レインボーシックス346   作:MP5

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 盗聴する際は事前に相手を調べてから行う。効率よく情報を仕入れるためだ


16話  利用する者

 源太はアナスタシアの護衛のため撮影スタジオに来ていた。今日はグラビアの仕事で、彼女は水着姿で撮影されている。なかなか見ることのできない撮影現場だったが、源太としては退屈な時間でしかなかった。

(大佐め・・・いくら娘が心配だからって、こんな無茶を・・・)

 サングラスとスーツを纏っているがその下に防弾チョッキを着こんでおり、ショルダーホルスターに45T、釣り竿ケースにはHK416A5カスタムとP90が入っていた。

「アーニャちゃん笑って!そうそういいよぉ!」

 カメラマンの視線がなんだがイヤらしい。もし大佐が直接護衛に来ていたら血の海になるだろう。

「カメラマンさん、そろそろ休憩入ってもいいですか?何時間も経っています」

「あれ、もうこんな時間か。よし、休憩しよう」

 休憩に入っても楽屋の前で警戒する彼の険しい顔は変わらない。そんな彼を心配してアナスタシアが声を掛ける。

「源太さん怖いですよ。笑顔してください」

「任務中には笑えん。しかも大佐の私用だ、納得できない」

 誰もいないことを確認すると、耳元に息を吹きかける。

「うおっ、なんだいきなり!?」

「ふふっいたずらです」

「・・・」

 説教しようと考えたが、焼石に水になるであろうから諦めた。

「頼む、スキャンダルになりうる行動は控えてくれ。俺が殺される」

「なら笑ってください、一応婚約者の言うことも聞いてください」

 そう言われ仕方なく笑った。

「ハハハ・・・もうやめてね」

「でもいつか・・・結婚会見開きたいです」

「なんでだろう、近いうちに殺されるかも・・・」

 グラビア撮影の後、今度はテレビの取材を受ける。どうやらラブライカの復活で世間は大歓声が沸き上がっているらしい。

「昨日、新田美波さんに取材したのですが、ファンが待っていてくれたことを知ってうれしそうでした。アーニャちゃんはどう思うかな?」

「私もうれしいです、ファンのみなさんに迷惑かけました。夜空の星のようにキラキラ輝きたいです」

「そうですか、ところであの人は?」

 キャスターが源太に指差して質問する。

「彼はこんや・・・」

「俺は彼女の友人です、気にしないでください」

 いろんな意味で命の危険を感じた源太は必死にごまかす。

「でもさっき、こんやって聞こえたのですが?」

「あ、あはははは、今夜の晩飯はボルシチですって言いたかったんですよ!」

 この後みっちり叱った。

 

 

 

「もう言わないでね、スキャンダルは危険だから」

「ダー・・・」

 かなり残念そうだが、これは彼女のアイドルとしての寿命を縮ませないための行動である。

「そうだ、近くにおいしい店知ってるんだ。そこでお茶しよう」

「はい!」

 喫茶店に入ろうとしたその時、背後から視線を感じ、一旦立ち止まる。彼女から鏡を借り背後を確認すると、カメラを構えた男がいた。

「ド素人が・・・」

 そう言って彼女の手を引き、男の方に走る。尾行に気づかれたことを知った男は急いでビルの陰に隠れ、身を潜める。しかし、源太を撒くことはできず、誰もいない行き止まりに追い詰められる。

「おい写真撮ったか?ウソついても職業柄、アンタのような人間の消し方も知ってる」

 45Tにサプレッサーを取りつけ、眉間に突きつける。

「ヒィ!と、撮りましたごめんなさい!」

「じゃあデータを寄越せ、そのかわり金を払う、200ドルでどうだ?」

「円にしてください、ヒッ!」

 撃鉄を起こし、いつでも撃てる状態にする。懐から100ドル札2枚取り出し、手渡す。

「それと誰の差し金か教えろ、今度は口にグレネードブチ込む」

「く、黒井崇男っていう961プロの社長です、勘弁してください、俺には妻子がいるんだ」

 男のこめかみギリギリに発砲し、黙らせる。

「ウソは無駄。確かアンタは澁澤だったっけ?でっち上げスキャンダルで業界を揺さぶるダニ野郎が、俺に喧嘩売って勝てるとでも?表現の自由訴えてもアンタを消せるから、二度とこんなことするんじゃないぞ」

 カメラを取り上げSDカードを抜き取り、今度は澁澤の身体検査を始めた。

「・・・さっきのカードは囮か。まっ今度したら命が無いと思ってくれ」

 パンツに隠していたSDカードを抜き取ると、追加で50ドル札を置いて去って行った。

 

