イギリス・ヘリフォード。ドミンゴの元に日本のテレビ局からの招待状があった。内容は346プロ主催のアイドルによる陸上競技大会が開催され、競技のひとつに参加型の複合競技があるため、ぜひ参加してほしいとの内容だった。渋い表情の彼は、源太とヨハンを呼び出した。
「これを見て欲しい」
「これは・・・」
「君達の意見を聞きたい、名前を隠しての参加を検討しているのだが、どうだろう?」
「会場は?」
「アメリカ・コロラド州にある競技場だ。そこを貸し切って使うらしい」
「・・・俺達、遊んでるって思われないんですかね?一応、国際組織ですよ」
「数分前にミスターCに相談したところ、各国首脳達へ根回ししておくとおっしゃられていた。だから大丈夫だ」
「俺達、顔バレませんか?テレビ中継ですよ」
「普段顔隠して戦ってるから、大丈夫だろう。心配なら口元だけでも隠して出ろ」
「・・・なら、参加します。ヨハンもいいだろ?」
「あぁ。ところで、いつ出発を」
「今からだ。放映に間に合わないぞ」
「「・・・え!?」」
アメリカ・カルフォルニア州に着き、さっそくテレビ局の関係者に話を聞くことにした。
「今回来て下さり、ありがとうございます」
「いえ。ところで、どのような競技を?」
「パートナーのアイドルと一緒に様々な障害物競争をしていくものです。的当てから、壁登り、網の潜り抜けとかします」
「もしかして、相手役はもう」
「真田さんにはアナスタシアさん、ヨハンさんには向井拓海さんと組むことになっています」
「どのような方かは、あえて聞かないでおきます」
だが、ヨハンは後に後悔することになる。この時、パートナーの女性とトラブルになろうとは、想像もしなかった。
撮影当日。モニター越しとはいえ、前回のコンサートとは違う賑わいがあった。控室にいた二人は、テーブルの上にある手紙を読んでいた。
「今回の競技には、君達のために実弾を使った的当てがある。君達の武器がそこに置いてあるため、存分に腕を振るいたまえ ミスターCより・・・俺のHK416が、会場にあるってこと?」
「なんだろう、俺達だけ、距離が遠いとかってオチか?」
スタッフに呼ばれ、廊下を歩いていると、体操服姿のアナスタシアと、特攻服を着たスタイルの良い女性が迎えに来る。
「源太さん来てくれました!」
「また休暇使って来たよ。イギリスは遠い」
「アンタ、わざわざイギリスから来たのか?」
「彼も同じところから来てるよ。俺は真田源太」
「ヨハンだ。よろしく」
「外国人が日本語を流暢に喋ってる・・・」
「驚くなよ」
「はぁ?驚いてねぇし!」
喧嘩腰の拓海相手に、自分は一緒にやっていけるのかと、心配する。
「これが日本的なツンデレか」
スタートラインに立つ前から大歓声が響き、選手達を歓迎していた。特に菊地真と呼ばれるセミロングの少女を応援する黄色い歓声が多く、完全にアウェイに感じた。すると、アナスタシアが源太の手をそっと繋いだ。
「・・・大丈夫だ、優勝しよう」
「はい!」
源太が警戒している選手。ヨハンはもちろんだが、菊地真、そして、多田李衣菜と一緒に参戦している武内の二人も警戒していた。李衣菜はともかく、武内は元レインボー。前線を退いたとはいえ、大阪で銃を奪い、射撃の腕は落ちていなかったと報告があったからだ。
「アナスタシアさん、真田さん、鉢巻きをどうぞ」
スタッフから白の鉢巻きを渡された。司会の男の実況が聞こえる。
「さぁ始まりました、ペア障害物競争!今回は男女でペアを作り、様々な障害を越え、ゴールを目指していただきます、さあスタートラインに立ってください!」
スタートラインに立ち、合図のピストルが響いた。先頭を切ったのは菊地真と性格のキツそうな雰囲気の男のペア、それに続いて源太チーム、ヨハンチーム、武内チームが続いた。最初に立ちはだかったのは、高さ5メートルはある厚みのある壁。事前に鍵縄らしきものがあるため、それで引っ掛けて登るのだろう。
