葉よりももっと現実味がない言葉だろう。この世は不思議に満ちていて、魔法使いなんて架空の物語に出てくる存在がもしかしたら居るかもしれない。そんなifを想像する人間が決して居ないとは言えないだろう。だがしかし、この世界ではそれが当たり前のように存在する。もちろん一般的には御伽噺の域ではあるが、山間の村に住む彼にとっては現実だった。
カギ・スプリングフィールド。それがこの世界における彼の名前だった。彼はこの世界が、前世において「魔法先生ネギま!」と呼ばれた漫画だという事を知っている。所謂、転生者と言うものだった。
「あいつら、いつか来るんだよな……。ちくしょう、死にたくねえよ。生きたい……出来たら原作キャラにも会いたい……。絶対、可愛いんだろうな……」
小さな手をきつくきつく握り締めて、キュッと一文字に結んだ口で恐怖に耐える姿は、周囲に大人が居れば何事かと飛んで来る程の悲壮感を漂わせていた。
きっと、もうすぐ……もうすぐなのだと。悪魔がやってくる。どんな理由で起きたのか知らないが、彼が生まれ育った山間の村は、永久石化という地獄の洗礼で滅びを迎える事を彼は知っていた。
それがいつやってくるか分からないまま、五歳の誕生日を迎えて、年が明けた。彼は悪魔による襲撃が寒い季節だったというのは覚えていたが、正確な年数が分からないため、冬になる度に過度に怯える様になっていた。
彼は、自身の弟でこの世界の主人公であるネギは、まず間違いなく助かるだろうと考えていた。それに幼馴染のアーニャと義姉のネカネ。所謂主人公サイドの人間は、物語の中心となる人物は当たり前の様に助かると。
だが、自分は? この世界の異分子(イレギュラー)でしかない自分はどうなるのか? 世界の修正力とかによって排除されてしまうのではないか? 必要とされて居ないのではないか? そんな不安と恐怖が彼の中で常に渦巻き続けていた。
もちろん何もしなかったわけじゃない。ここは魔法使い達が住む村なのだから、魔法を教えて欲しいと大人達に懇願した。だがしかし、まだ早いと。いたずらをするんじゃないかと。子供の背伸びだとまともに取り扱って貰えず、結局は前世の知識を生かして独学で学ぶしかなかったのだ。
だからと言って逃げ出す手段も無い。子供一人がこんな山奥から町に出ても生きていく手段も無い。大人達に悪魔が来る! と言って回ったとしても、子供のいたずらか気がおかしくなったと笑われるだけだろう。あるいは、やっぱりこの子もナギの息子だったかと、微笑ましく見守られて終わるかもしれない。そんな事を考えて、派手な行動に移る事も出来なかった。
「な、何だっ!?」
しかし運命と言うものは残酷で、それは起こるべくして起こってしまった。ドォンと、重く地響きにも似た音がしたかと思えば、村の方角から火の手が見える。それと同時に、空を覆い尽くす真っ黒な点、点、点。中には巨大な体と翼を持つ者も居て、それが悪魔だと、一目で理解させられる姿だった。
「まさか……ついに来たのかよ!?」
震える。心が、体が、全身から冷や汗が出て、逃げ出す気持ちも忘れて死の恐怖に駆られる。どうすれば良いかと悩んでも、何かが出来るわけではない。こんな小さな子供が、見習い魔法使い以下の実力しかない少年に、悪魔の軍勢をどうにかする力は無いのだ。
ではどうするか。逃げるか、隠れるかすれば良いのだろうか。必死にどうすれば良いのか考えてふと頭に浮かんだのは、物語の中の人物だとは思って居ても、現実に接してきた姉弟と幼馴染の顔だった。
「……嘘だろ?」
いつの間にか彼の心には、助けたいという気持ちが浮かび上がって居た。日々の生活の中で触れ合ってきた思い出が、優しさがフィードバックして躊躇いを生む。
しかし、だからと言って彼はどうすれば良いのだろうか。魔法は使えない、肉体の強さでもかなわない。逃げるしかない。それでも、彼は走り出した。どうしてその行動に至ったのかは理解していない。ただがむしゃらに走り続けて、火の手が上がる村に飛び込んだ。
