それによって恋心が芽生えるが、その後別れるカップルも珍しくない
(居辛い・・・今度は俺の番か)
源太とアナスタシア、蘭子の三人でカラオケに来ていた。二人の歌っていた曲が終わり、今度は自分が歌うはずの曲のメロディーが流れてきたからだ。難易度の高いバラード調の曲だが、意外にうまく、聴き手の二人を魅了する。
(下手だと思ったけど、そうでもなさそうだ)
自分の曲が終わり、マイクを置く。
「次は・・・どうしてこっちを見ている?」
「あまりにカッコよくてつい・・・」
返答しようにも返答できない源太。
「そうか」
彼は考えた。もし自分に惚れている理由が救出したからだとしたら、吊り橋効果ではないかと。そうだとすれば将来、例え結ばれても不幸になるだけではないか。しかし言い出す勇気がなかった。
「?どうかしましたか?」
「なんでもない。次、決めたか?」
この後、数曲歌い、終了時間が近づく。アナスタシアが源太を見つめ、何かを訴えている。よく見たらマイクを握っていることがわかる。源太も試しにマイクを握ると、笑みを浮かべた。
(まさかデュエット?冗談きついって、俺がそんな曲知ってるわけ・・・あった)
端末をいじっていたら、彼女が好きな星空をモチーフにした曲を見つけた。源太もその曲が好きで、時間があれば聞いているほどだった。
「この曲知ってる?君の生まれる前にできた曲だけど」
「はい、パパもこの曲大好きです」
(おいおいおいおい、大佐知ってんのかよ。待てよ、奥さまが存じ上げてたかも)
源太メインで初めてのデュエットだったが、それを思わせないほど息があっていた。蘭子もまたうっとりしている。
(本人達には失礼だが、これは歌えそうだからこれを選んだ。意味はないぞ)
結局この行動は、二人の好感度を上げることとなった。
帰宅後、源太は一人PCの画面を見ていた。内容はBUKIMEGAといわれる、毎回出題される問題を解いて得られるパスワードを入力なければ入れない特殊部隊向け武器を扱う、会員制通販サイトだ。源太の装備もそこで購入したものである。
「5.56NATO30発マガジンを30個と、40mmグレネード5発予約っと。で、値段が・・・うわっ728ドルかよ。高いだろ」
渋々合意のボタンを押し、PCをシャットダウンする。
「まぁ給料あるし、明日には届くからいいけど」
五郎から連絡がかかる。
「どうした。なに、俺のショットガンが欲しい?自分で買え!」
「八百屋みたいに武器屋なんてないでありますから、困ってしまって・・・」
「BUKIMEGAってサイト開いてみろ・・・何、問題が難しくて解けない?推理小説読んで頭鍛えろ!」
怒りのあまりに怒鳴って一方的に切る。ノックの音が聞こえたので、その人物を通す。
「どうぞ」
「私だ。いいかね?」
「大佐・・・」
少し心配そうな大佐。来た理由は、アナスタシアのことだった。
「彼女は普段通りですが、何か?」
「違うんだ。その、君はあの子の本心を聞いたことあるかね?」
「は?」
「君の話になると、嬉しいような悲しいような反応をするんだ。無論、蔑ろにしていないことはわかってる、ゲンは彼女のことが好きかね?」
「・・・正直な話、あの子には幸せになってほしい。ですから、俺とくっついてはいけないと」
「それは男としてかね、それとも特殊部隊としてかね?」
「両方です。だから、他の良い奴と交際した方がいいと」
「ゲン、私も家内とロシアで出会った時も同じことを考えていた。スペツナズは冷徹さが重要、生温い考えなんて言語道断と思っていた。だが、献身的な彼女の姿を見て考えを改めた。血に汚れた手だが、家族が欲しいってね」
「・・・」
「結論は急ぐな。任務が終わってからでもいい、考えるんだ。君ならできる」
そういうと、大佐は帰っていった。
翌日。ラブライカと蘭子の3人でグラビア撮影があった。今回は美波もいるためヨハンも護衛として現場に来ていた。昨日のことを話すと、いつになく神妙な顔立ちで答える。
「そりゃ結論急いだらまずいわ。男と女ってもんは、急いてはいけないと思うぞ」
「だが俺達は殉職率高いぞ、家族なんて」
「そんなこと、本人の前で言えるか?」
「・・・無理だ」
「だからじっくり考えなきゃいけない。作戦じゃないんだ」
「わかってる」
撮影の休憩中、源太は蘭子に呼び出され、思わぬことを耳にした。
「なんだって、アーニャちゃんとの恋を応援するだと!?それで本当にいいのか?」
「いいんです、吊り橋効果だってわかってましたから」
曰く、救出されて一時期ホントに恋心を抱いたが、本で吊り橋効果について知ったため本心ではないと確信したらしい。
「そうか・・・これは俺からのお願いだ、彼女といつまでも仲良くしてくれないか?」
「はい。そのかわり、ちゃんと守ってくださいよ!」
「わかってる・・・!?」
蘭子を突き飛ばし45Tを抜き、目線の先にいたテロリストの眉間を撃ち抜く。
「立て、みんなと合流しよう!」
HK416A5カスタムを取り出し、蘭子を自分の後ろに立たせると臨戦態勢を取る。
「こちら源太、テロリストに襲われた。脱出するぞ」
「こっちも襲撃にあった。スタジオで合流しよう」
敵の襲撃時、入り組んだ室内では少数の場合、無闇に脱出を急ぐより一か所に集まり迎撃した方が有利に戦える。源太とヨハンは合流後、通りそうな場所2か所にグレネードとワイヤーを使ったブービートラップをセットし迎撃の構えを取る。
「来るぞ、身を小さくしろ」
予想通り敵がそこを通り、グレネードが爆発する。想像以上の成果に笑みが浮かぶが、まだやってくるため引き金を引き牽制しながら、M320グレネードランチャーで一掃する。それを見ていたカメラマンや撮影監督は、彼らの無駄のない戦い方に呆然としていた。
「ボディーガードってレベルじゃないよねこれ」
「本物の銃に手榴弾、あれっすか、特殊部隊ってやつ」
湧いて出る敵の殲滅を確認すると、源太はスタジオにいた全員に指示を出した。
「屋上から脱出する。俺について来い」
源太を先頭に非常階段で屋上を目指す。しかし、ここで問題が起こる。非常扉は内側から開かないのだ。
「仕方ない、爆破するか」
ヒートチャージを取り出し、鉄製の非常扉にセット、スイッチを押し爆破してみせた。
「迎えが来てる、もう大丈夫だ」
迎えのヘリに全員乗ったことを確認すると自分達も乗り込む。
「アンタ達いったい何者なんだ、ただのボディーガードじゃないよね?」
「知らない方がいい、強いて言うならSATみたいなものか」
「わ、若いのにすごいな・・・」
源太の隣に座っていたアナスタシアは脇腹をくすぐり驚かせる。
「うぉ!何してんの!?」
「源太さん、隙ありデス」
「くぅ・・・かわいくふるまっても誤魔化せんぞ」
「ハハハこりゃ面白い、カッコよさと親しみやすさのハイブリッドってやつだ」
撮影こそされなかったが、これによりレインボーの存在が業界内に知れ渡るのだった。
源太って魅力あると思いますよ。強いし、背が高いし、頭切れるし
あ、だめだ、女心わからないんだった