レインボーシックス346   作:MP5

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 情報には多くのガセがある場合がある。見分けるには裏付けや検証、何より、観察眼が欠かせない


15話  真実への一歩

「っで、346プロの若いプロデューサー100人中80人がODTメンバーだったってオチか?」

 昨日、サーマイトと武内が大量雇用した人間を調べた結果の人数である。多くは現場で死体として発見されたが、まだ生き残りがいるらしい。

「信じがたいが事実だった。内部調査とジャンのデータ解析でわかった」

「じゃあ俺達が撃った敵の中にプロデューサーがいたってことか。経営陣はどうしてる?」

「何故このような雇用をしたか事実確認中らしい。俺の予想だが、反専務派の連中が人事したんじゃないのか?」

「・・・専務は何故、テロを感づいたんだろうな。残酷だが、知らなければ生きていたのにな」

「ヨハン。その真実はレイモンドと小梅が調べてくれるさ」

 夜未明、源太とヨハン、このような話を行きつけの屋台でラーメンをすすりながら語り合う。

 

 

 

 一方その頃、レイモンドと小梅は美城邸に訪れ、事件の捜査をしていた。彼女は霊感が強いため、いわゆる心霊捜査を頼んだところ、喜んで引き受けたらしい。

「何か感じるか?」

「・・・うぅぅ」

 小梅の身に何かあってはいけないため救急キットとMP7A1、スモークグレネードを用意するという作戦時と変わらない装備で訪れていた。顔色が悪いため背中を優しくさする。

「大丈夫か?」

「大丈夫・・・殺人現場って初めて訪れるから、吐きそうになったの」

「出来そうか?無理なら後日でもいいんだぞ」

「でも感じるの、専務の気配が」

 レイモンドは心霊ネタが苦手ではなかったが、思わずMP7A1のグリップを強く握りしめる。

「来ました・・・専務、お久しぶりです」

 何がどうとかわからないが、どうやら小梅が彼女の霊を感じ取ったのは確かだった。

「この人ですか?私の命の恩人で、テロ事件解決に挑んでいる人です」

「ど、どうも、多国籍特殊部隊レインボーのレイモンド・コーエンといいます」

 柄にもなくかしこまって挨拶する。

「レイモンドさん、知ってること、話してくれるって」

「あ、ありがとうございます・・・」

 曰く、最初に不穏な動きがあったのはプロジェクト・クローネが始動した直後だった。今までより忙しくなり、精を出していたため調査できなかったが、自分の失態でシンデレラプロジェクトに救われ、専務に昇進し時間に余裕ができた時に千川の休暇を見計らって彼女の机を調べたら銃が入っていた。最初はおもちゃだと思っていたがマガジン内の弾丸を拝借し古い友人に調べてもらった結果、本物の弾丸だと判明。これを知ったのはいいが、いささか口外できる内容ではなかった。そこで彼女は尾行や盗聴で千川の身元を徹底的に洗った。信じたくなかったが、長年彼女は何らかの方法で会社の金を横領し、ODT運営の資金に充てていたことを知った。そう、私念で会社を乗っ取ろうとしたのだ、テロという最悪な方法で。

「だが銀行強盗で金には困っていなかったハズだ」

「問題があったことも調べたみたいですよ」

 調査を進めていくなかで、重大なことを知った。ODTにおける彼女の立ち位置は幹部級で悪徳PMCやブラックマーケットの窓口役を務めていたこと、テロ計画自体は別の人間が立てていたがそれに脚色したのは彼女だったってこと。PMCから優秀な人材を大量に雇い、多額の報酬を与えるため金使いが非常に荒く、資金振りは決して良くなかったこと。そして、彼女は訓練を受けていなかったことを知った。すぐさま集めた証拠を提示し退職を迫ったが、とぼけられ、全く相手にされなかった。その日、自分は遠くから撃たれ、絶命したらしい。

「そんなことが・・・資料として記しておく、仲間達にもそれを伝えよう」

「もう限界みたい・・・専務も私も疲れました・・・」

 力なく倒れた小梅を抱きかかえ、下のソファーに寝かせる。事の発端を社長である父親にその事を話すと、非常に残念がり、泣き崩れてしまった。

「どうして私に相談してくれなかった・・・こんなむごい死に方をせずに済んだのに・・・どうして・・・」

「あなたに負担を掛けてしまったらいけないと判断したのでしょう。残念で仕方ありません」

「頼みがある、ODTを壊滅してくれ。私もできることなら、全力で協力する」

「もちろんです、俺達はテロ撲滅を目標にする特殊部隊ですから」

 