「おおーーい! ネギー! アーニャー! ねえさーーん! だれかー!」
彼の取った手段は、ただ叫ぶだけだった。そんな自分が情けないと思っていた。それでもそうせざるを得なかったのだろう。けれども、走り続けた先には、運命とも言える黒い塊が待ち構えていた。
「あ……」
ニィっと、黒いナニカの口が吊り上るのが見えた。
「う……あ……」
嘘だ嘘だと心の中で何回も繰り返し否定した。
「グッ……はっ……あっぐ、はぁっ!」
呼吸が早まって、逃げ出さなかった自分に後悔をしていた。それでも、目の前の黒いナニカは変わらない。
「うっ、うわあぁぁぁーー!」
壊れたように零れ続ける涙と、口から漏れる悲痛な叫び。そんな事をしても意味が無いと分かっているのに、叫ぶ事でしか正気を保つ事が出来なかった。誰かに助けて欲しかった。この場をやり過ごせるナニカが欲しかった。どうしようもないのがもう分かっていて、それでも叫ばずには居られなかった。
そして、目の前の悪魔が、彼へとその手を伸ばしたその瞬間に、”吹き飛んだ”。
「あ……?」
彼自身も信じられない程の間抜けな声が出て、何かの衝撃音と共に悪魔達が次々と吹き飛び、または地面へと倒し伏せられていく光景があった。彼はそれを呆けた表情を持って、ただ見続けていた。と言うよりは、それ以外に出来る事が無かったのだ。
「遅くなってすまなかった。君が、カギ君で良いかな?」
目の前に現れた人は、ベージュのスーツとスカートを身に纏う引き締まった長身で、灰色の髪をうなじで一つに結んだ女性だった。髪と同じ灰色の瞳で優しげに笑いかけて来た人は、呆けながらも首を縦に振り続ける彼を確認すると、その頭にそっと手を置いて優しく撫でたかと思えば、身を屈めてカギの身体を抱え込みきつく抱擁をした。
「(だ、誰だこの人!?)」
カギにとって全くの面識が無い人物だった。原作でネギはナギに助けられるはずで、自分を助けに来る人なんて居ないはず。と、戸惑う彼を余所に、その女性はぽんぽんとカギの背中を優しく撫で続けていた。誰かは分からないものの、悪魔達を倒してくれた事、自分の味方である様子、なによりも決して助からないと思い込んでいた異分子(イレギュラー)である自分を救ってくれた事で、心の中に大きな安心が生まれていた。
「う……。うぅぅ……」
知らず知らずに嬉し涙が零れる。誰か分からなくても良い。今はただ、この人の身体に触れて居たいとカギは思っていた。
「まったく、何をしているのですか」
「あっ、カギ!」
「あんた無事だったんなら、家に来なさい! 心配したじゃない!」
「良かった……本当に、良かった……」
ふと、慣れ親しんだ声が聞こえた彼は、見知らぬ女性の肩に埋めていた頭を上げて周囲を見渡す。するとそこには、多少煤けているものの五体満足の姉と、その両手に抱き留められた弟と幼馴染。そして何人かの村人達の姿があった。それと同時に、フードを被った謎の人物も。
「何とは随分ですね。一人だけ見当たらなかったのです、探して保護するのは当然でしょう?」
「はぁ……そうやって美味しいところを持っていくのですね。そっ、その少年を……はぁはぁ……私にも抱かせてください」
「駄目です。今の貴女に渡すわけには行きません」
少年はフードを捲りあげた人物に「ちょっと待て」と、心の中で凍りついていた。その優男の様な顔付きは、彼の知識の中に有る人物にどことなくだが似ていたのだ。だが、彼が知る知識とは大きくずれていた。
彼の知るあの人物を一言で言うならばロリコン。二言で言うならば、変態ロリコン。あのエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルをからかったりスク水を勧めたりする、あの紅き翼(アラルブラ)のアルビレオ・イマに似ているんじゃないかと。
