地下射撃場で自分の銃をメンテナンスする源太。朝の日課であり、怠ればいざという時に弾詰まりが起きる。何より自分ひとりだけの時間でもあった。
「姫二人が起きる前に撃っとくか」
手に取ったP90を構え、ターゲットに向けて射撃する。イギリスで何度も訓練したことがあるため使用にはさほど問題はない。
「やっぱここが落ち着くな。誰も入ってこないし」
横須賀での訓練に使うため、自分の銃を専用のジュラルミンケースに入れ込む。
「そろそろ行くか、朝も早いし」
自分の運転するジープに乗り込むとエンジンをかけ、基地に向かって発進した。
今日の訓練は珍しくSATとの合同訓練だった。なんでもレインボーは彼らにとって憧れらしく、共にできることは最大級の名誉らしいが、古巣に悪印象しか抱かない源太にからしてみればただの出歯亀以外になんでもない。今回の訓練もCQBの訓練らしく、手口を知ってる源太にとっては退屈でしかない。
「最初は防衛側からか。敵の人数は8人、ドローンは見つけ次第排除だ」
「OK。日本人に俺達の実力を見せてやろう」
地下からのスタートだったが、さっそくミニカーもどきのドローンが目の前に現れたので45Tで撃ち抜き、あっという間に全て破壊した。二階から爆発音がしたため、レイモンドが出ようとするが源太は彼を静止させる。
「待てレイモンド、囮のブリーチングだ。奴らは一階から入る」
予想どおり玄関から爆発音がし、そのあと複数の足音もした。
「な、言った通りだろ?次は二手に別れて各個撃破に向かうから、俺達もあえてバラバラになろう」
部屋のドアの前に有刺鉄線を仕掛ける。
「来るぞ」
クローゼットの中に隠れ、それぞれの得物を手に取り、迎撃態勢をとる。案の定入ってきた隊員は有刺鉄線を排除し、部屋に入ってきたところを見計らい背後をとると頭にペイント弾を撃ち込み、一瞬で返り討ちにしてしまった。
「圧勝。全員被弾なし」
「ナイスだったぜゲン。さすが俺達のリーダーだ」
ゲンの略称を聞いたSATの隊員は驚く。
「まさか真田源太か?問題児どころかむっちゃ優秀じゃん、土橋教官の話はウソだったのかよ」
「勝手な行動して退役したって話、ガセだったみたいだな」
(土橋か・・・まだ生きてやがったか、さっさとくたばればいいのに)
土橋雄哉。彼は源太のSAT時代の上官であり、権力に弱い差別主義者かつ何事も教科書通りじゃないと気が済まない性格で、豪快で柔軟な思考を持つ源太とは水と油みたいな関係だった。噂話をする隊員に声をかける。
「ちょっといいか?」
「はい?」
反応した源太よりも若く穏やかな見た目の隊員。
「土橋はODT関連の事件で指揮を執ったことあるか?」
「いえ、一度もありませんね。・・・ここだけの話なのですが、土橋教官、黒い噂があるんですよ」
「噂?あいつは腹黒いだろ?」
「そうなんですけど、殉職した隊員が多いのにそのニュースを見る度に、何故かうっすら笑ってるのですよ、普通なら笑う事態じゃないのに」
「(怪しいな。仮にも上官なら部下の死にはそれにふさわしい行動をとるハズ。にも関わらずゲス以下のしぐさをしている、何か裏があるハズだ)そうか。君も奴には気をつけろ、汚いからな」
その後の訓練でも一方的にレインボーチームが圧勝し、訓練の終わる夕方になった。
訓練後、声を掛けた隊員をレインボー指令室に呼び出し、大佐を挟んである話をすることになった。
「ゲン、彼はいったい」
「彼にはスパイとして土橋を監視させます。俺の読みが正しければ、奴はクロです」
「根拠はあるのかね。まぁゲンがただの勘だけで喋るだけじゃないだろうが」
「土橋はSAT隊員がODT関連の事件で殉職したことを知る度に笑っています。命を預かる人間からしてみればおかしい行動と思いませんか?」
「うむ。警視庁は最初、土橋を推薦したがシックスは君を選んだ。結果、君は実績を出し貢献している。今回も君を信じよう」
「ありがとうございます。ところで名前は?」
「自分、海野五郎と言います、階級は巡査部長です!」
「では海野巡査部長。君には土橋の監視を任ずる、くれぐれも言いふらすなよ」
突拍子もない危険な任務に就くこととなった海野は、戸惑いながらも敬礼し、盗聴器と専用無線機を渡され指令室をあとにした。
「ただいま・・・」
帰ってきた源太を待っていたのは、アナスタシアと蘭子、そしているハズのない未央が居間にいた。
「源兄、どうして黙ってたの?二人を住まわせてるって」
いつもの明るい口調ではなく、トーンの低い誰かを疑っている口調だった。
「ねぇ何か言ってよわかるように、源兄言ったよね、嘘つきはだめだって」
「はぁ・・・わかった、ただし他言無用だからな」
自分が日本に戻ってきたのはODTが日本に潜伏しているため、彼らを倒しにやってきたこと。多国籍特殊部隊レインボーに所属しており銃を持っていること。そして、彼女達がテロリストに命を狙われており、決して遊びでここにいるわけではないことを未央に話した。
「信じられるか?実際に二人意外にも仕事中にODTに囚われていたんだ、もしかしたらお前も死ぬ可能性がある、だから他言無用だ」
「・・・証拠ある?今すぐ出せるものが」
「あるさ」
ジュラルミンケースからHK416A5カスタム、レインボーのロゴを見せる。
「本当なんだ・・・源兄、疑ってごめん」
涙ぐみながら謝る未央の頭を優しく撫でる源太。
「いいさ、特殊部隊は身分を親しい人間にも明かしちゃいけない、知らないで当然だ」
「でも」
「もう泣くな、今日は泊まるってプロデューサーに言え」
彼女はプロデューサーに電話し、アナスタシアと蘭子のいる部屋に泊まることになった。
(居候が増えたり減ったり・・・任務とはいえ年頃の女の子と暮らすのは、なんだが肩身が狭い)
源太「みんな、居候とはどうだ、仲良くしてるか?俺は二人からのアプローチが重いくて大変だ」
ヨハン「美波とか?彼女は良識あるから安心してる、平常運転だ」
ジャン「俺なんてライフポイントゼロに近いよ・・・あの姉妹、保護されてる感覚ないし・・・」
レイモンド「俺んとこなんて昼でも薄暗いぞ。おかげでキノコ生えてきた」