無論、反動が大きいため訓練が必要だ
ドーム会場から車で十数分かかる場所に346プロ本社がある。普段と大きな違いとして警察車両が周囲を囲っていたことだろう。その影響か、大勢のマスコミと野次馬が集まっていた。
「こんなバカデカいビル、俺達だけで周ったら日が暮れます。援軍は来るのでありますか?」
五郎は不安げに大佐に尋ねる。
「今ジャンが監視カメラにハッキングして確かめてる、完了まで待て」
数分後、ジャンから通信が入る。彼によれば250人規模でビルを占拠し、肝心の小田原信勝は最上階の会議室にいるらしい。経営陣の人間が人質になっていることがわかる。
「急いで助け出すぞ!」
ユーリ大佐自ら率いるチームは正面から入るとさっそく鉛の雨の歓迎を受け、柱に隠れやり過ごす。
「素晴らしい歓迎だな、日本じゃ主流なのか!?」
「そんなわけあるか、もっとマトモだ!」
フラッシュバンを投げ、怯ませた後、敵を鎮圧する。しかしわんさかと後詰めが現れ動けない状態になる。
「どっから湧き出てやがる!」
「奥からだ、2階に上がらない限り食い止められんぞ」
50人ほど倒したあたりでウェーブが収まることを確認すると急いで階段を駆け上がり、エントランスホールの制圧を確認した。
「ゲンとヨハン、レイモンドは会議室へ向かえ。私とゴローは他のフロアにいる人質を救いに向かう」
二手に別れ三人は会議室へと向かうが、予想外のものを発見する。高威力の弾丸を発射する固定銃座だった。しかも射手が万全の態勢で待ち構えていた。
「散開!」
けたたましく響く咆哮は壁をえぐり、柱を削り取る。とっさに別室に逃げ込み助かったものの、またしても反撃しづらい状況になったが、咆哮が鳴きやみ弾が飛んでこないことを確認すると今度はグレネードを投げ込み銃座ごと吹き飛ばす。
「銃身がオーバーヒートするまで撃つなんて、どんだけ怖いんだか」
事件の様子をドームの控え室に備え付けてあるテレビで見ていたアナスタシア。彼女を含む多くのアイドル達がここで行く末を見守っていた。
「大丈夫かな・・・」
「信じるしかありません、弱気じゃダメですコウメ」
「でも・・・レイモンドさんが心配・・・」
「私も、源太さんのこと心配です。けど、約束してくれました、終わったら迎えに行くって」
小梅の頭を優しくなでる。
「そうですよね。レイモンドさん、絶対帰ってきますよね・・・そうだ、こんなことがありました・・・」
時を遡って数日前、土橋を確保した日にレイモンドがセーフハウスに帰ってきたときのこと、珍しく部屋に戻らず夕食の手伝いをしていたのだった。彼によれば小梅と輝子と一緒にいるとイギリスの実家に帰ってきた雰囲気になるらしく、非常に落ち着くらしい。
「他にも・・・妹に似てるとか、嫁に行かせたくないとか・・・私もお兄ちゃんができたような感じになったんです」
「お兄ちゃん、ですか?」
「はい。いつも一緒にいる『あの子』も喜んでいるんです、頼もしくて優しい人だって」
小梅の笑顔を見て、アナスタシアは彼女の頭を撫でる。
「コウメ良い子です、だから無事に帰ってきます」
戻って346プロ本社内、15階に差し掛かった源太チーム。銃弾とグレネードが飛び交う戦場を進んで行く。しかし、ポイントマンのレイモンドが制止のハンドサインを送った。
「おいおい冗談じゃない、こんなのアリかよ!」
廊下一面にC4トラップがばら撒かれており、うかつに近寄れない状態だった。
「俺に任せろ」
M320グレネードランチャーに炸裂弾を装填し味方を後ろの下げる。炸裂弾を中央に撃ち込み、一気に消し飛ばした。
「派手にやったな」
「まぁな」
罠を破り阻む敵を一掃しながら着実に進んでいると通信が入る。
「ゲン、調子はどうだ?」
「シックス。どうかなさいましたか?」
「他のエリアのODTメンバーの全滅を確認した。あとはお前たちだけだ、存分にやってこい」
「了解しました。決着をつけに行きます」
「だが気をつけろ、奴らは何かしらの準備はしてるハズだ。幸運を祈る」
ドミンゴとの通信を終え、任務に戻る。
「まだ長い、先を急ごう」