「何やってんだ菊地!全然だめじゃないか!」
「もう、冬馬君もヘタじゃないか!」
追いついた源太達は難なく壁の向こうに鍵縄を引っ掛け、まず彼が素早く腕力だけで登り切ると、続くアナスタシアはゆっくりと登った。降りる際には縄を降りる側に下ろし、彼女を肩に背負い、ラぺリングで降りる。
「あぁっとアナスタシアチーム、ものすごい早さで突破!続く2チームも似たような手段で突破したぁ~!遅れて優勝候補、菊地真チームも何とか突破したぞ!」
観客たちは思いもよらぬ伏兵達に驚きを隠せない。まさか男側が訓練された動きであっさり突破からだ。
「次は網を這って突破する、ジャングルロードだ!おおっと真田選手、匍匐前進で突破していく!」
訓練の一環で度々していくため、源太にとって一番楽なアトラクションだ。突破すると、またしてもアナスタシアを待つ。その間にヨハンチームに追い抜かれた。
「はぁはぁ・・・速いです・・・」
「大丈夫か?一緒に走ろう!」
トラックを一周し、ここからは屋外のコースを走り、次のアトラクションに行く。予想通り、射撃場に入り、今度は動く的に当てるという、意外に難しいものだった。ガンボックスの中のHK416A5カスタムを持つと、手に馴染んだ感覚を覚えた。
「これ、確かに俺の銃だ・・・」
「え?」
「シックスもノリノリだな」
50メートルほど遠くに的があり、レールで動いているのか、規則的である。一丁無くなっていることから、先に行ったヨハン達はクリアしたのだろう。
「さぁ来るぞ」
ブザーが鳴り、ポップアップターゲットが現れた。出た瞬間を狙い、素早く正確にターゲットに当てる。合計20ものターゲットが出たが、どれも真ん中を撃ち抜いた。
「終わったよ、パーフェクトだ」
「ハラショー!」
遠くでクリアした源太チームを後ろから見ていた武内。ガンボックスにあるTAR21タボールを手に取り、慣れた手つきでマガジンを装填した。
「私の銃、まだあったのか」
「現役時代に使ってたの?」
「えぇ。おそらくレインボーがバックアップしてるのでしょう」
源太と違い、今度は飛んでくるクレーを撃ち落とすという、別の意味で難易度の高いものだった。それでも難なく20個全て撃ち落とすという離れ業をやってのけた。
「久しぶりに使いましたが、衰えていませんね」
(すげぇロックだ・・・)
トップを走るヨハン組は、次のアトラクションを目指していた。
「そういえばさ、なんで一発しか撃たなかったんだ?弾あるんだから」
「ターゲットが水平に動いていただろ、しかも重なる瞬間があった。俺はスナイパーとして、一発でクリアしたかったんだ」
「的全部貫通してたもんな・・・」
ヨハンの背中にあるMSG90A1を見る。実は7キロほどあるのだが、それでも素早く動けるのは訓練のおかげだろう。
「アンタ何者だ?ただの外人じゃないだろ?」
「教える義務はない」
二人に待ち構えていたのは日本の運動公園でも見られる、水上アスレチックだった。もちろん濡れればロスタイムと風邪っぴきになれること間違いなしである。
「ずいぶん手が込んでるな」
「冬場に水アトラクションとか、冗談キツイぜ」
「とにかく突破しよう。俺が先行する」
不安定な足場を難なく走り抜け、拓海も続くが足を滑らせて冬の水の中に落ちてしまった。ヨハンはどうにか引き上げるが、このままでは彼女が風邪を引いてしまう可能性が高いため、スタッフを呼び棄権することにした。だが
「おい、なんで棄権するんだ。まだ終わってないだろうが!」
「鼻垂らして何を言ってる。アメリカの冬は厳しい、暖を取れ」
「負けたくな・・・へっくし!」
「ほら言わんこっちゃない、諦めるんだ」
棄権と同時にスタッフに連れられて会場に戻ろうとしたその時、通信が入る。
「ヨハン、大会は中止になった。菊地真と天ヶ瀬冬馬が何者かに襲われ、現在、東に3キロほどあるライブハウスに囚われている。スマホに集合場所を転送しておく、来い」