 

 

 

 心霊捜査はロシアで始まり、アメリカが続いて発展していった。しかし、日本ではそのような捜査は認められないため、証拠としては使えないが参考資料としてファイルに保存したものを大佐に提出する。

「なるほど、守銭奴どころかテロで私物化しようとする悪女だったか。今現在重要参考人として全国で手配書が流れている、君達は引き続き任務に戻ってくれ」

「ラジャ!」

「それと、ゲンとゴローは残ってくれ。話がある」

 源太と五郎以外のメンバーが指令室を離れると、大佐はジェラルミンケースを取り出す。

「これは・・・ポケモンの最初みたいに選べるのでありますか?」

 中にはグロッグ18・CZ75・コルトガバメントが入っており、入隊記念に本部から送られたものだった。それぞれ違う弾薬を使っているため、慎重に選ぶ必要がある。

「遅れてしまったが好きなものを1丁だけ選ぶといい。解説役にゲンには残ってもらった」

「・・・どれもSATじゃ使わないものばかりだ。ざっくり言えばグロッグは高速連射できるが扱いが難しいしセーフティーも独特だ、ガバメントは威力がある分反動制御が困難だがサプレッサーと相性がいい。CZ75は扱いやすいが威力が低い。俺のおすすめはCZ75だ、M9A1と似たような扱いができるからな」

「な、なるほど・・・すいませんが、射撃場で使ってみていいであるますか?」

「わかった」

 射撃場に向かい、3丁の順番に試す。初めて使うものばかりでおぼつかない。

「グロッグはすごいであります、油断したら肩を壊すであります」

「トリガーセーフティーも面白いだろ?なにせ本当にトリガーにあるからな」

「ガバメントも自分には合わないであります。隊長より小柄で軽いですから」

 五郎は口調で大男と思われているが、実際には176センチと源太より細身である。

「CZ75を使います。ありがとうございました」

「ゴロー、これからも頑張りたまえ」

「はい!」

 こうして彼のサイドアームも決まった。

 

 

 

 特に出動もなく無事に帰宅した源太と五郎。いつも通り蘭子とアナスタシアが出迎えてくれる。

「ただいま・・・って、どうしたの!?」

「水着です、源太さん」

「そうじゃなくて、何故それ?」

「喜んでくれると思って・・・ほら、夏近いですからいいと思って」

「そうか・・・ってなるか!!」

 いつもの漫才じみたやり取りにもすっかり慣れ、冷静に諌める五郎。

「あ、あのう、ここで漫才はどうかと」

「五郎、さっさと休め。彼女達と少し話をする」

 睨みを利かせ、五郎を自室にいち早く帰らせ、居間で二人に説教する。

「あのねぇ、これはシェアハウスじゃないんだ。遊びじゃないって言ってるだろ?」

「ごめんなさい・・・源太さんとの時間、大事にしたいです、任務終わったらイギリスに帰ります、私達離れ離れになります」

 精一杯日本語で自分の気持ちを言い表すアナスタシア。源太も二人が自分に対して好意を抱いていることは知っていた。

「確かに俺は任務が終わり次第、イギリスに戻る。けど、このご時世Eメールもあるし、会いに行ける時間があればどこからでも飛んで行こう。約束する」

「本当ですか?ウソじゃないですよね?」

「ウソついてどうする、約束は守る主義だ。安心してくれ」

 いつもの頼りがいのある表情に、二人はうれしそうな顔をしながら涙を浮かべていた。

「おいおい。涙は拭いな、君達には似合わない」

 源太は優しく抱擁し、安心させる。その後、私服に着替えさせ、夕食を一緒に作った。

 

 

 

 翌日。千川が関東地方、匿名の通報で千葉浦安に潜んでいることを掴んだ源太達はヘリで向かう。だが、そこは日本で最も訪れる遊園地から車で10分くらいの住宅地だった。当然土地は高く、建っている家もセーフハウスよりも大きい。そのうちの一件の家の上空でヘリが静止し、ファーストロープで降りる。