 

 

 

 夕方、澁澤は自宅のアパートに帰り、ヤケ酒を飲んでいた。もちろん昼間にあったことへのヤケだ。

「ちくしょうあのガキなめやがって。記者をなめんなっての、こうなったら調べてやる」

 スマホで多くの友人から源太の情報を集めようとするが、誰一人知る由がなかった。

「ウソだろ・・・こうなったら尾行して・・・ダメだ、気づかれちまう」

 その頃源太は、横須賀基地でPCとにらめっこしていた。

「・・・ジャン特製盗聴機能付きGPSがさっそく実力発揮か。アーニャちゃんには悪いけど、これも仕事だ」

 カメラからSDカードを抜き取った際、こっそりつけていた。前日、基地を訪れたトゥイッチから澁澤の情報を仕入れており、わざと大佐の私情を受けたのだ。失敗すればアナスタシアの命も危うかったがそこは源太、全く隙は見せなかった。

「早く961プロに行け。今回のテロに関与してるか否かわかる」

 PCには地図と座標、音声データが映っていた。地図に赤いドットがあるのが澁澤の現在地だ。すると、ドットが動き、道に出たところで素早く移動したのがわかる。

「タクシーか。行先は・・・予想通り」

 961プロ前に止まり、施設内に入っていく。躊躇なく入っていくことから、顔見知りであると断定できる。

「おっきたきた」

 ヘッドホンを押し当て、会話を聞く。

「黒井さんよ、大変な目に逢ったんだ。アンタの言うとおり、346のアナスタシアをつけていたら護衛に見つかって現金置いてSDカード取られちまった」

「なんだと。765プロの防御が最近固いから次に邪魔な346プロを落とそうとしたら、思わぬしっぺ返しが来たと」

「しかもドルだ。明らかに俺達に喧嘩売ってるとしか思えないぜ!」

「セレブの私に喧嘩とは346も質が低下したな。小田原に連絡し、明日お前に護衛をつけてやる。私の会社の警備も彼が派遣したものだ。全員腕利きの傭兵だから安心したまえ」

 源太は会話内容と地図データを保存し、紙媒体にコピーする。そしてそれを大佐に提出した。

「大佐。彼女を餌にしたことをお許しください。ですが、小田原に近づくにはこれしかなかったのです」

「ゲン・・・確かに君の行動は間違いだ。しかし、あの二人が協力者とわかった今、奴らを捕える。最初に澁澤を捕え、その後黒井をやる。私も現場に行こう、娘を傷つけようとした罪、しっかり償ってもらう。深夜に決行だ」

(明らかにアーニャちゃんのためじゃないっすか・・・)

 緊急で呼び出されたメンバーとともに、ヘリで澁澤のアパートの近くまで飛び、徒歩で玄関まで忍び寄った。

 

 

 

 

「ピッキングで開けます、少しお待ちを」

 ジャンのピッキングで玄関を開け、大佐を先頭に入り、迷いなく明かりをつけた。

「うぅ・・・なん・・・!?」

「目覚めたかダニ野郎」

 澁澤を力づくで起こすと平手打ちをかまし、バラクバラ越しでもわかる鬼も恐れる形相で睨み付ける。

「これから貴様は地獄に行く。覚悟はいいな?」

 有無言わさずレイモンドが麻酔弾を撃ち込み、彼を担ぎあげる。

「ゲンとヨハン、ジャンは家宅捜索。他のメンバーは私とともに基地に戻る。現地集合だ」

「「「ラジャ!」」」

 残ったチームは彼の部屋にある、ありとあらゆる場所を物色し、証拠になりうるものを探す。机の引き出しからは765プロや他の芸能事務所のでっち上げスキャンダルの記事と写真が、PCとUSBには小田原と土橋宛ての電子メール、千川から提供された346プロアイドル達の個人情報が残っていた。

「マヌケめ。俺達の存在知ったら、黒井も驚くだろうよ」

「知っててやってたら殺す」

「コイツ救いようないぜ。ODTに芸能関係施設のウィークポイント教えてやがる」

「どこ入ればいいかの地図か。それも押収しよう」

 自分のUSBにバックアップし、襖を開ける。布団に隠していた武器が数丁入っていた。SATが配備してあるものばかりだ。

「89式にMP5・・・土橋め、SATの武器を横流ししてやがった」

「小田原が運んだ可能性もある。・・・そろそろ時間だ、早く証拠を待機しているトラックに積んで961プロに向かうぞ」

 

 

 

 