会議室に近い29階フロアで待っていたのはM79グレネードランチャーと固定銃座のヘビーな組み合わせ。遮蔽物に隠れ、源太の持っている最後のフラッシュバンを投げ視界を奪うとM320で銃座を倒し、近接戦に持ち込んだ。近い間合いではグレネードの爆発で自分まで被害を被る、したがって敵の攻撃手段を封じたことでもある。
「気絶で抑えておけ、皆殺しじゃ風評に影響が出る」
体術で組み伏せ手錠を掛け、当て身を当て気絶させる。
「よし、これであとは信勝だけだ」
3人は会議室の前に立ち、勢いよく蹴り破る。そこにいたのは手を頭上で組まされてる経営陣の人間と、89式を手にした小田原信勝がいた。彼はいつもの飄々とした顔で待っていた。
「想像よりも遅かったね、レインボーの諸君」
「ただでさえデカいビルなのに、テロリストハントしながらじゃ遅いに決まってる」
「その言葉からしてこちらの兵力は、もう残っていないと考えるか。だったら・・・」
スーツを脱ぎ捨てると、彼の体にC4を複数巻きつけてあった。逮捕される前に人質を巻き込んで自爆する算段らしい。左手にはリモコンが握られている。
「こいつらを道連れに死のうか」
「やめろ、関係ない人間を巻き込むな!」
「・・・知ってるかい?・・・彼らは事業拡大のためにアイドル部門を立ち上げ、経験のほとんどない武内という男をプロデューサーにし展開していった。しかし、ここの元専務は武内の仕事を奪おうとし勇み足で駒を動かしたが、失敗して結局彼に救われ定着したらしい・・・情けない、自分ならいけると勘違いした結果だ。だから狙撃されて死んだのだ。身内のトラブルだったのに傍観者だった彼らにも責任を取ってもらわねば」
「大方知ってる。だがお前は何も感じないのか、怯えた目で命乞いする人間の心を・・・アンタも一応警官だったろ!?」
「感じないんだ・・・私には何も・・・M82使って狙撃したときもためらいなんてものがなかった・・・最後は君と話せてよかった。さらばだ・・・」
リモコンのスイッチを押そうとしたその時、ヨハンのMSG90A1の放った弾丸が左手をスイッチごと撃ち抜いた。信勝は悶え苦しみ、一気に間合いを詰めた源太が手錠をかけた。
「ターゲット確保。コイツを連行する」
HK416A5の銃床で頭を殴り気絶させる。
「終わったな・・・」
「あぁ」
「これでヘリフォードに帰れるんだな」
「最初は346の事務員の嫉妬から日本全国を巻き込んだテロに発展した。その指導者が警察組織のトップ陣だっただなんて考えたくない」
「ゲン・・・早く帰ってアーニャ達を安心させないといけないぞ、まずはそれからだ」
「そうだな。帰ろう」
ODT首領、小田原信勝は逮捕された。彼は取り調べ後、長い時間がかかる裁判を受け判決を待っている。無論、警察組織はマスコミの恰好の的になり対応に追われる日々らしい。このテロ事件解決によりレインボー部隊の知名度は飛躍的に上がり、彼らは日本を救った英雄達として取り上げられ、しばらくテレビに出ない日はなかったという。
帰国の日。世話になったアイドル達と武内が横須賀基地からヘリフォードへ帰る源太達の見送りに来ていた。しかし、別れを告げたにも関わらずアナスタシアだけは源太から離れようとしない。父である大佐の言うことも聞こうとしないため、彼は恥ずかしい切り札を切ることにした。不意をついて唇を重ねたのだ。無論、全員が胆を抜いた。
「源太さん?」
「これは再会を誓うキスだ。休暇が取れたら日本に帰る、それまではネット電話で我慢してくれ」
「・・・はい!」
ようやく離れ、輸送機に乗り込んだレインボー隊員達。彼女達は見えなくなるまで見送ったという。
「やるなぁゲン。奥手のお前が大胆に出るなんて」
「うるせぇ、そうでもしなかったらヘリフォードに来るだろうが・・・それに、腹括ったしな」
「ようやく決めてくれたか、私のことを父と呼んでいいぞ」
「落ち着いてください大佐。仕事上でその呼び方はできません」
「それもそうだが・・・話は逸れるがこれでチームは解散だが休暇はまだ先だ、我々の助けを待つ人々がいる」
「そうですね。俺達は人命を救出するのが仕事ですから」
帰国からまもなく、それぞれ違う国家に赴き自分達に課せられた任務を遂行している。自分達に助けを求める人々を救い、テロを撲滅するために。
次回で最終回にしたいと思います。
次回作についても思考を巡らせておりますので、ご期待ください