彼のセーフハウスにユーリ大佐が仕事の話をしにやってきた。レイモンドの処分は麻酔銃取り上げだけで終わり、以後作戦には参加できるらしい。
「大佐、何故346プロのアイドルが人質としているのでしょう?2件連続でいるなんて偶然とは思えません」
「うーむ。プロジェクト・クローネがシンデレラプロジェクトと統合していろいろと大変らしい。新任プロデューサーがドンドン入ってきて武内も大変だそうだ」
「そうですか・・・って、詳しいですね」
「それはな、娘が私に事情を教えてくれるんだ」
大佐のスマートフォンの待ち受け画面に青い瞳と銀髪がトレードマークの美少女が写っている。
「アナスタシアと言ってな、自慢の娘だ。アイドルをやってるんだ」
「へぇ。大佐に似てるのは瞳の色だけですね」
「あの子は母親似だ、そりゃそうだろ」
とても誇らしげな大佐。
「婚期遅いかもしれませんし」
「どういう意味だ?私はまだ52だぞ?」
「彼女が彼氏できたとして、紹介されたら縦に首を振りますか?」
「軍人として親として軟弱なひよっ子があの子に手を出すことは許さん、PKPで蜂の巣にしてくれる!」
娘の彼氏をテロリスト扱いする大佐。その様子に源太はため息を漏らす。
「それですよ、親バカのレベルが高すぎです」
「うぐ・・・っまあその時には丸くなってるはずだ」
「それはそれとして、俺に話とは?」
「そうだった。君にプレゼントがある」
そう言ってジェラルミンケースから一丁の銃を取り出した。FN社製ブルバップ式PDW、P90だった。源太が前々から欲しがっていた銃だ。
「ありがとうございます。愛銃と一緒に次の作戦に使わせて頂きます」
「気に入ってくれたみたいだな。それとこれも君に渡す」
今度は釣竿を入れるケースだ。
「これに2丁入れて町を歩くのですか?」
「P90は隠して携行できるだろ、君のHK416A5をこれに入れて行くんだ。それじゃ失礼するよ」
大佐は帰っていき、源太は一人P90を試射し予想以上の使い勝手の良さに改めて感激する。
「さてと、防弾チョッキ着て約束の場所に行くか」
防弾チョッキの上に普段着を纏い、HK416A5カスタムを釣竿ケースにしまい、車で指定された場所に向かった。そこはコスプレショップで待ち合わせの相手が神崎蘭子となかなかカオスだが、変装した蘭子は源太を見つけるとうれしそうに駆け寄ってきた。
「あ、来てくれました!」
「そんなにはしゃぐな。話は車の中で聞く」
彼女を助手席に乗せる。
「ところで君は何故、あんな時間になるまでホテルにいたんだ?良い子は寝る時間だ」
「仕事です。小梅ちゃんと杏ちゃんとでサプライズパーティーのゲストとして呼ばれて・・・歌っていたら武装した人達に拘束されました」
「そうか。今度からは夜出歩くなよ、スケジュールも変更してもらえ」
「・・・」
「どうした、蘭子」
「また会えますか?」
「そうだな、次があるなら普通に会いたい限りだ、送るよ」
車で蘭子を寮まで送っていく最中、彼女は終始赤面のままだった。
(連続で緊張状態が続いたから疲れてんだろう、オフでゆっくり休めばいいさ)
(デートのつもりで誘ったのに・・・美嘉さん、どう話を盛ればいいでしょうか・・・)
かなりすれ違いを生じている。
「着いたぞ。他の人間には俺のことを話すな」
源太は彼女を降ろすと、ブレーキランプを5回点滅させて去っていった。
(がんばれのエールを送ったが、うまく伝わっていればいいが)
どこからどう見ても熱々のカップルの別れにしか見えず、蘭子の勘違いを加速させてしまった。
翌日、源太率いるチームは、池袋にあるコンサートホール裏口にいた。この日はアイドルのコンサートが開かれており、客に混じったテロリストによって占拠されたらしい。今回の任務は人質救出とODT幹部、サンドの生け捕りだ。
「行くぞ、今度は人質を眠らせるなよ」
「あのガキじゃなきゃ撃ってねぇっての」
レイモンドはM9A1の代わりに源太から借りたMP5Kを装備している。MP7A1を忘れたらしい。
「まぁ気持ちはわかるが焦るなよ」
想像以上に入り組んでるうえに薄暗く、人間二人が並んだら動けないほど狭い通路を音もなく進むと、やや広い場所に出た。