集合場所には源太に武内、カピタオ、そしてサーマイトがいた。日本人二人は既に突入用装備に着替えている。武内に限ってはバラクバラを深くかぶっていた。
「今回はタケもチームに入ってもらう。敵は白人至上主義の過激派テロリスト達だ、遠慮はいらん」
「・・・どこの国にもテロリストがいるんですね。しかも弱い少年少女を攻撃するとは許せません」
武内の右胸辺りに5本ある細身のナイフが目についた。
「どうしたヨハン、気になるのか?」
「えぇ。投擲に特化したオペレーターは珍しいですから」
「あの投げナイフはヤバいぞ、ヘタなアーマーなら貫通するほど鋭いうえに毒入りだ。ニンジャだなまるで」
カピタオが声をかける。
「準備はできたな。よし行くぞ」
バンに乗った5人はそれぞれ得物をチェックし突入作戦をおさらいする。ライブハウスと言っても構造は二階建て民家に近いため、多くの手段があるが、サーマイトとヨハン、武内が地下の駐車スペースからヒートチャージを用い爆破後、カピタオと源太が二階から突入し人質を救出する作戦だ。
「着いたな。作戦通りに行くぞ」
源太はカピタオと一緒にライブハウスの裏側に回り、ワイヤーで屋根まで登る。
「まだかな・・・」
「焦ってはいけません」
金属を焼き切る音が聞こえたかと思った矢先、C4を爆破した轟音が響いた。
「突入!」
合図とともに窓からダイナミックエントリーで破り、すかさずアンダーバレルのM320に装填された炸裂弾で敵を一掃する。同時に攻撃を受けた敵は混乱し統制が取れないまま倒れていく。二階のリビングにいた人質二人と毒ガス発生装置を見つけ、持ってきたデフューザーをセットする。
「もう大丈夫だ、助けに来たぞ」
少女の方は気を失っているのか、未だ眠ったままだった。
「助かった・・・森の中走るコースがあっただろ、あそこで襲撃されたんだ」
「あそこか。確かに襲撃するなら持って来いの場所だったな」
「・・・ん、あれ、ここ何処?」
少女こと菊地真が目を覚ました。
「大丈夫か?どこか具合悪くないか?」
「僕と冬馬君は確か、番組の運動会の途中で・・・」
「君達が襲われたことで中止になったよ。まずは脱出しよう」
三人と合流し、ヨハンと武内で人質を安全な場所に避難させることにした。武内は真の手を握り、彼女をエスコートする。
「菊地真さん。私について来てください、あなたを守ります」
窓を破り、ワイヤーで外に出、裏を通って確保ポイントまで移動する手筈だったが、読まれていたのか、敵が回り込んで来た。
「木の後ろに隠れて!」
降り注ぐ鉛の雨に真は身を低くし耳をふさぐ。普段、王子様キャラの彼女だが、さすがに命の危険を感じればただの少女になる。
「ヒィィィィ!な、なんでこうなるの!?」
「相手が悪いんです、決してあなたが原因ではない!」
敵の弾切れの隙をついた武内は投げナイフを抜き取り、相手の腕めがけて投げる。ナイフは腕をかすめ、木の壁に刺さったが、切り傷から毒が入り、瞬く間に戦闘不能になった。
「さぁ走って」
彼女の手を引き、どうにか確保ポイントに移動でき、ヨハンと冬馬にも合流できた。バンに乗せると通信を入れる。
「こちらタケ、人質確保に成功。すぐに応援に向かいます」
「あと数分でこちらも完了する、待機だ」
デフューザー組は迫り来る敵の波を対処していた。カピタオはスモークボルトと窒息ガスボルトを使い分け味方をサポートする。
「最後のウェーブだ、気を引き締めろ!」
「OK!」
10人ぐらいが一斉に入ってきたが、炸裂弾と鉛玉、窒息ガスボルトの餌食になり、終わるころには解除が終わっていた。
「ミッション完了。帰投しよう」
その後、武内をこっそり会場に帰し、彼は何食わぬ顔で現れたが、未央には気づかれており、何があったのかを秘密にするという条件で一字一句欠けることなく話したという。