レッスンスタジオ立て篭もり事件から三日後、18日21時都内のホテルでODTがまたしても人質を盾に篭城する事件が発生、エントランスホールには爆弾が仕掛けられていると通信が入った。源太達若きレインボーは、ホテルの屋上からラペリングで進入し、現在、30階辺りにいた。
「ジャン、人質は何階にいる?」
「カメラの映像には25階と12階、5階にいるな。人数で言えば合計15人いる」
「そんなにいたのか。敵の装備は?」
「AUGにM11、何故かM79を持ってる奴がいる」
「グレネードランチャーか。ヨハン、援護は任せた」
「あいよ」
フェイスマスクで顔を隠した隊員、ヨハン・シーボルトはスナイパーライフルの名手で、PSG-1の廉価版、MSG90A1を所持している。
「先手は俺に任せろ、レイモンドは負傷した人間の治療を任せる」
「おう」
最後の隊員、赤十字の腕章をしたレイモンドは救急キットを常備した衛生兵の役割を果たす。戦闘もお手のもので今回はMP7A1を装備している。
「行くぞ、まずは25階を目指す」
非常階段から下り、25階に入った。電気が点いていないからかとても暗く、全員赤外線センサーを装備し、探索する。床は絨毯が敷いてあるからか足音の心配はないのだが、逆にいえばいつ襲撃を受けてもおかしくない。スイートルーム前に差し掛かったとき、テロリストの会話が部屋から聞こえてきた。
「従業員二人とアイドル三人。男二人はいいとして、俺さ蘭子ちゃんのファンだからさ、サインくらいもらってもいいよな?」
「馬鹿言え、手足縛っといてサイン頂戴はねえだろ、俺たちは仕事できてるんだ、真面目にやれ」
ドアの隙間からスネークカムで覗いてみると、以前助けた二人と従業員二人、そして、アイドルらしい少女が1名いた。
「タッチアンドゴーで行く、合図で突入だ」
源太はドアにC4をセットし、起爆スイッチを押す準備に入った。
「3・2・1、ゴー!」
スイッチを押しドアを破ると、源太を先頭に突入しテロリストに発砲、たった5秒で制圧してみせた。
「電気をつけるから待ってろ」
照明がつき明るくなった部屋。蘭子の目の前には以前自分達を助けてくれたナイト達がいた。
「君達はしょっちゅう危険にさらされるな。運が悪いのか良いのか」
「あ・・・ありがとうございます」
今度は素直にお礼を言えた蘭子。
「礼はいい。俺達の任務は人命救助だ、当然だろ。それより屋上に救助ヘリが止まってるからそれに乗って脱出するんだ」
「あ、あの・・・」
「どうした蘭子、まだ用か?」
「他の方々も助けてください。その・・・恐怖の中にいますから」
「任せろ」
彼の自信あふれる表情に惚れる蘭子。もちろん源太はそんなことを知る由はない。その一方で、気だるい雰囲気を醸し出す少女が緊張感ぶち壊しの欠伸をする。
「あ~あ、杏もう仕事したくないなぁ~杏だけ助け出さなくていいよ?」
「おいふざけて言ってるのか?」
自分達の救助の意味を完全に台無しにする少女に怒りを覚えたレイモンドが、サプレッサー付きM9A1を取り出し眉間に突きつける。しかし、それでも態度を崩さない。
「だって働いたら負けって言うじゃん」
「なるほど理解に苦しむな」
「よせレイモンド、ガキ相手にムキになるな」
「じゃあ天国に送ってやる」
ヨハンが止めるもそう言って躊躇なく発砲する。しかし、眉間には穴が空かず、鏃みたいなものが刺さっている。これは非殺傷麻酔弾であり、大人でも一発で寝かしつける程の量の鎮静剤が塗られている。
「しばらくしたら目を覚ます。死なないさ」
「・・・全く、冷や冷やさせやがって」
結局、脱力系アイドル双葉杏は一週間ほど目を覚まさなかった。
12階の探索をしていると、ユーリ大佐から通信が入る。その階の宴会場には国の大臣が人質として囚われているらしく、優先的に救助するよう指示された。カメラをハッキングしたジャンによれば、テーブルが並べられており、いざ混戦となっても遮蔽物を作って戦えるらしい。
「ヨハンの出番だな。扉を開け、ジャンがフラッシュバンを投げたら外から頼む」
「あいよ」
宴会場の扉を開き、ジャンは勢いよくピンを抜いたフラッシュバンを投げ、敵の視野を妨害する。怯んだ隙にMSG90A1を構え正確かつ素早く敵を仕留めた。
「突入!」
源太を先頭に室内に入り、辺りをクリアリングする。
「クリア。もう大丈夫です」
「ありがとう君達、これからどうすればいい?」
「屋上を目指してください。テロリストは上にはいません」
「わかった、実は下にも若い子が囚われてる、頼んだ」
