事件解決に繋がる重要情報が入ってきた。時間は未明だが、小田原と千川が川崎で一緒に行動していることが発覚したのだ。源太達は急ぎ、アジトのある川崎の住宅街に向かう。
「またガセじゃないじゃないだろうな」
「大丈夫だ。ジャンが入院中に監視カメラハッキングして裏付けした情報だ、間違いないだろう」
「そんなこと言って、また空振りだったら飯だけじゃなくて酒おごれよ、高いやつ」
「わかったよ、着いたから降りるぞ」
今回は地上からの作戦であり、4人は正面に立っていた。それぞれの得物を握り、影の落ちない西側から潜入を試みた。銃床で裏口を破り、足音を出さずに移動する。1階のリビングルームに警備中の敵を発見し、背後から忍び寄り一人を始末、もう一人に尋問する。
「小田原と千川はどこだ。ここにいるんだろ?」
「ここにはいない、俺は千川の居場所を知らない」
源太は銃口を突きつけ脅す。
「ホントだって。アンタらが入るほんの数分前にそれぞれ別の場所に」
「じゃあ一人で行動してるんだな」
敵を手錠で拘束し家から出る。追手も来ないため、バンに戻り尋問の続きをする。曰く、小田原は川崎にある工業地帯へガス兵器を手に入れに向かったらしい。捕虜の案内の元、被害を防ぐため急いで向かうことにした。
「ガス兵器って、まさかホワイトマスクの残党が残ってるってワケじゃないよな」
「奴らは駆逐された。だが、似たようなもの作るだけの技術があるじゃないか」
「あ、ガスグレネードか。だが成分的に殺傷力なんて無いハズだ」
「ガスを作れる技術があるなら応用で神経系ガスを作れる。小田原は理系の学部出身だ、毒ガスなんて容易く作るだろうよ」
「なるほどな。ガスにもよるが、出来れば爆破しよう」
目的地に到着した源太達は一斉に出撃し、待ち構えていた敵達を一掃していく。途中、突然の騒動に逃げ惑う白衣を纏った一般人達を目撃した。
「奴ら想像より一般的な方法で工場持ってたんだな」
「そうらしい、さっさと追い詰めて吐かせよう」
スナイパーや機銃、RPG-7による攻撃もあったが潜り抜け、実験場にまで到達した。バイオハザードマークの入った赤いドラム缶を発見し、レイモンドに調べてもらった。彼によれば、二つ混ぜて使うタイプのモノらしく、単体では無害なのでC4を取りつけて爆破しても大丈夫とのこと。ヨハンはさっそくC4を取りつけ、スイッチを押した。もう片方も探し当て、C4で爆破する。
「よし、あとは小田原を逮捕して千川の居場所を吐かせよう」
「ん、なんか聞こえないか?」
外からヘリの音が聞こえる。
「奴はヘリで脱出する気だ!」
「急ぐぞ!」
全速力で駆け、ヘリポートに到着した。飛び立つ寸前にテールローターを攻撃し、MSG90A1の弾が偶然ピンに当たりプロペラが外れた。コントロールを失ったヘリは地上を回るがパイロットがとっさにエンジンを停止させ大きな爆発は起きなかった。
「もう逃げられんぞ小田原、銃を捨て降伏しろ!」
「お前のような脳筋にここまで追い詰められるとはな、運の良い奴だ」
「黙れ、お前こそ未来ある人間の人生を台無しにしやがって!」
「俺を捕まえても千川と親父が計画を実行する。貴様らはここで地団駄踏んでいいのか?」
小田原はM92Fをこちらに向け発砲し海野の肩に当たるが、大きな傷ではなかった。その後HK416A5カスタムの放った弾丸はM92Fに当たり、バラバラにしてみせ、隙をついたヨハンが間合いを詰め小田原を無力化した。
「放せクソ野郎が!」
「騒ぐな。C4口に詰め込むぞ!」
小田原を逮捕した源太達は正面から脱出し横須賀に帰還した。大佐に報告し身柄を渡すと、今度は違う任務を言い渡された。