「派手にやるか。行くぞ」

 ヒートチャージを取り出し屋根に設置する。全員が離れたことを確認しスイッチを押すと人間が二人入れるほどの穴が空き、そこにスモークグレネードを投げ、レイモンドを先頭に入る。

「どういうことだ、誰もいない」

 スモークが消え、辺りを確認すると家具一つない。空き家だったのだ。

「敵が外に・・・クソ、偽報だったか」

 窓を覗くと武装した数十人のテロリストが迫って来ていた。

「いいか、返り討ちにするぞ」

「「「「おう!」」」」

 玄関からC4で玄関を発破した音が響き、緊張が走る。遮蔽物のない室内で生き残る方法、それは

「散開し、罠張るぞ」

 全員持っていたC4を二階のあらゆるところに設置し、敵に備える。

「探せ!幹部が偽報をしてまで復讐の機会を与えて下さったのだ、絶対勝つぞ!」

 居場所がわかってしまうほど大きな声。源太はあえて太陽を背にし、影を作りおびき出す。のこのこ出てきたところを待ち構え、スイッチを押し一網打尽にしてみせた。

「よしいいぞ。みんな無事か?」

「こちらヨハン、単純すぎるぜ」

「ジャンだ。俺も倒したぜ」

「こちらレイモンド。四人撃破」

「こっちは二人ダウンであります」

 思わぬ反撃にあった敵は統制が取れなくなり、銃を落としてしまうものが現れ戦意なんてものはとっくになかった。

 

 

 

 

「俺達さ、とんでもない奴らに喧嘩売ったのかな。俺、初陣だけどODTやめるわ」

「俺も。幹部達の都合で動くなんてバカバカしくなってきた」

「アーニャちゃんとお近づきになれるって聞いたから入ったけど、騙されたみたい」

 外で待機していたテロリスト達は装備を脱ぎ捨て投降した。あまりにも呆気なさに驚くが、それよりもバラクバラを脱ぎ捨てると普通の学生から履歴書で見た写真の人物がいた。

「貴様プロデューサーだな、やったことを洗いざらい吐いてもらおう」

「最初は夢だった芸能関係の仕事をするのかと思っていたんだ。けど、ちひろさんに連れられて山奥に入って武器の扱い、戦闘方法、筋トレに励んだよ。多くはアイドル達を守るための訓練だと信じ切っていたんだ、レッスンスタジオ襲撃事件が始まるまでは・・・今さら退けなくなってこうなっちゃったけどね」

「なるほどな、秘密裏でそんなことを」

「しかも教官も教官で本格的だったし・・・土橋だっけ、あの人が直接指導したんだ。CQBやC4のノウハウとか」

「俺なんか、ちひろさんじゃなくて、もっと怪しい人に声かけられたよ。警官のバッチ見せられた」

「なんだって、バッチ?」

 源太は学生に聞き返した。

「そうなんすよ。俺が万引き成功して確認してたら、スーツ着た若くて目つきの悪そうな男がさ、バッチ見せてきてこう言ったんだ。見逃してやるから日本を変えてみないかってさ」

「そいつはこんな奴だったか?」

 スマホを取り出し、小田原の顔写真を見せる。

「そうそうその人だ。俺達騙されたな・・・もう未来ないぞ」

 消沈する若者達に喝を入れる源太。

「お前ら、諦めるな。他人事かもしれないが自分達が犯してきた罪を認め贖罪すれば、絶対にわかってくれる人間が出てくる。精一杯生きろ、俺からは以上だ」

 搬送用ヘリが到着し、捕虜を乗せると飛び立っていった。少し遅れて自分達の迎えのヘリが到着し、全員乗り込む。

「全員無事か。今日は偶然IQが来ていて通報した先を調べてみたんだが、発信源は警視庁内部だった。信じたくないが警察内部にテロリストがいる可能性が」

「大佐。小田原がクロです、捕まえた敵の中に奴の顔を見たのがいました」

「なんだって!?急いで確認してみよう」

 通信を一旦斬り、しばらく待ってみると、驚いた声が返ってきた。

「大変だみんな、小田原は通報した直後、自分の銃を持って外出している。誰も行先を聞いていないみたいだ!」

「なんですって!?クソ、感づかれたか」

「君達は一旦戻って来てくれ、今後どう転がるかわからん」

 もどかしい心境のなか、源太達は横須賀基地に帰っていった。




それにしてもガセ情報に踊らされてますね源太達は
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