本名、ティムール・グラズコフ
レインボーの中でも特に凄腕のスナイパーで芸術愛好家
隊の中に彼の趣味を理解する人間はいないが、最近、護衛任務で出会った鷺沢文香と意気投合し、時々芸術の話で盛り上がるが、端から見たらにらみ合っているようにしか見えない
日本・東京。顔の似た兄弟が休日、カフェでコーヒーを飲んでいた。二人とも苗字を西間といい普段あまり会話のない彼らだが二人には共通の話題があった。シンデレラプロジェクトの一員、アナスタシアについてだ。弟は彼女の同級生で彼女が通学する日に毎日口説き、兄の方は彼女の担当プロデューサーであった。二人とも源太及びユーリ大佐のことは知らず、弟の方はいつか交際したいという、夢のまた夢の妄想を抱いていた。
「兄貴、アーニャって普段一人でいて、誰も声掛けないんだよね。っで、俺が口説くと神楽先輩に発見されて説教食らうの繰り返しなんだけど、俺そんなに悪いことしたかな?」
「お前強引だからな。この前の担当の人なんか、追跡アプリ仕込んだのバレてクビになったって話だから積極的な男が苦手なのかもな」
実際のところ、彼女は強引でわがままな男が嫌いなだけなのだが気がついていない。そもそも犯罪行為を積極的と評する兄も兄である。
「どーにかなんないかな。俺なら将来安定なのに」
「そういやお前、明日修学旅行なんだろ?準備しなくていいのか?」
「あ!?そうだ兄貴、俺スキーウェア買ってない!」
用件を思い出し二人は急いでスキーウェアを買いに行った。
後日。長野・軽井沢プリンスホテルスキー場。男子の誰もが胸を躍らせていた、アナスタシアのスキーウェア姿が見られるからだ。白を基調にところどころ深い青のラインがあるスキーウェアを着た彼女の登場により、男どもが狂喜した。
「ううぉーかわいいィィィ!マジ天使じゃん!」
「守ってあげてぇ!」
途端、黄色を中心とし水色のラインがあるスキーウェアを着た、黒髪の似合う少女が注意する。
「アーニャ殿が困ってます、やめてくだされ!」
少女こと浜口あやめがアナスタシアの前に立つ。ちょうどいいタイミングで先生がやって来る。
「おーい男子、浜口さんの言う通りだ。彼女困るから必要以上に声掛けるなよ」
先生の登場でようやく大人しくなる。これ以上言えば滑らせてもらえないからだ。
(ぐぐぐ・・・この修学旅行で彼女のハートを奪ってみせる・・・)
夜10時。西間は部屋を抜け出し、こっそりアナスタシアのいる部屋を目指していた。理由は簡単、彼女の寝顔を見に行くためである。
「先公も節穴だな、まぁ俺を注意できないだろうし」
「坊主、大声をあげるな」
「あぁん、ふざけん」
振り返ると顔を隠し、P99を手にした男がいた。西間は恐怖のあまりに声を失いハンズアップする。
「お前の素性はわかってる、下手なことしたら頭をザクロにしてやるからな」
男は西間を連れて宴会場へと向かう。そこにはAK74やM11、二連式ショットガンを手にした男達と寝ているであろう、アナスタシアとあやめが人質として拘束されていた。
「な・・・」
「お前には交渉材料になってもらう。親父さんに命乞いして金を搾り取る役目だ」
用済みになったら殺してやると言わんばかりの目線に、西間は震えるしかなかった。
ODT残党が修学旅行生のいるホテルを襲撃し、彼らが西間グループ会長の息子を人質に身代金10億を現金で用意せよと要望があった。西間会長は急いで現金を描き集めヘリで現場まで行く。
「おい、息子は、息子は無事なのか!?」
「西間さん、残念ですがもう無事ではないかと・・・警視庁SATが一度突入しましたが返り討ちにされました・・・大人しく10億を渡すしか」
「息子がいないなら金は渡さんぞ!」
興奮のあまり人の話を聞こうとしない。困り果てた刑事はホテルの方を向くと、日本の警察のモノとは違う、見慣れないヘリがホテル西側にある駐車場に近づいているのが見えた。
「なんだありゃ・・・俺の耳に届いてないぞ」
刑事の携帯が鳴る。相手は長野県警のトップだった。
「SATの突入が失敗したようだな・・・実を言うと使いたくない切り札を用意しておいた」
「切り札ですか?」
「レインボーを知ってるか?夏頃、346プロに立て籠もったODTのリーダーを逮捕した連中に協力要請したのだ。我々はそれを見届けることしかできない」
刑事は面子丸潰れに肩をうなだれるしかなかった。
現場に一番近い場所にいたメンバー5人が集まった即席チーム。サーマイトをリーダーに、トゥイッチ・源太・カベイラ・ルークが集まった。
「降下準備、ゲンと俺は3階から潜入、ルークとカベイラは1階、トゥイッチは1階組のサポートしてくれ」
「どうしてよ?」
「ブリーチング役を二手に分けるためだ。ショックドローンでカベイラのサポートにまわって欲しいってのもある」
「なるほどねぇ」
「その前にこれを装備してくれよ」
ルークはアーマープレートの入ったボックスを取り出し、全員それを装着する。
「準備はいいな?行くぞ」
サーマイトと源太は早速3階まで登り、源太が一番手に突入し、続いて彼も突入する。
「なぁゲン、これはいったい・・・日本人の建前って恐ろしいな」
