数週間前。未央は西日本エリアで三村かな子とともに地方食べ歩き番組に出演していたがODTの襲撃にあい、商業ビル二階にある食品売り場のバックヤードにある休憩室に監禁されていた。かな子はかなり空腹らしく、諌めても落ち着く気配はない。
「お菓子食べた~い!未央ちゃんもそう思う?」
「かな子ちん、騒ぐとお菓子もらえないよ。疲れるし」
「でも~」
(うあうあどうしよう源兄、このままどっかに連れて行かれそうだよ・・・)
どこかで金属で補強した壁を破壊しそうな爆発が起き、銃声が鳴り響くなかで自分もパニックになっているが、なんとか正気を保っていた。
「手足縛られてるし、ポケットのスマホも取り出せないよ・・・」
外から足音が聞こえる。不穏になり身構えるが、ドアを破った人間の正体に目を丸くする。日本人ではなくサングラス、ゴーグルを掛け武装した外国人だったからだ。
「心音センサーでやたら心拍数が早い人間がいたと思ったら、案の定人質だったみたいだな」
「2人とも女の子か、むごい奴らめ」
ゴーグルをつけた男がナイフでロープを切り、2人を助ける。
「安心しろ、俺達は助けに来た」
「え・・・日本語?」
「話せて悪いか?」
「ううん、ありがと」
緊張の時間にかな子の腹の虫が鳴く。スキンヘッドの男がポケットからスティックチョコを取り出し彼女に渡した。
「わぁうれしい!ありがとう、お兄さん」
「どういたしまして。あまり騒ぐと腹減って倒れるぞ」
スキンヘッド改め、ジャック・エストラーダ。通称、パルスは困った顔をしながらかな子の相手をする。いままで彼女のようなタイプの人質を相手にしたことはないのだが、人間の心を見抜く能力があるため、見た目より苦労はなかった。
「さて、雑談は終わりだ。追手が来るぞ」
ゴーグルの男ジョーダン・トレイスことサーマイトがこの場をまとめ、自分達についてくるよう指示した。入り組んだ廊下で敵に遭遇する。
「予想通り来やがった」
地形を利用しながら556xiで応戦し、排除すると未央達に合図を送る。
「アッシュ、人質を回収した。そっちはどうだ?」
「こっちには簡単な仕組みの爆弾がある。さっそく解除する」
サーマイト達とは別の方向に進んだアッシュと呼ばれた赤毛の女性、イライザ・コーエンは手慣れた手つきで爆弾を解体し、捜索にもどる。
「完了。キャッスル、誰かいた?」
「どうやら派手にやらかしたな。今のところ死体以外誰もいない」
黒人隊員キャッスルこと、マイルズ・キャンベルによると銃撃やグレネードによって死亡した人間ばかりで、生存者は見つけられなかったらしい。
「何故2人が生きていたか知りたい。サーマイト、人質の身元はわかるか?」
「そうだな、唯一知ってるのは本田未央ぐらいか。未央、そっちの子は?」
「この子は三村かな子って名前だよ、マイトン」
「なんだそのあだ名は。サーマイトでいい」
「あ、あれ、怒ってる?」
呆れた声のキャッスル。
「とにかくわかった。合流しよう」
脱出ポイントに近い二階のトイレ前に合流したチームは、全員の無事を確認した直後、背後から敵が強襲してきた。とっさに殿を務めたキャッスルが取り出した携帯型防弾バリケードを、入口に瞬時に展開し攻撃をシャットアウトする。
「バリケードを張った、これで大丈夫だ!」
「すご・・・源兄の仲間ってカッコイイなぁ」
「え、今さっき何て?」
「源兄って言ったけど?」
「まさかゲンの知り合いか?」
「へへん、元ご近所さん」
「マジかよ」
サーマイトは男子トイレの窓を開け、下を確認する。下には特に何もなく、ワイヤーを使えば降りられることがわかった。
「よし、今からここから脱出する。未央と俺から順番に降りるから、落ち着いて行動してくれ」
サーマイトは未央を両肩に担ぎこみ、セットしたワイヤーを使って慎重に降下する。彼女を降ろすとクリアリングし安全を確認する。
「次はかな子だ、俺と一緒に降りるぞ」
「うぅ・・・怖いよぉ」
「モタモタしてるとバリケードが壊される。大丈夫だ、信じてくれ」
