本名、イライザ・コーエン
FBISWAT出身の女性オペレーターで、ブリーチング弾を使った戦略を得意とする。
三村かな子とは仲が良く、スイーツの話で盛り上がるが、彼女の肥満度が増えていくことに懸念している
スペイン・バレンシア。世界の歴史に触れる番組を持つ文香は、この日、彼女にとって、とても不安なゲストを迎えることになる。
「フーミン、よろポヨ~」
夏の湘南にいそうな少女、藤本里奈。文香は見たことはあっても彼女と会話したことがなく、第一印象で目を自然に背けてしまう。里奈は決して悪い人間ではないが、自分と対局にいる人間と話ができるか心配になった。
「あ、フミフミと一緒なんだ、よろしくね~」
小柄で緑の髪色の少年、御手洗翔太。彼のプロフィールでは親孝行が好きだと言っていたが、文香の目にはそうには見えず、年下の彼相手にも顔を背けながら挨拶する。
「あれ、年上のくせに顔見て話せないんだ。印象最悪じゃん」
ストレートに思ったことを言う翔太に、頭上から拳骨が飛んでくる。
「痛っ!」
「貴様が礼儀知らずだ。このクソガキ」
拳骨をした男、今回の護衛の一人であるグラズは冷ややかに言いながら睨みつける。
「コイツのマネージャーは何をしてる、礼儀を叩きこんでおけ」
彼のマネージャーを呼び出し、説教をしている間に別の仕事を終わらせてきた隊員が合流した。
「グラズと仕事か。狙撃の仕事が減りそうだ」
「またそう言って競い合うくせに・・・」
「なんだゲン、シックスにデート中断されて怒ってんのか?」
源太・ヨハン・レイモンドがチームに合流し、スタッフ一同に挨拶する。
「よろしくな、里奈」
「は・・・はい、よろしくお願いします」
ヨハンを前にしおらしい里奈を見て少し動揺する文香。それを見たレイモンドは彼女に声をかける。
「ヨハンの奴、いつの間にそんな関係になってんだ?知らなかったぞ」
「私に聞かれても・・・」
「まぁケガとかしたら言ってくれ。俺が診てやる」
バレンシアの街中を歩きながら司会としての仕事もこなす。
「今日は、他にもゲストの方がいらしています」
バレンシア大聖堂の前に赤めの髪を二つに分けて括っている少女がいた。
「緒方智絵里さんです」
1人でロケ現場に来たからか、生放送で上がってしまっている。フォローを入れようと里奈が声を掛けようとする。途端、彼らの背後から穏やかな笑みを浮かべた女性が現れ、日本語で励ます。
「どうしたの、さっきまで初の外国ロケだって張り切ってたじゃない?」
「えぇっと・・・その」
「大丈夫、誰もあなたを貶したりしないわ。いつもの通りしてたらいいの」
この女性の正体をレインボー隊員は知っていた。彼女を手招きし、カメラの前から移動させる。
「ミラ。彼女の護衛に付き添っていたのか?」
「チエリのマネージャーがパスポート発行に手間取っているから、日本まで迎えに来てほしいって頼まれてね。任務終わったその足で向かったの」
「じゃあ、彼女の乗った飛行機って・・・」
「ウチの輸送機。初めての軍用機だったから、乗った瞬間に寝ちゃったわ」
まるで妹のように語るミラ。
「あの子、両親が多忙で見捨てられてるって思ってるらしいの。どうにかして励ますことができたらいいか、悩んじゃって」
「まぁ・・・ミラも家庭事情複雑だもんな」
ロケを終え、ホテルで1人、日本に残してきた両親を思いながら窓の景色を見る智絵里。ドアをノックする音がする。開けると、屋台で買ったチュロスを手にしたミラがいた。
「あ・・・」
「お疲れさま。時差に慣れたかしら?」
コクりと頷くと、ミラは笑みを浮かべ部屋に入る。
「やっぱり、家族が心配?」
「はい・・・大事な家族ですから・・・」
「チエリ、お父さんもお母さんも同じように心配してるハズよ。たった一人の娘だもの、心配しないハズがないわ」
「海外ロケに行くって言っても、心配そうにしてなかった・・・」
「恥ずかしいからよ。あたふたしてたら余計貴女が行き辛いでしょ?」
「あのぅ・・・どうしてそこまで心配してくれるのですか?」
「私ね、幼い頃、お母さんに捨てられたの。他の男のところに行って、それっきり」
「!?」
「でもお父さんが大事に育ててくれた。実家は小さな工場を営んでて、そこでモノ造りの心を知って、培った技術を活かすためにGEOに入ったの。だから寂しくもなんともなかったわ」