「はい、護衛にレイモンドをつけます。脱出してください」
いざ負傷しても処置できるようレイモンドに護衛させ、残りのメンバーで5階にいる人質救助に向かった。
「大佐、無傷で救出完了しました。引き続き任務遂行します」
「流石だ君達、しかし、人質の一人を麻酔銃で撃っちゃいかん。彼には後でそれなりの処分を言い渡す」
「・・・申し訳ありません、俺らが力づくで止めていれば」
「もう過ぎたことだ、君達は任務に集中したまえ」
「了解」
5階も似たような空間だが、何か違った。明らかにテロリストがこちらを襲撃する空気が漂っていた。源太はジャンにドローンで偵察するよう指示した。
「M79持った奴らがいるフロアがここだ。レイモンドいないから慎重に頼むぜ」
「任せろ、その時は俺の出番だ・・・っと、さっそくお出ましだ」
ドローンを追ってきた敵が自分達の前に現れた。源太は愛用のHK416A5カスタムを構え応戦し、眉間を撃ち抜き仕留めた。その後駆けつけた敵の砲火により陰に隠れ、M320に炸裂弾を装填した。
「食らえ」
M320の引き金をひき、炸裂弾で複数の敵を無力化し、5階で一番広いレストランにいる人質の救出に向かった。しかしここで計算外なことが起きる。ヨハンのMSG90A1がジャムを起こし、発砲できなくなった。
「クソ、メンテに時間がかかる。ジャン、お前のFAMASを貸せ!」
「わかったよ、ただし帰ったら酒おごりな」
ジャンは持っていたFAMASを貸し与え、換わりに敵の使っていたAUGをもらっていった。
「なぁ思ったんだが、ヨハンがAUG使ったらどうだ?FAMASは連射速度高いからスナイパー向けじゃないぞ」
「・・・確かにそうだな」
ジャンとヨハンはメインアーム取り替え、無事に5階の人質も救出した。
2階の踊り場からエントランスホールを見ていると、中央に堂々と爆弾が設置されていた。しかし、三人は慎重に近づき二人に守られながらジャンは爆弾処理を開始する。
「罠だよな見え見えの」
「途中で切り上げても大丈夫か?」
「俺達でジャンを援護するぞ」
「おうよ」
源太の見解は正しかった。受付に隠れていた敵がこちらに向かって乱射しやむなく処理を中断、迎撃態勢を取った。わんさかと湧いて出てくる敵に対応しながら数分後、ようやく鎮圧してみせ、爆弾処理も無事に終えた。
「みんな無事か?」
正面玄関からレイモンドが駆けつけてきた。どうやら輸送を終えたらしい。
「ヨハンが肩を撃たれた、治療を頼む」
無事事件は解決したものの、何故アイドルが2回も人質として捕まっていたか謎のままだった。それ以上に何故爆弾がわかりきった場所に置いてあったかもわからずにいた。
(まさか俺達を試すためにこの事件を起こしたのでは?んなわけないか)
敵の一人のマスクを剥がし、顔を拝んでみた。
「若者だ、しかも日本人。ん、懐に何か入ってる」
写真らしいものが入っており、それを手にとって見てみる。蘭子と小梅、二人の友人だろうか、同じくらいの年頃の少女が一緒に商店街を歩いている写真だった。彼女達がカメラ目線じゃないことを考えると尾行して隠れて撮ったものだ。
「ストーカーか。いや違う、これは尾行のプロが撮ったものだ、それを彼らに配っていたんだ。それなら25階の奴らの会話に合点がいく・・・なんだろう、346プロに恨みを持った人間がODTにテロ行為するよう煽動したのかも」
源太が考察している様子を、陰から観察する味方ではない誰かがいた。
(あれがレインボーか・・・想像以上に手強い相手。私の計画が達せられない可能性が出てきたな)
後日、蘭子は事務所で源太達レインボーの絵を描いていた。その様子を少し強面の男が見ていた。彼は武内、シンデレラプロジェクトを推進する敏腕プロデューサーだ。
「神崎さん絵を見せていただけないですか?」
「ぷ、プロデューサー、恥ずかしいですよ!?」
「いえ、その、気になることがありまして、少しだけでいいですから」
渋々武内にその絵を見せる蘭子。無表情のなかに何らかの確信を得る。
(国際連合のエンブレムにRAINBOWの文字・・・間違いない、レインボーが日本に来ている。この国で行われようとするテロ活動を察したな・・・私のできることは、彼女達をテロの脅威から遠ざけることか・・・)
彼の左肩に痛みが走る。絵を返すといつものように礼儀正しくふるまう。
「ありがとうございます神崎さん」
彼は次の仕事の準備を始めた。
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