武内は島村卯月、多田李衣菜、前川みくとともに関西エリアの地方番組の仕事に来ていた。源太達が首都圏から助けに来る確率は低いため、M18をスーツに隠し持っていた。
(彼らが首都圏を離れてしまえば346プロはおろか、首都が占拠される。全国にいるであろうODTに襲われなければいいが)
しかし、五階建て撮影スタジオにODTが襲撃し、あっという間に占拠されてしまった。アイドル達は武内と別室に連れて行かれ、彼も手を手錠で拘束されてしまう。
「ふざけたことはするなよ。彼女達がどうなってもいいなら、話は別だがな」
「一人で複数の人間を監視するのですか?」
「丸腰相手に負けるわけないだろ?」
「そうですか・・・」
テロリストが後ろを向いた隙に手錠を利用し首をへし折る。鍵を回収後、なんとかして開錠し死体から装備を奪う。
「FNCか。ブラックマーケットからの流れ物だろうな」
他に拘束されていた人々も解放し、脱出させる。
「プロデューサーさん。アンタも逃げろ」
「私はアイドル達を助けに向かいます、先に行っていてください」
そういってアイドル達を探しに一人、戦場に向かった。
一方その頃、卯月達はロッカールームに半裸で監禁されていた。テロリストの目線もいやらしい。
「ぐへへ・・・こりゃいいオカズだぜ・・・特にみくにゃんのが」
「まさかアイドルの半裸を眺められるとはな。ODTに入ってよかったぜ」
(助けてくださいプロデューサーさん・・・いつ襲い掛かって来てもおかしくありません・・・)
卯月達の緊張がピークに達したその時だった。かなりマヌケな声が廊下から聞こえる。
「はーいこっち向いて、写真撮りますよ」
「「へへへ・・・グオ!」」
突然の閃光にテロリスト達の視力が奪われたと思えば、脳天に穴が空いた。
「こんな事態にカメラマンが来るかっての。それはそれとして、大丈夫だった?」
入ってきたのはフラッシュチャージを取りつけた盾を持った男。彼の名はエリアス・ケッツ、通称ブリッツは苦境をユーモアで紛らす型破りな性格のポイントマンだ。
「え・・・どなたですか?」
「俺か?俺はブリッツ、君達を助けに来たんだ。早く着替えてくれないかな?」
後ろを向き、彼女達が着替えやすくするよう気遣うブリッツ。
「あ・・・はい・・・」
「フラッシュ付きの盾なんて、ロックだなぁ」
ブリッツの盾に興味が湧いた李衣菜。
「こいつは俺の武器だからあげないよ」
武内は狭い空間での戦闘でやや苦戦していた。長年現場から離れていたからか、距離感がなかなかつかめないでいた。
「現役時代はもっといい腕だったのだが・・・」
グレネードや地形を利用しなんとか潜り抜け、T字路でブリッツ達と合流する。
「プロデューサーさん無事だったのですね!」
卯月達が彼に飛びつく姿を見て目が笑うブリッツ。
「タケ、まさかアンタがプロデューサーだったとはな。レインボー時代と変わらんな」
「ブリッツも相変わらずユーモアがうまいな」
「え?知り合いなのですか?」
「ええ、まぁ・・・実は、プロデューサーの前は特殊部隊にいました。彼はその時の同僚です」
「「「えぇぇぇぇ!」」」
武内の過去に驚きを隠せないアイドル達。普通じゃない風格を備えていた彼だったが、まさか特殊部隊という経歴を持っていたことを誰が想像しただろう。
「タケがいればもっと早く終わりそうだな、今回はGSG-9の知ってる面子が来てるぜ」
「IQにバンディット、イエーガーもいるのか、なんと心強い」
武内の背後から敵が迫ってきた。近くの部屋のドアを開け、その中にアイドル達を非難させると、敵を迎撃する。
「お前のそれ、FNCか、こいつらは銃のデパートでも開くつもりか?」
「そうかもな!」
数で攻めてくるが、所詮は数回訓練しただけの素人。手練れの二人相手には役不足であり、2分経ったときには殲滅していた。
「クリア。先に進もう」
非常階段で一階まで降り、安全を確認する。なかなか見られない武内の姿に見惚れる三人。
「プロデューサーがこんなにロックだったなんて、初耳だなぁ」
「すごい人だと思ってましたが、別格ですね!」
「Pチャンカッコイイニャ!」
さっきまで緊張マックスだった三人だったがすでにリラックスしており、ブリッツにとって初めて見るタイプの人質だった。たいていの場合、救出されるまでソワソワしていたりして不安そうだが、彼女達はそうではなかった。