だがしかし、目の前の人はどうだ。フード付きマントを外した姿は、ローブを身に着けていても出るところは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいる。今現在進行形で抱き付かれている人と勝るとも劣らずのスタイルの持ち主だった。何が何だか分からないまま「あ、そうか。変身してるのか」なんて彼(?)のアーティファクトを思い出しながら、かの人からの視線に謎の怖気を感じていた。
「すみません、カギを助けて頂いた事、本当に感謝しています。タカミチコお姉さま」
「気にしないで欲しい。私はやるべき事をしたに過ぎないさ」
「は……はいっ!」
カギは、今目の前で起きたやり取りを理解出来なかった。何が起きたのか、いや、それ以前に「タカミチコ」って誰だそれ? と自分の中の知識と照らし合わせながら、義姉の赤く照れた表情に気付かず、また同時に肝心な部分も聞き逃していた。
「あぁ、自己紹介が遅れたな。私は、タカミチコ・T・高畑だ。気軽にタカミチコと呼んでくれ」
「えっ、はあっ!? ええ!?」
「はぁ、うらやましいうらやましい。何でいつも私より先に貴女が助けるのですか。いつだってそうですよ。あの時も私より先に可愛い子とお友達になって……」
「拗ねるのはいい加減にしてください、アンお姉さま。それよりも、他の村人はどうされたのですか?」
「ああ、あの射程範囲外(オジサン・オバサン)どもなら、とっくに全部転移させましたよ。だからその子をください」
「……駄目です」
カギの知っている限り、タカミチ・T・高畑と、アルビレオ・イマがここに居るはずが無かった。原作で村の人々を助けに来たのは、ナギ・スプリングフィールドであり、彼等……いや彼女等がここに来るはずは無かった。しかも、どういう訳か二人とも原作と違い女性になっているので、更に意味が分からず彼は混乱し始めていた。
「申し送れました。私(わたくし)の名は、アンネルーゼ・イマ。しがない魔法使いです」
その言葉と共に、周囲がざわめきに包まれた。それはそうだろう、村のピンチの時にこれ見よがしと紅き翼(アラルブラ)の人間が助けに来てくれるなんて、一体誰が考えるのか。タカミチコの様に世界を又に駆けるNPO参加者ならば兎も角、彼女と違ってめったにお目にかかれない生きる伝説で英雄の一人なのだから。
しかし、彼女の言葉でカギは更に困惑を強くしていた。「マジで?」とか「何でこいつも女なんだよ!」とか、もう諦めの境地が見え始めていた。そう考えると、今抱きしめられていてちょっと良い匂いとか思っていたカッコいいお姉さんが、実はあの「タカミチ」の変わり果てた姿だと知って心の内に軽い拒絶感が沸いていた。それと共に、一度男性として生きた経験からラッキーと思ってしまい、離れ難い葛藤が生まれ困惑し果てていた。
「さて、ネギ君。カギ君。それに、アーニャちゃん」
「はっはい! ……あの、カギを助けてくれてありがとうございました!」
「礼には及ばないさ。けど、気持ちだけは貰っておこう。それに今はゆっくりと話をしている暇は無いからね」
「あの、タカミチコお姉さま……暇が無いとは……」
「それはだな、いつ追撃があるか判らないという意味だ。それに街がこうなってしまった以上、私達は集団での引越しを勧めるのだが……。アルお姉さま!」
「嫌です」
しん……と、場が静まった。たった今、タカミチコが逃げないと不味いと言ったのに、英雄たる彼女は一体何が嫌なのかと。プイッっと顔を背けて拗ねた様子を向ける彼女に、村人からは疑問の声が上がり、はたまた何か不敬を働いてしまったのかと……。一度静まった場が再び別の意味でざわめき始めた。
「可愛い子の成分が足りません! その子達をぎゅっと抱きしめて、ほっぺたをすりすりして、頭をなでなでして、ショタロリ分を補給させてください!」
