「で、君達は危機感がないのか」
「え、どういった意味ですか?」
「家事を進んでやってくれるのはいいが、あまり窓には近づかない方がいい。狙撃される」
うれしそうに洗濯物を干そうとする蘭子と小梅を諌める源太。自分達が保護されている感覚を抱かない彼女達に手を焼いていた。
「今回は遊びじゃないんだ。ODTの連中がここを襲撃する可能性だってある、だから気をつけろ」
女の扱いに慣れていない源太にとって、あどけなさが残っているとはいえ彼女達は強敵だった。
「せっかく真田さんと一緒になれたのに、つまんないです」
「・・・話を変えよう。この写真を見てほしい」
ホテル襲撃事件の際に手に入れた写真を見せる。
「君達の隣にいる子、彼女もアイドルか?」
「輝子ちゃんです・・・普段はおとなしい子ですけど・・・」
「なんだ、言ってみろ」
「時々豹変してメタル調になることがあるんです」
「は?閣下風になるって言うのか?」
小梅は静かに頷く。
「・・・なんじゃそりゃ。ある意味人質になったら一番早く犠牲になるパターンじゃないか、彼女を静める方法は?」
「キノコ大好きですから、それを渡せば落ち着くかと・・・」
「キノコか。わかった、情報提供ありがとう。今度は君達の番だ、聞きたいことはないか?」
「なら・・・」
小梅が手を挙げて質問する。
「訓練中に幽霊出ますか?」
「いや、それはわからん。ただ殉職した仲間が多いのは確かだから、いるかもな」
とてもうれしそうな小梅。彼女はホラー好きでその類の映画をよく見るらしい。実際に3人で見たことがあり、蘭子は怖がって源太にしがみついていたが、小梅は楽しそうに見ていた。
「蘭子はないのか?」
「ええっと・・・無いです・・・」
「そうか。これから射撃訓練するから、何かあったら呼んでくれ」
そう言って源太は射撃場に向かい、訓練を始めた。M1014を使いターゲットに向かって撃ちこむが、腕は落ちておらず、成績はむしろ上がっていた。
「M3より安定性上がってる。セミオートオンリーにしただけあるな、フォルムもカッコイイし」
愛銃2つも使い込み、メンテナンスをした後、リビングに戻ると、異様な空気を肌で感じた。とっさに45Tを抜き、辺りを警戒する。
「さ、真田さん?」
「しっ、何かいる」
武器を地下に運んだため今は空っぽのハズのクローゼットを開けると、写真に写っていたボサボサ銀髪ロングで小柄な少女がいた。いったいどこから侵入して来たかわからないが、テロリストでないため安心して45Tを収める。
「君は確か、輝子だね。ここにどうやって入ってきたのか教えてくれ」
「・・・玄関から入った。あなたに気づかれないように・・・」
「そうか、二人は気づいたの?」
二人とも頷くことから、どうやら彼に対して警戒を抱いているらしい。
「大丈夫。俺は君達の味方だ」
優しく頭を撫でてあげると、安心したのか彼の胸中で眠ってしまった。その様子を見て嫉妬する蘭子。
(こんなに好かれるとは思わなんだ・・・しかも嫉妬の目線感じるし)
保護してから1週間経った。源太チームはサンドから聞き出した情報をもとに、北関東の山奥にある廃工場に擬態したガス兵器製造工場にヘリで向かうことになった。任務はODTの情報を入手することと可能であればガスサンプルも回収することだ。3人が寝静まった時間での作戦なので、もしも起きていたらダダ捏ねて出撃させないようにするだろう。
「レイモンド、小梅から伝言があるぞ。仕事がない日に映画見ましょうだってよ」
「俺と?映画もいいが健康第一と伝えてくれ」
衛生兵らしい返事だ。
「それよりも、居候がもう一人増えたんだって?大変だな小動物ばかりで」
「そのうち一匹は注意しないといけないがな」
「夜這いでもされるってか?」
「それならまだマシだ・・・」
源太の疲れた声色からして想像以上に大変なのだろう。
「そろそろ着くぞ、ファーストロープ用意」
工場より南に少し離れた駐車場へ降下し終えると全員サプレッサー付きの得物を装備し、工場内を目指す。時間が時間だけに非常に暗く、ナイトゴーグルを起動し進軍する。正面玄関にVZ61を装備した敵が守っており、うかつに入れない。
「ホントにヤバいものがあるみたいだな。ガスマスクつけててよかった」
「正面以外にも入れそうだな、西側に行こう」
案の定、誰も警備がおらず窓から潜入する。部屋の密度、図面を描く専用の机があることから設計室だとわかる。
「何の設計図だろう、一応持って帰ろう」
