レインボーシックス346   作:MP5

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 一般人がテロリストの仲間になる可能性は、決してゼロではない。
 何故なら彼らの心の弱さを利用して勧誘するからだ
 したがって、怪しい勧誘には乗らない方がいい


22話  化けの皮

 8月の暑い日の昼。東京で有名なドーム会場にて346プロ主催のビックイベント、シンデレラの舞踏会が始まろうとしていた。度重なるテロを警戒してか警備員が去年の3倍に増え、金属探知機も設置されていた。2万近くのファン達は戸惑いながらも検査を受けている。

「なんで荷物検査あんだよ、俺達は健全なファンだぜ」

 愚痴を漏らす様子を、入口付近で見ていた源太。外国人であるヨハンとレイモンドには客が入れない北側と西側の警備を任せており、彼は南側を担当していた。

「こちら五郎、異常なしであります」

「引き続き警戒に当たれ」

 今回は担当スタッフのみならず、警備員の荷物にも検査が入ったため彼らは白だとわかる。ODTが潜入するとすればファンに紛れるか空から派手に攻撃するかのどちらかだ。

「あとは無事に終わってくれることを祈るだけだ、たとえ奴らが来ても反撃可能だし」

 いつもの釣竿ケースではなくジェラルミンケースを手に目を光らせていた。中身はもちろん、HK416A5だ。M320はスーツの中に隠してある。

「こちらジャン、全カメラチェック中。二階に不審な人物を発見、近くの隊員は急いで駆けつけてくれ。南側だ」

「了解した」

 源太は二階に移動すると、HK416A5を組み立て、アンダーバレルにM320を取りつける。報道関係の人間にも二階より上の階には上がらせていないため、不審人物の正体は説明がつく。人物の背後につくと、頭に銃口を突きつけた。

「動くな、武器を捨てろ」

 その人物は両手を上げ持っていたAUGを捨てたことを確認すると、源太はすかさず銃床で後頭部を殴り気絶させた。同時に疑問も抱いた。何故、開演前なのに狙撃の準備をしていたのか。ターゲットがアイドルなら公演中に狙うのが普通だ。にも関わらず彼は開演前に準備していた。

「こいつ、囮か?」

 源太はジャンに通信を入れる。

「ジャン。他の階に怪しげな人物がいないか確認してくれ」

「わかった・・・あれ?」

「どうした?」

「いやな、このドーム、確か御土産屋や郵便局とかがあったろ。その周辺のカメラがイカレてる」

「なんだと!?」

「すまないがゲン、そっちにも移動してくれ」

 二階にある店がある通りまで戻り源太はそこで、不自然な光景を目にする。閉まっているハズのコンビニや郵便局に明かりがついていたのだ。

「こちら源太、閉まっているハズの場所に明かりを確認。カメラは動きそうか」

「ダメだ、線がやられてこれ以上は追跡不可能だ。俺が持たせたドローンはあるか?」

「これか?」

 コンパクトにたたまれたドローンを地上に展開すると、源太から見て右上にホバリングした。

「こいつは鹵獲したVZ61を改造して取り付けた偵察ドローンだ。見てくるから待っていろ」

 ドローンは辺りを探索する。カメラはもちろん搭載されており、いざ戦闘になっても反撃できるため撃ち落とされる心配はしなかった。

「見た感じ、店員の顔が見当たらない・・・奴らはおそらく両方に潜伏しているな。クレイモアにも気をつけろ」

「わかった。無線はつけておく」

 まずは奥の郵便局に入る。そこまで大きくないためか、隠れていても気づかれやすい構造になっている。源太はM320にスモーク弾を装填し、辺りを警戒しながら足を進める。

「そこか!?」

 扉に数発撃ち込み蹴り破ると敵が仰向けに倒れていた。休憩室を確かめると、食べかけのスナック菓子や空のペットボトルが置いてあった。休みの日にそのようなモノがあることが不自然だ。

「強盗の様子は見られない。舞踏会が始まる前からここに待機していたのだろう・・・っと、銃声に気づいたか」

 陰から様子を伺うと、AUGを武装した数人がバラバラに動いている。姿勢を低くし、スモーク弾を彼らの前に撃ち込み自分の居場所を知らせる。その後、一人一人確実に倒すため狭い廊下に移動し、5.56NATO弾で迎撃した。

「クリア。動きだけはプロだな」

 郵便局を離れ、今度はコンビニに入る。内部はそこらへんのコンビニと変わらないが、無駄に静かだった。防犯用の鏡にも誰も映っていない。

「・・・今は閉店だよ、真田君」

 従業員用勝手口から出てきたのは、胡麻塩頭の壮年の男性。源太は見覚えがあった。

「小田原警視総監・・・」

「人に会ったら銃を向けるのかね?」

「アンタが、ODTのリーダーだな」

「御名答。警察しながら片や銀行強盗、片やテロリストだ。どうする、捕まえるかね?」

「その前に質問に答えろ、何故アイドルばかり狙うんだ?彼女達に罪があるって言うのか?」

「そうだね・・・私は今の日本の防衛システムが脆弱なことを訴えるため、テロを行ってきた。アイドルなら注目が集まるしマスコミが騒ぐ。この世の中、人間が死なない限り動かないから彼女達には犠牲になってもらうんだ」

