オーストラリア・シドニー。この町で一番設備の整っている病院で手術が行われている。何を隠そう、海外コンサートで出演している担当アイドルを銃弾から庇い、腕、背中に数発命中、突入した時には意識が朦朧としていたらしい。
手術から3日前。マッシブライダーズの三人、木村夏樹・藤本里奈・向井拓海はシドニー到着の翌日。会場の視察に来ていた。オペラハウスは借りることが出来なかったため、ビーチの特設ステージで歌うことになっている。
「デケェステージだな」
リーゼントの目立つ、男口調の彼女が夏樹。
「マジでシドニー!?外人さんいっぱいいるし!」
少々落ち着きのないギャル風の少女、里奈。
「おいそんなこと言ったら、こっちが外国人だろうが」
スタイル抜群で特攻服を纏ったのが向井拓海だ。以前のアメリカの仕事とは違うことに安心している。
「おーい三人とも、待たせたな」
アロハシャツにサングラス、日焼けした肌の男。彼がプロデューサーだ。もちろん、武内ではない。
「今回は派手に行くぞ!セッティング確認できたか?」
「当たり前だ!テッペン取るって宣言したからな!」
彼女達は知らなかった。この後、一番忘れられない3日間になることを。
夜10時。打ち合わせを終え、それぞれの部屋に戻ろうとしたその時だった。ホテルに入ってきた30人ほどの男達が突然銃を取り出し、フロントにいる人間に発砲、一気にパニックに陥れた。
「動くな!床に伏せるんだ!」
リーダー格の男が英語と日本語でそう伝える。全員床に伏せ、恐怖が過ぎ去るのを待つ。
「このホテルは我々が占拠した。助けなんて望むな、この大人数、そして入り口が狭く、密集地帯に建てられた場所じゃ迂闊に手出しできないからな」
「リーダー。サツが来ました!」
外からサイレンが鳴り響いた。昔から危険な目にあっていた拓海はともかく、年頃の里奈は恐怖のあまりに震え上がっているのがわかる。
「おい落ち着け、判断が鈍るぞ」
「だって、だって・・・」
「こっちから手出ししなきゃ大丈夫だ」
夏樹が小声で励ます。
「ん、その特攻服は・・・ジャパニーズヤンキーガールか?最近はオーストラリアにその格好で行くんだな」
「っ、悪いかよ」
「いや。日本人はいつも驚かせるなってな」
リーダーは拓海に見覚えがあった。ポスターで見たことはもちろん、友人の自宅に彼女のグッズが置かれているのを見たからだ。友人から粗暴だが純真だと伺っている。
「タクミ・ムカイ。本物をこうして見ると、結構美人だな。売り飛ばせば1万豪ドルで売れそうだ」
「てめぇ・・・ただじゃおかないからな・・・」
彼女が腕が動いたと同時に引き金を引く。狙いは外しているため、ケガはしていない。
「まぁゆっくり考えろ。死んだら人質の価値がなくなる・・・ジャパニーズヤンキーガール達を彼女達の部屋に連れていけ」
事件を知った日本、オーストラリア両政府は過激派テロ組織、ハンマーヘッドの幹部が部隊を率い罪のない一般人を攻撃していること、日本の要人が人質になっていることを知り、リーダーと交渉した。要求は逃走用車両のチャーター、リーダーの解放、そして現金30万豪ドルを指示。しかし、オーストラリア政府は要求を拒否した。
「見せしめだ。これを見ろ」
モニターに映し出されたのはとある部屋にいる4人の男女。そしてG17を手に彼らに銃口を見せる犯人がいた。
「彼女達はジャパニーズヤンキーだ。要求を飲めないのなら、一人ずつ殺す。最後に貴様らの一番気にする日本人政治家を殺すとしようか」
見せしめと言わんばかりにプロデューサーの肩に発砲。
「本気だぞ、3日間与えるからじっくり考えるんだな」
