レインボーシックス346   作:MP5

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森久保編  リスと山

 フランス・パリ。鷺沢文香は気弱すぎる少女、森久保乃々と一緒にルーブル美術館に来ていた。

「・・・乃々ちゃん、ダメですよ作品の陰に隠れては」

「森久保は誰も相手にされたくないから、ここにいます・・・」

「私と一緒ではダメですか?」

 出国してからずっと、この調子であり、ありすとは違う意味で文香はとても扱いに困っていた。

「どうしましょう、このままでは撮影が」

 美術館の奥からロシア人男性が現れ、文香に声をかける。

「俺はティムール。君の護衛を引き受けることになった者だ・・・もう一人は?」

「そこです・・・」

 指差した方向を見ると、視線を感じ物音に隠れる森久保。すると、そのまま走り出してしまった。ティムールは急いで追いかけたが、大勢の客から小柄な少女を探すのは一苦労だった。

「くそ・・・モンターニュ、そっちにいるか?」

 ティムールことグラズは今回一緒に仕事しているモンターニュに通信を入れる。

「リスみたいに陰から陰に動いてた子か?それなら俺にぶつかって来て、保護したぞ」

 まるで猫のように摘み挙げられた森久保は絶望し切った顔をしていた。

「ダメじゃないか、美術館で走ったりしたら」

「だって・・・目立ちたくないですから・・・」

 彼女を降ろし、目線に合わせる。

「勝手に動いたら、それこそ目立つぞ。大丈夫、誰も君を悪く言うことなんてしないから」

 優しく頭を撫で、不安を取り除こうとするがその瞬間、文香の陰に隠れてしまった。

「彼女は臆病すぎる子ですから・・・」

「す、すまん」

 

 

 

 

 

 数分後、撮影が始まった。文香が持っている学術番組で、ゲストと一緒にいろいろな場所に行って名所巡りするのだが、スペシャルらしくルーブル美術館に行くことになったという。しかし、パリでは最近、テロリストが各地でテロを起こすことが多く、護衛としてモンターニュとグラズが行くことになった。

「仕事ではなく、プライベートで行きたかったな・・・」

 グラズは芸術が好きで、プライベートでは美術館やアトリエに足を運ぶことが多い。その知識は学芸員が顔負けするほどあった。今回の任務は本来ならルークが行くはずだったが、グラズが志願したため、モンターニュと組むことになったのだ。

「慌てて逃げ出さないよう、手を握ってエスコートしてるな。まぁ姉妹みたいだからいいか」

「乃々って言ったか?あの子、まるで逃げ道探ってるように見えるんだが」

 モンターニュは心配そうに見つめ、グラズは冷静に見つめていた。

「ルーブルは警備が厳重だ。しかし、作品を傷つけたりしたらただじゃ済ませないつもりだ」

「グラズ?おい、目的変わってるぞ」

 

 

 

 

 

 

 森久保はホテルの自分の部屋の隅で蹲っていると、誰かが呼び鈴を鳴らす。

「・・・だ、誰?」

「俺だ、昼間ぶつかったおじさんだ」

 鍵を開け、モンターニュを通した。

「君はリスみたいに臆病だが、気分悪いのか?」

 部屋の隅に移動し小さく震えている。そんな彼女を見たモンターニュは少し離れた場所に座り、安心させる。

「どうして怯えるんだ?目を逸らしたままでいいから、おじさんに話せるなら話してくれないか?」

「だって・・・アイドルやめたいですから・・・」

 思わぬ答えだったが、落ち着いた声で話す。

「・・・いじめがあったのか?」

「親戚にだまされて・・・アイドルやるハメに・・・」

「その親戚は君のその、臆病すぎる性格の矯正のために346プロに入れたんだろう。だが、入って良いこともあるんじゃないか?」

「あぅぅ~」

「・・・そうか。質問を変えよう、俺にできることはないか?」

 森久保の心理に小さな変化が起こっていた。何故だろうか、彼の声が非常に心地よいのだ。

「おじさんの話・・・」

「・・・そうだな、仕事仲間の話でいいか?」

 モンターニュはバンディットの話をすることにした。以前彼の部屋に遊びに行った際、島村卯月のファングッズが部屋中にあって、触れようとしたら人を殺せるかと思えるほど鋭い視線で見られたことを話した。