「平和に携わるアンタがそんなことしていいのか、警察なら命張って生活を守るものだろうが!」

 小田原警視総監の顔に哀愁が漂った。

「・・・倅みたいな奴じゃなくて君みたいな青年がもっと多かったら、世界の道理も変わっただろうに・・・会場には私の部下が多く潜伏している、早く見つけないと血を流すことになるぞ」

 両手を前に出すと、源太は手錠を掛け、駆けつけた警備員に託した。

「真田君。部下は控え室だ、急ぎたまえ」

 源太は無線で仲間に知らせ、控え室に走った。

 

 

 

 源太が郵便局に入って調べている頃、アナスタシアと美波は控え室で出番を待っていた。

「・・・ミナミ、今いいですか?」

「どうしたのアーニャちゃん、元気ないわよ?」

「源太さん、来てくれますか?」

「それだけはわからないわね、でも、絶対見に来てくれるわ」

「ダー・・・」

 ノックの音が聞こえた。返事をすると、報道関係者らしき人物が入ってきた。

「すいません、お時間いただけますか?」

「はい・・・」

「そうですか、ありがとうございます。ではさっそく・・・」

 マスクをしたレポーターらしき女性はG18を取り出し、アナスタシアの脳天に突きつけた。カメラマンもカメラを置き、UZIを取り出す。

「ステージに立つ前の心境を教えてください」

 マスクを外し、素顔を見せた。そこには行方をくらませていた千川ちひろの姿があった。

「ち・・・チヒロさん・・・」

「プロデューサーさん呼んでも無駄よ、仲間が拘束したからね?」

 観客席から銃声と悲鳴が響いてきた。どうやらODTの連中が暴れているようだ。

(あぁ・・・パパ・・・源太さん・・・)

「私ね、専務が死んだあとニヤケ顔が止まらなかったの。だって346プロで一番腹立つ奴がいなくなったのよ、文香ちゃんを腹痛でダウンさせたり卯月ちゃんをいじめたりさ、人間としてクソみたいな奴がいなくなってよかったと思ったの。けど、誰も私に感謝の言葉を述べようとしなかった・・・最初はどうでもよかったけど、いつしか憎悪の対象になったわ、だから武器や傭兵を会社の金で調達したの・・・あなた達も例外じゃない、ここで死んでもらうわ・・・」

 普段から見ていた優しい笑みではなく、道端のゴミを見る目で引き金を引こうとしたその時だった、背後から千川の脳天に銃口を突きつけている人物の存在がいた。背の高い日本人の青年、真田源太。

「銃を捨てろ、貴様の負けだ」

「どうして!?」

「報道陣に荷物検査させんの忘れてた。まぁわざとだけど」

「こんなことしてるヒマ、あるのかしら?」

「観客席の敵は仲間に任せている。あとは貴様だけだ」

 鏡を横目で見ると、UZIを持った男がいないことに気づく。敗北を悟った千川はG18を捨て、両手を挙げた。

「ド素人同然の奴らに負ける俺達じゃない。罪を償え、今なら許してもらえる」

「美城専務、アーニャちゃん達にひどい事したのよ。やりたくないこともさせられたわ。・・・私はむしろ褒められるべき・・・」

 無慈悲に銃床で後頭部を殴り気絶させた。今までもテロリストに事情聴取したことがあったが、贖罪意識がなく過去最高に聞くに堪えない一人善がりだったからだ。

「黙れ悪女。テメェは金のために動いた守銭奴だろうが、あの子達のことは一切考えていないクセに」

 手錠を掛け、無線で大佐に彼女の無事を伝えた。

「こちら源太、主犯の千川を確保、アーニャちゃんも無事です」

「ありがとうゲン・・・君に返しきれない借りができた、礼を言う」

「それよりも大佐、観客席の様子は?」

「心配ない、負傷者は少し出たが死んだのはテロリストだけだ」

 実は大佐、ファンに紛れて観客席で待機していた。いざ警備を掻い潜ってきてもいいように、あらかじめ決められた席の下にAK12を隠していた。おかげで暴れ出したテロリスト相手に素早く対処できたのだ。

「そうでしたか。俺はこの女を警察に引き渡します、帰ったら祝賀パーティーでもやりましょう」

「いいなそれ、そうしようではないか!」

 

 

 

 そんな彼らの祝賀ムードをぶち壊す無線が入ってきた。

「こちらジャン、リーダー小田原を搬送中の車両が襲撃されました、おそらくODTの奴らです!」

「了解。GPSで追跡できそうか?」

「行き先は・・・346プロ本社だと、まさかそこでテロを起こすつもりか!?」

「大企業攻撃して混乱に陥れる気だ。至急向かうぞ!」

 通信が終わり源太はアナスタシアの方を向く。

「これから日本で最後の仕事に向かう。終わったら真っ先に会いに行くから待っててほしい」

「ダー、待ってます」

 源太は千川を担ぎ上げ、会場を後にした。決着をつけるために。




 この話でのちひろさんは、かなり身勝手ですが本編ではそのような人物ではありません
 
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