ジャンは解読のため、近くにあった図面数枚を折りたたみ、ズボンにしまった。その後、通路を警戒しながら進むが、誰とも遭遇していないことに疑問を持ち、ジャンにドローンを使うよう指示した。
「少し進んだ場所にサンプル置き場があるみたいだな、そこに行けば施設の全体像がわかるだろう」
ドローンを回収し探索を再開しようとしたその時、突然電灯が点き、急いでナイトゴーグルを外す。侵入されたことに気がついたらしい。
「しまった突っ切るぞ!」
背後から鉛の雨が降り注ぐなか、角の部屋に入ったチーム。サプレッサーを外し万全に備えた。
「クソ、いつもと逆パターンじゃねえか!」
「確かにな!」
室内にフラググレネードが投げ込まれるが、源太が投げ返し、返り討ちにしてみせた。しかし、施設のどこかで爆発音が響き、源太はここも危ないと判断し、前進する。
「もしかしたらサイレントアラームだったカモな、最悪だクソッタレ!」
前後左右に死角のないフォーメーションを組み、脱出する選択を取った。
「大佐、俺達は脱出します、脱出ルートを検索してください!」
「わかった。このまま前進し、食堂を突破したら森に抜けられる。早く脱出しろ!」
「「「「ラジャ!」」」」
敵を倒しながら進み、ようやく食堂にたどり着く。窓のない殺風景な壁一面を見て、源太はM320に炸裂弾を装填し、狙いをつける。
「俺に任せろ」
炸裂弾の威力で壁に大きな穴が空き、そこから全員脱出する。森の中まで入り、大佐に脱出の報告を入れる。
「全員脱出完了、任務失敗です」
「ゲン。今さらだが、あそこはサンドが君達をハメるために仕掛けた罠だ。確かにガス工場だったが現在は使われていない。私がスペツナズ流の拷問を施して得た情報だ」
「骨折り損ですか。ですが、俺達に警戒してることは確かですね」
「ああ。森を抜けたら小学校の校庭に出る、そこで回収する」
偽情報に踊らされ、命を落としかけたものの無事脱出に成功した。源太はヘリの中で生還したことに感謝しながら胸中で今までの事件について整理してみた。
(敵の装備といい、今回の罠に関しても疑問ばかり残る。まず設計図だがとっくに移っているなら何故それがあったか・・・演出だろう、前に撤収したなら紙切れ一枚も残さないだろう。次に敵の年齢層だが、20代前半辺りと若いうえにあまり訓練されていない。しかもアイドルの隠し撮り写真を持っていた・・・もしかしたら彼らは元々、普通の青年だったが言葉巧みに誘われODTに志願した可能性が高い。AUGを使用して肩に一発しか当たっていないからそれで説明がつくな)
そんな彼だがODTの目的は何なのか整理できなかった。
朝に帰還した源太はパソコンで346プロの噂を調べていた。今回のODTによる事件に346プロのアイドルが必ず人質になっている事実があるため、会社に何かしらの黒い部分がある可能性があったからだ。
「どれも信憑性が薄い。週刊誌の情報はガセゴシップばかりだから信じていないが・・・」
起きてきた蘭子が困っている源太を見て声を掛ける。
「真田さんどうしました?」
「蘭子か。いやな、君の事務所について調べていたんだが、何か変わったことないかな?」
「ええっと・・・1年前に美城専務がいきなりの休職でプロジェクト・クローネがシンデレラプロジェクトに統合されてるぐらいでしょうか。今も会社に来ていないんです、元気にしてるのでしょうか?」
「経営陣の一人が休職か・・・他には?」
「ちひろさんって事務員がいるのですが・・・昔に比べて元気そうなので、小梅ちゃんと夜帰ってきた時に様子を見に行ったら、普段と違う、低くて怖い口調で誰かと電話してたんです」
「なんだって、会話の内容はわかるか?」
「見ただけで内容は知りません。ですが帰って行く際、誰かの視線を感じました」
「ありがとう。引き続きなるべく外には出ないでくれ」
蘭子からの情報で解決に一歩前進する。美城専務の謎の休職、同時期にちひろと言う事務員が電話で何者かに電話していたことがわかった。
(事務員のちひろか・・・他に電話をしていることを知っているアイドルがいたら、確実にODTに攻撃される・・・大佐に報告しておこう)
大佐に通信を入れ、自分の推理と蘭子からの情報を話した。
「なるほど、確かに説明の際に彼女の姿はなかった。武内に事務員の動向を探らせておく、君は美城専務の居場所を突き止めてくれ」
源太に新たな任務が与えられた。
アカン、グダグダになってしまった