静岡にある大手銀行に銃を手にした二人の強盗が押しかけた。一人が天井目掛け乱射し、もう一人が銀行員に金銭を要求する。大勢の客がパニックになるなか、スキンヘッドの屈強なイギリス人男性だけは大欠伸をして椅子に座っていた。
「怖くないのおじさん?」
小柄な強盗が彼に近寄ってくる。
「全然。その気になれば鎮圧できる」
「これでも?」
PPKをこめかみに突きつけるが、それでも平然としていた。彼は決してバカではない、むしろ賢い部類だ。
「もっと計画立ててから強盗するんだな、安全装置がついたままだぞお嬢ちゃん」
「え?何それ?」
隙をついてPPKを奪い、マガジンを外し、それを捨てる。男はそのまま別の強盗にゆっくり近寄った。
「く、来るんじゃないよ!」
「撃てるか、その銃で?」
「なめんじゃないよ!」
引き金を引くが弾が出てこない。マガジンの弾全て使い切ったからだ。男は力づくで奪い取ると、当て身を当て、気絶させる。
「良い事教えてやる。このマガジンは30発入りでな、引き金引いたら数秒で空になる。そこのチビも覚悟しておけ」
「ひっ・・・」
喧嘩売った相手が悪かった。彼の名はシェイマス・カウデン、仲間からはスレッジと呼ばれており、任務中で使うスレッジハンマーがトレードマークになっているからそう呼ばれている。今回はポンドを円に換えるため銀行に寄ったのだが、偶然騒ぎに巻き込まれ、飛んできた火の粉を払ったのだった。
「こちらスレッジ、搬送用車両を用意してくれ」
二人の強盗を捕まえたスレッジは車に乗り込み、自分達の基地へと戻っていった。
目隠しをされ尋問部屋に通された二人は、目隠しを外されると辺りを見渡す。
「どこここ?」
目の前にいるスレッジに場所を問う。
「いい質問だガキんちょ、ここは尋問部屋だ。多くの犯罪者がここで泣きを見る」
彼は名乗っていないため、少女こと双葉杏からしたらスキンヘッドのおじさんでしかなかった。
「さっそく質問だ。なんであんなガラクタを持って銀行強盗ごっこをしようと思った?」
「え~めんどk」
スレッジは立ち上がり、愛用のハンマーを持つ。有無を言わさぬ顔をしながら。
「よろしいか?」
「・・・復讐です」
「誰に対してだ?」
「以前杏を助けたレイモンドって人に。だってわがまま聞いてくれないもん」
ホテル襲撃事件のことは報告書で知っていた。それには助けなくていいと言いながらダダを捏ねて脱出しようとしなかった少女がいたと記載されており、彼はその少女が目の前にいることを知った。
「命の恩人に対して失礼だと考えたか?」
「だってあの時仕事大変だったもん、次の日ミニライブだったし」
「・・・武内を裏切っているって意味でもあるんだぞ」
「プロデューサーも?」
「アンタを一流アイドルに育ててくれた恩人の努力を無駄にするな。しかもまだ未成年だ、こんなところで人生終わりたくなかったら、今すぐ彼に謝るんだな」
ミュートを呼び、杏を別室に連れて行かせると、今度はもう一人に対して尋問を始める。
「・・・やっぱり頭おかしい奴だと思っていたが、まさかアンタも復讐って言うんじゃないよな?」
「ええそうよ。アンタ達が助けたおかげで人気暴落よ!しかも頭悪いあの乳デカ娘にも言われたわよ、ありがとうって言わないのかって!私が助かるのは当然じゃない!」
「騒ぐなテロリスト風情が」
静かに場を制すスレッジ。
「自分中心の人間が世界のどこかでテロを起こし、自分が正しいと主張している。そんな奴を信じられるとおもうか?助かるのは当然?生きたくても力尽きて倒れる人間も多いんだ、自分が特別だと思わない方がいい。もしあの銃が不良品で暴発していたら、生きてる保証はないんだぜ?」
正論を言われ、時子も黙るしかなかった。
「アンタは成人している。しっかり司法によって裁かれるんだな」
財前時子はこの後、地元警察に引き渡され現在裁きを待っている。一方の双葉杏は、裁きこそは受けなかったが責任を取って事務所を辞め、実家に帰って引きこもる毎日を送っている。もちろん、ここまで抑えられたのは検挙取り下げを訴え続けた武内のおかげである。
後日。静岡を訪れた武内は、お詫びを言いにSASチームに会いに行っていた。
「この度は申し訳ありませんでした」
「構わん、俺達は所属した時点で恨まれてんだ、今さらってもんだ」
「はぁ・・・双葉さんは実家に戻ることになりました。仲のよかった諸星さんが時々ですが、様子を見に行ってくれるそうです」
