レインボーシックス346   作:MP5

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 グレネードランチャーは用途によって使い分け、戦闘を優位に進める。
 しかし、炸裂弾は殺傷力が高いため人質のいる場所で使うのは厳禁だ


12話  レインボーとして

 木更津の産廃所に着いた源太達は敷地の入口前にいた。ドローンを飛ばし辺りを偵察させると、三階建ての事務所に、背の高い気難しい顔をした男が窓から景色を眺めているのがわかる。

「土橋だな。偉そうに仕事着で居やがって」

「ゲンの上官って腹立つ顔してるな」

「なに、奴をひっ捕らえて吐かせるよ。行こうか」

 西側から入り、それぞれの得物を装備する。23区中の3区ぐらいの広い敷地の中に処分中の家電や空き缶等が種類別に山のように集められており、遮蔽物にしては心もとない感じがした。警備中の敵も余裕そうに探索している。音もなく背後から忍び寄り、口を塞ぎつつナイフで頸動脈を断ち切った。

「クリア。敵の顔を拝む」

 中東系であり、装備もFADと明らかに訓練が必要な武器なので、彼の所属をPMCであると結論づける。

「敵はODTメンバーではないな、雇われた傭兵だ」

「だとすれば土橋は何故ここに?」

「わからない、罠の可能性も考えよう」

 五郎から通信が入る。

「源太さんすんません、俺・・・」

「おいどうした!」

 返ってきたのは五郎の声とは違う、低く重みのある男の声。

「真田源太。SATの鼻摘み者の貴様が来ることはわかっていた」

「その声は・・・土橋!」

「まさか海野にスパイさせるとは思いもしなかったが所詮は素人、尾行が下手すぎる」

「何が目的だ、罪のないアイドル達を攻撃して何がしたいんだ!」

「ほうそこまで嗅ぎ付けたか、ただの戦闘バカだと思っていたが違うんだな。脳筋の田中は捕まり、千川は姿をくらましている。SITやSATじゃそこまで追い詰めることはできないからな」

「何!?」

「予めPMCやODTメンバーにはSATの訓練内容と装備、果ては攻撃手順までを提供してきた。だから奴らじゃ歯が立たなかったのだ、貴様らが来たことで歯車は狂ったがな」

 信じがたい事実だった。SAT司令官の土橋はテロリストに機密情報というカンニングペーパーを渡しておき、予習させておいたのだ。だからSATが突入しても返り討ちにあったのだ。源太が予想していた実力不足ではなかったのだ。

「貴様、ただで済むと思うなよ」

「どうとでも言え。私は日本の防衛に警鐘を鳴らすためにテロを起こした。だが、日本は未だ装備の補強をすらしておらずノウノウとしている!それを証明している私の行為に異議があるというのか!」

「・・・そうかい、だからレインボーに入れなかったのか」

「何だと!?」

 驚く土橋とは違い、冷静な源太。彼はレインボーで得た教訓と心得を語りだした。

「一ついいこと教えてやる、テロの抑止力とは武器の強化や教科書通りの固定概念じゃ得られない。俺達隊員一人ひとりが訓練や実戦で得た経験と勘、判断力こそがテロを防ぐ手立てだ。武器だけ豪華でも基本が備わっていなければただのクズになる。待っていろ土橋、貴様にそれを証明してやる」

 通信が切れ、土橋のいる事務所に向かって足を進めた。途中、敵の攻撃が多方向から襲い掛かろうとも彼らは銃を握り狙いを定め、倒して行く。テロリスト相手に一切の容赦はしない、それこそがレインボーの基礎的概念だ。

 

 

 

「敵スナイパーだ、ヨハン、イケるか!?」

「任せろ!」

 最後の敵を排除し、外の敵を殲滅してみせた。ドアを破り一気になだれ込む。あまりにも早い展開と綿密な射撃精度、地形を活かした戦術で優位に立ち、いつの間にか土橋のいる部屋の前に立っていた。

「壁に鉄のバリケードを仕込んでるな。だったら・・・」

 源太はヒートチャージを取り出し、壁に貼り付ける。それはブリーチングの師匠、サーマイト直伝の金属酸化物・金属・燃料を調合したもので大体の金属を熱で溶かし、C4で爆破することで壁を突破する切り札だ。

「離れろ!」

 全員が離れたことを確認しスイッチを押す。ゆっくり着火し金属の壁を溶かし、爆破してみせた。その後一気に部屋に入り込み護衛を射殺、爆発に腰を抜かした土橋に銃口を向けた。部屋の隅にはロープで体を縛り上げられた五郎がいた。