「ミラさん・・・」
「チエリのように寂しそうにしてる人を見てるのが辛いの。私も私なりに出来ることがあったら負担を軽くしたいって考えてる。1人じゃないのよ」
優しく抱擁し、智絵里を安心させた。
「もう遅いわ。疲れてるからちゃんと寝なさい」
そう言って部屋から出て行った。
ホテル屋上。輸送ヘリ及びメンバー全員が集合している。理由はイビザ島で過激派組織によるテロ事件が発生し、近くにいた護衛チームによるテロリストハントの指令が下ったからであった。
「ミラが遅刻とは、珍しいこともあるんだな」
「アフターケアをしただけよ。行きましょ」
目標の島に到着したことを確認すると、着陸地点であるプールサイドに降り立った。
「行くぞ。遅れるなよ」
レイモンドがポイントマンを務め、野外の高い位置にある監視カメラにも気を使いながら慎重に進んでいく。
「ここから別れようぜ。ミラとゲン、ヨハンは2階、俺らで1階の連中を片づける」
2階に上がり、ビリヤードルームにいる敵と交戦し全滅を確認すると、台から物音が聞こえる。源太がそちらに進むと、意外な人物がそこにいた。
「お前は・・・」
「こ、こんばんわ」
グラズの説教を受けていた少年、御手洗翔太がいた。この事態を把握してるのか、苦笑いを浮かべていた。
「ガキは寝る時間だ、どうしてここにいるんだ?」
「マネにコッソリついてきたら事件に巻き込まれちゃって。ビリヤード台の下に隠れてたんだ」
「・・・運がいいな。おかげで流れ弾を当てられなくって残念だ」
「そんなこと言わないでよ!一般人にやさし」
ミラが彼に当身を当て、肩に担ぎあげた。
「命捨てに行ったことを反省しなさい。彼って腹立つわね」
「同感だ。2階は制圧したし、早く二人と合流するぞ」
そう言った矢先、グラズから連絡が入った。敵を殲滅し、隠れていた翔太のマネージャーを確保したという。
「こちら源太、御手洗翔太を確保した。さっさと帰還しよう」
帰還後、マネージャー共々OTs-03を用いたスペツナズ流説教術(物理)を延々と聞かされ、終始半べそをかいていた二人であった。それを見ていたメンバーは心の中で同じことを思っていた。タチャンカじゃなくてよかったと。
「・・・っで、聞く限りだと背伸びがしたかったのか」
「は、はい・・・」
「お前の年齢ならわかるが、ここは日本じゃないんだ。深夜歩いてたらテロではなくても騒動に巻き込まれる可能性が高い。少しでも生きたかったら自重を覚えるんだな」
グラズはため息をつく。
「マネージャーもそうだ。アンタが保護者代わりなんだから、ガキを置いて観光がてらに飲みに行くって考えは賛成しないな。義務を捨てるとはどういう神経してんだ、もしここがロシアだったら今頃、彼が殺された後、皮を剥がされ誰が誰なのかわからない状態で森の中に捨てられてるところだぞ」
「ううう・・・」
「そんなに酒が飲みたいなら、帰ってから飲んだ方がいい。明日はロケ最終日だ、文香や他のメンバーに迷惑かけずに終わらせたら許してやる」
翌日。翔太は文香や他のメンバーに前日の無礼を詫び、ロケを終わらせることに成功した。無論、終始銃口が向けられていたことは言う間でもない。
後日。ミラの部屋に一通の手紙が届く。宛名は緒方智絵里とアルファベットで書かれていた。内容を読んだ彼女の目に薄っすらと涙が浮かぶ。
「・・・もう、本当の妹みたいに思っちゃうじゃない」
涙をぬぐい、訓練に赴くと、最悪のすれ違いが生じる。
「あ、泣き上戸のミラ」
「あら怒り芸のアッシュじゃない、どうしたのかしら?」
この二人、実は非常に仲が悪い。顔を合わせる度に罵り合い、時々殴り合いの喧嘩に発展するケースもあるほどだ。故に一緒に組んで仕事をしたことが一度もない。それを知ってる隊員達は最近になって止めに入らなくなった。
「右手にある紙は何?チリ紙?」
途端、右ストレートがアッシュの頬を掠める。
「何すんだこの野郎!」
ボディーブロウを防ぎ、カウンターを入れようとするがこちらも防がれる。
「感動の手紙読んで泣いちゃ悪い!?」
「覗き魔のクセに泣くんじゃないわよ!」
この騒ぎに気づいたシックスが止めに入るまで、永遠に続いたという。
どうしてこうなった・・・