休暇は非常に重要な時間になる
10月某日、中国・天津にある商店街。大勢の人間が昼食中に訪れた武装集団は瞬く間に占拠し、逃走用車両と現金50万ドルを要求してきた。地元警察は交渉に応じることなく機動隊を派遣したがあっさり全滅、なすすべなしと思われたその時、一機のヘリが現場に現れ、一人の武装した男がファーストロープで降りてきた。
「誰だアンタは!?」
担当の刑事が声を掛けると、男はそれに答える。
「我々は政府から依頼され飛んできた、多国籍特殊部隊レインボーの者だ。俺に任せて欲しい」
そういうと、男は迷いなく商店街に入っていった。商店街と言っても日本のような小さなものではなく、ひとつのショッピングモールに近い規模なため、必然的に敷地は広い。
「どこにいる・・・」
二階のバルコニーから銃声が聞こえ、見上げると敵を二名発見。男はすぐさまHK416A5カスタムの銃口を向け制圧してみせた。
「敵は残り7人」
銃撃戦をしたためかどこからか敵が湧き出し男を攻撃する。屋台を遮蔽物に身を隠すとアンダーバレルにセットしたM320グレネードランチャーに炸裂弾を装填し、それを敵に向け発射し複数を排除する。
「あと一人か・・・」
広間や店の中には多くの遺体が倒れており、生き残りがいないか探索する。中華料理屋の厨房に座り込む人質の男を発見し声をかけるが中華包丁をこちらに向け警戒していた。
「大丈夫だ助けにきた」
流暢な中国語でそう伝えると、人質の男は包丁を降ろした。
「まずはここから脱出する。ついて来い」
人質の手を引き、急いで出口まで撤退する。襲撃に合わなかったため無事保護することができた。
「ありがとう。奴は二階のラジオ局にいる、気をつけてくれよ」
「・・・そうする」
その後商店街に戻ると、程なくして銃撃戦が始まった。数分後銃声が止み、男が戻ってきた。
「終わったぞ。敵を殲滅した、生き残った民間人は他にいるかもしれないから自分達で探しな」
「待ってくれ、せめて名前だけでも」
「・・・悪いが教えられない」
男は迎えのヘリに乗り込み、どこかへ飛び立っていった。輸送中のヘリ内で、パイロットと会話をする。
「政治って大変だな。その武装集団の正体が、自国の軍部だって知って俺達に泣きついてさ」
「災難だったな」
「まぁな。次の休暇に日本へ行こうと思うんだ、約束を果たさないとな」
「いいんじゃないか、真田源太曹長」
真田源太と呼ばれた男は懐からホワイトチョコを取り出し、それを口に入れる。ODT事件の解決で最近昇級したらしい。
「うるさいさっさと空港まで飛んでくれ」
「ちぇっつまんない」
休暇の日。指定された場所、346プロの中庭を訪れた源太。ベンチに座る銀髪の少女、アナスタシアに声を掛ける。
「おまたせ、元気にしてたか?」
「ダー。この前、ライブ成功して嬉しいです」
いつもの笑顔が見ることができて一安心する源太。今回の来日は一般人として入国したため銃やナイフはもっていないが、上着の下に軍用スコップを隠し持っていた。
「それはよかった。今日はどこ行こうか?」
「プラネタリウムがいいです、星、見たいです」
「よしそれじゃあ行こうか」
レンタカーに乗り、池袋のプラネタリウムに向かう。道中渋滞に巻き込まれ、動かない時間ができてしまった。アナスタシアは源太に質問する。
「みなさんはお元気ですか?」
「まぁな、ヨハンとは任務で同行することあるし、レイモンドも要人警護で駆り出されてる。大佐は新人教育に精を出してる」
「・・・あれ、ジャンさんは?」
「異動になった。足負傷して整備課に移ったよ」
「そう、ですか・・・」
「そうだ、他の面子はどうなった?」
「コウメは今でもレイモンドさんと連絡取ってます、ミナミもヨハンさんと文通してるそうです」
「元気そうでなによりだ。・・・そういえば未央や輝子は?」
「ミオは相変わらずです、ショウコもキノコのために仕事頑張ってます。それと、ランコは今全国ツアー中です」
「すげぇな。みんな輝いてる」
お茶のボトルを開け、それを飲む。
「この休暇が終わったら、またイギリスに帰る。今度は面白い話の一つや二つ、用意してくるさ」
ようやく交通の流れが改善され、予定より遅くなってしまったが無事プラネタリウムに到着した。しかし、思いもよらぬ事態に巻き込まれてしまう。報道関係の人間が自分達を見つけたのだ。
「アナスタシアさん、この方はどなたで・・・」
「プライベートにまで土足で踏み込むのは野暮ですよ。俺は彼女の友人です」
にらみを利かせた声でレポーターを怯ませ、プラネタリウムに入っていった。
「きれいだな」
「はい・・・」
人工的とはいえ美しい星空に心を奪われる。
「君に出会えてよかった。今度の休暇もまた来るよ」
そっと彼女を手を握る。
「スパシーバ源太さん・・・」
こうして、穏やかな時間はゆっくり過ぎていった。彼はまた、戦場に戻る。
これでレインボーシックス346は終わりです。
しかし、源太以外の人間のその後を不定期に書く予定ですので、思い出したら読み返してくだされば幸いです
それと、次回作もお楽しみに