「ここには何がある?」
「確かステージのスッポンだ。ほらステージの下から上がってくるやつ」
「ってことは上に人質がいるな」
ヨハンがMSG90A1を上に向けて狙いを定める。サイトにはサーマルスコープを取り付けているため、どこにいるのかがわかる。
「人質2名・・・またあの子達じゃないだろうな」
「だとしたら手のかかるシンデレラだな、だがどうやって助ける?」
「二手に別れよう、俺とヨハンで敵を攻撃するから、レイモンドとジャンはギミックを動かしてくれ」
「「ラジャ」」
ヨハンとともにステージ裏まで移動する。途中巡回している敵を倒しながら目的地に到達し、狙いを定める。
「ヨハン、もしかしたら観客席側にも敵がいるかもな」
「任せとけ。まずはステージの敵を排除する」
源太の合図と同時に発砲し、敵を無力化。
「ステージギミックON!」
仕掛けとM18のスモークが焚かれ、人質が見えなくなったことを確認しスッポンが動き、下にいる仲間達に救出された。
「また君達か、どんだけ捕まればいいの!?」
「え・・・あの・・・すいません・・・」
「ジャン落ち着けよ、命あるだけいいじゃないか」
おびえてる小梅の頭を優しくなでるレイモンド。以前激怒したとは思えない彼の優しい声に癒される。
「俺達が外に連れ出してやる、さぁ行こう」
人質救出に成功し、源太とヨハンはステージから離れ、標的を追っていた。レインボーの予想外の活躍にサンドが逃走を試みたからだ。
「何故あの子達ばかりが捕まるんだ?何か知ってるっていうのか?」
「わからん。それよりも奴が逃げるぞ!」
想像以上に逃げ足が速い上に足止めの影響もあり、なかなか追いつけない。源太は大佐に追跡ヘリを用意してもらい、いざ自分達が追いつけなくてもいいよう一手打った。
「ゲン、奴は駅方向に向かった。駅で爆弾テロを起こされたら大勢の人間が犠牲になるぞ、急げ!」
「了解!」
鉛の雨をくぐり抜け、人のにぎわう街中をひたすら走り標的を追いかける。途中、知らない周波数から通信が入る。
「レインボーの方々ですね、怪しい男がいたので無力化しておきました。池袋サンライト前にいますので引き取りに来てください」
「誰だ貴様、何者だ?」
「あなた方の仲間ですよ」
通信が途切れ、今度は大佐から通信が入った。
「諸君、サンドは一般人によって取り押さえられた。テロリストはしっかり捕まえておかないと犠牲者が増えるぞ」
「申し訳ありません、処分はなんなりと」
「私もシックスも今回のことは処分しないと決めている。なぜなら、その一般人は元レインボーだ。彼が君達を庇ってくれたのだ」
「なんですって、じゃああの通信は」
「君達の先輩からだ。早く合流してくれたまえ」
急ぎ池袋サンライトに向かい、一目でその誰かがわかった。彼の足元に平べったくなった外国人がいる。
「あなたがコイツを押さえたのですね」
「ええ、私はこういうものです」
二人に名刺を渡す。それには346プロのプロデューサー、武内と書かれていた。
「346・・・蘭子達の担当か。元レインボーのあんたが何故、彼女達を危険にさらすんだ?しかも今回で3回目だぞ!」
珍しく激昂する源太だったが、武内は表情を崩さない。
「実は・・・最近なんですよ彼女達が危険にさらされているのを知ったのは。神崎さんが描いている絵を見て危険事態だとわかったのです」
「対策が追いつかなかったっということですか。ひとつ相談がありますがよろしいですか?」
「なんでしょう?」
「二人をしばらく我々に預けていただきたい」
「な!?」
「3回人質にされるなんて偶然にもほどがあります。無防備な会社より我々のセーフハウスにて彼女達を保護した方がいいでしょう、違いますか?」
「・・・上と掛け合います、しばらく待っていただけますか?」
武内はこの日のうちに経営陣にローゼンブルクアルプトラウムをレインボーの保護下に置くこと要請、事情説明のためユーリ大佐も掛け合い、結局彼女達は源太のいるセーフハウスにかくまわれることになった。
良きチームとは、優秀な部下と良きリーダーがいることだろう