レインボーシックス346   作:MP5

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スナイパーライフルは遠距離から敵を狙撃する武器だ
しかし狭い室内や接近されると長い銃身が邪魔になって不利になるため、ハンドガン等のサイドアームを携帯していることが基本だ


13話  守るとは

 この日ヨハンは美波が通う大学のラクロスサークルの試合を見に来ていた。彼女は実際に試合に出ており、パスで味方のサポートに徹していた。

「良い動きだな」

 自前で買ってきたカメラを構え、活躍劇を撮る。すると、競技場近くの林から光の反射を感じる。その方向を見てみると不自然に反射するレンズが見えた。

「やれやれ・・・不粋だな」

 席を離れ、競技場の得点盤まで足を運び、ジェラルミンケースからMSG90A1を取り出し、不審な場所に狙いを定める。予想通りスナイパーが隠れていた。

(ド素人が。サイトの反射も考えとけ)

 ホイッスルと同時に引き金をひき、敵に引導を渡す。敵が倒れたことを確認すると観客席に戻っていった。

(美波が無事でよかった。試合が終わったらまっすぐ帰ろう)

 試合が終わり、控え室前で待っていると友達と話しながら出てきた。

「ヨハンさんありがとう、応援に来てくれて」

「美波が誘ったんだろ?偶然仕事が無かったから来れたんだ」

「もう、素直じゃないんだから」

 この会話からして恋人だと勘違いする部活仲間達。

「美波~彼氏さんと仲いいねぇ」

「安心して、誰にも言わないから」

 もはや冷やかしにしか聞こえないため、そそくさとヨハンの車に乗り込む美波。

「俺が恋人だったら苦労するぞ。まぁ知ってるか」

「ま、まあね・・・」

「?疲れてるから休め」

 車を追跡するタクシーがいたが、彼は気にせずセーフハウスに帰って行った。

 

 

 

 

 帰宅早々ヨハンは自室でMSG90A1の整備をする。精度が高く、連射もできる優れものであるが、それでもボルトアクションライフルよりパーツが多いためジャムが起きやすい。他の銃に比べて整備に神経をすり減らすのだ。

「・・・完了。もうこんな時間か、急いで降りるか」

 リビングルームに行くと、見慣れない青年がいた。

「あ、ヨハンさん、この子は私の弟よ」

 ヨハンに対して警戒心剥き出しの新田弟。

「アンタ、姉ちゃんの何?」

「ずいぶんな歓迎だな、俺はヨハン・シーボルト。留学生とでも名乗っておくか」

「こんな日本語達者な留学生がいるかよ!専門学校にもいないぜ」

「こら、謝りなさい」

「いいんだ美波。ところで俺は名乗ったぜ、君は?」

「・・・新田伸二」

「シンジ、お前がつけていたことはわかっていた。そんなに心配か?」

「当たり前だろ、アンタが得点盤の裏に行ってるところ見たんだ、ケースから銃を取り出した男を信用しろと?」

 ここまで目撃されていたことにヨハンは彼のステルス能力と洞察力に感服する。

「・・・よくわかった。シンジ、スナイパーが最も注意するべきはなんだと思う?」

 突然の質問に戸惑う新田弟もとい伸二。

「ディティールだ、例えばちょっとした違和感があれば非常に目立ち狙撃不可能になる。太陽の位置を把握してないなんてもってのほかだ、俺はそんな奴に鉄槌を下しただけだ」

 事実を言ってるが、信じてもらえそうにない。

「今日は泊めてやる。姉弟でじっくり話し合うんだな」

 

 

 

 

 翌朝、伸二は嫌そうにセーフハウスを後にする。美波によれば原宿にある大型ショッピングモールで行われている神谷奈緒・北条加蓮のサイン会に行ってから帰るらしく、道順はわかるらしい。

「ごめんなさい、あの子普段はいい子だから許して?」

「許すも何も、テロリストが悪い」

 いつも通り準備して訓練に向かおうとしたその時、大佐から無線が入る。その内容は信じがたいものだった。伸二が向かったハズのショッピングモールでテロが発生したのだ。

「なんですって、今さっきテロが起きたって!?」

「今現在アイドル2人とそのファン1人が監禁されている。解放された人質によれば、暴行されかけた2人を庇ったために負傷した青年がそうだ。ただちに向かえ!」

「ラジャ!」

 ヨハンはジープに取り付けた緊急用のサイレンを鳴らし、現場に急行する。既に源太と五郎が裏の非常口に駆けつけており、彼らと合流する。

「来たか。今から潜入する」

 五郎が先頭切って突入し、警戒しながら進む。今回ジャンが現場に到着していないためドローン抜きの作戦となったが、道端にあったジャマーを見つけ、敵も対策を施していることを知る。