「346プロアイドル部門部長、今西氏によると1週間後の大型コンサート、シンデレラの舞踏会にODTが攻撃してくるらしい。君達には警備及び迎撃をしてもらう、その間に情報収集に当たってくれ」
「迎撃では遅いのでは?」
「わかっている、だからこそ情報収集するんだ。ジャンにも頑張ってもらっているが一人では心細い、足で稼いで来い」
「「「「ラジャ!」」」」
三日後。源太は今西に会う約束をとりつけ、カフェで合流することになった。
「お待たせ源太、急に会いたいって言うから驚いたよ」
「しばらく会ってなかったけど、伯父貴、変わってないな」
「お前は大出世したな、武内君から聞いたよ」
「この事件が終わったらイギリスに帰る。しばらく帰らないだろうな」
源太から見て今西は母の兄、伯父であった。幼いころから仲が良く、なんでも話せる間柄だ。
「ドーム会場の見取図だ、危険だと判断した経営陣は外野席を使わない方針で固めた。そこに通じている北と西の入り口は閉鎖し残りの入口にファンを入れる。スタッフ達は専用入口があるけど、今回はテロに備えて金属探知機を設置する。怪しいものがあれば預かる手筈だよ」
「俺達は一人ずつ四方を守る。武器は持って行くから警備員には知らせておいてくれ」
「わかった。ところで聞くけど」
「何、伯父貴?」
「蘭子ちゃん達と暮らしてるってホント?」
飲んでいたミルクティーを吐きだしそうになるが必死にこらえ、どうにかして飲み込む。
「誰からそんなことを!?」
「ユーリ大佐からさ。私も説明を聞いた時に君の名前が上がったからね」
(大佐め、最初から自分の娘を俺とくっつけるつもりだったのか)
内心穏やかでない源太。
「アーニャちゃんが源太と交際してるって聞いたら、ファンのみんなから恨まれるかもね」
「ハハハ・・・そうだよな」
見取図をもらい、しばらく雑談していたらアナスタシアと蘭子が近づいてきた。
「部長に源太さん、どうしてここに?」
「あぁ俺が伯父貴と久しぶりに話でもしたかったから約束をとりつけただけ。って、あまり外出してほしくないんだけど」
「大丈夫です、ゴローさんに留守番任せました」
(ご愁傷様五郎・・・)
その後は仕事と関係ない話をする。源太の昔話、前回のシンデレラの舞踏会での話、シンデレラプロジェクトでの活動の話を聞かされた。源太は自然に穏やかな表情になる。
「源太さんにもそのような時期があったのですね」
「舞踏会もこんなに大盛況するとは思わなかった。今回はいろんな意味で危険かつ心配だね」
「アーニャ、蘭子、不安かもしれないが俺達が犠牲者なしで成功させる。君達は胸を張ってステージに立つんだ、いいね?」
「はい!」
「ダー!」
今西と別れ、帰宅した源太達。一緒にいる時間を大事にするため、一人で執務するのではなく二人との団らんを選んだのだった。
ところ変わって東京某所。地下に潜伏していた千川はODTのリーダーなる人物と会合していた。その内容は次の標的、346プロアイドル達によるビックイベント、シンデレラの舞踏会の襲撃についてのことだ。
「・・・とまぁ、その手筈だ。ところでいいのかな?君達を慕うアイドル達を攻撃しても」
「えぇいいんです。あの薄情な彼女達に鉄槌を下すチャンスなんですよ、わざわざ見逃しませんよ」
「そうか、君は鬼だね」
「そういうあなたこそ、大勢の人間を恐怖に陥れることしか考えていませんよ。警視庁警視総監、小田原信勝殿」
二人に不気味な笑みがこぼれる。虐殺を楽しむ殺人鬼のような笑みを。
ちひろさんの黒さ加減が弱いような気がします