「諸星って確か、俺より少し低いアイドルだったな。そうか、大変だろうな今後」
「えぇ。彼女が奴らに狙われる可能性が低いとはいえ、まだまだ油断できません」
「それもあるが、悪目立ちするだろ。でかいし」
小さく笑うが、すぐに元のスレッジに戻る。
「そうだタケ、頼みがある。ある少女を引き取れるか?」
「どのような子ですか?」
「この写真の子だ。この基地内で親子ともども保護されてる」
くるみの写真を見せ、是非を問う。
「・・・うちの事務所、騒動の渦中ですので今は難しいですね。ですが、事件が終われば引き取れると思います」
「そうか。俺達も頑張ろうか」
こうして勘違いからの一騒動は終わった。
武内は帰り車中にて現役時代を振り返っていた。346プロに入社する前、新卒で警官になり機動隊に配属され、身体能力の高さと頭脳の高さを買われSATに入隊。数年後、訓練を見学していたドミンゴに見いだされレインボーに入隊した。同期のブリッツやスモークと共に各国のテロリストと戦い、実績を積み上げたが昔から芸能関係の仕事に夢見ていたためベガス事件のあと除隊を決意する。求人で346プロアイドル部門を見つけ、応募し入社する。戦いから離れたが自分の不始末のせいで多くのアイドルを脱落させてしまった。しかし、シンデレラプロジェクト成功によって自信を取戻し、平穏の毎日が続いた。テロが起こるまでは
「私は変わったのでしょうか?今でも撃たれた肩が痛みます」
アイドル達に見せたことないが、任務中に左肩を撃たれたことがあり、それが時々うずいている。
「そんなことより、今は島村さんたちのことを考えましょう」
その時だった、ラジオから緊急のニュースが入る。ODTが346プロ女子寮を襲撃したらしい。
「!!急がねば、また失ってしまう!」
アクセルを踏み現場に急ぐ。同時刻、源太達もまたヘリで現場に向かっていた。
「屋上から潜入する、今回は情報がほとんどないままの任務だ。慎重に行くぞ」
「わかってる。人命重視だからな」
ファーストロープで降り、源太とヨハン、ジャンと五郎とで分かれ、それぞれラぺリングで侵入する。源太チームが入った場所は寮とは思えない広い廊下、逆に言えば遮蔽物が無いため、警戒しながら前へと進む。
「敵だ、まだ気づいていない」
それぞれの得物を構えると、頭に狙いを定める。
「3・2・1、撃て」
敵のダウンを確認し、再び探索を始める。源太はとある部屋の前で足を止め、耳を澄ませる。
「人間の声がする。ブリーチングチャージで破ろう」
ドアにブリーチングチャージを設置し、爆破すると同時になだれ込む。そこには少女に縛られたのであろう、情けないテロリストの姿があった。
「ごめんなさいごめんなさい、もう許してください!」
「プロデューサーさんが悪いんですよ、まゆを人質にとって、ちひろさんに認めてもらいたいなんて・・・」
もはやどっちが犯罪者なのかわからない混沌とした空間を前に、源太チームは恐怖を感じる。普段のスリルとは違う重苦しい空気、まるで悪霊が取りついたような錯覚に見舞われた。
「う、動くな、人命第一だぞ・・・」
「あらあなた達、二人の世界に邪魔する気?」
「い、いや、そうじゃなくて、ここから脱出しないともっと大変な奴らが介入してくる。余所でやれ」
なんとか説得し屋上に避難させると、急いで任務に戻っていった。
(テロリストをここまで追い詰める人質、初めて見た・・・アーニャちゃんもこうならないか心配だ)
一方ジャンチームは一階の食堂辺りで戦闘になっていた。テロリスト達が一階に集合していたため、そこに急襲したが失敗し、キッチンを遮蔽物にし現在に至る。
「大丈夫でありますか?」
「バカ野郎、お前がグレネード持ってないから失敗したんだろうが!」
FAMAS G2で応戦しながら苛立ちを発散する。
「隊長達が来るまえ持ちこたえましょう」
FNCの弾薬が切れたため、CZ75で応戦する。
「ゴロー腰だめで撃つな、サイトで狙え!」
「メタすぎて突っ込めないであります!」
源太チームが横から急襲し、敵を殲滅させることに成功する。
「クリア。他の人質達は無事救出したぞ」
「任務完了か。思ったよりすんなり終わったな」
「よし、帰ったらジャンのおごりで飯にしよう」
「えぇ!俺かよ!?」
その後、武内が駆けつけたが事件は解決しており、犠牲者0を知り胸をなで下ろした。
テロリストを縛ったまゆさん怖い