北日本エリア・札幌。トライアドプリムスの渋谷凛・北条加蓮・神谷奈緒の3人は、地元TVのバラエティー番組のゲストとして来ていた。その振る舞いはプロそのものであり収録も無事に終わった。
「お疲れ。プロデューサー他の件で札幌に来れないって聞いたけど大丈夫そうだね」
「当たり前じゃん!これでもプロだし」
「でも疲れた~。明日オフだからゆっくり休もっと」
着替えを終え、控え室にくつろいでいると突然警報が鳴り響き、遠くから銃声も聞こえた。凛が様子を見にドアを開けると、AMD65を装備したマスクの男が前に立っていた。
「動くな、君達を蜂の巣にしたくない。大人しくしてろ」
日常から突き落とされパニックになり病弱の加蓮は失神してしまう。
「我々はODT。ニュースになってるから知ってるはずだ」
(嘘でしょ、じゃあテロってことなの!?)
「ほうトライアドプリズムか。君達が必要なくなる前にサインでももらっておこうか」
「ハァ!なんでテロリストにサインあげないといけないんだ!?」
奈緒の発言に気を障ったのか、彼女に当たるスレスレに発砲し黙らせる。
「次は眉間を開ける。それか強姦とかどうだ?」
嘲笑うかのような様子にただ黙って指をくわえて見ているだけにだった。
(卯月、未央、もう助からないかも・・・みんな・・・ごめん・・・)
その時、さっきまで笑っていた男が凛に覆いかぶさるように倒れる。彼女は男をどかし、よく見ると首の頸動脈を寸断され絶命していた。
「背後を気にしないとは素人同然だな。そう思わないか?」
緑の迷彩服にそれに合わせたフェイスペイント、左手にはコンバットナイフを握っている鋭い目つきの男が立っていた。
「アンタ、コイツの味方!?」
「冗談キツイな。俺達がこんな素人の仲間にされたら困る、それに」
「それに?」
「真のハンターは常に足元に気を配るものだ」
彼の名はマクシム・バズーダ、通称カプカンは爆薬で敵の侵入を感知し、爆殺するガジェット、侵入阻止デバイスの扱いに長けた男で、北極圏で得た狩りの技術を実戦に活かす凄腕の戦士だ。
「た、助けてとか言ってないし」
「良い事教えてやる、生死を決める場所で生き残るのは強い奴とそれに素直に従う奴だ。黙ってついて来い、そうすれば命の保証はしてやる」
「奈緒、加蓮を起こして。あの人について行こう」
カプカンと凛の説得で渋々加蓮を起こし、彼について行くことにした。
「こちらカプカン、人質確保した。これより合流地点の地下駐車場へ向かう」
「了解だ。グラズを向かわせる」
通信の相手、タチャンカことアレクサンドル・セナフィエフは固定式に改造したLMGを展開し、地下駐車場に迫りくる敵を迎撃する。火力と圧倒的弾数にてあっという間に返り討ちにしてみせた。
「まだカリブーの方がマシだ。グラズ、そっちはどうだ?」
スタジオ内の敵を遠距離から狙撃する男。
「こっちは絶好調だ。まだカプカンとは合流してないが」
グラズ。本名、ティムール・グラズコフは敵の殲滅を確認し、カプカンのもとに向かう。2階の廊下で合流し、3人の人質を見て驚きをみせる。
「へぇーまたアイドルか。こいつから狩りの話、聞いたか?」
「う、うん」
「長かっただろ?」
嫌味に聞こえたのかSASG-12の銃口をグラズに向ける。
「グラズ。さっさと出るぞ、侵入阻止デバイスも限りがある」
「あいよ、こっちだ」
グラズを先頭に地下を目指すが、不自然なまで敵に遭遇しない。
「潜んでるな」
「ああ。下にいる」
「だったら、俺の出番だな」
あまりにも遅いため迎えに来たフルフェイスヘルメットの男。彼はシュフラット・ケシバイエフ、仲間からはフューズと呼ばれており、手にはクラスターチャージと呼ばれる壁や床を貫通しグレネードを送り込むガジェットを持っていた。
「動くなよ」
クラスターチャージを床にセットし起動する。下の方から轟音が響き、凛達を驚かせた。
「もう大丈夫だ。今頃爆死だろうな」
(うわぁエグい・・・目の色からして日本人じゃなさそう・・・うぷ・・・)
奈緒は吐き気を催していたが生き残るために必死になって我慢している。それに気づいたフューズが優しく背中をさすってくれた。
「無理もない、俺達と生きる世界が違うんだ。さっさと行こう」
無事到着したカプカン達は護送用バンに3人を乗せ、帰りがてら事情聴取をする。もちろん、一般的なものだ。
「黒髪の君、彼らに心当たりは?」
「その前に名乗ってよ、礼儀でしょ」
「それは悪かった。俺のことはカプカンと呼べ」
「カプカンね。私は渋谷凛、346プロのアイドル。ODTの連中なんて知らないよ」
「だろうな、高校生でテロリストと仲良くなってるハズがない。質問を変える、最近変わったことは?」
「うちのアイドル達が行く先々でそのODTの人質になってるんだ。そのせいか、自宅に帰っちゃった子も大勢いるよ」
「(実はゲン達が保護してんだが・・・)他には?」
「ちひろさんが会社に来てない・・・あぁ、事務員さんだよ」
「(ホシが姿をくらませているのも聞いた・・・)346ではプロデューサーが付くハズだろ、何故いなくなってたんだ?」
「あ、そういえば着替える前にどっか行っちゃったかも、石田って人なんだけど・・・」
「(そういえば大勢のプロデューサーを雇ったって話を聞いたな。そいつらも怪しい)わかった。聴取は以上だ、ロシアンティーでも飲むか?」
レーションから湯とカップ、ティーバックにりんごジャムを取り出し、3人に振る舞った。好評らしく飲み干した子もいた。
「さてと、空港に着いたぞ。ここからは飛行機に乗って帰るんだ」
「カプカン」
別れ際に凛が不安げに質問する。
「私達、うまくやっていけるかな?」
「言っただろ、真のハンターは足元に気を配るって。逞しく踏みしめて行け」
「ありがとうカプカン、またね」
千歳から羽田に飛び、ジャーナリスト達の取材に答える凛達。
「渋谷さん、一言お願いします」
「・・・本物のハンターは足元を気にしています、今後も気をつけて街を歩きたいと思います」
その応答は新聞のみならずワイドショーでも話題となり、一躍注目を集め、渋谷凛の人気を急上昇させた。今朝の朝刊でこのことを知ったカプカンは柄にもなく口元が笑った。
スペツナズの面子を出してみました。でも、加蓮は不憫だったかも・・・