ビシリと、今度は空気が固まる音が聞こえた。今度は気のせいではなく、実際に聞こえた。何かと思えば直ぐ目の前の女性から、絶対零度の笑みと共に噴出する謎のエネルギーが見て取れた。
重ね合わせた両手で周囲の空間にびりびりと圧力をかけながら、今すぐ逃げる為の手を打たないと本気で殴り飛ばすとその笑みが物語っていた。
「(あー……。これが感卦法かー……)」
その直ぐ傍にいたカギは、意外にも自分の頭の中が冷めている事に驚いていた。彼女がタカミチでアレがアルビレオ・イマとか何だかもうどうでも良くなっていて、感卦法で威圧するタカミチコを「良いもの見たなー」と軽く受け流していた。
それと同時にレベルが違いすぎて参考にならないと冷静に判断を下し、「とりあえずさっさと移動しねぇ?」と、相手をするのが面倒臭い気持ちまで生まれ始めていた。だからこそ、あんな事を口に出してしまったのだろう。それが一体どんな意味を持つのか知らないで……。
「とりあえず後でハグでも何でもしますから、移動しませんか?」
「――はぅっ!?」
その効果は劇的だった。明らかに「私、拗ねてます。構ってくれないんです」と顔に書いてあったアンネルーゼの顔がパッと輝いたかと思えば、「天使ッ! 天使を見たっ!」と急にやる気を見せ始めたのだから。
「い、良いか、カギ? あの人に、気安くそんなこと言っちゃ駄目だ!」
「でももう面倒臭くないですか?」
「だっ、だからって!」
「さぁ行こう! 今すぐ行こう! 麻帆良女学園へ!」
「……え”?」
カギは何か変な言葉を聞いた気がして、濁音が混ざった疑問詞を思わず口にしたが、足元にはすでに巨大な魔法陣が形成されて光の奔流が周囲を包み込んでいた。
周囲からは感嘆の声と共に、流石は紅の翼(アラルブラ)の魔法使いだ。と賞賛の声が上がっていたが、タカミチコの苦虫を噛んだような顔付きがカギには理解出来なかった。しかし、それは数時間もしない内に強制的に分からされる事と成った。
◇◆◇◆◇
「ご、ごきげんよう。今日からこのクラスに転入してきた、か、カーナ・ベリーフィールドです」
「ごきげんよう。わ、たしは、ネーナ・ベリーフィールドです!」
麻帆良女学園。それは淑女教育を目的とした、ミッション系の女学園だった。初等部から中等部、高等部に大学と一貫した教育を続ける事で現代社会の女性進出と、温良貞淑で向上心と積極性を養う事を目的とした私立の学園だった。
それと同時に、魔法使い達の日本での隠れ蓑ともなっているが、それは一般人にはあずかり知らぬ事情だった。
「みなさん! 今日からおともだちに、なってあげてください!」
人のよさそうな初等部の女教師の言葉と共に、元気の良い返事がクラスの中から沢山響いた。もちろん、全て女子である。
「(な、なんで、こんな事に!)」
どうしてこんな事になってしまったのか。それを思い出すと、カギ……改めここではカーナは、溜息と共に絶望的な表情で俯いた。
それはあの日、ウェールズの山間の村から逃げてきた後の事だった。麻帆良女学園とアンネルーゼが口にしたものが間違いだと思っていたカ-ナは、それが直ぐ真実であると思い知らされた。この学園でこれから暮らす為に偉い人に挨拶をすると、父であるナギ・スプリングフィールドとも知り合いの人だと言われて、学園長屋に通された時の事だった。当然の事ながら、あの頭が長くひげも長い、所謂ぬらりひょんと称される学園長が出てくると思っていたのだ。
ところが実際に会ってみたら、その姿はお婆さんだったのだ。その名も、シスター・コノエモー。もう、ここまで来ると笑いがこみ上げてくる。それを必死に押えて、何とか挨拶を済ませると、更に衝撃の事実を告げられた。
「ネギ君。カギ君。アーニャちゃん。とても大変でしたね。ですが、ここなら大丈夫です。しかし、念には念と言います。”貴女達”を狙っているものが何者か分からない以上、対抗する力を身に付けるだけではなく、その姿も隠さなくては成りません。幸い、アンネルーゼ様が痕跡を一切残さずに大転移魔法を行使してくださったおかげで、直ぐにはばれないでしょう。ですので、今から”貴女達”はこの女学園の生徒として身を隠しながら力をつけるのです」