突入した部屋が女性教員の部屋だったらしく、空の酒瓶が複数本散らばっている。中には腹出して寝ている教員もいた。
「見なかったことにしましょう。熟睡してますし」
友人であるヒバナが言ってた怪人酒樽女の話を思い出し、肝が冷えた感覚を覚える。以前、好みは大和撫子と言っていたが前言撤回、日本女性とは友人関係に留めておこうと決心する。
(ジャパニース婚活は敷居が高そうだ・・・)
廊下に出ると、敵が立ち話してるのが見える。音を立てずに忍び寄り、話を聞いてみる。
「最近の高校生ってのは金持ってんのか?ここ、いいホテルじゃん」
「まぁ西間グループの会長の息子が泊まるって話だからな。そのガキ確か人質だろ?」
「用が済んだら早速殺すだろうよ。リーダー、山猿男嫌いだから」
自分たちの方が用済みだと知らず、脳天を撃ち抜かれる。
「人質はあと2人いたハズだ。トゥイッチ、情報は?」
「1階の宴会場に3人人質がいる。1人はゲンの彼女、もう1人の子はまるで忍者みたいな恰好した子、最後に見た目通りのチキンな少年ね」
「なぁゲン、もう結婚して一緒に暮らせ。そうした方が安全だ」
「冗談やめてください、まだ早いですよ」
源太はそう言って見取り図を取り出し、宴会場の真上を目指す。
一方のトゥイッチチームは、少しばかり混乱していた。なんとカベイラがいつの間にか消えたのだ。
「ルーク、タイナはどこ行ったの?」
「姉御、俺も気づいたらいなかったんだ。しかも無線機切ってるし・・・グハ!」
姉御と呼ばれ反射的にルークにボディーブロウを決める。
「そう呼ばない約束でしょ?」
「ご、ごめんなさい・・・」
「よろしい」
笑顔の中に鬼がいる感覚を覚えるルーク。
「まぁいいわ、いきましょ・・・って、何してたのよタイナ!」
カベイラからの無線だった。
「ごめん気配感じたら居ても経ってもいられなくって・・・そうそう、早速尋問してみたらホテルのフロントの裏にガス爆弾仕掛けたってさ。デフゥーザー持ってきてたよね?」
「今回私がね。解除してみるわ」
そう言うとルークにブリーチングチャージを渡す。
「タイナと合流してアンタが仕掛けて突入よ、さっさと行け」
「トゥイッチ、それなら一回合流してからでも」
「時限式だったら最悪よ。早くしろ!」
宴会場の真上に来た2人。
「こちらルーク、トゥイッチは現在爆弾解除に向かったため、俺がブリーチングチャージを使います」
「了解した。まずお前が発破し、次に俺が行う、やってくれ」
少しして、爆発音が響く。サーマイトは床にヒートチャージをセットし避難する。
「バカデカイ穴が開くぞ!」
先ほどより大きな轟音が響き、床が木っ端微塵に消える。源太はスモークグレネードを投げ入れ視界を制限させると同時に上から突入する。
「吹っ飛びな!」
HK416A5カスタムにあるM320に炸裂弾を装填し、敵の集団に向かって撃ち込み一掃する。思わぬ場所からの攻撃に敵は一瞬で全滅した。
「クリア。もう大丈夫だ」
「源太さん!」
約束通り彼に抱き着いてきた。それを見た西間は驚いた表情になる。
「え!?どういうこと、ねぇ!」
「世の中にはわからないままでいいことの方が多いぞ、少年」
ルークは西間に当身を当て、肩に抱える。
「おぉ当身できるんですか!?教えてください!」
「え?いや、さすがに」
「ニンジャガール、そろそろ脱出するよ。ついて来て」
その後、爆弾も解体しテロリストは全滅、人質も無傷と完璧な結果で任務を終えた。西間はその後、父親に抱きしめられた後、源太とアナスタシアが彼の蛮行を話し、息子に対してちょっとした説教が始まった。その傍らでルークはあやめとリラックスした状態で話をしていた。
「もしかしてブラックビアード殿のお仲間ですか?」
「あぁ。今でもどっかで活躍してるよ」
「レインボーとは忍者養成所ですね、私も訓練に参加させてください!」
「・・・え?いや、俺達はその、忍者じゃなくて、特殊部隊なんだけど」
「参加できなくてもルーク殿のことについても教えてください!」
「えぇ!?」
普段冷静なルークが顔を真っ赤にし動揺した。彼はGIGNで教官もしていたが、基本的に少女と接する機会はなかったため、彼女の天真爛漫ぶりに苦戦するしかない。
「だ、だめだよ、君は一般人なんだ、教えるわけにはいかない」
「だったら忍び込んじゃいますよ?それこそ問題では?」
その様子を見ていた他3名はルークを温かい目で見ていた。助ける気はない。
(なかなか似合ってるね、トゥイッチさん)
(ルークは頭でっかちだからなぁ。時にはこんなのもいいだろ)
(青春時代、どうやったら効率良く金属を溶かし、穴を開けられたか模索してたなぁ)
それぞれ違うことを考えていたが、ルークにはわからなかった。
「・・・わかった、俺個人の連絡先を教える。それから、俺が体験したことを君に話すっていうのはどうだろう?」
「本当ですか!?」
目を輝かせる彼女にタジタジなルーク。彼は紙に自分のメールアドレスを書き、それを手渡した。
「本当の本当に教えてくださいね、ルーク殿!」
「ははは、でもいつかは教えないよ(ゲンもこんな感じだったのかな・・・今なら彼の苦悩がわかる気がする)」
ルークは積極的な女の子が苦手そうなので