「邪魔だ」

「ジャマーだけに?」

 くだらないボケが入ったが実際にジャマーは電子機器を使用不可能にするため、ドローンや監視カメラが役に立たないこともしばしばあった。

「場所が場所だ、向かい側から狙撃も考えられる。目立つなよ」

 言ったそばから銃声が響く。しかし自分達の方向には飛んできておらず、正面玄関にいた警察隊に向かっての発砲だったため、あえてスルーする。

「隊長。味方の突入だったのでは・・・」

「構わん、柔軟性高める良い教訓だろうよ」

 そんなこと言いながら二階に到達する。一階には敵に遭遇しないままだったが、ようやく巡回中の敵とコンタクトし先制攻撃をかけた。不意打ちに混乱する敵に慈悲もなく弾丸を撃ち込む。

「クリア。素人だったみたいだな」

「増援にPMCがいるかもしれない、油断するな新入り」

「ラジャ!」

 フードコートに差し掛かったその時、ジャンから通信が入る。

「ゴメン3人とも、今回はハッキングでサポートするから勘弁な」

「いいぜ、あとで飯おごれよ」

「わかったって・・・それはそれとして、近くに握手会の会場が見えるか?その裏に従業員用通路があって、3人は休憩室に監禁されている。だが警備も多いから気をつけろ」

「あいよ、速攻行く」

 ヨハンの狙撃で大方減らし、源太と五郎でヨハンから見て死角にいる敵を近接戦闘で排除していく。

「五郎。いくらアサルトカービンだからって、貫通力あるから気をつけて使え。損害賠償請求されたら給料から天引きだからな」

「え、そうでありますか!?」

(単純だな・・・まぁ有望だしいいか)

 ヨハンが胸中でツッコミを入れながら先に進む。休憩室と書かれた扉の前で、ヨハンはG36Cに持ち替えた。

 

 

 

「行くぞ。3・2・1、ゴー!」

 合図で五郎が扉を開け、フラッシュバンを投げ込む。視界を奪った隙に一気に制圧し、人質達を解放した。

「助けに来たぞ、もう大丈夫だ」

「あ、ありがと・・・フューズかと思ったら違った・・・」

(まさかクラスターチャージを実演したのか・・・)

 勘違いしたのは以前札幌で吐きそうになった神谷奈緒だった。スペツナズ流の生々しい戦闘術に翻弄され、特殊部隊が全員危険人物に見えるらしい。

「うーんめまいがする・・・」

「大丈夫であります加蓮ちゃん、一瞬で落ち着くでありますよ」

 か弱い印象の北条加蓮。実際に入退院の繰り返しの人生に光が差した束の間、テロリストによる立て籠もり事件に巻き込まれ自分の不運に嘆くだけだったが、今回も救われたことで心身ともに平静だった。

「やっぱりシンジだったか」

「どうして、アンタが・・・」

「これが俺の本業だ。立てるか」

 顔面痣だらけの伸二に手を伸ばし彼を立たせると、レイモンドに通信を入れる。

「負傷者発見、今どこにいる!?」

「屋上のヘリポートだ。そこで落ち合おう」

 無事に人質達を確保し、脱出地点の屋上に向かう。そこでジャンの操縦するヘリに乗り込み、レイモンドが救急キットからワセリンを取り出し、顔に塗りつける。

「少し染みるぞ」

「イテテ・・・」

「何があった。人質だった君が負傷してるなんて」

「奈緒ちゃんと加蓮ちゃんが傷つく様を見たくないから庇った」

「ゴメン。私がいらないこと言わなかったら・・・」

「ファンなら命投げ出してでもアイドルを救うのが基本だ・・・」

 ヨハンはそのセリフに感心し、頭をなでる。

「さすが美波の弟だ、いい男だ」

「へへへ・・・アンタもな」

「まず病院に飛んでくれ。ちゃんと治療させる」

 検査の結果、脳や骨に異常はなく2週間の入院だけで済み、伸二は二人から特別なサインをもらった。




クラスターチャージって、実際にあるのでしょうか?
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