最初は何を言っているのか分からなかったカーナだが、学園長が取り出した制服と思わしきものを見て、顔が引き攣った。
それは一見するとローブの様なデザインだったが、赤と小豆色に白いラインが入ったタータンチェックのワンピースにしか見えなかった。更にセットで白を基調とした、ウェストまでしかないセーラー服の上着。夏は合服として取り外せるようになっており、機能性を重視したものだと分かる。分かるのだが……どう見ても、女装しろと言って様にしか聞こえなかった。
「あ、あの……学園長?」
嘘だと言って欲しくて、搾り出すように、懇願するように学園長に問いかけたカーナだったが、学園長の言葉はあっさりとそれを否定した。
「分かってください。”貴女達”のためなのです。それから、念のためにこちらの魔法薬も……。青い薬は中性的な成長を促す薬です。一日一個、かならず服用してください。そしてこちらの赤い薬が、一時的に女性になる薬です。一つ服用すると二十四時間は変身したままになります。いざという時に使ってください。その場合、効果が切れた翌日まで青い薬は飲まないでくださいね。使い過ぎもいけませんよ? いざと言う時だけに限ります。そうそう、忘れていました。先に毛伸び薬を飲んでくださいね。よろしいですか?」
わざとではないのだ。この学園に居る人達は、皆が皆良い人ばかりで、親身になってカーナ達の事を本当に心配している。だからこそ、断り難かった。
それ以前に断れる程の力も立場も、子供である二人には無かったのだが……。かくしてここに双子の男の娘という女生徒であり魔法生徒でもある存在が誕生する事になった。
そうして学園内の寮室で義姉のネカネと双子、そしてアーニャの共同生活が始まる。もちろん一般生徒とは異なる寮棟で、どちらかと言えば教員寮に近い広めの部屋になる。タカミチコは申し訳ない顔をしながらも、女児用の下着類と普段着。それに良心が咎めたのだろう、数点のズボンも合わせて用意していた。
まだ大人用のものではないからまし……と思いながらも、カーナもネーナも戸惑いは隠せなかった。それでもまだ子供であった分だけ、ショーツを履いてスリップを身に纏えと言われても、ネーナことネギはまだ素直に従った。あくまで比較的に……だが。
しかし、転生者であり男性の人生経験があるカーナはそうは行かなかった。ショーツを渡されて履けと言われても露骨に嫌がり、逃げ惑う時も一度や二度ではなかった。
「だって俺、男だし! なんでネギは普通に履いてるんだよ!」
「駄目だよ、にぃ……姉さん。学園長先生がそう言うんだし、しょうがないじゃない」
「バカねー。ちゃんと大人の言うこと聞きなさいよー」
そんな時は仕方が無く、ネカネは赤い薬を用いるしかなかった。それは女性に慣れさせると共にお仕置きも兼ねて居たのだが……。それよりも、村があの悪魔達に襲われた時にどんなに心配したか。カーナだけが見つからなくて、どれだけ必死に探したか。それを善意でかくまってくれて、魔法の授業までしてくれるシスター・コノエモーとタカミチコお姉さまにどれだけ感謝してもし尽くせないと、涙ながらに語るのである。
流石にそんな事をされては、カーナも黙るしかなかった。しぶしぶと女児用の下着に手足を通して制服を着る。心の中は色々な意味で涙がいっぱいなのだが、ネカネに命を落とすのに比べたら! と泣きながら説得されては仕方が無かった。
しかしその後、プールの授業や泊り込み授業で赤い薬を何度も使う事になり、アンネルーゼにうっかりハグして良いと言ってしまった事で、出会えば即抱きしめられて息を荒くされる苦行が待っていると、この時のネーナ達はまだ知らなかった……。