「言っただろ、経験と勘、判断力が大事だって」

「貴様のようなはみ出し者に・・・」

「お前は人間をバカにしすぎだ、専用の刑務所でじっくり服役するんだな」

 土橋に手錠を掛け、レイモンドに連行させる。源太は五郎の拘束を解き、救い出した。

「すいません、まさか尾行してたの気づかれてるなんて・・・」

「いいんだ。お前は立派に役目を果たした、特殊部隊員は生きてテロを阻止してこそなんぼだ、敬意を称する」

「源太さん・・・」

「さぁ行こう、明日は合同訓練だろ?」

「はい!」

 土橋を逮捕し仲間を無事に助け出した源太達は横須賀基地に戻り、事のいきさつを大佐に報告した。

「海野巡査部長、君の勇敢さのおかげでODTの重鎮を逮捕できた。よかったら君もレインボーに入らないか?」

「えぇ!?自分、ミスって死にかけたのであります、ですから」

「成績を確認させてもらったよ、射撃・体力に優れ、人格も真面目、十分すぎるほど素質がある。君の情報をシックスに送信し、一週間後に試験日程を組ませてもらった。日本であるから安心してくれ」

 結局、五郎は試験を受け、見事合格しレインボーの一員となる。本来ならイギリスに飛んで訓練するのだが、今回は特別に源太達と任務を遂行することとなった。

 

 

 

「ただいまー」

「お邪魔しまーす」

 源太は五郎を連れて1週間ぶりにセーフハウスに帰ってきた。今後は彼のところで寝起きすることになったからだ。

「おかえりなさい」

「スプリイェーズダム。おかえりなさい」

 蘭子とアナスタシアが出迎え、源太に飛びついてきた。

「おいおい人前でしないって約束だろ?」

「隊長、実家帰ったハズのアイドルが何故ここに?」

「実はここでかくまってるんだ、ここなら俺達の手が届くし安全だろ?」

「はぁ・・・報道を鵜呑みにしてはいけないでありますな」

 少し引き気味だった五郎だが、夕食の前に地下射撃場に案内され、別の意味で驚いた。

「ちなみにここはシェルター代わりになるから、結構頑丈にできてるんだ。お前も武器使ってみな、MP5以外にもあるからさ」

 試しにM1014を手に取り、ターゲットに目掛け発砲する。初めてセミオートショットガンを使うからか、なかなか当たらない。

「しっかり銃床を体に当てろ、グリップは軽く握るんだ」

 アイドル達には見せていないレインボーとしての源太が体を張って指導する。その結果、先ほどよりもいい成績でターゲットを撃ち抜けるようになった。

「あのう、ひとつよろしいですか?」

「なんだ?」

「武器は基本支給品ですから、自分は持っていません。どこで購入すればいいでしょうか?」

「購入しなくても鹵獲した武器があるからそれを使え」

 そういって武器庫からFNCを取り出し、五郎に渡す。

「こいつは5.56NATOが使われているから、使いやすいハズだ。自分好みの改造して使うといい」

 今後、彼の装備としてFNCが定着していくことになった。そして改造ノウハウは源太が仕込んでいくことになる。

 

 

 

 同じころ、ヨハンもまた美波と1週間ぶりの再会を果たし慎ましく食事を取っていた。

「美波。仕事の調子はどうだ?」

「順調よ、最近は電話での出演ばっかりだけどね」

 彼女もまたテロに警戒して外出を控えている。しかし、小梅達とは違い勝手な行動をしないため、ある程度の自由があり今でもテレビの仕事に出ていた。

「すまないな、こんな苦しい生活を強いらせてしまって」

「いいのよヨハンさん。都市だからいつ事件が起こってもおかしくないし」

「そうか」

 ウイスキーの水割りを飲み干す。

「美波、兄弟いるか?」

「弟がいるの。広島の方にね」

「大事にしなよ。昔、兄弟のいざこざが原因で大量虐殺がミュンヘンで起きたことがあってな、俺は鎮圧のため犯人の脳天を撃ち抜いたことがある」

「いきなり重いわね・・・その後は?」

「犯人の両親と兄貴が霊安室に訪れて、泣きじゃくっていた。その様子を廊下で見ていたよ、今でも焼き付いてる」

 グラスにウイスキーを注ぎ、今度はストレートで飲む。

「だが、俺はこの仕事を続けている。それがある種の贖罪になると思っているからな」

 美波は思った。彼は器用そうに見えて実はかなり不器用な男であり、何より命を大事にする人間であると。

「くだらん話だったな、さっさと寝ようか」

 ヨハンはこのまま自室に入り、就寝した。




今さらですが、銃の解説は必要でしょうか?
必要なら書きますよ
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