 トラックの荷台に乗り、961プロに向かう。情報によれば警備が非常に厳しいため、激戦になるのは確実だった。それぞれの得物を持ち、神経を集中させる。

「行くぞ、敵はテロリストだ。手加減は必要ない」

「あぁ。さっさと済ませて帰るぞ」

 荷台を開け一斉に飛び出し、正面にいる警備兵を攻撃し鎮圧した。ちょうどいいタイミングで大佐から通信が入った。

「さっき吐かせた情報だ、ビル内に社長専用の隠しエレベーターがある、座標はジャンのPCに転送しておいた。それを使えば奴を急襲できるやもしれん」

「了解。あとどれくらいで着きます?」

「数十分だな、吐かせる時間も考えるとそのくらいになる。君達で先に動いてくれ」

「ラジャ!」

 潜入前にジャンがセキュリティーにハッキングし一時的にカメラを使用不可にし、電子ロックも解除した。

「これで行ける。ポイントマンは任せろ」

 足音を気にしながら専用エレベーターに乗り込む。乗ったことを確認し、黒井のいる最上階へ動かす。

「上から攻撃する可能性も考えられる、警戒しろ」

「着いたぞ。フラッシュバン用意」

 源太がドアが開いた瞬間を見計らってピンを抜き投げる。閃光とつんざく音が響くが同時に発生すると一気になだれ込み、護衛を倒すと黒井に銃口を向ける。

「な、なんだね君達、私を誰か知ってのことか!?」

「知ってるさ。黒井崇男、人をどん底に落とすことを生き甲斐にしてるクソ野郎だってな」

「と、言うわけでさっそく部屋を調べさせてもらうよ」

 

 

 

 ヨハンは部屋の本棚や机を物色し、ジャンはPC及びUSBを調べに調べている最中、源太は黒井を拘束し職務質問する。

「質問に答えろ、何故アナスタシアを追いかけまわした。返答によっては貴様が苦しむぞ」

「引き抜きだ。スキャンダルで居場所をなくした彼女を私が好待遇で引き取り稼がせ、いらなくなったら捨てる手筈だった。芸能界はサバイバルだ、裏切りも多々ある。私もそうやって生きてきたのだ、今さら方針を変えることはしない」

「そのためにテロリストに手を貸したのか?手先の澁澤は捕まって事情聴取中だ。全て吐くのも時間の問題、シラを切っても無駄だぞ」

「・・・私は美城も高木も許せなかったのだ!あのボンクラどもを見ていると、腹が立って仕方なかった。だから千川に近づき346プロアイドルを情報を仕入れる対価にODTに資金援助してやったのだ!だが警備の人間も雑魚ばかりではないか!」

 勝手に怒り狂う黒井に対し、源太は右ストレートで殴り飛ばした。彼も彼で我慢の限界だったのだ。

「テメェのせいで人生狂った人間がどれほどいると思って言ってんだ?そんな身勝手な理由で、他人の人生壊すんじゃねぇ!」

「き、貴様は聖人君主と言えるかね。誰の人生も傷つけず生きていけるとでも言うのか!」

「テメェよりはマシだ。確かに俺は聖人君主じゃない。だがな、俺は人の命の重みを重々知ってる・・・それが俺とテメェの決定的な違いだ、だから一緒にすんじゃねぇ!」

 一段と鋭い眼光で睨み付け、有無を言わせなかった。調べ終わったヨハンが源太の肩を軽くたたく。

「・・・このタイミングで難だがな、コイツは確かに小田原の口座に多額の現金を振り込んでいた悪党だ。それとなゲン、お前が殴ってもコイツは変わらん。これ以上は手が痛くなるだけだ、尋問は大佐に任せよう」

 数分後、残りのメンバーが合流し、証拠とともに黒井を横須賀基地に搬送した。自分の行動に悔いていたのか、終始源太は悔しそうな表情をしていた。それを見て心配になった大佐は源太を指令室に呼び出した。

「お呼びでしょうか?」

「ゲン、961プロでの件はヨハンから聞いた。元気出したまえ、分隊長が調子悪くてどうする、アナスタシアが見たら悲しむぞ」

「ですが俺は彼女を利用して仕事を」

「よく聞け、チームが全滅する原因の第一位は分隊長の暴走だ。君が死んだら悲しむ人間がいることを忘れてはいけない。私もその一人だ、もし悩みがあったら相談してくれ、約束だ」

「・・・はい」

「私からは以上だ。引き続き娘の警護を頼む」

「ラジャ」

 源太にとって苦々しいミッションは終わりを告げた。




 自分も源太と同じ立ち位置だったら、殴るどころか足を撃ってたかもしれません
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