通信が切れ。両政府はオーストラリアSASRを派遣を考えたが、大臣の一人がリーダー役の男はかつて軍にいてSASRにいた経験があり、攻撃方法を熟知していると反対し、再び頓着状態になった。協議の結果、かつてシドニーオリンピックを裏で大勢の人々を救った、レインボーに彼らのハント及び人質救出を依頼することに決定した。
近い地域で別任務を完了した、スモーク、ドク、五朗、源太、バックは司令部から緊急指令を受け、急いでシドニーへ向かった。全員が到着したころにはリミットまで1日を切っていた。ヘリ内で即席で作戦を練り、ホテル屋上に降下した。
「いいか確認するぞ。俺とゴローはこのまま階段を降り1階で待機、3人は突入開始し人質を救ってくれ。相手も馬鹿じゃない、油断するなよ」
スモークは五朗と移動し、3人はラぺリングで降り、窓の開いている掃除用具室から潜入。バックを先頭に廊下を警戒しながら歩く。途端、下の階から銃声が複数聞こえる。撃ち合っていないことから犯人が人質を攻撃したと判断し、音のあった方へ急いだ。
「突入するぞ!」
ドアを開け、フラッシュバンを投げ込み一気になだれ込み制圧する。
「クリア。なんてことだ」
ドクが見つけたのは、リーゼントの女性を庇い、銃弾を受けた男。ドクは急いでベッドに寝かせ、容態を診る。
「・・・アバラが折れて脈が弱ってきてる。急いで弾の摘出及び輸血しないと死ぬな。まずは止血して、ここから脱出させないと。バック、一緒に来てくれ。ゲン、任せて大丈夫か?」
喋りながら止血を完了させ、彼を肩に担ぐ。
「お、おい、大丈夫なのかよ。死なねぇよな?」
「私はこれでも医者だ。絶対に助ける」
ドクの力ある声に3人は安心を覚えた。
「彼を運んだら急いで戻る。任せたぞ」
バックは護衛として人質を屋上に移動させることにし、源太は引き続き人質救出を行うことにした。
敵との戦闘があったものの、どうにか屋上のヘリに収容することに成功する。
「彼は絶対に救い出す。バック、ありがとう」
「気にするな。パイロット、急いで飛ばしてくれ!」
ヘリはシドニーにある総合病院に飛び、彼はすぐさま手術室に運ばれた。執刀医は作戦服から手術用の服装に着替えたドクが行うことになった。
「久々の本業だな。これより始める」
彼の腕は国境なき医師団や軍で経験したものが大きく、素早い判断と摘出技術、縫合の速さがどの医師達よりも速かった。
「よ、容態は回復に向かっています。お疲れ様でした」
看護師が驚いた様子で容態を伝える。
「みんなお疲れ様。成功したようだし、伝えに行くとしよう」
外で待っていた3人が心配そうにドクを見つめる。
「だ、大丈夫だったのか?」
「成功した。あとはゆっくり寝かせりゃ元通りだ」
3人同時に喜び、ドクは無言の圧力で黙らせた。
「病院内は静かに」
手術成功から20分後、任務は犠牲者ゼロにしてテロリストの全滅を確認した。後日、ドクは帰還を遅らせ、患者の様子を見に行くことにした。
「よぉ~アンタが先生か?」
前日瀕死だった男が軽口を叩けるまでに回復している様子だった。ドクは普段通り落ち着いて接する。
「傷は痛むか?」
「あんまり痛くないな。それよりありがとな、おかげですぐに退院できそうだ」
「無理しないでくれよ」
「いや~夏樹も拓海も里奈も無事でよかったっすよ。武内さんがいなくても、俺って結構やれるから」
「(タケ、困ってるんだな)この様子だと、あと1日で退院だろう、ちゃんと大人しくしてくれ」
病室をあとにし、武内と廊下で会った。
「元気そうだったぞ。こんな同僚を持つと、苦労しかなさそうだ」
「確かに素行不良ですが、なかなか魅力ある人物ですよ」
ドクは何事もなかったかのように、ヘリフォードに帰っていった。
チャンピオンで拓海のストーリーがあったので、参考にさせていただきました