「いい教育受けてるな、俺も仕事がやりやすい」
「そうだな。あと少しで出口だ、気を抜くなよブリッツ」
広く長い廊下を抜けた後は玄関ホールにまっしぐらだったが、どこに敵が潜んでいるかわからないため警戒する二人。武内は自分から見て左側の壁から突き出ている金属製の止め具を見て、バンディットが仕掛けたショックワイヤーを思い出す。内側に金属製バリケードを張っておき、強力な電気を流して近づく相手を感電死させるものだ。
「みなさん、危険ですから右に寄っといてください」
「左の壁に近づくなよ、もれなく感電死だからな」
「「「はーい!」」」
ブリッツを先頭に一列に並び、殿を武内が引き受ける。
「おーいこっちだ!」
ホールから手招きするヘリの操縦士らしき男、イエーガー。本名マリウス・シュトライヒャーは、あらゆる投射物を撃ち落とすアクティブディフェンスシステム、通称マグパイを使い味方を守る。
「人質三人確保、もう大丈夫だ」
「ようやくホールだ~疲れたな~」
安心しきってる李衣菜の肩を軽くたたき、まだ終わっていないと言わんばかりの目つきで見つめる武内。
「敵は殲滅したかわかりません。少しだけ頑張ってください」
予想通り自分達と違う非常口から敵が攻めてきた。イエーガーはとっさに小さな迎撃装置、マグパイを設置し、手榴弾に備える。
「みなさん伏せて!」
その心配はいらなかった。敵の背後から別に動いていたメンバーが奇襲し、場を静める。
「あれ、タケじゃん、どうしてここに?」
不思議そうに武内を見るブロンドの女性、モニカ・ヴァイスことIQ。見た目こそ若そうだが実際は36歳と年を食っている。
「しかもその恰好、もしかして自力で奪ったってやつ?」
武内の恰好を見て目を丸くする筋骨の男性、ドミニク・ブルンマイヤーことバンディット。
「久しぶりですみなさん、今は346プロのプロデューサーをしています」
「おいマジか、結構えげつないレッスン想像するぜ」
「廊下の片側にショックワイヤー仕掛けるなんて行為、あなた以外に考えられません」
「敵はほぼ素人だ。だから銃弾がもったいないと思ってな」
バンディットの目を見て震えが止まらなくなった卯月。
「あの、プロデューサーさん?この人、一応味方ですよね・・・怖いです目の奥が・・・」
それもそのはず、以前、彼は潜入捜査官をしており、刑務所にも入ったしクスリも売り、殺人も犯した。しかし、実力は確かだったためGSG-9に入り、その後レインボー入隊、今に至る。純粋な卯月が怖がるのも無理はない。
「まるで俺が悪役みたいだな。これでも君のファンなんだが」
どこから持ってきたのか、卯月の曲が入ったCDを取り出す。
「あとでサイン欲しいんだが、いいか?」
「え・・・えぇ・・・」
その後無事に脱出し、マスコミをかわしながらバンに乗り込んだ。
イエーガーが運転するなか、みくはIQにじゃれつき彼女を困らせ、李衣菜はブリッツと仲良く会話し、卯月はバンディットに依頼されたサインを渡す。
「みんなカッコ良かったニャ。みくにゃんのサイン欲しいかニャ?」
「タケ。この子普段からこんな感じなの?」
「しばらく相手してくれないか?いい子だから慣れれば大丈夫」
「・・・ごめんなさい、サイン色紙持ってないないから、また今度ね」
いくら学習能力の高い彼女とはいえ、みくの扱いにはさすがに手こずる。
「ねぇねぇブリッツさん、この盾のフラッシュ使ってよ」
「おいおいそんなことしたら全員あの世行きだ。李衣菜だったっけか?気に入ったぜ」
冗談を交えて会話する傍ら、卯月はバンディット相手に固くなっていしまっていた。
「あぅぅ・・・」
「えっと、サインありがとう。でもそんなに固くなんなくても」
「だって怖そうですから・・・」
「・・・タケ、助けてくれ。彼女が怖がってる」
「島村さん。彼は無抵抗な女性に手を挙げるような人ではありません、安心して普段の貴女で接してください」
結局、彼女は怖がったまま空港まで送り届けられ、用意された専用機に乗り込んだ。卯月はしばらく眠れなかったという。
今年もよろしくお願いします
そして、卯月Pの皆様、彼女の扱いを不憫にしてしまって申し訳ございません