パルスは怖がる彼女を両肩に担ぎ、窓から出ようとするが予想以上に重く、慎重に行くたびに体重が彼に掛かる。
「こんなこと言いたくないが、食事制限した方がいい。今ならアッシュから指導してもらえるぞ」
「ふぇぇぇ・・・お菓子食べちゃだめなの?」
「本気で痩せたいなら、多少は我慢しろ」
「終わったら食べていい?」
「・・・リバウンドするぞ」
どうにか脱出したチームと未央達。保護した彼女達をバンに乗せ、かな子を餌付けしながら事情聴取することにした。
「未央。俺達の存在をゲンから聞いたのか?」
「うん、家に押しかけて聞いたんだ」
「はぁ・・・アイツは遊びで来たんじゃないんだ、自重してくれないと君にもテロの魔の手が来るんだぞ」
「だって」
「ともかく口外禁止。友達にも喋っちゃダメだからな」
サーマイトが口うるさく説教する一方で、アッシュはかな子から346プロの現状及びODTの情報を聞き出していた。
「かな子ちゃん、何でテロリストに捕らわれていたか心当たりある?」
「有名だからですかね、これでもCD売れてるんです」
「そうだとしたら他の人でもいいと思うの。今回あなた達だけよ、生きていたの」
「・・・だとしたらわかりません。346プロに恨み持ってる人がやったのか、そうでないかも」
「(千川が姿を消している以上、真実はわからないか)あなた達のプロデューサーは?今日はいなかったの?」
「番場プロデューサーが付いていたんですが、何故か撮影中にいなくなってすぐにテロが起きたから、陰で殺されたのかも」
「(またこのパターンか。スペツナズの一件と似てるわね、GSG-9は例外として)武内って人にお願いできる?1年前に採用されたプロデューサーの履歴書のコピーくださいって」
英語で記したメモをかな子に渡す。なんらかの数字も書かれているが、何の意味かはわからない。
「それともう一つ、沈黙が女を輝かせる。私には当てはまらなかったけど、あなたなら当てはまりそうね」
かな子にちょっとしたエールを送る。
「が、頑張ります!」
彼女はアッシュの手を強く握り、うれしそうに微笑んだ。
「ダイエットの秘訣、教えてください!」
「そうね。とりあえずお菓子食べないで体動かしなさい」
未央達を救ってから一週間後、サーマイトは1人待ち合わせ場所の346プロの応接間にいた。
「サーマイト。あなたも日本にいらしたのですか」
武内が書類の山を手に現れる。全て履歴書のコピーだ。
「仕事が一つ片付いたから応援でな」
「ホワイトマスクの件ですね」
世界各国で毒ガス散布等によるテロで世界を恐怖に陥れたテロ組織だったが、レインボーの活躍によって壊滅し、その残党も数か月後に殲滅した。
「情報収集のクセ、変わってなくてよかったぜ。っで、これが履歴書か?」
全てに目を通し、コーヒーを飲む。
「こいつら、経歴バラバラだな。新卒から自営業まで様々だ」
「ええ。何故かほとんどが採用され、アイドル課に配属されました。全員が全員、テロリストじゃないと信じていますが・・・」
「確かに殉職した奴もいるって話じゃないか。たいてい中年らしいが」
「多くの方々が事件後姿をくらましていまして、捜索願を書く毎日ですよ」
「よし、事務所拝見していいか?」
「はい?」
武内を後目に事務所に向かうと、机を徹底的に調べ始めた。引き出しやファイルの中からゴロゴロと美城専務に対する恨みや妬み、アイドル達へのよろしくない愛情表現を書き記したメモ、そして、周波数の書かれた紙を発見する。
「132.78・・・試しに繋ぐか」
置いてあった無線機に周波数を入力し、耳に当てる。すると、若い男の声が聞こえた。
「作戦失敗、繰り返す、作戦失敗・・・我々の目標に邪魔者が出現・・・」
無線機を切り、武内に無線の内容を話すと、なんとも表現しにくい顔で驚く。
「そんな・・・堂々とテロ作戦がここで立てられていたなんて・・・」
「まぁ稚拙な連中だから壊滅も時間の問題だ。そこはゲン達に任せるさ」
そう言って横須賀へと向かうのだった。
時系列はシージの後、デレマスの1年後です