「島村さんのファンの人、怖い人ですか?」

「うーん、結構冷静で良い奴なんだがな、彼女のことになると冷めにくくなる奴だからなぁ・・・まぁ熱狂的なファンなんだろうな」

「会いたくない・・・」

「彼は今頃、ドイツのハンブルクで島村卯月の護衛をしてるだろう。話によれば彼女、彼の顔見て怖がってたからちょっと心配なんだがな」

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。レインボー達と別れたあと、帰国のための手続きを済ませ、飛行機の席に座った森久保と文香達撮影クルー。

(これで帰れる、また静かに暮らせるんだ・・・)

 だがこの淡い希望は音を立てて崩れることになる。この日運悪く中東系テロリスト達がこの飛行機をジャックし、機内が混乱し始めたのだ。恐ろしさのあまり縮こまり、誰でもわかるように震えだす。

(むーりー森久保生存むーりー)

 隣に座っていた文香が森久保を抱きしめ、どうにかして落ち着かせようとする。

(あの人達がまだ近くにいたら、どんなに心強いでしょうか)

 彼女達は知らないが希望はあった。既に護衛の二人が作戦に入る準備をしていたのだ。

「ドローン用意」

 小型の車もどきの機械、ドローンを操縦し内部の構造と敵の数、危険な状態にある人質の数を数を把握する。幸い全ての窓を閉めきっていたおかげでこちらの動きを見られることなく移動できる。

「俺がポイントマンになる。グラズ、後ろは任せたぞ」

「俺を誰だと思ってる?」

 後方部から潜入し、スモークグレネードを投げ視界を遮る。拡張シールドを手に銃撃を受け止めながら進み、グラズは後方からOTS-03スナイパーライフルで確実に仕留めていく。銃声とテロリスト達の悲鳴が響き渡り、煙が晴れる頃にはテロリストハントが終わっていた。全員が出て行ったことを確認するため、見回っていると、縮こまっている森久保を見つけた。

「終わったぞ。いい加減縮こまってないで普通に座ったらどうだ?」

「森久保は空気、空気です・・・」

「しっかりしろ。もう怖いおじさん達は倒したから、安心して飛行機から脱出するんだ」

 モンターニュはそう優しく言うと、ゆっくり顔を上げていく。

「お・・・おじさん・・・」

「一緒に来い。文香のところに行こう」

 森久保を肩にかかえ、飛行機から降りていく。シャッターのフラッシュが眩しいのか、はたまた恥ずかしさでいっぱいなのか、終始顔を背けたまま文香達と合流するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 帰国後、同じ机の下の住人である、星輝子にフランスでの事件を話すことにした。

「レインボーの人達はいい人達だぞ。私にも優しく接してくれたし、おいしいキノコうどんの店も教えてくれた。だから乃々ちゃん怯える必要なかったぞ」

「え・・・う・・・」

「でも、違う人だったみたいだな。どんな人だった?」

「目つきが鋭いロシアの人と、大きな山みたいなフランス人のおじさん・・・」

「山・・・リスと山、相性が良かったみたいだ」

 フヒヒと変わった笑い方をする。

「その通りかも。フランスのおじさん、とても優しくて、あんまり怖くなかった」

 二人がそんな話をしていたころ、モンターニュは次の作戦に備え自分の盾を補強していた。

(ちょっと悪いことしたな・・・まぁ、あの子は今後どうなるか、楽しみなのは確かだ)




 次回作の内容はバッチリです

 お楽しみに
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