はじめに言わせてください。突然天啓が降りたんです。何だか凄くやってしまった感があります。
言い訳をするとですね、最近物凄く久しぶりに女装ものの商業作品を中古で買ったんです。PS2のゲームなんですけどね。何年か前のもので当時は二番煎じ三番煎じでしたし、レビューもいまいちっぽかったので放って置いたのですが、予想以上に面白くて一気にやってしまいました。
それでですね、普段からふとあのシーンとか、このシーンとか、ああしたらこうしたらもっと良くなるんじゃないかと、連載中のネギま!長編の改訂やプロットの考察を頭の中でして居るのですが。そこで突然にネギま!が、お嬢様学校だったらってネタは読んだ事が無いなぁ……と、思ってしまったんです。
ここの短編集で書いている逆行夕映さんのifもので、もしネギが転生者だったり成り代わりだったり、あるいは双子の転生者がいたら、夕映さんに相当弄られるだろうなぁ……。って漠然としたイメージを暖めていたのですが。そこで、あれ? もしお嬢様学校だったらタカミチとかアウトじゃない? と思い、凛々しいお姉さま系に変身して貰って、安定の変態枠(クウネル・サンダース)とTS・女装を絡めて+お嬢様学校。たまにはNLカップルで終わる作品でも良いよね? と思ったところで、突然雷に打たれたかのごとく、アイディアとプロットが立ち上がりましたw
そんな訳で、短編で終わらせて長編にする気はまったく無いのですが、カーナ・ネーナ姉妹(笑)は、前代未聞の双子の男の娘魔法使いで、魔法お嬢様生徒ネギま! が爆誕するわけです。意味が分かりませんね?w
ちなみに中等部なったら、二人とも中性的な体格で155センチ程度と身体測定の平均くらいの予定です。髪の毛は地毛でロング。ぶっちゃけ明日菜が三人になりますね?w 何なんでしょうかこの作品w
本来の原作では十歳のところ、この作品では十二歳になるので2-Aの一つ下です。つまり、中等部で出会ったら明日菜お姉さまと言わせる事も出来ますw それに年齢詐称薬で原作の2-Aと同じ年代にする事も不可能ではないですよね。原作に関わるにはそっちの方が話を考え易いですがw と言うか、原作なんて既にどこかに吹き飛んでますね。
それからネーナの性格は「うふふ、駄目ですよ。姉さん」と完全にお淑やかに染まっていくタイプ。けれども覚悟を決めたら「僕が、貴女を守ります!」と、原作よろしく急に主人公になる天然で天才タイプ。悪魔襲撃で歪んでおらず、むしろタカミチコに憧れている。ナギ? 誰それ?
オリ主カーナは苦労人。長年の経験で女らしさが染み付いた自分にトホホと言いながらも、基本的には前向きに何でもこなす秀才タイプ。一応オリ主だしw 男らしさを絶対に忘れるものかと思いながらも、スキンシップの激しいアンネルーゼと、一緒に暮らしてる姉妹達(笑)とアーニャに染められている。「私は男なのよ!」と、もはや口調まで染まって、部屋の隅で女の子座りをして黄昏れている。
「ち、違う。わたっ、お、おれ……は、男なの!」と必死で抗っている、なんて妄想。普通はそう簡単に染まらないと思います。
ちなみにカギの名前は、ナギ、ニギ、ヌギ、ネギ、ノギとかだと芸が無いと思い、アリカの”カ”を取りました。女性名にした時に、な行だと難しかったのもあります。
珍しく一緒に麻帆良行きのアーニャは基本的には原作通りの性格ですが、テンプレよろしく二人をより可愛らしく着飾らせる事に目覚める。ネカネとこうじゃない、ああじゃないと、普段着まで口を出すのはいつもの事。二人が男だとばれるとまた悪魔が来るかもしれない、と強迫観念に近いものも持っており、二人を守る為だと言いながら趣味に昇華している。
基本的には、二人を心から心配している。恋愛対象としてネーナを見ていつつも「これって周りから見たら、どう見ても百合よね? 何で普段から男らしくないのよ!」と、カーナに愚痴を零す事もしばしば。
いや、ホント、何でこんなの書いたんだろう?